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空想科学小説ベスト10 - 荒地出版社(1961)
空想科学小説ベスト10


十三階 The Tenants / ウィリアム テン William Tenn 訳:福島正美 の あらすじ


ブレイク氏は、マゴーワンビルの管理責任者。このビルに、近頃空き部屋が
増えて困っている。

この不良物件を、なんとかせにゃならんが...

そこにトウフとボウフと氏言う、顔のソックリな男達が来た。
二人は、双子の様にそっくりだった。ただし身長を覗けば、
片方は2mを超え、もう片方は、1mそこそこしかなかった。

二人は椅子に座って、ブレイク氏を見つめた。
(この二人は何者?)

二人はこう言った。
「13階を全フロア貸して欲しい。事務所にしたい」

「わかりました。しかし、残念ながら、うちには13階はありません。普通の方は
13階には住みたくありませんから。それに、運悪く、12階も14階も現在
ふさがっているのです。私どもとしては、6階をお勧めします」
「いや、我々が借りたいのは、13階だ。」

「ですから、当ビルには13階はないのです」
「どうして、12の次に13がないのだ。君には、我々にフロアを貸したくない理由が
あるのかね?」

「いえ、貸したいのは、やまやまですが、13階はないのです」
「わかった。別の人に頼もう」

「あ、あの。これは私の名刺です。他に良物件がない場合は、ぜひとも当ビルを...
   あああ、それから、お名前は?」

「トフウとボフウだ」
「どちらが、トフウ様ですか」

大きいほうが言った。
「私がトフウ。こっちがボフウ。時として、私がボフウ、こっちがトフウ」
「はあああ??」

やっぱり、外国人だ。名前まで変わっている。
そりゃ、そうだ。肌の色はオリーブ色。アクセントも変!
しかし、商売に人種的偏見を持ち込まないのは、私のモットーだ!

トフウとボフウは帰って行ったが、帰りはトフウ一人だった。
ただし、トフウの背広のポケットは、とんでもなく、膨れていたが...


二人が帰ってしばらくすると、本社から電話がかかって来た。

本社の幹部が言うには、
「我が社として、トウフとボウフさんに、そちらの13階を貸す事になった。
   今まで一度も借り手のなかった物件を借りてくれる大事なお客さんだ。
   くれぐれも、よろしく頼む」

もう既に、本社は敷金と1カ月分の家賃を貰っていた!
トウフとボウフ氏はやってきて、13階に案内してくれと言う。

ブレイク氏はエレベータ係に「13階に行けるか?」と聞いた。

するとエレベータ係は、
「私はお客様の言う所に行きます」と言う。

トフウとボフウは、エレベータに乗り、上の階へと消えて行った。

ブレイク氏は、トフウとボフウが戻ってくるのを待っていた。
やがて、エレベータは戻って来た。

しかし、中にトフウとボフウはいない。
「あいつらは、どうしたんだ?」
「ですから、13階で降りました」

「ふざけるな!俺もそこへ連れて行け!」

すると、エレベータは10、11、12、14、15...

「あれ?今度は行かないなあ?」
「ふざけるな!このビルに13階なんて、あるもんか!」

ブレイク氏が、エレベータ係に説教をしていると、社長がやって来た。

「これは社長!実は妙な事が起きまして、このビルに無い13階を借りたいと
   言う客が来まして、本社は勝手に貸してしまうし、このエレベータ係は13階
   で客を降ろしたなどと言う嘘をついており...」

「ブレイク君。それで、何か問題があるのかね?」
「ですから、13階は存在しないのに...」

「しかし、客は借りた。君はもっと、顧客志向と言う事を学び直した方が良いな」
「はあああ」


それから、トウフとボウフ氏、それから掃除係などの従業員は、毎日、エレベータで
13階に行って、帰って行きます。

ブレイク氏は、13階が見たくて、彼らの中に混じってエレベータに乗りますが、
何故か彼が乗っている時は、エレベータは、決して、13階へは行けず、
おかしいと思った同乗者に追い出されてしまいます。

そして、ブレイク氏を追い出したエレベータは13階で止まるのです。

ブレイク氏は、何度も挑戦しますが、(13階の存在を信じていない彼だけは)
けっして13階に行く事ができません。

そして、ある日トウフとボウフ氏が、このフロアから出て行くと言います。

(チャンスだ!)
ブレイク氏は、フロアが損傷していないかを貸し主として、確認する
法的権利がある!と主張します。

トウフとボウフ氏が「判りました」と、彼を連れてエレベータに乗ります。

すると、

13階で止まりました。

ブレイク氏は、おそるおそる13階に降ります。
中は、何の変哲もないフロア。階段の付近にドアはなく、行き来はエレベータのみ。

窓から首を出すと、すぐ上は14階、すぐ下は12階。
ここは確かに13階だ!。

トウフとボウフ氏は、
「それでは私達は忙しいので、帰ります。さようならブレイクさん」

「待ってくれ」
ブレイク氏の目の前で、エレベータのドアは閉まりました。

ブレイク氏は、エレベータのボタンを押し続けますが、
エレベータは来ません。

何故って、13階なんて、本当は無いんですから。


..............

よく、ミステリーやホラーの話の中に、「13階もの」と言うのがあります。

これは、英米で忌み嫌われている13階を無くしたビルなのに、
なぜか、その13階に踏み込んしまった人に起きる事とは...?

よくあるのは、怪談話ですが(13階だけに、階段話、なんつって!! )
今回の話は、バリエーションですね。


記:2011.09.13

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三分 小説 備忘録

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