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ザ ベスト フロム オービット-上-NW-SF
ベスト フロム オービット


ベイビイ、きみはすばらしかった Baby,You were Great ケイト ウィルヘルム 酒匂真里子 の あらすじ

若い娘が部屋に入る。ここはオーディションルームである。最高の女優を探しているのだ。
今度の女優は、息を呑むほど美しい女性だった。

椅子に腰をかける娘の後ろのドアから男が入ってくる。
男は突然、娘に襲い掛かる。娘は抵抗する。恐怖に怯える。男は更に獰猛になる。

「はい、カット!」
演技は終わった。襲われた娘は半裸で呆然としている。

「今日はこれで、4人目だが。全く使い物にならん。もう合計で40人も使っているのに、
   これだ!という者がいないとは、どういう事だ」

ジョンは人選のスタッフに文句を付けた。
「次、行きます!」

今度の娘は愛らしい感じだった。しかし幼過ぎる。これでは...

しかし、この娘の"演技"は最高だった。娘の恐怖は、ジョンのアドレナリンを最高に引き出した。
終わった後、ジョン汗びっしょりだった。

「その娘のを採用だ!」
プロヂューサのハーブはすすり泣いている、その娘をオーディション合格にした。
「スチュワート君、ご苦労様。君の演技も最高だったよ」

「アン様が、もう降りたいって、また連絡して来たよ、ジョン。例のサメにご立腹のようだ」

アンは「アン ボーモントの一日」に主演している人気の女優だ。この番組の仕掛けは簡単だ。
アンは、頭の中に電極を埋め込んでいる。そこから無線で彼女の経験が送られてくる。
それを中継して番組にするのだ。観客はヘルメットを被り、アンと経験を共にする。

素敵なラブロマンスや、楽しいレジャー、旅行、スポーツ、美味しい食事。そしてちょっぴりのスリル。

アンが、もう止めると言い出したのは、水上スキーの最中に襲って来たサメの事である。
サメなど絶対にいないはず場所に、何故かいるサメ。これはちょっとしたスリル以上のものだ。

「あれは、ちょっとヤリ過ぎだろう」
「いや、あのくらいじゃないと、客は満足せん!」
「最高の贅沢、興奮、スリル!次から次へと、それが視聴者の望みだ」

アンが、薬を飲んで眠るから、今日の放送は中止だ!と言って来た。
ジョンとハーブは慌ててアンのところに行く。

「アフリカ旅行の途中のライオンや、スキーの最中の雪崩も貴方達の仕業なんでしょ?
   私もう止めるわ。私、恋をしてるの。もう引退よ。さあ、頭の電極を外してちょうだい。
   世界中の人に監視されながら、恋なんてできない」

「まあまあ、アン待ってくれよ。ライオンや雪崩の件は悪かった。我々も悪気があったんじゃない。
   なんて言うか、偶然が重なっただけって事さ。誰も君を傷つけようなんて思っちゃいない。
   人の君は、全世界の注目の人なんだから。君は素晴らしい女優だ。
   そうそう、最近、銃を買っただろ?あの時の演技なんて最高だ!」

「銃?あの時は放送時間じゃないわよね?どうして知っているの?」
「いや、ジョンが最近新しい受信機を開発してくれたんだ。
   それで、今までは放送時間だけだったのに、今では24時間、記録できるんだ」

「!一体、いつから?24時間受信してるの!もしかするとスチュワートは?」
「ああ、彼かい?彼もうちの俳優さ。送信機を付けている。君の好みの俳優を探すのにはちょっと苦労したよ」

ハーブはこっそりと小型受信機を覗きこんだ。アンは平静を装っていたが、
感情値メータは振り切れそうな程、上がっている。

(すごいぞ!こりゃ、大人気だ)

「私は、あの人を信じていたのに」
「同じ事だよ。我々が用意してもしなくても、いずれ君達は、魅かれあって恋をするんだ。
   その恋は本物だ。感情は嘘じゃない」

「もう、嫌よ。私を殺して!その時の放送は最高のものになるわよ。貴方達にとってわね。それとも、
  私が自殺すれば良いのかしら。そうね。それが一番だわ。そうしたら、どう辻褄を合わせるの」

「悪いが、その時の事はもう考えてある。恋人のスチュワートが、まだ十代の娘を襲い、強姦してしまう。
   あまつさえ、彼はその娘に恋をし、アンは捨てられてしまうんだ。
   それにショックを受けたアンは自殺する...もう放送できる準備は出来ている」

アンはもう考える事ができなかった。
「ジョン、アンを慰めてやれ。彼女はお前を信頼している。それから、ヘルメットは忘れるなよ」

ジョンはアンを抱きしめた。アンもそれに答えた。感情を電波で飛ばしながら。


..............


自殺した女優さんもいましたが、すでに半分、こう言う世の中になっていますかね?

記:2011.06.01

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三分 小説 備忘録

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