3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

空想科学小説ベスト10 - 荒地出版社(1961)
空想科学小説ベスト10


うそつき Liar! / アイザック アシモフ Isaac Asimov 訳:神谷芙佐 の あらすじ

ラニングはボガート、アッシュ、スーザンに話をしてした。

「RB34号は、人の心を読み取る。機能異常じゃないかね」
「材料や組立工程に異常がない事は私が保証します」

「しかし、組立・調整の工程は7万5千、それぞれのファクターは
   平均100.それら全てを、管理する事は至難の技だぞ」
「しかし、『読心力』を持ったロボットを作って非難されるのも、納得が行きません」
「ちゃんとコントロールできれば、良いんだ。勝手に持つのがイカン。昨今、
   盛り上がっているロボット排斥運動に、良いネタをやる事になる」

「ともかく、読心力の話はオフレコだ、アッシュは全工程をチェックしろ。
   スーザンは心理学面から奴を調べろ。ボガートは私と、読心力を数理解析する」

スーザンはRB34号(通称ハービイ)に会いに行った。
「ハービイ、超原子モーターに関する本を持って来たわ」

「科学の本ですか。正直言って、これらの本は、都合の良い所を集めた学説
   から得られた捏造データの集積です。読んで価値のあるものは少ない。
   むしろ私は、小説が読みたい。恋愛小説なんかが良いですね。人間の心が判る」

「恋愛小説に興味があるの?」
「そうです。貴方と同じです」

「私は特別に興味はないわ。もう38だし」
「いや、貴方は、若くはないが、充分に魅力的です。私から彼に、
   接触しても良いのですよ」

「彼?って誰?」
「アッシュですよ」

「まあ!!」
「彼は、貴方の興味を持っています。彼は女性を髪の色や、
   年齢で判断する人間ではありません」

「で、でも、半年ほど前に、金髪の女性が彼の所を訪れたわ。アッシュは、
   さも楽しそうに、彼女に話をしていた、私はてっきり、彼女が彼の婚約者だと...」
「それは、彼のいとこですよ」

「あら、私もそうじゃないかと、思っていたの」
「ありがとう、ハービイ。でも、この事は、誰にも話さないでね」


「ボガード、最近、スーザンが口紅つけているの知ってるかい?」
「アッシュ、そらわかるさ」

「いったい、どうしたんだ。オールドミスさんが?」
「この前、スーザンが言ってたぞ。悩みがあったら、ハービイに聞くと良い。
   彼は何でもわかっているって」
「へ〜、じゃあ奴はラニング教授の事もわかるのかなあ。でも所詮はロボットだろ?
   ボガート、今の研究テーマの問題点を、ハービイに聞いてみたらどうだい?
   彼は数学的にも天才だし」


「ハービイ、君の意見を聞きたいんだ。D真空室における、電子衝撃の件だが、
   ラニング博士は、マトリックス解析に固執している。僕はもっと電子計算機の
   演算パワーを上げた方が良いと思うんだが、君はどう思う?」

「ボガート、この問題は、手法の問題ではないと思います。優秀な
   貴方の意見が100%採用されない事が、本質的な問題です。
   そして、ここに全てを解決するための事実があります」

「それは何だね?ラニング教授が、どうなるんだ?」

「ラニング教授は既に辞意を表明しています。今はまだ、
   発令時期を決めかねている状態です。しかし時間の問題です」
「そ、それで、後継者は?」

「ボガート、あなたですよ」
「そ、そうか。ハービイ、ありがとう」


「ボガート!この報告書は何だ!ミッチェルの転換方程式の
   演算結果が誤っているぞ!なぜ虚数を使うのだ」
「どうして、使ってはいけないんですか?」

「ミッチェルの論文の誤りの一つだからだ。だいたい、ああ言う虚構の
   理論は、わしは好まん!ハービイの電子頭脳も、この件は、私と同意見だ」

「ああ、そうですか。じゃあ、全ては貴方が居なくなってから、やり直します」
「居なくなるとは、どう言う意味じゃ?」

「あなたが辞意を表明した事は、私は知っています」
「そんな馬鹿な事があるか!君には、この任務を辞めてもらう」
「じゃあ、ハービイの所に行って、白黒つけましょう」


アッシュがスケッチをしている。それは小さな家だった。
スーザンは目ざとくそれを見つけた。

「それ何の家?」
「今度、買う家ですよ。安く買える事になったんです」

「素敵だわ」
「ええ、そして結婚して彼女と住むんです」

「結婚??」
「ええ、以前、職場にも呼んだ彼女が婚約者なんですよ」
「!!!」


「さて、ハービイ。良く聞いてくれ。何故、君はボガートに、
   私が辞職すると言ったのだね?」
「そうだ!何故、そんなデタラメを言ったんだ!」

「.....」
「しゃべらないつもりか!この、うそつきロボット!辞職の話を
   もう一度、繰り返してみろ!」

その時、後ろで、クスクス笑いが。振り返ると、スーザン!
「あらあら、ロボットの権威も騙されたんですか?面白いわ。
   二人ともロボット工学の三大原則をご存知ないんかしら?」

「何を馬鹿な!ロボット工学の三大原則の第一条とは、
   ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を
   看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない、だ」

「そして、その危害とは?」
「あらゆるものさ。人が受ける、あらゆる危害」

「そうですわ。それには精神的な危害も含まれる訳ね。だから、ハービイは
   それぞれの個人にとって、都合の良い事を言ったのよ。今は、貴方達二人の
   どちらも傷つけないようにする事ができないので、しゃべれないのね」

「しかし、彼は、私が聞いた時は、彼自身の機能は正常だ、と言っていた」
「それは、ボガート、貴方が聞いたからよ、組立責任者の貴方がね。
   ちょっと、あっちへ行って!私が聞いてみる」

「ねえ、ハービイ、あなたの機能は正常?」
「ちょっと、待て、スーザン。これでもダメだ。彼は心を読むんだ。それで
   今の君は、ボガートの組立てが間違っていたと希望している、きっとハービイは
   君の希望を答えるだろう」

「ともかく、ハービイ!どうなの?答えなさい!答えなさい!」
「私には答えられません。私は人の心が判るんです。みんな、口では言います。
   真実を望んでいる、と。しかし、人の心には憎悪が、悪意が、焦燥が...」

ハービイは頭を抱え、床に倒れた。
「彼は死んでしまった」
「死んではいないわ。でも気が狂ったでしょうね。解決できないジレンマに晒されて」

「君は、こうなる事が判って、ハービイを問い詰めたのか?」
「ともかく、こう言った思考型ロボットは、我々の生活には向きませんわ」

スーザンは去って行った。ふと、倒れたハービイを振り返ると、こうつぶやいた。
「うそつき」


..............

ちょっと、セクハラっぽいですねえ。
アジモフと言えば、もみ上げ。もみ上げと言えばセクハラな訳ですが、
(どんなツナガリじゃ)

この50年前の作品集の中で、最も古い感覚の気がします。
例えて言うなら、昔の映画を見ると、ヒーローが、もうもうと煙草を吸ってるシーンのような...

本日の教訓
ロボット工学三原則ものに、良作なし

記:2011.09.11

  3 Minutes World 3Minute World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World 3Minutes World

三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




・ホーム
・海外SF1トップ
・インフォメーション
・掲示板
・お問い合わせ