「平成12年度予算編成に対する区議会各会派の意見・要望」

(世田谷区議会月報 臨時号 平成121月 No.481)に掲載

会派「無党派市民」(木下泰之区議)

平成12年度予算編成に対する意見・要望

 

 

1、            バブル経済は官業一体でつくり出したものである。世田谷区も昭和末期の中曽根内閣が提唱したアーバン・ルネッサンス路線に取り込まれ、三軒茶屋、二子玉川、経堂地区の大規模再開発計画について東急や小田急との間に秘密協定さえ交わしながら、不動産投機に荷担してきた。しかしながら、区の幹部には自らがバブル経済の片棒を担いできたという深い反省や自覚はない。まずは、この反省や自覚をおこなうことが、財政再建や世田谷の環境悪化を食い止める施策の前提とならなければならない。

 

 

2、            大都市における住宅地として発展してきた世田谷区をあずかる地方自治体の存在意義は、生活する都市住民が安心して暮らせる環境をいかに確保するかに、細心の注意を払い、国や都の都市政策に反映させていく努力を不断に伴うものでなくてはならない。昭和40年代の公害の教訓は、都市政策に自治体が自主性を持って望むべき転換点であったにもかかわらず、オイルショック後の経済危機を田中角栄内閣の列島改造論から始まり、中曽根内閣のアーバンルネッサンスへとつながる国土改造・再開発による土地の担保力に依拠した国の経済政策に飲み込まれ、地方自治はこれに追随するようになってしまった。地方自治の再生は地域の環境保全と地域住民の暮らしを優先させる立場からの再構築以外にありえない。

 

 

3、            バブル期に企画された三軒茶屋、二子玉川、経堂の大規模再開発計画をストップすることを決断することが何よりも必要である。平成元年に設立された第3セクター・東京鉄道立体整備は破綻、東京都は同社を解散する方針を打ち出したが、これは、世田谷区においては小田急線の高架と一体となった大規模再開発・道路開発の見直しの好機でもある。区は区民の反対を押し切ってこの第3セクターへの出資を強行したが、結局は区民の主張が利にかなっていたことになる。区はこれを機会にどこから見ても理不尽な小田急高架計画を見直し、地下化に転換することに心血を注ぐべきである。環8の下にエイトライナーを通すより、小田急線の地下化への転換の方が優先されてしかるべき課題である。また、世田谷の住環境をことごとく破壊する外郭環状線や格子状の補助幹線道路の整備は凍結すべきである。世田谷は、すでに幹線道路が多数貫かれており、外郭環状や格子状の補助線は要らない。すでにある地形にそった道路や地先道路の修復形整備に切り替えるべきである。また、区政がとるべき政策は車依存社会からの離脱にむけての施策を体系的に追求し、都政・国政に積極的に呼びかけるものでなければならない。

 

 

4、            ごみ問題は、根本的な解決のための提唱をおこなわなければ、いずれ、自治体自身の首をしめる結果となろう。ごみ問題については生産点にさかのぼっての対策、いわゆる川上対策が必要だという認識だけでは足りない。生産に資源循環をビルトインさせる生産原理を促進させるための施策を取らせるものでなければ、もはや間に合わない。

 東京都からの23区へのごみ行政の移管は、ごみ政策のシステム転換の最大のチャンスであったにかかわらず、結局は所管を下に移したにとどまった。ごみ問題は生ごみやし尿処理は別として、工業生産系ごみ(紙も工業生産物である)は生産・流通者の回収義務に移行すべきであり、そうして初めて、資源節約形・資源循環形の生産システムの模索が始まる。ごみ問題への行政の関与は制度的に最小限にとどめるべきである。

 

 

5、            環境保全や衛生、社会福祉や教育、危機管理こそ基礎自治体のベーシックな仕事であり、基礎的な仕事はしっかりやっていただきたい。しかしながら、現在の世田谷区政を点検すると、必ずしも必要でない仕事が多々ある。区を宣伝するイベントやキャンペーンに類する仕事や区政OBや特定の業界へのサービスに類する仕事である。そして世田谷区政の場合、その比重がきわめて高い。これらの仕事は結局のところ、区の施策の自己正当化に当てられたものに過ぎない。住民参加をうたった施策もこの批判に耐えられない。虚飾をすて区政のありのままを区民に提示し、率直に批判を受けるべきであるし、イベントの企画や市民活動は区民の自主性と自前の負担に任せて、区は場所を提供すれば十分である。市民文化や市民の政治意識はすでに十分育っている。地主や街の有力者と商店街のボスで成り立つ「街づくり協議会」などは百害あって一利もないし、世田谷トラスト協会は本来の趣旨の募金活動をおろそかにし、区の下請け団体に成り下がっており、まっとうな市民活動をかえって阻害している。区のOBの天下り先である外郭団体は必要ないし、区が拠出しておこなわれる祭りや海外交流なども根本的に見直すべきである。

 

 

6、            以上の趣旨にそった予算編成に改められることを切に望むものである。