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シティ5からの脱出 - 早川文庫
シティ5からの脱出


シティ5からの脱出 Exit from City 5 バリントンJベイリー 1971 訳:浅倉久志の あらすじ

この公園からシティは一望できる。端から恥まで8キロ程度、その中に街路、オフィス、工場
、住宅、公園...その外周はクリスタルドーム。

200万人が住む、大都市。
みんなこの中で暮らし、一生を過ごす。

カイーンは天文台に行ってみた。
そして、空ではなく、街の外周を覗いて見る。

北−空白。南−空白。東も、西も。

シティ5は、闇の中のオアシスなのだ。

天文協会の会合が開かれていた。
「みなさん、本日残念ながら、会員のカイーンが退会しました」
(☆管理者☆ だじゃれじゃないです。偶然です!)

タムは続けた。
「先日、皆を代表して、私とカイーンが行って来た。外探索のビデオを見て頂こう」

ロケットは、シティを出て、その上でシティの概観を示した。闇の中に浮かぶシティ。
「これから、3光年で、ロケットは物質宇宙へと進む(ビデオは、1時間分カットされていた)

カットの後にカメラが映し出したものは、
光、渦巻き、もや、雲、ダイヤモンドの粉を撒き散らした世界だった。

「ロケットは、今、第一境界を超えて、物質宇宙に近づきつつある。
   第ニ境界は傍だ。しかし、それを超えてはならない。戻れなくなる」

「この物質宇宙は、理由不明で縮小を続けている。旧暦で5015年に、それは確認されたのだ。   このギャラクシーの直径は、推定5kmであり、光速度の異常変化が、確認されている」

「先人達は、この縮小するギャラクシーに、やがて訪れる破滅から逃れるために、挑戦した。
   最も困難だったのは、メタギャラクシーを越える時に、縮小場の界面を突破できない事だ。
   やがて1艘がそれを超える推進エンジンを持ち、外宇宙の環境を報告した。
   我々が今いる、この安定した空間だ。
   強力な推進力を持つ居住地シティが至急、建造された。しかし宇宙の収縮が進むにつれ、
   境界を突破するにも、更に大きな力が必要とされる様になった来た。
  
人々は、シティで外宇宙に飛び出した。しかし、多くは失敗し、今、ここにいるのは、
   シティ5の我々だけだ。ギャラクシー内の収縮率を考えると、既に、元々の宇宙は、
   生物の生存限界を、とっくに過ぎるまで縮小している」

そして、このシティに関する、様々な情報が説明された。
「第二境界は、光やエネルギーのみ通過させ、第一境界は、物質の通過に抵抗を示す」
「シティは永続的に自給自足ができる環境である」

「我々は、外宇宙での物質発見の目的で、長距離宇宙船を作り出したが、まだ見つかってはいない」
「このシティ5自体は、かつての物質宇宙の計測基準では1cm程度の空間である」


このシティ5を実際に統治している、短期委員会とは別に、
1年に1日だけ生き返り、指示を与え眠りに着く恒久委員会と言うものがあった。
これが、真のシティ5の統治者だ。

そのリーダー、コルドが目覚めた。彼は、シティに蔓延する危険な兆候に気がついていた。
芸術に女性的や保守的な要素が薄まり、男性的、急進的な傾向が強まったのだ。

シティ5が存在するのは、非物質の世界。そこでは、他に物質はない。
全てを内部で充足させる必要があり、保守的な方向性が、永続性をもたらす。

アボリジニが持っていた永遠の時間の概念を壊したのは、外からやって来た外人達だ。


進歩性は、社会を崩壊へと導く。
シティ5に政治警察が作られ、粛清や公開処刑が行われるようになった。

革命勢力は、地下で活動を進めた。武器を集め、革命の準備を進めていた。

コルドは革命勢力の代表クローと会談を持った。

「君たちが兵器を準備しているのは知っている。しかし、それを市内戦で使うのは
   このシティにとって、危険が大きい。シティ外部の空間で、決戦を行うではないか」
「わかった」

彼は、恒久委員会のやり方にも反対だったが、クロー達のやり方にも違和感があった。
シティ5から、兵器を積んだ、双方の宇宙船が飛び立って行く。

カイーンはガールフレンドのポーラと共に、深宇宙探索船で飛び立った。
このシティ5には戻れなくなるかも知れないが、非物質宇宙の果てを越えるのだ。

ニュースは、物質宇宙が、完全に収縮し、消え去った事を告げていた。

無の空間を進むロケット、彼はガラス張りの先端の直接観測室で多くの時間を過ごした。
2ケ月程過ぎて、カイーンの知覚は変質してきた。新たの刺激がなくなり、
幻覚や夢の原形質を感じる様になったのだ。

カイーンはそこで、ポーラとセックスに明け暮れる。
無の空間の中を浮かび、あらゆる行為にふける。

そして、彼は真理を得る。

物質の存在しないところには空間も存在しない。
虚無の空間ではロケットは、実は何処にも移動してはいないのだ。

彼はロケットをシティ5へと戻す。

そこで、彼らは発見する。

恒久委員会と革命勢力の、戦いの後の残骸が浮かんだ空間。
破壊された船。死体。爆発した破片。

そして、シティ5のドームにも大きな亀裂があり、その内部、空気のなくなった
都市に、おびただしい死体が横たわって、いるのを。



..............


つまりは、ダイアスパー、な話の訳ですが、傑作揃いの、この作品集の中の、
唯一の駄作でもあります(と、現在の視点で、私は思うのです)。

ダイアスパーと、"宇宙の膨張"から反転した、"宇宙の収縮"と掛け合わせ、
そこに、ビック ブラザーと反対勢力の話を持って来て、
映画バーバリアを、一さじ加え、
最後は、非物質の空間における、"移動"には意味があるのか?の問いと答え。

と説く辺りの、アイデアの充実振りは、ベイリーらしいのですが、
中心になってしまったエピソード、ビックブラザーと革命勢力との戦いの話が、
古臭いのです。
1年に一日だけ覚醒するビックブラザーを奉る不思議さ、
テロ的活動ではなく、シティ外での一騎打ちを受け入れる革命勢力。

これらは、流行外れの"お話"であり、
ベイリーらしい、思弁の結果の合理性に、かけております。

記:2011.07.17

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三分 小説 備忘録

  [どんな落ちだっけ?]




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