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シティ5からの脱出 - 早川文庫
シティ5からの脱出


洞察鏡綺譚 Me and My Antronoscope 1973 バリントンJベイリー 訳:浅倉久志 の あらすじ

こんにちわアスムラヴァル。

今日は、君のとっておきの話があるんだ、いつも君の言う、宇宙は無限で、私の様な探検家なんて
意味がない、と言う、君への反論だ。
私が10の5298乗空間を、探索している時に出会った、二足歩行の酸素呼吸タイプの
生物の話さ。新方式の洞察鏡を使って、私が検察した結果だよ。


エルレッドは探査機を作り上げていた。宇宙を探査するための機械。この世界とは別の、
我々が居住できる空間。この世界は神によって作られた、と宗教は教えている。
ここが唯一の世界だと。

しかし、エルレッドと、その仲間達はその説には疑問があった。宇宙の果てには、
別の空間があるのではないか?と。
過去、幾つかの探検隊がそれに挑戦した。しかし、彼らは、宗教の正しさを示すように、
何も見つける事は出来なかった。

しかし、エルレッド達には自信があった。この機械があれば、宇宙を探索できるのだ。

その彼らの自慢の装置とは。

先端には、どんな岩盤をも掘り進む強力な、ドリル。船尾には、ドリルが掘削物を、
手際よく固める充填機。これならば、従来の装置のように、堀削物で貴重な、
都市の住空間を狭めてしまう事はない。

まるで、岩盤を突き抜けるように進めるのだ。
そして、その移動スピードも超高速、時速65kmである。

彼は、執行当局のエルグラッド局長に、この探検計画の承認を取りに行った。
局長は、彼のいいなずけファナリーンの父でもある。

エルレッドは、聴聞会で、説明を始めた。

現在の都市の直径は25kmの空洞である。人口は75万人、新しい空間を得なければ、
我々の発展はない。空間は生み出すことはできないが、別の空間を発見し、
それを移動させる事はできる。

(それに、もうひとつ、この無限に続く固体域、本当に、
   この個体域は無限なのか?果てはないのか?)


結論が出た。
「エルレッド。知っての通り、我々の住空間を侵食する岩盤掘削は、政府により厳しく
   制限されている。君たちが、実験と称し、その違反を行って来た事は判っている。
   また、君たちの企ては、過去行われ、我々の住空間を狭めて来た、探検と言う名の暴挙の
   延長である。よって、君たちの探検は却下された。また、君たちの装置も破壊される」

エルレッドは、友人エルトンと共に、穿孔機械が破壊される前に、飛び乗り、探検へと飛び出した。

穿孔機械を当局は即座に壊すことも出来たのに、手間取って、我々にチャンスをくれた。
我々を支持してくれる者が当局の中にさえいるのだ。もう後戻りはできない。

新しい空間を見つけて、帰るのだ。

この宇宙は、下に行けば、存在不可能な焦熱域へと、辿りつく。
上に行けば、通過不能域に出くわす。上は、何もない空虚な空間。霊の棲む領域だ。
そして、その上に神はおわす。
水平に、水平に、過去、何度か旅が行われているが、空間は見つけられていない。
それが、"唯一空洞の教義"の根拠だ。

神は、この宇宙に、唯一の空洞を造られた。
この他の空洞の存在を 信じる事は"異端"である!

神は、酵母に似た生物を作り出した。それが、我々に、酸素と栄養を与えてくれる。
人類は、この空間で、あの酵母から、進化したのだ。

しかし、それでは、酵母培養の前提となる、あの培養機を、作ったものは?
そのエネルギーを与える、原子力は誰が?

おそらく、我々は神により、本能的に、それらの知識を与えられていたのだ。

二週間ほど、掘り進み、二人が、ホームシックにかかっていた頃、
彼らはそれまで無言だった無線機から、警告の声を聴く。

それはエルグラッドの声だった。
彼らは、二号機を改造し、全速力で追って来たのだ。

また、遠隔の岩盤を破壊する目的で作られた振動ビームも搭載していると言う。

「すぐに停止せんと、振動ビームを使うぞ」

しかし、二人はジグザクに逃げ続けた。
やがて、轟音が聞こえ、ハンマーで殴られた様に機体が揺れた。

それでも、制御盤は大丈夫だった。
これを、何度かしのげば、敵機のエネルギーが消耗し、退却を迫られるはずだ。

次の大きな轟音で、二人は気を失った。

気がついたときは、掘削機は、動いたままだった。自動操縦を続けていた。
敵機は、あきらめたらしい。

機体は損傷していた。彼らは修理に明け暮れた。

更に数ヶ月が過ぎ、彼らは前方に、大きな震動源を発見する。

それは、岩石嵐とでも言うような、とほうもないエネルギーの震動で、
その中に入っては、ひとたまりも無い。
彼らは、前進を諦め、右90度へと舵を切った。

そして、不意にエンジンが停止した。
前方に空洞を見つけたのだ。

彼らは、そこに降り立った。
そこは無限とも思える空間だった。上下左右、岩がないのだ!。


さてアスムラヴァル。この話をどう思うかね?
この生物は、何かの原因で、惑星の地下に棲む事になったのだが、彼らはそれに
気づいていない。彼らの住んでいる辺りは玄武岩層で、その上を屋根のように覆っているのが
炭素鉄と、花崗岩の岩層だろう。
彼らは、惑星を同心円状に進み続け、何周もし、そこが無限であると勘違いした訳だ。


それにしても、彼らの"宇宙"における、固体と空洞の比率について、私は簡単なシミュレーションを
してみた。そこで判ったのは、彼らの宇宙の、その比率は、我々の宇宙の、その比率の逆数だったのだ。

つまり、宇宙の対称性を考えた時の、対称となる宇宙なのだ。

そこで、私は思う。

この我々の宇宙の果てを超え、いわば"中点"を過ぎると、そこは、対称宇宙、つまり、
彼らのような、反空間の中に、空間が点存しているような、そんな宇宙があるのではないか?

私は、この仮説を発表するつもりだ。
   −−−ウッソより

馬鹿話は止めて、早く帰って来い。これが、すべて君の作り話な事はわかっている。
   −−−アスムラヴァルより

親愛なるゴブ様、私の素晴らしい発見の事を聞いて下さい。
私が10の6248乗、固体空間を調べている時の事です。

私は、極めて大きな空洞を発見しました。
なんと、その平均直径は1600万kmにも及ぶのです。

勘違いされないように、もう一度言います。1600万kmです。
生物相も豊富で、特に周縁部の種数は数え切れぬほどあり、知的生物もいます。

驚くべきは彼らの宇宙観です。
これだけの、巨大空洞では万有引力のため、大気は周縁部に張り付き、中心部は真空です。

また、空洞の反対側の壁は、彼らには観測不能なので、彼らは、こう思っているのです。

宇宙は無限の真空であり、その中に固体は点在している、と。
私は、この奇妙な宇宙観を持った生物と、接触すべきでしょうか?
−−−敬意をこめてオウムより


親愛なる甥よ。
馬鹿話は止めて、早く帰って来い。父君なき後、お前の地所は荒れ果てるばかりだ。
   −−−ゴブより


..............


細かい所はなしとして、気体の中、液体の中に棲む生物がいるなら、固体の中に
棲む生物が生きても良い訳で、その場合の、宇宙観を描いている訳ですね。

ベイリーらしい作品だと思いますし、同じホラ話でも、アメリカもの(ラファティなど)
とは、アカデミックな感じが違います。あっちは、どうしても、笑いに走り、暴走し、
訳わかんなくなりますから。ま、ベイリーも、訳わかんなくなる所は同じかも知れませんが。

記:2011.07.19

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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