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救命艇の叛乱-文化出版局
救命艇の叛乱


救命艇の叛乱 TheLifeboat Mutiny ロバート シェクリイ 訳:浅倉久志 のあらすじ


「このエンジンはどうです。500年前の黄金時代の製品。しかも錆一つない。
   トリプルA社の救命艇としてこれ程相応しいものはありませんね」

中古宇宙船販売のジョーは言う。

「ああ、たしかに良い品物のようだ...」
グレガーは答えた(しかし、ジョーの店の商品だ。いわく付きかもしれん)

キャビンに入ると、頭の中で声がした。
「私は救命艇324A号、乗組員の安全を最優先に航行します」
「テレパシーで操縦できるのか?」
「はい、テレパシー操縦です。どんな言語を操る方でも操縦可能で、特殊な操縦技術も要りません」

結局、同僚のアーノルドが決定した。
「よし、買おう!」

「絶対、航海しませんよ!いや後悔しませんよ!」

翌日、救命艇324Aは、トライデント星探査に使われた。
アーノルドとグレガーが、その調査の担当者だった。

トライデント星は、浅い海に覆われた温暖な気候。人が移住できる大気もある。

ここの火山を活性化させ、陸地を作り移住できるようにするのだ。


海にゆっくりと着水した救命艇。
「さあ、行くぞ!」
しかし救命艇は、正しく動作しなかった。

「?まさか、いくらジョーの店の品でも、故障はしていなかったぞ?」
「ちょっと、機械室を見てくる」
アーノルドは、外に出て、海に潜り、機械室に入った。グレガーも手伝った。

「わかったよ、動力線が一本外されていた。もう大丈夫だ」
司令室に戻り、パワースイッチを入れた、二人の頭に、救命艇の声が広がった。

「私は完全な動作中です。ドローム科学技術の結晶で、貴方達をお守りします」
「おお、完全に動作したようだ。しかしこの船はドローム製だって?
   ドロームって、どんな人種だったっけ?」

「ともかく、この辺りの調査を始めよう。あの島に近づこう」

救命艇は言う。
「あの島はまだ安全の確認が出来ていません。確認が出来るまで、迂闊な行動は避けるべきです」
「だめだ!島に行くんだ。調査を行う」

「貴方達は極めて危険な状態にいます。猛毒の海水を浴び、半死半生の状態です。
   安静にしていて下さい。私が全て処理致します」
「船は、何を言っているんだ?」
「仕方ない、電源を切ろう」
アーノルドがスイッチに手を伸ばすと、弱い電撃を浴びて、手を引っ込めた。

「現在は、戦時下の緊急事態法が適用されます。乗員の生命安全確保優先のために、
   "装置稼動保護処置"を、ご理解下さい」

「?どうしたんだ。この船は?ドロームって何だっけ?」

アーノルドが調べると、ドロームとはトカゲ型の異星人で、100年前に絶滅した種族。

この船が生まれた時代、彼らは、また別の宇宙人と大規模な戦争を行っていた。この船は、
500年振りに活動を開始し、既にいない、幻の敵艦船との戦いに備えているらしい。

「おまけに、このトカゲ星人は水泳と言うのが、毒らしい」
「何だそりゃ?ためしに、食料を出して貰おう。俺達が食える代物なのか?」

グレガーが命令すると、救命艇は、何かドロンとした物を、壁から吐き出した。

悪臭が酷く、食べられないのは明白だった。

「君達は食欲がないのか?無理も無い、この船室は高温だ。ドローム標準に戻す」

船内は急速に冷えた。ドローム人の星は零下20度が標準なのだ。

「おい、冷却配管を何とかしろ!」
グレガーがパイプの裏を傷付けて、冷却は止まった。
幸い、船の感覚センサーはこの司令室には付いていないようだ。
視覚と聴覚センサーだけらしい

「故障が起きたようだ、君達の体が心配だ。至急、極地へ移動する。あそこなら零下30度で快適だ」

「待て!我々をこの島で降ろせ。我々は降りなければならないのだ!」
「ダメだ。この島は20度もある。君達を危険な目に合わせられない」

「いや、我々は危険でも降りなくてはならない。実は我々は破壊工作を行う決死隊なのだ。
   あの島に敵基地があるのだ」
「そんな事は知らなかった。君達が決死隊だったとは、しかし私には出来ない。
   君達を危険な目に合わせる事は。私は、そうプログラムされていないのです」

「降ろせないだと!それでは、我々は任務を遂行できない。そんな事ならいっそ死んだほうがマシだ!」
グレガーは水筒に入っていた"猛毒"の水を飲もうとした。アーノルドも。真似して、水を飲もうとした。

「やめろ!」
二人は水を飲み、死んだ。ピクリとも動かなくなった。

「すまない。私のプログラムでは、どうしても、君達を島に降ろす事はできなかったのだ。許して欲しい」

死んだ二人の兵士の遺体は、水葬にされた。
救命艇は、二人を外へ放り出した。

「やすらかに眠れ。君達は勇者だ」

そして、救命艇は、他のドローム人が暮らしていそうな、極地へと向かって行った。

..............


このような、あるルールを設定して、それに対する抜け道を探る、と言うのは
シェクリーの得意話で、この他にも幾つかあります
SFに推理小説の要素を加えたようです

で、「絶対、航海しませんよ!いや後悔しませんよ!」
のダジャレは私が、勝手に付け足しました。すまん!

記:2011.05.03


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三分 小説 備忘録

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