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空想科学小説ベスト10 - 荒地出版社(1961)
空想科学小説ベスト10


黒い破壊者 Black Destroyer / AEヴァン ヴォグト AE van vogt 訳:高橋泰邦 の あらすじ

<始めに:ちょっと長くなるかも知れませんが、お付き合いのほどを。
   この作品は、細部にこそ、神が宿っておりますので>

クァールは飢えていた。最後に、イド(生命エネルギー)を食べてから、
随分と立つ。この巨大な猫のような姿に、強靭な前足、爪を保つ食料!

クァールの星は滅亡へと向かっていた。既に、生きているものは殆どいない。
イドは食い尽くされ、クァールの求める食料は枯渇していたのだ。

その時、クァールは、空から、金属の球体が降りてくるのに気が付く。
見ていると、中から、弱々しい生物が、ぞろぞろと降りて来た。

イドだ!とクァールは思った。あれを食おう!クァールの喉が鳴った。
しかし、注意が必要だ。奴らを観察する。あれは調査隊に違いない。
ならば、手持ちの武器は少ないだろう。しかし、うまそうな奴らだ。


調査隊のマートン隊長は、先ほどからこちらを見ている、大型のネコ型動物に気づいていた。
「あの腕を見ると、近寄りたくはないな」
「しかし、知的生物かも知れませんよ。手があれば、この星にあった、
   あの都市の住人かも知れません」

近づくと、その動物の方も、興味をを持ったらしく、探査船に近づいて来た。
「どうします。入りたそうな顔をしてますよ」
「無理だろう。この星の大気は、塩素が28%。地球の酸素の代わりが、
   ここでは塩素なのだ。酸化ではなく塩化が、ここでの燃焼なのだ。我々にとって
   塩素が猛毒の様に、彼らには酸素が猛毒だろう」

しかし、クァールはそのまま、開いた第ニ気門から、入って来た。
「こりゃ驚いた。彼らは塩素にも酸素にも対応できるのだ。素晴らしい!」

クァールが中に入ると、後ろで気門のドアが自動的に閉まった。
クァールは閉じ込められる!、と思い暴れた。

「しまった。奴は捕まると思ったんだ。開閉スイッチを切れば良かった」
「しかし...奴の力、すごいですよ。あの腕で、部屋の金属をぶち切り、
   壁を変形させました...おそろしい力です。注意に越した事はありません」

クァールは思った。
(しまった。大人しい動物と思わせておけば、この後やりやすかったのに...失敗した)


マートン隊長は天文学者のガンリーに聞いた。
「この星は立派な都市があるが、図書館調査隊によると、宇宙旅行はできなかったそうだ。
彼らは宇宙に興味がなかったんだろうか?」

「ああ、それは簡単だ。この星には、月がない、ちっぽけな太陽の惑星はここだけ。
   もしも彼らが他の惑星へ行こうとしたら、いきなり隣の恒星系へ飛ぶ必要がある。
   地球人の様に、月、火星、金星、木星、と順々に宇宙旅行をする誘引が、
   彼らには無かったのだよ」

この調査隊には優秀な科学者が数多く乗っている。
彼らの頭脳に寄れば、宇宙の秘密は、次々と明らかになって行くのだ。


クァールは捕食活動に入っていた。金属壁を抜け、街の廃墟に潜った。
そこには、銃を持った調査隊員がいた。

クァールは、その体に一撃を加えると、その体から開放されたイドを吸い、宇宙船に戻った。

「一人歩きは危険だな」
マートン隊長はジャーベイのゼリーの様に潰された体を見て言った。

ジャーベイと同室のケントは言った。
「あの猫の仕業に違いありません」
「しかし、あいつは、ずっと宇宙船の中だった。それにこの死体には食われた跡がない」

「きっと殺してから、酸素呼吸生物の肉が口に合わないと、気づいたんですよ」
「しかし、疑いだけで殺すわけにもいかん。奴と同型は見つかっておらん。滅亡星の
   貴重生物だからな」

考古学者の日本人コリタは言う。
「この星の都市建設を見ると、彼らは優れた芸術家です。しかし、そこで文明は終焉
   しています。その最盛期で。この様な種族の場合、彼らは利欲のためには兄弟も殺す
   冷酷な殺し屋のはずです」

ケントが言う。 「つまりジャーベイの死体は、何かを奪う目的で、殺された訳ですね。すると、この
   死体からは、何かが奪われているはずだ。私はそれを調べます」


クァールは監視下に置かれた。その間、クァールはネコの様にゴロゴロと昼寝に
いそしんでいた。

「判りましたよ。奪われたものが! リンです。超科学的で方法で、リンは欠片も残っていません」

クァールは巻きひげを振るわせた。
ケントが震動銃を持って近寄って来たのだ。

ケントはいきなり震動銃をぶっぱなした。
「やめろ!」

マートン隊長はケントを制した。
クァールはケントに襲いかかろうとしたが、止めた。

「銃は当たったのか?」
クァールの体は傷一つなかった。
「いや、当たりました。しかし、こいつには震動銃は効かない様です」


探査船は飛び立ち、次の星へと向かう。
その夜、クァールは巻きひげを振るわせた。人間達が居眠りしているのが判った。
クァールは行動に出た。

7つの部屋に、7つの死体が転がった。
クァールはイドを浴びる様に貪った。

そして、その数が12に成った時に、非常警報が鳴った。
クァールは戻った。


マートン隊長は、驚いた。これほどの大量殺人は、これまで起こった事はない。
「奴のしわざですよ」
「しかし、奴は4インチのマイクロスティ−ルの部屋に閉じ込められていた。
   中には傷一つない」

スミスが言った。
「隊長、私はこのネコに蛍光撮影機を当てました。しかし、それだけで、奴は
   飛び上がったのです。震動銃の影響を受けなかった事からも、こいつは、震動を
   自由に制御できるのだと思います」

「震動を自由に制御出きるって?それじゃあ、我々の体を一気に殺す様な震動波を
   出す事だって可能だろう。それを阻止する方法はないぞ」
「しかし、奴はそれをしない。つまり、奴も無敵ではなく、弱点があると言う証明だ」

「つまり、電気錠などと言うものは、全ての震動を自在に制御する奴には、
   全くの無意味なのか。それなら、奴の部屋のドアを開けて、熱線で焼き殺すのみだ」

「待て。この部屋は床に電流を流し、中のものを殺す事が出来る。スイッチを入れろ」
   床電流のスイッチが入った。しかしヒューズが飛んだだけで、電流は流れなかった。

「ちくしょう!ネコの野郎、床の構造まで変えられるとは、まるで無敵じゃないか!」
「無敵ではないさ。変える必要があったと言う事は、電流攻撃には弱いという証拠だ。
   また熱線攻撃を考えた我々の心を読んで、逃げたんなら、熱線も致命的なのさ」


ガタンとクァールの部屋で音がした。
「奴は、我々の話も判るようです」

「ここまで、来ると奴も必死だ。一人でも多くの人間を殺そうと思っているかも
   知れない。ともかく、奴は危険だ。即刻始末しよう」

その時、宇宙船は、急加速した。隊員達は、壁に叩き付けられた。

「ネコの奴、機関室に入り込んだぞ」
隊員たちは、加速度調節機構の付いた宇宙服を着た。

機関室に行くと、壁に大きな穴が開き、さらに埋められていた。
「10トンハンマーでも傷一つ付けられない、この壁に大穴を開け、さらに
   説明できない方法で埋めるとは! 奴は震動で原子を制御する事も出来る様だ!」


「この船は、今、奴の手中にある。この船が乗っ取られたら、情け容赦ない奴は、
   銀河系に侵略を始めるぞ!」
「まあ、待て。まだ奴は制御室を支配していない。いざとなれば、我々は機関室の
   電源を切る事が出来る。勝負は5分さ」

叡智を結集し、ネコに対し、攻撃を始めるのだ。

マートンは原子力分解機で、機関室の壁を破る。しかしネコは震動を制御し
それの邪魔をする。

ペノンズは制御室から各エンジンを周期的に停止させ、ネコの妨害行動を邪魔する。

ガワレイは可動式銅カップから、力の震動エネルギーを浴びせる。これもネコの
行動を分散させる試みだ。

そしてセレンスキーが、様々な妨害行為でネコが混乱した所で、加速制御を切る。
宇宙ロケットを持たなかった彼らが、あの衝撃を始めて経験したら、奴は激しく
混乱するに違いない!

最後にコリタが言う。
「我々は、奴の驚異的な力に驚きましたが、恐れる事はありません。奴は、彼らの
   歴史文明を見ればわかる通り、まだ原始人なのです。数時間前に起こした大量虐殺と言うヘマ、
   この宇宙船に乗る時に見せた混乱振り、全てがそれを証明しています。
   ここ宇宙空間で、原始人が、どこまでの事ができるでしょうか?冷静になりましょう。
   勝利は我らの手に、必ずあります」


クァールは、原子力分解機が厚いドアを壊しつつあるのを、せき止めていた。
同時に、機関室の設備を外し、組み立てて、金属板を接合させ、外壁を作った。

クァールは、ここの部材で、脱出用の、小型宇宙船を作っていたのだ。

母船機関室の外壁を砂のように瓦解させると、クァールの小型宇宙船は、
空間へ飛び出した。このまま、彼の星へと戻るのだ。

あそこに、戻れば、隠れる場所もある。この宇宙船を調べ、自分達の宇宙船を
再構築する事も簡単だ。そうして、宇宙へと進出するのだ。

正面に見える、赤みをさす球。あれが、彼の惑星の太陽だ。
振り返ると、人間どもの母船が、腹に大きな穴を開けているのが見えた。
クァールは、太陽を目指し飛んでいく。加速を続ける。

母船も遥か彼方に消え、目指す太陽は、遠くに見えた。
しかし、いつもでも近づかない。むしろ小さくなって行く。
クァールは混乱した。なぜ、太陽に近づかないのか?

クァールが不安を感じていると、前方に、輝く球体が見えた。

太陽か?

しかし、それは急速に大きくなり、クァールが、それが人間の母船だと気づいた
時には、既に彼の体は、原子分解光線によって、破壊されていた。

「哀れなネコめ。俺達の母船は、ワープ、急加速、瞬停止、何でもできる。
   加速度システムの事も何も知らなくては、この宇宙空間で、勝負に勝つ事は不可能さ。
   たとえ、どんなに優秀な身体的能力を持っていたとしても」
「そして、彼を破ったのも、我々の個人的能力ではありません。
   人類の歴史。これが、奴に打ち勝ったのです」
考古学者コリタは日本人らしい、礼儀正しさで、そう付け加えた。


..............

え〜っと。こんなんで、良いでしょうか。最後の勝負の細かい所は、
正直言って良くわからんのです。(ヴォウトにありがちですが)

ま、しかし、こちとらファンなので、全然、構いません。勢いです。

しかし、「奴は無敵だ!」「いや、それこそが、弱点のある証だ!」
のくだり、シビレます!

記:2011.09.05

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三分 小説 備忘録

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