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空想科学小説ベスト10 - 荒地出版社(1961)
空想科学小説ベスト10


時を越えて Elsewhen / ロバートAハインライン Robert A Heinlein 訳:田中融二 の あらすじ

自宅に来た5人の学生の失踪事件で、拘束されたフロスト教授は、警察の護送車から逃走した。

その逃走の方法もまた、不可解なものであった。護送車内部から、忽然と消えたのである。


「お言葉ですが署長、私は教授から目を離していませんよ。教授の目の前で、
   手帳にメモをした2、3秒の間に、教授は消えてしまったんです」
「なるほど、同じ説明を、新聞記者の前でもしてみい。どれだけブーイングが来るか」

「しかし、本当なんです」
「それで、一体、何を手帳に書いたんだ」

「私は教授に聞いたんです。学生達は、見つかるか?って、それに対する答えがこれです」
彼の手帳には、こう書かれていた。

『 in Time 』(意味は『そのうち』、言葉だけ見れば、『時間の中に』)

「そんな回答で、犯人を逃がしたんじゃしょうがない」


フロスト教授の純理形而上学ゼミが開かれたのは、4日前の土曜日。教授の自宅でだった。
参加したのは、ハワード、ヘレン、ロバート、マーサ、エステル。

「時間が第四次元だと言うなら、第五の次元があっても、おかしくないんじゃないかね」

工学部のハワードが答えた。
「第五次元を仮定する事は可能です。しかし、我々が、その次元を認識できない以上、無意味
   な存在と言わざるをえません。有っても無くても同じ物を議論するのは、時間の浪費です」

「ウスペンスキイの多次元時間論は、どう思う。間違っているかね」
「間違っている、とは言えませんが、認識できない物の原理を語る事は、たわ言です」

「君の論理は極めて、もっともで、明快だ。しかし私は、ここで時間二次元論を取ろうと思う。
   具体的にはこう考える。
   我々の今感じている、過去から未来への時間線、これが1次元時間空間だ。
   ここに時間平面を考える。先程の時間線は、この平面に引かれた線だ。
   ここに曲線を書く。これが新たな時間線だ。この時間線は、元の時間線とは、
   流れが違い。またある箇所で、交差し近道を作っている。ここを通ると、数百年を
   一気に移動する事さえある」

「しかし、実際には..」
「では私の実際の経験を話そう。私は、大学を中退し、会社を起こした。しかし詐欺罪で
   有罪を受けて刑務所に送られた。それは、1958年の事だ」

「1958年?1938年の間違いですか。今年は1941年だと思いますが...」
「いや、1958年だ。こことは別の時間線での出来事なのだ」

「そして、私は、元の時間線に戻った。今度はヘマしないように、大学教授になったのだ」
「教授はどうやって時間を遡ったのですか?まさかタイムマシン??」

「いや、仕組みは極めて簡単だ。精神力で可能なのだよ」
「回転する玉を使い、睡眠状態に入り込むのだ。やってみるかね?

「先生、僕がやってみます」
ロバートが手を上げた。続いてヘレンも。
結局、全員がこの実験に志願した。


博士は、時間移動中の状態記録のために、マイクロホンを立て部屋の音を全て録音した。

天井に回転する玉が吊るされ、スポットライトで浮かび上がった。
5人は椅子に深く座り、教授は出て行った。

30分後、教授が戻って来た。
ハワードが教授に声をかけた。
「教授、失敗ですね。別の時間線へなんて、行けませんよ」

「しかし、行けないのは君だけのようだ」
ハワードが見回すと、他の4つの椅子は、もぬけの殻だった。

「こんな事が、起きる訳が無い!」
「実際に目で見たものは、信じるべきだと思うがね」

「僕はエステルと一緒にいたかったのに!」
「結局、君達、工学者は、マーサのような宗教者と同じだな。マーサは全てを
   神のお心で説明する。君も、君の知っている科学で全てを説明する」

その時、空中に女の姿が浮かび上がった。戻ってきた様だ。
「君は..マーサかね?」
「マーサ。そう呼ばれていた事もありました。
   今の私は、主のみもとへと遣わされたのです。地上の子よ」

「マーサ...いや、今は聖マーサ。エステルはどこに行ったか、知らないかい?」
「知りたければ、祈りなさい。汝の隣人を愛すのです。では、私は、神の元へと戻ります」

マーサか、聖マーサ、または、元マーサの天使は、消えて行った。


廊下で音がした。行ってみるとヘレンがいた。服は擦り切れ、ボロボロだった。

「私が着いたのは、酷い世界でした。空気は希薄でアルカリ性。太陽は二つありました。
   都市に下りると、そこで走っていたのは、タイヤが50個もある車。住んでいる生物も、
   帰命で、うす気味の悪いものばかりでした。あんな物を、神が作ったとは信じられません
  
それから、時間線を移動する方法を得ました。移動した所は、地球の様でした。
   しかしジャングルばかりで、人間がいないのです。ようやく私が出会ったのは、
   ネアンデルタール人のような、一緒に暮らそうにも、臭くて、臭くて、耐えられませんでした」

「そして、帰って来たのか」
「いえ、その後、別の時間線のニューヨークに移動したのですが、人々がみな、逆に歩いて
   いるので、驚きました」
「それは、時間エントロピーの逆行現象だ」

次に帰って来たロバートは、行った先での戦争に勝つために、地球の兵器の作り方を調べて
戻って行った。

「エステルは、どこだ?」
教授はエステルを探すために睡眠状態に入った。
エステルの事に思念を集中させると、神殿の丘、神々の道、そして、修道女の森へと移動した。

そして、エステルを見つけた。

「エステル、もう帰る時間だ」
「エステル?私の名前はスターライトです。あなたは私の夢に出てくる、
   私に知恵を授けた教授ですね」

「君の事を待っている青年がいる。夢に出てくる青年の事を覚えているかい。
   ハワードだ。彼が待っている」
「夢の男の事は覚えています。しかし、私は戻りません」

教授は戻った。
ハワードは教授に、エステルの事を聞いた。

「エステルは、戻らんと言うのだ」
「では、今度は、私が行きます」
ハワードはエステルの元へ旅立ち、戻って来なかった。


5人が失踪し、教授は警察に、説明を求められた。
しかし、説明は、なかなか困難だった。

教授は、何度も彼らを探しに出た。
そこで、教授は、女指揮官のヘレンや、その部下のロバートに会ったり、

スターライトと同居しているハワードに会ったりした。

しかし、彼らは、誰一人、元の時間線に返ろうとはしなかったのである。

既に彼らは、その時間の人となっていたのである。


教授は思う。私が消えた時、担当刑事はどう思うだろう。
きっとこうだ。

ま、そのうち、みつかるさ。 in Time


..............

ジョウントって事なんでしょうか。
ただ、こう言う精神ジャンプって言うのは、
ハインラインの作風には、本当は合わない気がするんですが、
どうでしょう?

で、キーワードになる、in Timeですが、この訳では、訳注として「そのうち」と「時の中に」の
ダブルミーニングってありますが、最近の訳はスマートで、こう言う所をきちんと説明して、くれないような
気がするのは、私だけでしょうか??(なんでタイトルは Elsewhen なの?)

で、関係ありませんが、"In Time"って言う曲が Sly & Family Stone の傑作アルバム "Fresh" の中に
入っているのですが、これが、史上最高ファンク チューンです (本当に、関係ないわ!)。

も、ひとつ、オマケに。2011年10月に、In Timeと言うタイトルのSF映画が公開されるそうです。
貧乏人が、血ではなく、時間を売って生きていく話らしいです(だから、どうしたあ!)。

記:2011.09.02

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三分 小説 備忘録

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