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空想科学小説ベスト10 - 荒地出版社(1961)
空想科学小説ベスト10


クレイジイ プラネット Placet is a Crazy Place / フレドリック ブラウンFredric Brown 訳:三田村裕 の あらすじ

プラセットは、馬鹿馬鹿しい惑星だ。
時間と言うものが、奇天烈なのだ。

つまり、昼が6時間続く。その後の夜は2時間。 次の昼は15時間、と思うと、今度の夜は1時間。

二つの太陽の周囲を、8の字を描いて回るプラネットでは、時間はこんな調子だ。

それだけじゃない。
もっと奇天烈なのが、ブレイクスリー界効果って言う奴だ。

どういう事かって言うと、プラセットは自分自身の影に隠れて『蝕』の状態を
作るんだ。言い間違いじゃない。自分自身の影に隠れるんだ。

初めて見ると皆びっくりする。活動写真を初めて見て、走ってくる汽車に逃げ出した、
あの観客達と同じだ。

何故、そんな事が起きるかって言うと、
二つの太陽の片方=アージルTは、地球的な物質なのだが、
別の方=アージルUは反物質だからだ。

可視光線の速度が、変化するんだ。その結果、ブレイクスリー界を通過するのに、
光は26時間かかる。

それで、自分自身の姿が見えたり、蝕が発生すると言う訳さ。
衝突しそうになる時なんて、それは見ものさ。


それだけじゃない。この効果は、日常生活でも、麻薬的な効果をもたらすんだ。

私は、今、机に向かって座っている。
しかし、目の前には草。足元は水辺だ。目をつぶって触れば、それが机である事は
良く判るが、目に映るものは、そこにある物ではない。大変だ!

しかし、慣れて来れば、なんとかなるもんさ。


そんな訳で、ドアが開いて、双頭の怪物が入って来た時も、私はそいつが
リーガンだと判った。ポイントは足音だ。

「リーガン、どうしたね?」
「フィル部長、鳥の奴が機械作業場の地下を飛び回ったので、機械の設置がグラグラです。
   コンクリートの充填が必要です」

「わかった。補強しろ。それで、機械は大丈夫なのか?」
「すぐ調べて来ます」

「フィル部長。紫の水玉模様のゴム製の馬人形が見えるんですが、あれは旋盤ですかね?」
これがリーガンの冗談ではないから、この惑星にいると、こっちの精神がおかしくなっちまう。

普通の赴任者は、1、2年で検査に引っかかって精神治療送りになるんだが、私は
もう3年も働いている。そろそろ期限切れだ。

「リーガン、地球へ伝言を頼む、たったの2文字だ、辞める( I Quit )」
「了解しました!」

さて、せいせいした。今は何時なんだ?と、振り返って、
柱の時計を見ると、それは葬式用の白百合に変わっていた!

この時間がデタラメな星には、相応しいけどね...

「フィル部長、頼んでいた補強材を運ぶロケットが到着したんですが、
   梱包を開けたら、空でした。地球の輸送係の奴め!」
「そいつは見えない素材なんだろ?試しに使ってみろ!」


この星ともお別れか、地球へ帰って、元の教師に戻るか、と考えていると、
足音が聞こえて来た。 リーガンのじゃない。

入って来たのは、もの凄い美女。
「ランド先生(フィル)!私を覚えていますか?」

私は、慌てて柱を振り返った。そこにあるのは、普通の時計!
こりゃ、ブレイクスリー界効果じゃない!

「もちろんだよ。ミス ウィット!」
マイケリーナ ウィットはかつての私の教え娘。その時も可愛かったが、今の綺麗さは、
完成されている!あの美人のマイケリーナが、今ここに居る??

「政府が、あなたの技術秘書を応募しまして、私は採用されたんです!」
「最高じゃないか!」

その時、地球からの伝言メールが、着いた。そこには、こうあった。
「希望の件、承知した。19日に船を送る」

もしかしたら、機械の故障で、辞表の通知が届かないかも知れないと言う。
私のはかない希望は、打ち砕かれた。おまけに、19日まで、あと4日。


私は、時間を無駄にしない質だ。
早速、マイケリーナと視察に出かけた。元々は、マイケリーナとその弟アイク、
そして部下のリーガンも私の教え子だっのだ。私は当時、新任の教師だった。

「どうして、火星のビルはみんな小さいんですか?」
「ここでは建物の寿命が短いんだよ。平均3週間。土台は頑丈に作る。
   しかし、やがて壊れてしまう。ほら、この震動、感じないかい?」

「ええ。地震ですか?」
「いえ、鳥が飛んでるんだよ。地面の中を」

{???}
「プラセットは奇妙な星で、通常の物質と、思い物質で出来ている。
   この星は重力は地球の3/4だが、面積はマンハッタン島の二倍。
   中心の重い物質が、この重力を作り出しているんだ。

   そして、あの鳥だが、奴らは重い物質で出来ているので、通常の
   物質は、我々に取っての気体くらいなんだ。やすやすと通り抜けて
   行く。その時に、さっきの震動が起きるんだ」

「鳥が、我々自身を通過したら、どうなるんですか?」
「いや彼らは、通常の大気の範囲は飛ばない。彼らに取っては、
   真空の様なものだから」


この惑星の、特産は催眠誘導剤だ。この惑星で繁殖させた薬草から出来る貴重な薬。
私は、マイケリーナに薬草園の説明をしながら、突然、思いついた。

「なんで、こんな簡単な事に気がつかなかったんだろう!リーガン、早速、
   催眠誘導剤を5000アンプル用意してくれ。ブレイクスリー界効果に効く方法がある!」

「フィル部長、既に試したじゃないですか。催眠誘導剤の量を多くした幻覚効果で、
   ブレイクスリーの不快感が緩和出来ないかって。結果は失敗でしたよね」
「いや、違う。我々は間違っていたんだ。我々は、遠く離れた地球の風習を、
   ここに持ち込んだ。16時間起きて、8時間寝ると言う奴だ。しかし、
   そんな時間が、ここで何の意味がある。
  
   ブレイクスリーの間だけ寝て、通常時に起きていると言う、サイクルに
   合わせて、生活をすれば良いのさ。寝ていれば、何が見えようが気にならない!
   何でこんな事に気がつかなかったのだろう...」

これで、気が狂う心配はない...しかし、出発の前日とは。


「フィル部長、うまく行きましたよ。土台が鳥に壊されません!」
「一体、どうやったんだ?」

「え?部長が言ったじゃないですか。見えない素材を使ってみろって。試しに使ったら、
   鳥の奴、真空は嫌いなんで、地震は全く起きません。大成功です!」

リーガンは、勘違いし易い奴だが、それがうまい方に転がった。人生こんな事もあるもんだ。


仕事も終り、私は、マイケリーナと談笑していた。もうすぐブレイクスリー界効果の始まる時間だ。

ふとしたきっかけで、私はマイケリーナと見つめあい、思わずキスしてしまった。
「すまん」
私は、とっさにマイケリーナから離れた。
「どうして、謝るの?貴方には奥さんがいる訳じゃないでしょ?
   私は、5年間、貴方の事を思って、やっとここまで来たのに」

「いや、私は、もうこの職を辞任した。今日が最後の日なんだ」
「!!!」

すべてが、うまく言ったのに、ここを立たないといけないとは...


その時、リーガンが部屋に入って来た。
「部長、これから、みんなでうまく、やっていけますね」
「ああ、私の後任と、うまくやってくれ」

「??何の事です」
「君に頼んだ、辞任の話( I Quit)の後任が来るのが明日なんだ」

「I Quit ?私は、てっきり、あなたが、アイク ウィット、つまり、彼女の弟を呼んだんだと
   思ってましたよ。地球には、そう伝えました。だから、アイクが来るんです。19日、明日ですよ!」


「そうかあ!!」
私は思わずマイケリーナを抱きしめた。彼女の背中の向こうのリーガンの顔は
黄色いサルに変わっていた。ブレイクスリー界効果が始まった様だ。

足の下では、床が揺れ、あっと言う間に事務所は崩れ落ちた。
落ちてきたトタン屋根から、顔を出した私は、叫んだ。

「この星は最高だ!」


..............

「ダジャレ落ち」、と言う訳ですが、最後の状況から、「トタン落ち」の可能性も否定できません!

記:2011.09.09

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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