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シティ5からの脱出 - 早川文庫
シティ5からの脱出


ドミヌスの惑星 Mutation Planet バリントンJベイリー 訳:浅倉久志 1973の あらすじ

[ドミヌス]は自分の王国を調べていた。体重は1000トン。惑星中に張りめぐらされた
高速道の上を、時速100キロ以上で、駆け巡る。
この道路は、彼の分泌した有機物で、惑星中のあらゆる箇所の不具合は、
即座に彼の感知するところとなる。

視察の間、時々、電磁パルスを感じる。有力な生物からの恭順の証だ。
[ドミヌス]は視察しながら、反進化物質を、世界中に巻き散らす。


その時、[ドミヌス]は 見た。空から大きな物体が降りてくるのを。
そして、思う。

(あの生物は、どこで進化したのか?かつて空中にいた生物は、全て死に絶えた。
   この惑星の辺境で進化したのか? でないとすれば、この惑星の外からか?)
[ドミヌス]は、その生物に関心を向けた。

地球人エリオットは、惑星ファイヴの調査隊に参加していた。

調査地のメンバーは、
細い枝のような異星人バルベイン。
骨の塊のような異星人アブラック。
調査員のくせに何もしない種族ジード。
そして、地球人女性のアラニーだ。

[ドミヌス]は、彼らが、この惑星ファイヴの支配者に付けた名前である。

しかし、地球人以外の異星人達は、全体的に、この探索に興味が薄い様だ。
熱心なのは、エリオットとアラニーだけ。

今日も、エリオットは、ようやく苦労して捕まえた(ドミヌスのおかげで)
クモ生物に実験を行っていた。アブラックは興味を持ったのか、この実験に参加した。

クモ生物を頑丈なケースに閉じ込め。様々なストレスを与える。
ここから、どうしても逃げ出したくなるような。

そして、彼らの反応見るのだ。クモ型生物は、色々な抵抗をしていたが、
それが無駄と判ると。子供を産んだ。

スリッパの様な生物だった。
親とは全く、似ていなかった。

「さあ、生まれたぞ。こいつは、何を見せてくれるのか?」


惑星ファイヴは、奇妙な惑星だった。
すべての生物が、一匹しかいなかった。

セントラル ドグマ、をご存知か?
ケストラーが20世紀に提唱した遺伝学における基本定理。

遺伝子と体細胞の関係は、一方通行である。
遺伝子の変化は体細胞に影響を与えるが、体細胞の変化=獲得形質は遺伝子に影響を与えない。
遺伝子の変化は、化学変化や放射線による、統計的な偶発により変化するのみなのだ。

なぜか?

良い獲得形質を子孫に伝える事ができれば、生存上有利な位置に立てるはずだが、
その判断ができるほど、遺伝子自身に理解する能力はない。

それは、高等生物になって初めて理解出きる事であり、原始生物と、同じ遺伝子構造を
利用する以上、知性=判断力が介在した遺伝構造は。無理なのである。

この、基本定理は、地球だけでなく、バルベイン。アブラック、ジードの星でも有効だった。

しかし、この星、惑星ファイヴだけは異なっていた。
彼らは自己の意思により遺伝情報を変え、進化するのだ。


その進化たるや、すさまじい物である。
調査隊は始めに、土着生物を捕まえ様として、その事が判った。

足の速さ、牙、爪、針、毒、電撃、ガス、低周波、腐食剤、弾丸、果てはレーザー光線まで!

彼らの武器のバリエーションは凄まじかった。これも自由進化の結果だ。

クモを捕らえることが出来たのも、実は彼らの実力ではなく、調査隊の行動に、興味を
持ったドミヌスが、クモ生物を失神させてくれたからだった。

さて、新しく生まれたスリッパ生物は、どんな方法で逃げ出そうとするのか?。

30cm厚の炭素とチタン合金部屋中に閉じ込められたスリッパ生物の様子は、
モニタリングされている。
初め、スリッパ生物は、じっとしていたが、やがて、壁際まで移動すると、先端から光を出した。

それは見る間に、灼熱の灯となり、宇宙船の外殻までの穴を開けた。
スリッパ生物は、逃げ去った。

「ありゃ、核融合ビームか、それに匹敵するものだ!」

「捕まえましょう」
アラニーが、宇宙船から飛び出した。

「危険じゃないか?」
「大丈夫、たぶん、またドミヌスが手を貸してくれるわ」

スリッパ生物の逃げる先に、ドミヌスが見えた。
アラニーは、「止めて!」とジェスチャーを、送った。

しかし、ドミヌスの行動はスリッパ生物を止める事ではなかった。
触手を伸ばし、いきなりアラニーを、かっさらい、吸収したのだ。

飛び出すエリオットをアブラックが押しとどめた。
「無理だ。もう生きてはいない」


ドミヌスは既に、空から来たものは、中に乗っていた生物の建造物である事に気づいていた。
この星では、進化して、自分を変えた方が楽だ。誰も工作などはしない。

そして、不思議な中の生物に興味を持った。
アラニーを調べて、わかった。

この生物は、自分と同じ物を作り出す機能しか持っていない。
つまりは、半完全生物。
「もどき」だ。

複製された、コピー品。
きっと、本体は、彼らの惑星に居て、このコピー品を、ばらまいているのだろう。


「アラニーを取り戻す!または、ドミヌスを殺す!」

アブラックは、地球人エリオットの狂気じみた考えにうんざりしていた。
明らかに、アラニーは死んだのに、それを認めない頑迷さ。
(彼らに理性はあるのだろうか?)

何の意味もないのに、殺した相手を、逆に殺すと言う、不可思議さ。
(復讐??この無意味な行為を行うものは、正常な神経を持っていると言えるのか?)

「みんな!俺に協力しろ!」

バルバインが言う。
「エリオット、生物の知性や価値観は、それぞれ異なるのだよ。
   連帯などと言うものは、ありえない。君たちは宇宙の中でも、特段、変わった精神の生物だ。
  
まず、君たちの探究心。これは特別だ。我々は、みな、それぞれの目的のために、
   探検をしている。しかし、君たちはちがう。探検そのものがしたいのだ。
   だから、何にでも首を突っ込む」

   「じゃあ、君は何のために、宇宙を探検しているのだ?」
「われわれの種族は、我々を支配してくれる支配者を探しているのだ。極めて強い生物。
   我々を支配し、屈服させる、そんな素晴らしい生物を探している。そして、私は、ここにいる
   ドミヌスがそれでないかと思っている」

「馬鹿らしい!なぜ、支配されたがるんだ」
「それが、我々の生物としての根源的な欲求だ。君たちとは理解し合えんだろうね」

「何故、君たちは、独立し、開拓し、科学を、知識を得て、前へ進む。
   そう言う事に、興味を持たないんだ?」
「たぶん、そんな事を思っているのは地球人だけだろうね」

「なぜ、君たちのような、科学的探究心のない生物が宇宙船を持つまでに進化したのだ?信じられん!」
「進化は、その生物の意思ではなく、偶然の積み重ねによると言うのが、ケストラーの定理じゃないのかい?
   早い遅いの問題で、やがては、ある確立で知的生物は生まれ、やがて宇宙船は誕生するのさ。それは地球人の
   持つ、知的好奇心や情熱からじゃない。偶然からさ」

「我らアブラックの種族の最も崇高な生き方を知っているかい?それは異常な死に方だ。地球人には
   想像もつかない程、劣悪な環境で我々は、ゆっくりと進化して来た。それが、我々の種族の意識に、
   死によって、肯定される文化を作り出した。そして平凡でない、独創的な死に方をした者は賞賛
   される。私は、このドミヌスを挑発し、我々の星を攻撃するように進化させる事が、我が種族に
   とっての素晴らしい死に方だと思っている」

「種族の滅亡が、君の理想なのか?」
「どの種族も自己と言うものの特質が、宇宙の隠された意味と思うものだ」

「ジード。じゃあ君は何も求めているんだ?」
「我々が求めているのは無だ。アブラック達よりも、我々は更に、生まれてしまった事に罪悪を
   感じている、そのため、我々の種族の存在自体を消してくれる生物。つまりタイムマシンを
   作る事が、我々の種族の最大の目的だったのだ。しかし、自力で作り出すことは出来なかったので
   宇宙のどこかにいる、タイムマシンを作った生物を探しているのだ」

「どいつも、こいつも死にあこがれやがって!だからアラニーの死にも冷淡だったんだな!」

「我々の星では、新生児を、そのまま殺してしまう事は、彼を生の苦しみから解放する、
   よい行いなのだ。私が思うに、地球の、特に、哺乳類というのは、極めて興味深い生物だね。
   過剰に発達した保護本能、その感覚が知識への偏愛を生んだ。実に興味深い」

「地球人の生き方こそが、理想的だと思うがね」
「君たちの、その考えは地球上では成り立つが、宇宙に出て、どう思うかね。愛など無いこの闇。
   あまりにも異質ではないかね。この闇が我々、地球人以外の生物の棲む環境のなのだ」

エリオットは、宇宙船を飛び出した。


ドミヌスは、宇宙船から、例のもの=奴隷生物=もどきが現れたのを、発見し、
それを捕獲、吸収した。続いて出てきた者達も、次々と捕獲、吸収した。

そして、思う。やがては、こいつらの本体が、この星に来るはずだ。
彼は、防衛構想を練った。

そして、彼らから学んだ。「もどき」を大量に作り、配置すると、敵の侵攻を待ち続けた。


..............

どうですか、「もどき」のみなさん。
私は、この作品を始めて読んだ時は、ぶっ飛びました。

これこそ、俺が求めていたものだ。最高のSF小説だ!と。

今回、まとめて見て、やっぱり印象は変わりません。
最高の小説ですね。セントラル ドグマって言葉が、有名になっても。


そのセントラルドグマを有名にしたのは、エヴァンゲリオンで、悪魔の秘密の論理みたいに
扱われたからでしょうが、あの作品の脚本家さんも、ベイリーが好きだったら、うれしいです。

記:2011.07.23

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三分 小説 備忘録

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