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シティ5からの脱出 - 早川文庫
シティ5からの脱出


過負荷 An Overload 1973 バリントンJベイリー 訳:岡部宏之の あらすじ


彼らは、実体ホロモニター越しに会議を持つ。
モニターは6台。

フランク シナトラが言う。
「俺の意見を聞きたいかい。つまらん意見だがね」

ハンフリー ボガートは答える。
「話し合う価値はあるさ。最近の新興勢力、カルナックについては」

ジェームス ギャグニーは言う。
「レーガンのように、落ちぶれるさ」

バート ランカスターとシュルツは笑った。


垂直地下鉄は、放棄された中央行政府を通過した。
オブジエは、空中都市スープラバーグから、自分の世界へ戻って来た。

この街は、かつて、メガポリスと言う一つの都市だった。
しかし、いまや分裂している。

空中と地中に。

分裂は永きに及び、今や、言語、風習も異なっていた。

政治参謀オブジエは、同僚のメティックに言った。
「彼らの、生活様式には、どうも慣れない。実体ホロを全く使わないし
   (技術は全て握っているくせに)、民主主義でもない。貴族制とでも言えば、よいのか」

オブジエはカルナックのオフィスに入った。

オフィスは選挙対策の最中だった。
彼が今取り組んでいるのは、アンダーポリスを支配するビジネスシンジケート、シンの分析だ。

シンの経営陣の一人、フランク シナトラの資産一覧が、スクリーンに表示されていた。

カルナックがやって来た。

オブジエは言った。
「カルナック、残念ながらスープラバーグは実体ホロの設置に資金を出す意思はおりませんでした」

「そうか、超大都市の選挙戦で必要なものは、実体ホロだ。普通のホロではダメだ。
   シナトラやランカスターは有権者の居間に現れて、投票を訴えるのだ。私が使える普通のホロでは
   まるで、幽霊が現れたに過ぎん」

「それに、実体ホロの製造・使用の権利は、全てシンによって独占されています」
「なるほど、ではそれを利用しよう、シンは実体ホロの権利を独占している。
   反民主主義的行為だ。これを選挙の争点にするのだ」

オブジエは精神安定剤を飲んだ。
スープラバーグで見てしまったのだ。宇宙へと船が発射して行く所を。

地中育ちの彼にとっては、それは恐怖以外の何者でもなかった。
彼は、もう二度と、スープラバーグへ登る事には耐えられないだろうと思った。


シンへの対抗策を練るため、オブジエは、この世界について、改めて調査を行った。

サイブレーション、現代都市を制御・維持するために必要なもの。かつては、コンピュータと
呼ばれたものが、進化しサイブレータとなった。それが現在の技術の根幹である。

もう一つの現代文明に必要な技術、実体ホログラム。
かつては、普通のホログラムが完全な技術だと思われていた。
たしかに、それらは実物と差はなかった。

しかし、何かが違うのだ。そして誕生したのが実体ホログラム。
実体ホログラムは、実在感を持つようになった。

そして、それはシンが独占し、政治的に利用されている。

そんな事を改めて調べていると、オブジエ達は、奇妙な事に気がついた。
フランク シナトラと言う名前の、歌手がかつて生きていたのだ。
はるか昔、しかし同姓同名、同じ顔。

フランク シナトラは、この昔の歌手を自己の姿形としたのだ。

そして、判った。シンの首脳陣は、単純な人間ではない。
シナトラの顔は、大衆と接触するインターフェースであり、その実体は
サイブレータだ。個々のグループ企業を経営するサイブレータが、あの経営陣なのだ。

バート ランカスターも、ハンフリー ボガーも、ジェームス ギャグニーも。
そして、ロナルド レーガンさえも、大昔の俳優だったのだ。
ただ、シュルツだけは、役者ではなく、本物のギャングだったようだが。



カルナックの所に、シナトラから連絡が来た。
実体ホロの使用を、認めると言うのだ。

カルナックは勝ち誇り、実体ホロ用の放送スタジオに出向いた。

放送は始まった。 「市民の皆さん。私はカルナックです」

彼の実態ホロが各家庭へと中継された。また、その反応が、カルナック本人に戻って来た。
何百万もの意識が戻り、カルナックの精神は過負荷状態になった。

数秒後、彼は、"破裂"した。


実体ホロによるイプセイティ通信は、双方向である。
実体ホロが、シンの経営陣にしか使われない理由はこれであった。

何故、彼らが、各家庭にホロ送信されて、それぞれの家庭で適切な、対応ができるのか。
それは、サイブレータの高速情報処理の能力と、無限の記憶域による。

人間が為しうる事ではないのだ。

「シンの役員は人間ではない。これを知った我々は、命を狙われるぞ」
「ああ、しかし、どこに逃げる。このアンダーメガポリスに逃げ場はないぞ」

「と言っても、空中都市スープラバーグも御免だ」
「ああ、我々の精神には、植えつけられているんだ。空や宇宙を恐怖する精神が
   それは、シンのサイブレータが持っていあた恐怖さ」



..............

豊富なアイデアと、であるが故の破綻、斬新であるが故のとんちんかん。
ベイリーの小説には、色んな要素が詰まっております。

それにしても、ハリウッドスターのアイコンに仮託された会談。
今、思うとエヴァンゲリオンのエルフの会合みたいですね。

しかし、シナトラやボギーはともかく、バート ランカスターや、ジェームス ギャグニー
と言う所が、何とも古臭いですねえ(?)

記:2011.07.25

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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