まわりの人がうつになったら?
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「うつ病」を知っていますか?

「うつ病」という病気をご存知ですか?
現代では「心の風邪」と言われるくらい、だれもがなる可能性のある病気です。
人口の1割が、一生の間に一度は「うつ状態」になるといわれています。
遺伝はほとんど関係ありません。
うつ病がおこるのは、脳の中のセロトニンという物質が少なくなってしまう
ためだと考えられています。この物質が減ると、だれでも非常に悲しくなり、
気力や感情がうまくコントロールできなくなります。
元気がないのは、決して、気のゆるみや怠けではありません。
うつ病は、きちんとした治療をすれば、必ず治ります。
治療では、お薬を飲んで、休息を取ることが大切です。
お薬をもらうためには、心療内科や精神科という病院へ通うことが多いですが、
これらの病院は、不眠症、不登校、更年期障害、ストレスからくる不調などを
診てくれる、ごく普通の病院です。
いわゆる「精神病院」とは全く違うところです。
うつ病の患者さんは、つらく悲しくて、一日も早く治りたいと一生懸命です。
そして、周りの方の温かい見守りを必要としています。
どんな風に助けてあげればいいのかを、下にまとめました。
これ以外にも、ぜひ「うつ病」について調べてみてください。
そして、元気になるまでの間、そっと守ってあげてください。


・うつ治療の7原則
精神科のお医者さんは次の7つのことを治療方針とします。
1.うつは、「気のゆるみ」や「怠け」ではなく、治療をするべき「不調」であること。
本人は、「自分は単なるなまけなのではないか、自分が悪いのではないか」と、
迷っています。そこで、「うつ」は病気であることを告げます。
元気なときとの落差があまりにも大きいこと、苦しいのはうつの症状であること、
うつ病となまけとは正反対のものであること、原則として完全に治る病気であること、
などを説明します。
2.できるだけ早い時期に、心理的な休息を取ったほうがよいこと。
不調の大きな原因は、心理的なエネルギーの低下です。
可能ならば、1ヶ月程度を目安に、それまでの仕事や忙しい生活を離れて、
心の休息を取りましょう。
3.治るまでには、軽いもので3ヶ月から、平均して6ヶ月ほどかかること。
うつ病は、必ず治る病気です。しかし治療期間中は非常に苦しいものです。
そこで、だいたいの目安を示すことによって、自殺観念などを防ぎます。
3ヶ月ほど治療すれば、薬の効果も出てきて、治療前ほどはあせったり不安になったりは
しないものです。
4.治療の間、自己破壊的な行動(自殺、自傷など)をしないことを約束してもらう。
うつ病の症状として、自分を責めてしまう気持ちがあります。
それが、「消えてなくなりたい」という気持ちに結びつきやすいのです。
うつ病になるひとたちは元々責任感の強い人が多いですから、
きちんと約束すれば、それを守ります。また、「必ず治る」ことを繰り返し
言うことも大事です。
5.治療中でも、症状は一進一退することを、繰り返し告げる。
うつ病の経過には、不規則な好調、不調の波があります。
最も悪いときよりも、治りかけのときに不調が来ることも多いのです。
しかし、そのこと自体がもうすぐ治るサインだとうけとめてじっと待ちましょう。
6.人生に関わる大きな決断は、治療が終了するまで延期するように。
うつ病にかかると自信を失い、ひどく焦ることから、責任のある大きなことに関して
きちんと判断することができません。退職や離婚など、人生に関わる
大きな決断は、治ったあとで自分自身で決断することが望ましいのです。
7.薬をきちんと飲むことは大切であること。また、副作用についての説明。
飲みはじめで効果が感じられないとき、副作用が出たとき、また、
もうほとんど治ったと思えるときに薬を飲まないのは、治療のさまたげになります。
医師と相談して、処方された薬はきちんと飲みましょう。

・診療に関しての協力
特に初診のときは、家族や親しい人がつきそってあげてください。
それから後もできれば時々診察に付き添って、お医者さんの治療方針や、
本人の病状を知ってあげてください。

・生活に関しての協力
身近な人がうつ病になると、まわりの人たちも影響を受けます。
その時にどんな態度で接したらいいのでしょうか。
1.学べることはすべて学ぶ。
まず、相手のことばや態度が普段とどう違っているのかをよく知りましょう。
また、うつ病についての本やホームページなどで、
病気の症状や治療法などを知りましょう。
2.現実的な期待を持つ。
自分が「どうにかしてあげなければ」と思いがちですが、
自分が相手を「治す」と思うことは、非現実的です。
じっくりと、自分が「できること」と、「できないこと」を見分けましょう。
助けることはできても、治すことはできないのです。
時間と適切な治療法だけが「治す」ことができるのです。
3.無条件の支持を与える。
いまは調子が悪いけれども、ずっと一緒にいてあげることを伝えましょう。
患者さんは受け入れてもらうこととサポートを必要としているのです。
病気を治すために協力し、今のうつ状態について、自分や相手を責めないことを
伝えましょう。
4.自分の日常の仕事をできるだけ守る。
うつとのたたかいは比較的(長期間です。そのあいだ、疲れてしまわないように、
できるだけ自分のペースを守り、あるいは、自分一人の時間を作るなどして
十分な気力を蓄えてください。
5.自分の気持ちを伝える。
誤解を避けるためにも、自分の気持ちを率直に伝えてください。
相手のうつ状態を攻撃したり責めたりするのではなく、正直に、また、
相手がどう受けとめるかをよく考えて話をしてください。
6.うつ状態を個人的なものとして受け取らない。
たとえば、一緒に外出したくないというのは、「いじわる」ではなくて、
病気の症状の一つです。何か気に触るような行動は、うつ状態が
そうさせたのだと思うようにしましょう。
また、自分がそのうつ状態を引き起こしたのではないと理解して、
変な罪悪感を持たないようにしましょう。また、つらいときには、
周りの人も、他の人に助けをもとめましょう。
7.パートナーとチームとして一緒に働く。
お互いの気持ちを分かち合い、気になっていることを話し合い、
協力しましょう。


【参考文献】
『軽症うつ病』、笠原嘉、1996、講談社現代新書
(うつ病について知らない人でも読みやすく、わかりやすいのでおすすめです)
『あなたの「大切な人」がふさぎ込んだら』、ローゼン&アマドール著、冨田香里訳、1998、講談社
(少し厚い本ですが、具体的な例や援助の方法について詳しく書かれています。)


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