平成17年第2回定例会(自68日 至617日)

世田谷区議会会議録

2005年 6月10日 一般質問


○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 質問通告に基づき、一般質問を行います。

 最初に、小田急連立事業での高架下及び地上部分の公共利用についてお聞きいたします。

 昨年六月の本会議でもこの問題を取り上げました。連続立体交差事業を律してきた建運協定の十条、細目協定十五条には、連立事業で新たにできる空間、高架事業なら高架下、地下化事業なら事業後の地上部分の扱いについて書いてあります。在来線部分の一五%分、複々線部分も含めれば七・五%の空間は公租公課分、つまり都市計画税分として複々線部分の箇所も含めて公共側が自由に使えることになっております。その余の空間については、公共側が公共計画を提示すれば優先使用権がある。これは有償ではありますが、都市計画事業を行う中で利用可能な空間ができるわけで、政府も積極利用を行うことを推奨しております。

 本年二月には、世田谷区は「小田急小田原線(代々木上原駅〜梅ケ丘駅)の上部利用について」なる文書を出しておりますが、駅前広場についての利用計画は一応具体的に示していますが、駅間の利用計画については四メートル幅の通路とポケットパーク、自転車保管所の設置を蓋然的に示しているだけであります。これだと、通路とポケットパーク、自転車保管所以外は小田急電鉄の利用ということになり、東京都の調査報告書に示された緑道計画さえ消えており、広大な用地をまちづくりのために積極利用するというふうには思えません。

 そこでお聞きいたします。下北沢区間について、公租公課分一五%以外についての公共利用計画はあるのか否か、どのように定めたのか、利用の費用負担はどうなっているのか。小田急や東京都など関係する事業体間の協定や覚書などはあるのか否か、あるとすれば、議会に開示していただきたい。梅ケ丘以西の現事業区間において、公租公課分一五%以外について公共利用はどうなっているのか、同じく協定や覚書などはあるのか、あるとすれば、議会に開示していただきたい。また、公租公課分一五%以外の公共利用についての手続、手順を示していただきたい。

 次に、下北沢の森厳寺富士塚の文化的価値と保存についてお伺いいたします。

 既に三月議会に請願が出されており、都市整備委員会では継続審査となっておりますが、区長と教育長にご見解をお聞きしたいと思います。
 歴史に根差さない文化などあり得ないと私は思います。世田谷には古い庚申塚や地蔵などがまだまだ各地に残っております。下北沢にも各所にあって、それが下北沢という町に厚みを持たせております。大自然の名残も含め、人間が積み重ねてきた歴史の諸相の重なりが意識できるということは、人に安心感を与え、世代を超えて人々を結びつける磁場を提供しているというふうに思います。

 下北沢の森厳寺に富士塚が存在し、これが取り壊されようとするのに対して、周辺の人々がこれを守ろうと動いたことを知って、私は感動いたしました。

 請願の審査に当たっては、私は富士塚や森厳寺について調べました。森厳寺は一六〇八年に家康の次男の位牌所として立てられた名刹です。江戸時代には、きゅうで有名な寺として来訪者が列をなし、門前町を形成したとされております。文献を調べていくうちに、きゅうのついでに、渋谷の円山の遊廓に遊ぶ者も多かったとも書かれております。淡島様とも呼ばれており、淡島通りはこの寺に由来しているということから、往時のにぎわいが浮かんでまいります。

 森厳寺の富士塚は、江戸の後期に盛んになった富士講により江戸各地につくられたものの一つであり、三軒茶屋の山吉購の総代により、文政四年、一八二一年に築かれております。江戸での富士塚の第一号が一七七九年に築かれ、その二百年後を記念すべき一九七九年には、文化庁は都内にある富士塚のうち三つを重要文化財指定しております。規模も大きく、富士参りや大山参りの往路に位置するそのロケーションといい、その当時、もし世田谷がこの森厳寺の富士塚の存在をアピールしていたならば、重要文化財の有力な候補になったのではないでしょうか。また、江戸時代から明治にかけて、下北沢では富士講が盛んだったとも資料に伝えられております。

 この富士塚についての文化的価値と保存の必要性について、区長と教育長の見解をお聞きしたいと思います。ぜひ残すべきであると思います。所有者である森厳寺さんに働きかけていただけないでしょうか。いかがでしょうか、お答えください。

 区は文化振興条例を用意しようとしているということですが、習俗や民俗を含めた文化遺産の保全について特別の配慮を払う施策を用意するおつもりはないか、お聞きしておきます。

 最後に、北烏山六丁目の百メートルマンションと総合設計についてお聞きします。

 この問題も昨年六月十一日に本壇上で取り上げました。甲州街道超高層扇のかなめ事件として取り上げたことをご記憶だと思います。昭和大学病院が売りに出した土地を大京が買い、現在百メートルマンションを建てていますが、これは敷地が甲州街道に接道しているということが条件となって総合設計制度の緩和措置を受けて、初めて百メートルが可能となったという経緯を持っております。今ではもう百メートルは既存不適格にはなっておりますが、当時は建つことが可能になっていたわけであります。

 たった四・五八平米の土地ですが、区の管理地であり、本来ならば区に移譲されるべきはずの畦畔が昭和大学病院に不当に移譲され、転売されたことにより総合設計が可能となったわけです。

 ところが、昨年の質問以降、地域住民の皆様の努力もあって、この四・五八平米の、まさに扇のかなめとなった土地は、財務省が錯誤により昭和大学病院に移譲されたものと認め、土地の所有権を国に移し、世田谷に管理させるという決定を行いました。まさに扇のかなめの土地が国の所有地に移されたことにより、超高層マンション敷地の接道の根拠はなくなりました。総合設計制度の適用は誤りであることが明らかになりました。世田谷区は昨年六月十一日の段階で、知らなかったと答えておりますが、本当に知らなかったのかどうか、お聞きいたします。

 接道していないことが明らかになった以上、区は総合設計制度の適用無効を東京都に対して主張すべきであります。ご所見をお伺いしたいと思います。

 また、ここに至る経過を説明し、区としての責任の所在を明らかにしていただきたい。

 以上、壇上からの質問といたします。

   〔若井田教育長登壇〕

◎若井田 教育長 富士塚の文化的価値と保存の必要性についてお尋ねがありましたので、お答え申し上げます。

 森厳寺では、現在、墓地の整備が進められており、この工事計画では塚の盛り土が削られると聞いております。富士塚は、議員のお話にもありましたが、江戸時代の民俗文化や歴史を検証していく上でも大切なものであると認識しております。森厳寺には保存をお願いしてまいりました経緯がございますが、現在は記録保存のための調査の実施についてご協力をお願いしているところでございます。

 以上でございます。

◎株木 都市整備部長 私からは、小田急連立事業での高架下及び地上部分の公共利用についてのご質問にお答えいたします。

 まず、梅ケ丘以西の現事業区間においての公租公課分一五%を含めた公共利用計画についてのご質問でございます。

 建運協定第十条では、国または地方公共団体が高架下を利用する際には、あらかじめ鉄道事業者に協議するものとし、鉄道事業者はその業務の運営に支障がない限り協議に応ずるものとされております。小田急線の連続立体交差事業における世田谷代田駅〜喜多見駅間での高架下貸付可能面積の一五%に当たる部分の公共利用につきましては、既に整備済みである自転車集積所を初め、今後整備を予定している地区会館や地域図書館等といった公共施設の計画がございます。また、高架下貸付可能面積の一五%以外の公共利用につきましては道路の一部がございます。今後は、これらの高架下利用施設の整備を進め、沿線まちづくりの推進に努めてまいります。

 公共利用を行うとした場合の手続、手順についてでございますけれども、建運協定の細目では、高架下を利用する場合の使用料は、鉄道事業者が算定する貸付規則により算定するものとしてございます。ただし、高架下貸付面積の一五%に相当する部分までについては公租公課相当額と規定されております。

 公共利用につきましては、区の利用方針、計画等に基づき、都市計画事業者である東京都及び鉄道事業者の小田急電鉄と協議するものであり、世田谷代田駅〜喜多見駅間におきましては既に協議が整っております。また、代々木上原駅〜梅ケ丘駅間におきましては、今後協議を進めてまいります。協議に当たりましては、区の財政状況をかんがみながら、より有利な条件が得られるよう、事業者との交渉を進めてまいります。

 以上でございます。

◎真野 北沢総合支所長 私からは、下北沢区間についての公租公課分、公共利用の計画について等々についてお答え申し上げます。

 小田急線代々木上原〜梅ケ丘区間の連続立体交差事業に伴う鉄道敷地上部、いわゆる上部利用の公共施設等の整備の計画につきましては、本年三月、区の基本的な考え方を取りまとめまして、上部利用方針としてお示ししてございます。施設整備の考え方といたしまして優先順位を定め、第一に、区が優先的に検討整備する施設として三駅の駅前広場等を示し、第二に、今後、協議検討する施設として駅間の通路等をお示ししてございます。第三に、鉄道事業者へ要望する施設として、自転車等駐車場を挙げてございます。

 公租公課分一五%以外の件でございますが、区が優先的に検討整備する三駅の駅前広場等の施設面積で、既に都市側利用可能と想定される面積を上回る規模となっております。今後、この上回る分も含めまして、土地の権利形態など、より有利な条件が得られるよう、区の財政負担もかんがみながら、整備に向けて積極的に事業者と交渉を進めてまいります。

 なお、今年度以降、さきの上部利用方針に基づきまして、連立事業者、施工者等との協議を開始する考えでございます。

 以上でございます。

◎水戸 生涯学習・地域・学校連携担当部長 歴史的、文化的遺産についての考え方でございます。

 世田谷区では、文化財の中でも重要なものにつきましては区指定文化財として指定し、その保存に努めておりますが、現在、有形、無形合わせて六十二件の指定をいたしております。区教育委員会といたしましては、文化財を祖先の歴史的・文化的業績のかけがえのない遺産であると考え、文化財保護条例に基づいて文化財の保護に努めてまいります。

 以上でございます。

◎佐藤 烏山総合支所長 北烏山六丁目の通称百メートルマンションの用地等についてご質問がございました。

 平成十二年に昭和大学が時効取得しました畦畔、これにつきましては、昨年もご答弁申し上げたように、区は関与しておりません。今回その一部につきまして所有権は、ことしの三月十一日に株式会社大京から財務省に移転されております。

 これに伴いまして同日付で、区に対し財務省より当該土地の無償貸付を申請するよう依頼がございました。区は道路法第九十条二項に基づきまして、財務省に無償貸付の申請をし、ことしの三月三十日に、当該地を無償で借り入れる契約を締結しております。いずれも道路区域内の土地所有者に変更があったための手続でございますので、道路の区域や形態には全く変更はございません。また、総合設計にかかわる道路の判断につきましては、東京都が判断する問題と考えております。

 以上でございます。

◆四十八番(木下泰之 議員) まず連立事業なんですけれども、協定等の文書等はあったのかどうか、これについては答えてください。これは地下を掘るに当たっても、工事をするにしても、上の利用がきちんと決まらなければ事業はできないはずです。ですから、何らかの協定があると思いますけれども、それは下北沢区間、それから今の経堂区間、両方について協定文書等があるのかどうか、それについてはっきりしていただきたいと思います。

 それから、富士塚の問題ですけれども、世田谷区は江戸の近郊農村として栄え、江戸時代に重要な役割を果たしていました。幕末には井伊直弼、吉田松陰の時代絵巻がこの地に展開されてきたことは周知のことであります。富士塚のような江戸時代の民衆信仰の遺跡を残すことは、世田谷にとっても重要なことだというふうに考えます。世田谷ブランドなどという歯の浮くようなことを言う前に、この地域に合った文化遺産を大事にしてほしい。これは区長も地域を大事にするということをおっしゃっているわけですから、ぜひこれは森厳寺に伝えていただきたいと思いますけれども、区長、いかがでしょうか。

 それから、烏山の問題ですけれども、これは実は、去年答弁をいただいて、そのときにわからないとおっしゃったんですけれども、昨年の六月十日に関東財務局が、これはもう時効確認は無効であるということについて文書をつくっているんですね。世田谷区にそういったことについて情報がなかったのかどうか。それから、実は昭和三十六年には、この土地は東京都から世田谷区は区道認定道路としてもらい受けているはずです。それについての情報はきちっと押さえていたのかどうか、そのことについて教えていただきたいと思います。

   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長 木下

議員からご指摘の富士塚の件でございますけれども、私は、この富士塚につきましては歴史的なことも言われましたけれども、民俗文化や歴史を検証する上からも大切なものだという認識をいたしております。ただ、これが指定文化財でもなく私有地になっているものですから、その所有者の了解を得なくてはならないということで、所管部も、また教育委員会も森厳寺の方にお願いをしているところでございますので、これからもお願いをし続けることは大切なことだと思っておりますので、ご理解いただきたいと思います。

 以上です。

◎株木 都市整備部長 高架下利用につきましての世田谷代田駅〜喜多見駅間、いわゆる経堂工区についての協定、覚書等のお尋ねでございますけれども、この区間については、十三年五月に小田急電鉄と覚書を締結してございます。それから代々木上原〜梅ケ丘駅間、いわゆる下北沢工区については、これから協議をするということで、そういった協定、覚書等はございません。

 以上でございます。

◎佐藤 烏山総合支所長 畦畔の時効取得につきまして、昨年の情報はどうかということで、これは昭和大学と財務省が行ったもので、区は関与しておりません。また、昭和三十六年ですか、一括認定道路として、甲州街道から斜めに入っています道路、東京都から移管を受けておりますが、その当時の図面等には境界等は明記されておりません。

 以上でございます。

◆四十八番(木下泰之 議員) 烏山の件は、これは非常に微妙な問題なんですよね。あそこのまさに扇のかなめの土地、この土地が接道しているかどうかによって、あそこの土地に規制緩和を受けて百メートルのマンションが建ったかどうかという大きな問題です。ですから、これについては、やっぱり区としても区の所有地として管理していたわけですから、その辺についてはきちっとわかっていたはずです。精査して、もう一度きちっと、これをつまびらかにしていただきたい、そのことを約束していただきたいと思います。

 それから、小田急電鉄との覚書があるというふうに、今の高架下の利用について言いましたけれども、それについてはぜひ開示していただきたい、そのことについてお答えいただきたいと思います。

 それから、富士塚については、ぜひこれは区長みずから森厳寺の住職さんに頼んでいただきたいと思います。やはり下北沢にとっても、そういう江戸とのつながりを持った、そういった文化遺産があるということは、非常に若者の町と言われておりますけれども、そういう重層性が出てくるものですから、ぜひそのことをお願いしたい。お答えください。

◎佐藤 烏山総合支所長 道路につきましては、斜めの道路を介して甲州街道に接していたわけですが、私の見解でございまして、これは東京都が判断するものでございます。したがいまして、ここで詳細についてご答弁申し上げるということはお約束できません。

 以上でございます。

◎株木 都市整備部長 覚書の開示につきましては検討させていただきます。

 以上でございます。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。