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世界はぼくのもの - 青心社
世界はぼくのもの


ショウガパンしかない Nothing But Gingerbread Left 1943 訳:足立信一郎 のあらすじ

この話は、ドイツ語で書いた方が、わかりやすいのだが、それも出来ないので勘弁して欲しい。
ジンジャーブレッドと言う言葉は、英語とドイツ語では、言葉の響きが違うのだ。

ある晩ラザフォード教授は、学生の答案の採点をしていた。
これは集中力のいる仕事だ。そこに息子のビルがやって来た。

「ねえ、映画を見に行きたいんだけど」
「もう、遅いからラジオを聴いて、家にいなさい」
「ちぇっ」

息子は部屋でゴロゴロしだしたが、そのうちブツブツ始まった。
「...イベティ、ジベティ..イベティ、ジベティ..」

採点をしているラザフォード教授は、イラついて来た。
採点に集中できない!
(イベティ、ジベティ.イベティ、ジベティ)

その時、来客ベルがなった。
やって来たのは、優秀な生徒ジェリイ。

「先生、こんばんわ」
「やあ、よく来たね。ビル!そのイベティ、ジベティは止めなさい!」

「ああ、気が付かなかった」
「いつも、この調子だ。あの無意味な言葉は、意味論学者泣かせだよ」

「先生、ドイツ軍の脅威が、凄いですね」
「ああ、完全な精神集中の訓練。自分達は超人であり弱点などない!との思い込み。大変なものだ」

「なるほど、さっきの意味論理論が使えませんか?」
「そうか、奴らの頭を、書き混ぜてやるのか、イベティ、ジベティみたいな奴で、それは面白い」

「中世の舞踏病も、かかった人間を狂わせる神経の興奮ですよ」
「意味論に基づいた完全な文句!よしやってみよう!」

そして、出来た!

ほったらかし、ほったらかし。
ハラペコ女房とガキが17人。
でもジンジャーブレッドしかない。
ジンジャーブレッドしかない!

オブライエン上院議員は、米軍将校と会っていた。
「上院議員、この歌を、対独放送に乗せるんですか?気は確かですか?」
「ああ、強力な兵器になるかも知れんのだ」

「しかし、ジンジャーブレッドが、ほったらかし、ですよ」
「そうだ、ジンジャーブレッドにガキが17人だ」

「おまけに、ハラペコ女房?ほったらかし?本当に、気は確かですよね」
「おお、確かだとも、ハラペコ女房とガキが17人、
   ジンジャーブレッドしかない!ジンジャーブレッドしかない!」

「ま、わかりました...ハラペコ女房が、ほったらかし...」


ナチスのエガース将校は、悩んでいた。
(なぜジンジャーブレッドがあるのに、ハラペコなんだ?)
(なぜ17人も子供がいて、奨励金も貰えないのだ?)

「エガース将校!」
(お、いかん、いかん)「...何だ?」

「我が軍の将校47人が、占領地で命を落としました。占領民の隠し持っていた自動小銃が原因で」
「捜索隊は事前捜査をしたのか、拳銃ではない、自動小銃だぞ!それが何故見つからなかった?」

「最近、捜索隊の武器発見率が急激に落ちています。彼らの集中力に問題が..」
「例の歌か」
「そうであります。ジンジャー ブレッド!」

「わしも見た。行進の最中に、あの歌が兵士の間から沸き起こり、後は、ジグザクの酷い行進に」
「そうです。左、右、左、右=レフト、ライト、レフト、ライト=ほったらかし、ほったらかし」

「わが帝国軍人が、なぜ、あんな歌に惑わされる、ほったらかし、ほったらかし!」


科学者シュナイトラーは、頭を抱えていた。
また、実験に失敗してしまった。

チオ硫酸ナトリウムを6滴ぴったり加えようと、数えていると。
ポタ、ポタ、ポタ、ポタ、レフト、レフト、ほったらかし、ほったらかし..
気が付くと、ビーカーは溢れている。
ここ数日、まともな実験が出来ない...


「何故、攻撃は失敗したんだ?」
「爆撃手のクルトマンが、失敗したのです」

「どうして、敵機を撃墜できなかったんだ?」
「いや、つまり、私は歌っていたのです」

「交戦中に?何の歌を?」
「ですから、ジンジャー ブレッド...」

「敵機が近づいても、ほったらかし、ほったらかし...と言う訳か?」

ナチスの有能な科学者シュナイトラーは、実験の失敗が続き、自殺してしまった。

ヒトラーは、ロシアへの対抗策を考えていた。そしてジンジャー ブレッドの事も。
最近の第三帝国の不振の打開策を考え、発表するのだ。
彼は、その原稿を書いていた。

よし、これで良い!
そろそろ、放送の時間だ。

ヒトラーはマイクに向かった。
そして、出て来た言葉は...

放送は中止になった。いや、代わりにゲッペルスの言葉が流れた。
大して重要な事は含まれてはいなかった。

そして、彼は、ヒトラーが部屋の中で、つぶやきながらウロウロしているのを発見するのである。

ほったらかし、ほったらかし。
ハラペコ女房とガキが17人。
でもジンジャーブレッドしかない。
ジンジャーブレッドしかない!



..............


いま、ひとつ、テンポが...日本語だからね

記:2011.06.14

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三分 小説 備忘録

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