平成14年第4回定例会(自1126日 至124日)

世田谷区議会会議録

2002年11月27日 一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 質問通告に基づき質問いたします。

 最初に、石井代議士刺殺容疑者の区議会控室への執拗な訪問と議場への日の丸掲揚請願についてお聞きいたします。

 冒頭、右翼の凶刃に倒れられた石井代議士に哀悼の意を表するとともに、このようなテロに対し、政治に携わる者の一人として万感の怒りを表明しておきます。テロリズムは民主主義に対する敵であります。右でも左でも、宗教でも、国家権力によるものでも許してはなりません。

 報道では、石井代議士の刺殺犯の伊藤白水容疑者は一人右翼でただのチンピラ、週刊誌などでは歩く公害などというような表現まで使って、何かエキセントリックな男が金銭的な恨みで凶行に及んだかのように描かれているけれども、本当にそうなのだろうかというのが私の率直な思いであります。事件の真相は深いやみの中にあります。しかし、伊藤白水容疑者が政治的人間であったということ、少なくとも自民党、公明党を動かし、行革一一〇番や自由党、新風21も加担させて日の丸を議場に掲揚させるという右翼としての仕事をこなすだけの力は持っていた男だという事実を踏まえておかなければ、今回の石井代議士刺殺事件の真相は永遠にやみの中だということを申し上げておかなければなりません。

 先ほどの下条議員の質問に何も答えられなかったわけですけれども、問題の本質は、伊藤白水容疑者のこの二年くらいのうちの政治的な行動は日の丸掲揚請願問題にあらわれているにもかかわらず、このことに区当局が何ら関心を払っていないということであります。区が行った危機管理は同容疑者が自首した段階で終わってしまっております。本当の危機管理は、右翼が白昼堂々と代議士を殺傷した背景、これを許してしまった世田谷の政治土壌の背景も含めて関心を持ち、できるところから検証するという姿勢を持つことではないでしょうか。

 世田谷区には、戦前、政界要人を暗殺した血盟団事件に井上日召とともにかかわった大物右翼が存命、居住しており、この人物は戦後、吉田茂から中曽根康弘に至るまでの歴代首相のブレーンとして知られております。この人物が日本新党で故石井代議士が初当選したときには支援に回り、世田谷の右翼はこのときは石井氏を支援したと「週刊文春」には書かれております。そういった世田谷の土壌の中で起きた事件なのであります。本当の意味での危機管理を行うのであれば、この現実に向き合わなければなりません。区長も政治家だし、我々もまた政治家であります。政治家に対するテロに対しどのように向き合うのか、この問いかけなしに危機管理も何もないはずであります。

 そもそも、この伊藤白水容疑者が、かつて共産党本部に刃物を振り回し殴り込みをかけて、逮捕されたりした前歴の持ち主であるということは区議会事務局でも把握していたところであります。こういった人間がほか一名の署名をもって議場への日の丸掲揚の請願をする。この請願に自民党の区議会議員七名が紹介議員として名を連ねたこと自体がどうかしております。

 平成十二年の段階では、これは継続審査となりました。このときは公明党が保留する形でありました。ところが、平成十三年に同じ趣旨の陳情を他人の名義で提出すると― このことは朝日が報じております。これに土田正人自民党世田谷総支部長が呼応して陳情書を提出。民主党、共産党、社民党、生活ネット、反政党改革派、無党派市民の反対にもかかわらず、今度は公明党が賛成に回り、行革一一〇番、自由党、新風21も賛成して、ちょうど一年前の十一月議会で議場への日の丸掲揚が強引に可決されてしまったのであります。

 議場は言論の場、論争の場であります。激しく意見の対立する日の丸掲揚を、累計たった四名の請願、陳情をもって議会の多数を頼みに決めてしまうこと自体異常でありますが、そもそも主導したのは、みずから暴力を背景としていることを公言してはばからなかった右翼、伊藤白水容疑者だったということを忘れてはなりますまい。このような恥ずべき日の丸掲揚は、区議会みずからの意思でやめるべきであります。

 平成十二年の際に保留していた公明党がなぜ賛成に回ったのか、その真意は定かではありません。しかしながら、かの伊藤容疑者は、最初の請願以降頻繁に区議会を訪問し、控室を回り、さらに区議の個人宅を訪問してまで執拗に日の丸掲揚を通すことを働きかけていたことは事実なんであります。

 看過できないのは、そういった訪問の際の書籍の押し売りです。伊藤白水容疑者は、私の控室にもふらっとやってきて、みずからが右翼活動家であることを一くさり語った後、関連する書籍を買ってくれないかと持ちかけてきたことがございました。その際、私は、あなたと私は考え方も違うし、そういった資料は買わないことにしているときっぱりと断りました。それ以降私のところには訪れることはなくなりました。しかし、伊藤容疑者はつい最近まで、区議会五階エレベーターホールに陣取っては、執拗に区議会議員とのコンタクトをとっていた姿が散見されていたことは皆さんよくご存じのことであります。

 日の丸掲揚請願に賛成することを執拗に迫られたり、伊藤白水容疑者に必要もない書籍を買わされた議員はたくさんいるのではないでしょうか。区幹部も買っていたのではないでしょうか。これはポケットマネーだとしても問題であります。先ほど部長は不当な要求には応じないとの立場をとってきたと答えましたが、まさに幹部職員が執務中に押し売りに応じたというのが真相ではないでしょうか。区も、各政党会派も、対応方がどうだったのか徹底検証すべき問題なのであります。伊藤白水容疑者の暴力を背景とした右翼活動を助長してきた世田谷区政そのものが問われていると言わなければなりません。

 以上の状況を踏まえた上で、幾つかお聞きいたします。

 まず第一に、石井代議士刺殺容疑者の議場への日の丸掲揚請願とその採択の経緯に対する区長の所見、感想を求めておきます。

 第二に、石井代議士刺殺テロの背景について、区の把握しているところを明らかにしていただきたい。

 第三に、テロ、暴力を示唆、あるいは背景とする右翼に対し、区としてはどのような対応をとっているのか。また、指針はあるのか。警察、公安の対応がどのようなものであるのかについても示していただきたい。

 第四に、区議会事務局処務規程は、服務規程や雑則を特に定めのないものは区長部局に準ずるとしているが、区長部局での対応の留意点はどうなっているのか明らかにしていただきたい。

 第五に、職員は職務中に物品購入や書籍購入を行うことを拒否することを指導することはできたと思うが、なぜそうしなかったのかお伺いしたい。

 第六に、今回、区議会、区役所に頻繁に出入りし、区議会議員、区職員に書籍の購入を強要してきた伊藤白水容疑者の動向や区職員の対応について調査を行ったのか。行っていないとすれば行うべきであると考えるがいかがか。一体何人が書籍を買わされたのか調査すべきであります。どうか真摯にお答えいただきたいと思います。

 次に、超高層再開発・居住及びいわゆる都市再生の規制緩和に対する区の対応についてお聞きします。

 規制緩和に基づく一連の法改正は都心に超高層ビルを林立させ、その余勢を駆って世田谷区にも超高層再開発、超高層居住の波が押し寄せようとしております。既に決算議会や都市整備常任委員会でも取り上げてきましたけれども、超高層居住による心身症は超高層症候群として注目されております。超高層居住による子どもの心身に与える影響が心配されております。

 そこで第一に、超高層症候群と超高層居住の問題点について区がどのような見解をお持ちか、お伺いします。

 駒沢のマルコーの百メートルワンルームマンションで問題が持ち上がったときに、他地域での超高層建築の危険を指摘し、これを未然に防ぐ対策を求めました。しかし、深沢で六十メートルの、また今度は北烏山六丁目で百メートルのファミリー型マンションが計画されることになってしまいました。片や都立大の、片や昭和大学病院跡の、いずれの場合も既存大規模施設の廃止による再開発ですが、いずれも大学や病院であるために用途の優遇措置を受けていたのだから、その用途を居住用に転用するのであれば、周辺の居住地に合わせた用途に戻すべきであります。ところが、区としてそういった働きかけを行った形跡はありません。マルコーワンルームマンションの際の苦い思いの教訓はどうなってしまったのかお伺いしたい。これが第二の質問です。

 第三に、二子玉川超高層再開発と超高層居住戸数の増加についてお聞きいたします。

 そもそも二子玉川再開発の出発点は、バブル時に見積もったオフィス需要によるものではなかったでしょうか。そのもくろみが外れると今度は超高層居住にシフトをしましたが、このこと自体、超高層居住が経済破綻の穴埋めを目的に企画されている証左ではないでしょうか。税金が投入されることになる事業ゆえに超高層居住の是非が問われるべきでありますが、そのような検討はなされたのかどうかお聞きしたいと思います。

 第四に、経堂駅周辺、下北沢駅周辺など小田急沿線の超高層再開発計画の存否と区の方針についてお聞きしておきたいと思います。一体計画はあるのかないのか、そのことについてお聞きします。

 第五に、都市再生法など一連の規制緩和絡みで国や東京都は区にどのような指示、あるいは誘導政策を求めてきているのか、お伺いしておきます。

 第六に、区の方針についてお聞きしておきます。私は超高層居住は危険な人体実験であるというふうにあえて指摘をしておきます。区の方針をお聞かせください。

 以上、壇上からの質問といたします。

   〔大場区長登壇〕



◎大場 区長 伊藤さんの人柄については私は全然知りません。

 また、議場への日の丸掲揚についての請願につきましては、区議会で慎重審議の上、民主主義のルールのもと採択されたものと認識しております。



◎池田 危機管理室長 私からは、石井代議士刺殺容疑者の犯行の背景等について調査したのかとのご質問及び書籍購入等についての調査を実施したか、この二点についてご答弁申し上げます。

 今回の事件については、犯行に及んだ背景等も含め、公安当局の捜査の範疇であると考えております。

 また、二点目の書籍購入等については、その調査を行っておりません。  以上でございます。



◎永山 総務部長 右翼に対する留意点というお話でございますけれども、先ほどもご答弁申し上げましたけれども、不当な要求には一切応じないと。そうした気持ちで、毅然とした態度で臨むということを基本に考えております。

 以上でございます。



◎栗下 建設・住宅部長 超高層居住の問題についてご答弁申し上げます。

 高層住居では、心身のストレスの増大や防犯性能の低下などが一般的に言われてございます。こうした中で厚生省は、平成五年度から平成八年度にかけまして、高層住居に関する心身障害研究が行われております。まず、平成五年度の高層住居に伴う母子関係の変化に関する研究では、二つの高層住宅において、四歳から六歳の幼児を持つ母親を対象として、幼児の生活環境の自立の状況などを調査分析をしているところでございます。これは昭和六十二年の調査の結果と比べ居住の住まい方の改善が認められ、幼児の自立、障害等については、居住階による大きな差異はないというふうな報告がなされてございます。

 また、平成七年度の居住環境が都市化に伴う母子心身の変化、今後に向けた対応と提言では、平成五年度からの一連の研究を受け、高層住居の乳幼児は生活習慣の自立がおくれがちであるが、情報のフィードバックを適切に行うならば、それは解消し得るという結果でございます。

 また、自己の居住環境を居住者自身がどの程度許容できるかという問題があり、居住者自身がその環境と個々の居住者の持つ条件とのバランスの上に立っていかに健康的に対応するかが最良の問題解決につながると、こういうまとめをしているところでございます。

 こうした中で、平成十年に川口市で建設されたエルザタワー55という超高層マンションがございます。この超高層マンションでは、共用空間を各階の廊下から見える位置に配置し防犯に配慮するとともに、子どもの広場や休憩スペースなど共用空間を中間階に設置し多様な居住者相互の交流を図り、ストレスを低減させるなどの計画上の配慮がなされている建物でございます。

 区としては、高層あるいは超高層住宅への居住は区民の自由な選択によるものと考えておりますが、居住者自身の住まい方の工夫や、子どもや高齢者など多様な居住者の住まいの場として十分に配慮した計画が必要であるというふうに考えております。いずれにいたしましても、今後ともさまざまな研究などを区としても関心を持ちながら、国等の動向を見ながら見守ってまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。



◎佐藤 都市整備部長 高層住居に関連しまして深沢及び北烏山への対応はどうかというお話がございました。

 高さ制限につきましては、絶対高さが定められている第一種、第二種低層住居専用地域以外では斜線制限のみが適用され、大規模敷地においては高さのメリットを最大限に生かした建築物が計画されてきております。こうした現行の法に基づく計画であれば、行政の指導や要請には限界があることも事実でございます。このため今回の用途地域見直しに合わせまして高さ制限を定めようとしていることは、これまで申し上げてきたとおりでございます。

 なお、都市計画決定前に着工される建築物にはこれらは適用できませんが、用途地域見直し後には高さの制限に基づく指導が可能となり、区内の住環境保全の一助になるものと考えております。したがいまして、お話にございました二つの計画に対しましては、これまで行ってまいりました要綱による指導を引き続き行ってまいります。

 次に、都市再生法絡みで国や都からどのような指導があったか、あるいは区の方針はというお話がございました。

 都市計画や建築規制のすべての適用を除外できる都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域の指定につきましては臨海部などが対象となっております。このことから世田谷区内で指定を受けているような区域はございません。

 また、都市再生に関連する建築基準法等の一部改正により、用途地域に定める容積率の選択肢が、商業地域及び住居系でそれぞれ一三〇〇%及び五〇〇%まで拡大することとなります。しかしながら、都としても、適用区域については用途地域指定基準の中で示しておりますように都心部を対象とする方針でおります。さらに総合設計制度において建築確認の手続で容積率の緩和が可能となりますが、このほど東京都より照会があり、区といたしましては容積率緩和とならないよう回答していく予定でおります。したがいまして、法改正に伴う規制緩和につきましては、現在のところ世田谷区ですぐに適用するような方向では考えておりません。今後とも慎重に検討していきたいと考えております。

 以上でございます。



◎根岸 玉川総合支所長 二子玉川の超高層再開発と住戸数のお話についてお答えいたします。

 二子玉川東地区は、市街地再開発事業の手法を用いて土地の高度利用を図ることにより区域内に多くのオープンスペースを生み出し、区民の方々が憩い、集える安全で快適な歩行者空間や緑化スペースを創出し、商業、業務、住宅のバランスのとれた市街地整備を目指すものでございます。

 また、この事業は地元権利者による都市計画事業として進めるものでございます。具体的には、第一種市街地再開発事業、再開発地区計画、高度地区、防火地域等が平成十二年六月に都市計画決定されており、また、環境面におきましては、都市計画にあわせて東京都の環境影響評価条例による環境アセスメントを行っております。

 また、居住戸数についてですが、ご案内のとおり、再開発事業は関係権利者の合意とあわせて事業の採算性も重要な要件であります。その意味で、多摩川や国分寺崖線などの水と緑にあふれる立地環境では住宅の需要が見込まれており、それを施設計画に反映したものと認識しております。

 以上です。



◎谷田部 北沢総合支所長 お話にありました小田急線下北沢駅、経堂駅周辺につきまして、区の都市整備方針の中では、土地利用の将来像として、地域生活拠点、あるいは広域生活拠点ということで商業拠点ゾーンと位置づけをしているところでございます。現在進められております複々線化・連続立体交差化事業に合わせたまちづくりの中では、現在のところ、いわゆる超高層ビルの計画はございません。今後も区といたしましては、この都市整備方針の趣旨に沿いまして、住民の合意を得ながら、それぞれの地区特性に合わせたまちづくりを進めてまいります。

 以上でございます。



◆五番(木下泰之 議員) 伊藤白水容疑者に物品購入を迫られたわけですけれども、これの数等についてきちっと説明してください。

 それから、どういう対応をしたのか、もう少し詳しく説明してください。



◎永山 総務部長 職員が本を購入することには、今回特別に指示はいたしませんでした。しかし、この事件を機に、この種の対応については検討していきたいというふうに考えています。

 以上です。



◆五番(木下泰之 議員) 大体オウム問題でも危機が去った後に非常に熱心になるわけだけれども、こういった本当の意味での危機に対して何ら危機管理をやっていない。このことは非常に問題です。



○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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