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 ディオ-青心社
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時を駆ける Extempo 訳：阿部寿、大野万紀 の あらすじ ロッシは時間旅行者。 誰もが彼に会いたがった。誰もが彼に叡智を聞きたがった。誰もが彼の助けになりたがった。 そんなロッシはシアトル生まれの痩せた男。前髪は詩人のようだった。 幾つかのアルバイトをしたが、定職には付かなかった。 あちこちを風来して暮らしていた。 そんな彼がある日、ＳＦ雑誌を買った。彼は人前でそれを読んだ。何と恥知らずな！ そして思った。どうして、時間旅行はできないのだ？ 色々読んだ時間に関する本で、彼にインスピレーションを与えたのは、ミルンの説だった。 ミルン曰く、時間を測定するの二つの方法がある。 一つは物体が運動している事を元に計測する方法。これを力学的時間、タウ時間と呼ぶ。 もう一つは、原子内で発生する物質を元に計測する方法。これを運動学的時間、ティー時間と呼ぶ。 宇宙の開始や終焉を計測する手段は、タウ時間にはあるが、ティー時間にはない。 それに第一、寝ている人間が時間を感じないのは何故だ。彼の主体時間はその瞬間止まっている。 時間律が変わっているのだ。それが予知夢を見る理由だ。 彼はそんな事を考え続けた。時間の蜘蛛の網の隙間。指と指の間にある無限に分割できる膨大な空間。 そして、彼は、秘境に行き断食をした。そして、虚無と、完全なる静寂を体験した。 e=mc2 , z2 / n2 , M = Mo + ... 数式を書き、眺め、読み、叫び、考え、忘れ、また、書き、眺め、読み、叫び．．． そして、ある時、突然、目の前の景色が変わった。いや，跳んだ！ 彼は、メリーゴーランドに乗ったのだ。時間の！ 彼は時間を移動した。 火山の爆発、大陸の形成から、マンモス、古代人の狩猟。 教会では、突如現れたロッシに驚いた牧師から、聖書を投げられた。 町で、都市で、森で、公園で。彼はあらゆる時間を見た。 ある時、声をかけられた。小さなボロ小屋の中。 目の前の老人は、十字架に祈っていたようだった。老人とその子供がいた。 「なあ見ろ！言った通りだろう。さあ、質問だ！ 「あの、すいませんが、ニューヨークは大きな都市になりますか？」 「え？ああ、もちろん、最大の都市になるよ」 その瞬間ボロ小屋は消えた。 彼は、別の時間に跳んだ。 「あの次の大統領選で勝つのはフーバーですか？ルーズベルトですか？」 「あ？たしか、ルーズベルトだね」 彼は質問攻めに合った。 「ドイツが降伏するのは、何時でしょう」 「いま眠いんだ。え〜っと。１９４５年の５月だよ」 「ついでに、これから１０年間で最大の産業は？」 「テレビじゃないかな？」 彼は、質問に答え続けた。 ふと見ると、ニューヨークは、彼の知っているニューヨークではなくなっていた。 「朝鮮戦争の終結時期は？」 「それは、よく知らない」 「原子爆弾はアメリカのどこに落ちるんだ？」 「いや、その前に、こっちから質問させてくれ！」 彼は跳んだ。 「あの宇宙から来た信号の意味は何なんだ？」 「．．．（何の信号だって？）」 ロッシはジャングルへ跳んだ。 ようやく、ほっと出来た。 どこに行っても質問攻めだ。おまけに、世の中は、どんどん悪くなっている。 真実の予言など、無意味だ！ 「この国の最大の都市はニューヨーク。ただし、場所はメイン州だ！」 また、彼は、とある家に現れた。 「私は、この家の使い魔。気をつけよ！刃物を持った男が、お前の後ろにいる」 しかし、世の中は、戻らない。 人々にも変化は現れる。 「ろっし、しゃんだ。ろっし、しゃん。これから流行るもんを、おしゅえて．．」 そして、彼は、止まった。永遠に時間の中に止まった。 初めての時間旅行者は、初めての時間停止者になった。 永遠の時間の中を止まり続ける男、ロッシ。 彼をバカにする者もいる。かわいそうと思う者もいる。 しかし、彼は、我々とはちょっと違う、異邦人なだけだ。 ．．．．．．．．．．．．．．
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三分 小説 備忘録 [どんな落ちだっけ？] |
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