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60億の神の御名-早川文庫
60億の神の御名


前哨 The Sentinel アーサーCクラーク(1951) 小隅黎 から抜粋

月の淵、時計盤で言う2時の位置に、巨大な盆地マーレ クリシアムがある。

これまで未調査であった、その地に、1996年の夏の終わりに、我々は月探検隊は踏み込んだ。
この大規模な探索に、私、ウィルソンは地質学者として参加し、海の南部を調査していた。

すでに月面での調査活動に、危険は少なくなっていた。
探査車では1ケ月篭城できる程の食料・水があったし、SOS一つで基地からロケットが
我々を回収するために飛んでくる事もできた。

実際、月面での興奮は、当初ほどではなかった。我々が発見したのは、
『まだ月が若かった頃、短い火山活動期の河口の跡、退化した植物らしきものの痕跡』くらいだった。

私はふと見上げ、地平線に山々を見た。

月では空気による"ぼかし現象"がないため、景色は遠くまでくっきりと見える。
あそこに言ってみようと思った。地平線とは言っても月は狭い。
頂上まで往復しても24時間かからないだろう。

同僚のガーネットが言う。 「どうして、あんた所に行きたいんですか?
   頂上に旗でも立てて、ウィルソンのバカ騒ぎ山、なんて言う命名でもしたいんですか?」

「ピコとヘリコンに初登頂したのも、俺だって事を忘れたのかい?」
「あの頃、貴方は、まだ若かったじゃないですか」
「今でも充分若いさ」

地図で山頂を確認し、我々は山を登った。岸壁を登るためには碇綱が必要であったが、
軽い重力と、完全な空調の宇宙服のため、登ハンは快適だった。

ここでは私の体重は部厚い宇宙服を含めても40ポンド。腕の力だけでスイスイと登れる。

一段落ついた丘に着き、私は、そこが広大な台地である事に気がついた。
自然の仕業ではありえない平滑な地面。

(ここは、何者かの手によって作られたのか?)
(かつてこの月に住んでいた者の文明の痕跡ではないか?)

ピラミッドのようにも見えるその姿は、礼拝の場所にも霊廟にも相応しい。

ガーネットも追いついて来た。彼も言葉を失っていた。

この上に降り積もる塵の量を見れば、これが建設されたのは、太古の昔だったと判る。

その時、ここから見える地球はどんな状態であったのか?
まだ石炭紀のジャングルだったのか?

それとも、初期の両棲類が陸上に進出していたのか?
あるいは、まだ放射能を帯びた火の塊だったのか?

そして私は、この結晶状の建物は、月とは無縁の存在である、との考えに至った。


私は想像する。

どこか他の星団に生まれた知的生命が、自分達の仲間を探そうと旅に出た。
彼らは立ち寄った、この地球に生命の誕生、または、生物の進化を感じる。

しかし、彼らが知りたいのは、どんな生命でもと言う訳ではない。
彼らと意思の疎通ができる知的生命だ。

そのため、彼らは、この結晶ピラミッドを、
"ここには決して生物が生まれないであろう"、月に作った。

ここに何らかの生物が来るとすれば、それは、最も近い生命の発達しそうな惑星からである。

つまりは、地球の生物だ。

ここに来れたと言う事は、彼らは既に、火力を、原子力を、
そして、その原子力を死と生の選択の制御ができている事を示している。

彼ら、異星人に比べれば、それはまだ幼いものではあろう。
しかし、彼らが接触したいのは、そう言った可能性を持った生命である。

私は思う。もう火災警報器を押してしまった。

我々には待っている事しかできない。

しかし、そう長く待っていなくとも済むのではないかと思う。



..............


・もちろん、これを元に、キューブリックの「2001年 宇宙の旅」は作られた訳です
(2001年の原作はクラーク。)

しかし、この物語の、判りやすさと、あの映画の、難解さ。

私はキューブリックのファンですが、これは納得行きませんね。

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三分 小説 備忘録

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