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ザ ベスト フロム オービット-上-NW-SF
ベスト フロム オービット


ドクター The doctor テッド トーマス 訳:山田和子 の あらすじ

暗闇の中で、ガントは起きた。ここは何処か、何時なのかを考える。
大学で、タイムマシンの試験機に乗ってから、10年が経った。

初めに時を旅立つ人間には、生理現象に詳しい者が相応しいと主張して、
ペンシルバニア大、医学生の彼は、タイムトラベルを志願したのだった。
そして50万年の時を飛び、この未開の土地に辿り着いた。

裏山の葡萄畑を使って青カビを、ペニシリンを作ろうとしているが、まだ上手くいってはいない。
それさえあれば、近くに住んでいる、肺病の娘を救う事ができるはずだ。

しかし彼の治療はうまくはいかない。ここにいる未開人達は"医療"など知らない。
薬さえあれば、彼らに、効果的な治療ができるのだが、
"医者"というものを知らない彼らには、私はただの、よそ者だ。

やがて娘は死んだ。ガントは、何もできなかった。

獣を狩り、洞窟で食べていると、二人の男がやって来た。
片方が相手を支えている。支えれてている男を見ると、脚を折っているのが、判った。

重症だ。これでは狩はできない。役に立たない彼は、すぐに捨てられ、死ぬだろう。
この世界では、1ケ月もの間、他人を支えてくれる者などいない。

それでも、この男を見捨てる訳にはいかない。
彼は治療を始める。足首を伸ばし、位置を固定する。

激痛!
ケガ人の男はガントを、健康な脚で蹴り出した。後頭部を、したたかに打つガント。
しかし、多少は、この男にもガントの行っている行為="治療"の事が判っているようだ。

何より、男がここに来たのは、自発的にガントに"治療"を受けに来たらしい事だ。

しかし、安心は出来ない。

ガントは別の洞窟に行った。ここには彼が"治療"して、脚に傷がある男がいるのだ。
しかし、ガントが行って見ると、男は彼の巻いた包帯を外し、傷口に、動物の糞を塗りこんでいた。

帰りに別の洞窟を覗くと、頬を腫らしている女を見つけた。口の中を覗くと歯が腐っている。
このままでは症状は悪化する。命にもかかわるかも知れない。しかたなく、石で女の歯を砕くと、
女は叫んで逃げ、その仲間達に助けを求めた。ガントはその仲間達に袋叩きに会った。

ここでは"治療"行為は、命がけだ。

ガントは性懲りもなく、また別の洞窟を覗いた。気管を腫らし、呼吸困難になった少年を見た。
喉を切開すれば、症状は良化する。

ガントは鋭利な石の破片を探し、手術をしようとする。それを知った少年の母は石斧を持ち、
ガントに切り付けようと思った。
しかし、ガントの行動に興味を持った男達によって、母親は制止された。

ガントの治療は成功し、少年の症状は明らかに改善した。
その事は洞窟の者達にも判ったはずだ。やがて彼らも、ガントの"治療行為"の意味が判るだろう。

しかし、それまでに、私は殺されないだろうか?

家へと戻る。洞窟に近づくと、中が騒がしい。中に入ると、妻と見知らぬ女が取っ組み合っていた。
二人を離し、見知らぬ女を叩き出す。

しかし、妻は、女にまだ組みかかる。それを抑えるガント。その時、彼は気がついた。
彼の幼い息子、ダンが、石で頭を叩き割られて死んでいた事を。

何のために?

彼は慌てて、洞窟に出る。あの女が逃げて行く、後姿が見えた。

彼は追うのを止めた。そして代わりに、息子の墓を掘った。
埋葬を終えると、ガントは泣いた。そして何時も、物思いにふける、あの場所へと行った。

大きな一枚岩。捻じ曲がった金属柱。
これはかつて、50万年の昔、ここがペンシルバニア大だった事を証明する物だ。

ここに来て何度、泣いた事だろう。

しかし、今はもう、泣く事も無い。やがて新たな子供は産まれるだろうし、
何より今日は、初めて彼の元に、患者が尋ねて来た日なのだから。


..............


過去と未来の件は、なかなかに衝撃的です。

それにしても、厳しい話です。

記:2011.06.02

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三分 小説 備忘録

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