2002年3月19日予算委員会質疑<都市整備委員会所管>区調査の誤導、下北沢地区も街づくり


○山口〔裕〕 委員長 引き続きまして、無党派市民、どうぞ。

◆木下 委員 小田急線の問題についてお尋ねしますけれども、裁判で住民側が勝ったにもかかわらず、いまだに工事が進み、そういう形になっている。それに対して、区の方としては、裁判をやっているからというようなことで、ずっと逃げているわけですけれども、しかし、二月に下北沢で説明会がありました。違法な事業に接続するような事業の発表ですので、それ自体違法だというふうに私は思っているんですけれども、ただ、発表された内容を担当者にいろいろ詰めていく中で、新たな事実がわかってまいりました。

 下北沢地域で四線高架でやった場合と二線二層地下でやった場合の工事費が同等だというのは去年の説明会でもありましたけれども、用地費と工事費の内訳がわかってまいりました。四線高架の場合は、用地費が四百五十億円、工事費が九百五十億円、計千四百億円。それから、二線二層地下は、用地費が百億円で、工事費が一千三百億円で、一千四百億円。ちなみに地下の四線並列の地下化が、用地費が百五十億円、工事費が一千四百億円で、一千五百五十億円という数字が出たわけです。

 ところで、世田谷区は昭和六十二年の六月に小田急沿線街づくり研究会報告書というのを出しています。この中では、四線高架式の場合、これは一・五キロメートルで出していますけれども、用地費が八百七十億円、工事費が二百三十億円、それで一千百億円。それから、地下式については、用地費が九百二十億円で、工事費が七百四十億円、一千六百六十億円、一・五一倍高いということが出ているんですね。

  これを今回の二・二キロメートルに直してみますと、これは一・四六七倍してみるとわかるんですけれども、四線高架の場合、用地費が千二百七十六億円、工事費が三百三十七億円、それから地下式については、用地費が一千三百五十億円、工事費が千八十六億円、そしてトータルが二千四百三十五億円になるわけです。

 これを見ますと、驚くべきことがわかるわけですね。四線高架の工事費が、以前は一・五キロメートルでたった二百三十億円、二・二キロメートルに換算しても三百三十七億円なんですね。今回、四線高架の工事費が九百五十億円かかると言われています。これはどうして違うんですか、三倍ぐらい違うんですね。結局、高架がそれだけ高くかかる、高上りだということがわかったわけですけれども、これについてはどう説明されますか。

◎堀川 交通企画課長 ただいまの件でございますが、まず、さきに委員がご紹介になられたのは東京都の説明会の方の数字でございますが、こちらについては、平成十二年での積算の数字かと存じます。それから、昭和六十二年の当時のものは、当時の数字だと思います。また、構造等もいろいろ違っているのではないかと思いますので、詳細は今不明でございますが、そういうような違いの理由があるんだろうと存じます。

◆木下 委員 いずれにしても、当時も、昭和六十二年のころも、四線高架で下北沢が非常に困難な工事だということはわかっていたわけですね。それではじいた数字が、高架の工事費が二百三十億円、一・五キロ、二・二キロに直せば三百三十七億円なんですね。それに対して、今回、九百五十億円かかるというんですよ。これは三倍近くなる。これはもうめちゃくちゃですよね。

 それから、今回、地下と高架が同等だと出ましたけれども、短い範囲で同等だということは、六・四キロ、今の事業区間に直していけば、圧倒的に地下の方が優位だということが出たわけですね。特に二線二層地下というのは、前は一切考慮に入れていなかったですから。そうすると、結局は、それは地下化の方がよかったし、それでやっていれば、もう既に完成していたと思うんですね。

 そういった意味で、世田谷区は街づくり研究会報告書までつくられたわけだし、世田谷区のこの間のこの事業に対する責任というのはどういうふうに考えていますか。これは原部長、お答えいただけませんでしょうか。

◎原 都市整備部長 世田谷区では、この事業に対しては、東京都に協力するという立場でずっと協力をしてきているところです。それで、その事業の考え方としては、やはり世田谷区は、小田急沿線で箱根方面も含めて、大変な通勤者を運ぶ鉄道の骨格をしっかりつくる必要がある、基盤整備をする必要がある、それの手伝いをしっかりすること。それから、その工事をやりながら、沿道の環境にできるだけ迷惑がかからないようにすること。それから、下の道路の踏切部分をできるだけ減らして安全な交通ができること。幾つか理由がありますが、そういうことを目的に、この事業が早く進むように努めてきたところであります。

◆木下 委員 何も答えていないですね。つまり、区民に対してミスリードしたことについて、やっぱり責任の一端を感じるということを表明していただきたいと思うんですね。

 そして問題は、裁判になっているからといって逃げるのではなくて、やっぱり今まで世田谷区がやってきたことが本当に正しかったのかどうか。しかも、東京都からの情報について、平成十二年度の調査をとったのかと聞いたところ、それはまだもらっていませんと言うわけですよね。そういうことで地方分権なんていうのもあり得ないと思いますし、そういったことで、このことについては厳しく批判しておきます。

 それから、下北沢のまちづくりについてちょっとお尋ねしたいんですけれども、私は、下北沢というのは井の頭線と小田急線が交差しているということで、車を使わなくて楽しめる町として下北沢が繁栄してきたということがあると思うんですね。町の人たちもそういう認識を持っていて、広い道路がそこに通るということについては非常に危惧を持っている。だから、五四号線については、これは何とか三線道地下にでもしてくれないか、そういう声まで上がっているわけですけれども、しかし、そのまま去年の説明会どおり、これを強行しようとしているわけですね。

 そこで、まちづくりの考え方についてちょっとお尋ねしたいと思うんですが、原部長にお聞きしますけれども、最近、ジェーン・ジェイコブスという方が再評価されているそうです。ル・コルビジェとジェーン・ジェイコブスのまちづくりの指標についてどういうふうに違うか、ちょっと説明していただけますでしょうか。

◎原 都市整備部長 これはお話しすると長いですが、コルビジェというのはフランスの建築家でありまして、三百万都市というようなことを構想して、パリに壮大な計画を立てる、そういうことを考えた人。それからジェーン・ジェイコブスという方は都市学者であって、都市の再生、それをニューヨークにおいてどのようにするかということでいろいろ提案をなさった方と理解しております。当時、ニューヨークでは、かなり市の財政も逼迫していた時代に、どういうふうにどういう手順でやっていくか。それから、当時、市民参加というのは余りなかったようですが、そういうことも考えながらやっていこうということを、おぼろげながら、昔本を読んだことで覚えております。

◆木下 委員 「アメリカ大都市の死と生」というのを書いていまして、つまり、コルビジェの場合とは違って、ジェイコブスは、大地の原則は、道路はできるだけ曲がっていて幅の狭い方がいい、再開発に際して古い建物をできるだけ残した方がいい、都市を構成する各地区はそれぞれアイデンティティーを持った多様なものでなければならないと言って、近代的なコルビジェ思想に真っ向から反対したわけです。

 下北沢のまちづくりというのは、まさにこのジェイコブスの言ったような形でやらなければ町が死んでしまうと思うんですね。そういった意味で、この都市計画については、世田谷としての独自の考え方を持って、原部長もそういったことについては研究されているんでしょうから、まさに新しいまちづくりとしてやるためには、今の計画を変えなければいけない、そう思いますけれども、いかがですか。

◎原 都市整備部長 できるだけ歩行者優先というようなことで、あそこが持っている性格を生かしながらやっていきたいと考えています。

○山口〔裕〕 委員長 以上で無党派市民の質疑は終わりました。

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