平成13年第1回定例会(自31日 至329 日)

世田谷区議会会議録

2001年3月29日 平成13年度予算への反対討論


○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 世田谷区一般会計予算外四件について、反対の立場から討論を行います。

 下北沢地域の小田急線の線増連続立体化事業について、東京都は去る二月二十七日に、ようやく線増・在来線含めての地下化方針を公表いたしました。既に私は、三月二日の一般質問、三月九日の平成十二年度補正予算への反対討論でも意見を表明しておきましたが、予算審議を踏まえ、大事な問題ですので、もう一度まとめて申し上げておきます。

 下北沢地区の小田急線の地下化方針が公式に東京都から公表され、在来線、線増線ともに地下に潜ることになったのは、一九六四年の平面拡幅の現行都市計画決定の後、執拗に高架複々線計画を求めた小田急電鉄と東京都に対し、粘り強く地下化推進の代替案を求めてきた市民側の運動の勝利を意味するものであります。一九八七年と一九八八年の二カ年にわたって行われた国庫補助つきの都の事業調査は、喜多見〜東北沢間を対象地区として行っており、既にこの時点で下北沢地区の地下化方針は固まっていたにもかかわらず、東京都はこれを隠すために下北沢地域に限り結論を先送りとし、喜多見〜梅ケ丘間と梅ケ丘〜東北沢間を分断して施工することを決め、本来公表すべき事業調査をも秘匿して、喜多見〜梅ケ丘間の高架を強行してまいりました。

 これはなぜか、アーバンルネッサンスのかけ声の中で、都心近郊の鉄道沿線中核都市の育成をもくろんだ政府と東京都が、小田急においては大規模再開発の拠点を下北沢でなく経堂に置き、ここに超高層ビル群の建設計画をもくろんだからでありました。一九九〇年八月に創設された第三セクターの東京鉄道立体整備株式会社は、連続立体交差事業化を、事業を通じて東京の鉄道沿線各地に大規模超高層ビル群の建設と、これをつなぐ道路網の一挙的整備のためにつくられたものであります。

 NTT資金を種銭に、銀行、損保、生保などの民間資金を導入し、東京近郊都市を新たに創設するのがねらいでした。そのためには、土地の高度利用計画にダイレクトにつながる高架計画が必要であったわけで、その目的のためにのみ、既に一九九〇年の段階では都市部の鉄道整備技術としては、もはや時代おくれになっていた高架計画を公表し、一九九一年の素案の説明会、一九九二年の都市計画案の説明会を経て、一九九三年には、高架都市計画を決定し、一九九四年に、細川政権下の五十嵐建設大臣による提言に基づく住民との話し合いをほごにして事業認可を強行、翌一九九五年の一月、阪神大震災の高架崩壊の映像が流されるさなかに、工事のくい打ちを強行したものであります。

 ところが、時代は逆の方向に進みました。バブルの崩壊とその後の深刻な不況であります。今や経堂に駅ビルを含めての超高層ビル群を林立させることなど、とてもできません。何本かは建てるかもしれません。

 そこで、計画の縮小に動かざるを得ない、無用の長物となり、市民側から違法と訴えられた第三セクター東京鉄道立体整備株式会社は、昨年三月に解散せざるを得なくなったのであります。

 一九九〇年九月には、市民は、この第三セクター東京鉄道立体整備株式会社の設立に異を唱え、行政出資の取り消しと同社の解散を求めて監査請求を行い、住民訴訟を戦い初めました。これは、大きな市民運動の転換でありました。後に、情報公開訴訟、認可取り消し訴訟、不当調査への住民訴訟、工事差しどめ訴訟、運賃値上げ許可取り消し訴訟と、専門家の協力を得て、都市の大規模再開発事業としての連続立体交差事業の実態をあまねく暴いていったのであります。

 今では、東京都の提示した数字を使ってさえ、喜多見〜梅ケ丘間の二線二層の地下シールド代替案が立体交換の手法を伴って評価すれば、現行高架計画の三分の一の総事業費で地下化が可能であることがはっきりしており、裁判の中でも、東京都はこの数字を覆すことはできないのであります。これは下北沢の地下を前提とした試算であったわけでありますが、もはや下北沢が地下だということがはっきりしたわけでありますから、この地下化代替案が三分の一でできるという、この事実は覆すことができない、そういうものとして現にあるわけであります。

 昨秋には、事業認可取り消し訴訟では、建設省は、裁判所により線増部分、すなわち複々線部分が建設省認可なしに工事が進められていくことに裁判所より疑義が呈され、また、高架、地下の費用比較が不当ではないかとの疑義も含めて、異例の文書による求釈明が裁判所から求められて、さらには、市民側専門家が公表した明治神宮から多摩川まで鉄道を地下にして地上を緑道とする代替案を裁判所が評価して、これをもとに原告、被告ともに話し合うつもりはないかという事実上の和解勧告まで行ったのであります。建設省の拒否で、この訴訟は六月には結審、秋の判決というふうになります。

 また、四月十九日には、第三セクターの取り消し訴訟で、東京都の古川建設局長が尋問を受けることになっております。古川局長は、一九九一年の素案、一九九二年の都市計画案の説明会の陣頭指揮をとった当時の課長であります。

 そういった状況の中で、四月十日、十一日、十二日の三日間、下北沢地域の地下化の説明会が行われるわけであります。この説明会の特徴は、道路、鉄道、まちづくりが一体の事業ということから、同時に説明会を開催するというものであります。経堂地区の小田急線の連続立体事業の素案の説明会あるいは案の説明会のときには、こういう方法はとりませんでした。

 実際には、小田急線の問題は都市部再開発の問題でありますから、道路の問題、まちづくりの問題が一体的な問題としてそのときに説明されなければいけないわけですけれども、それを返してきた。そういったことに対して裁判等での批判に抗し切れず、例えば調布では、道路、まちづくり一体とした説明会が行われました。その流れの中で、今度下北沢では、まちづくりと一体となった説明会が行われるわけであります。

 まさに、連続立体事業のその本質を裸にして説明会をしなければならなくなった、そういう事態を迎えていると思います。この説明会の日程が区議会に伝えられたのは、三月二十三日、再三、予算委員会の審議で具体的日程を聞いてきたにもかかわらずであります。三月二十一日が都市整備領域の質問日であります。担当者は知らなかったわけはありません。三月九日には打ち合わせもやっているわけであります。担当者は明らかに秘匿していたのであります。

 予算委員会では、原部長は、構造形式についても、また下北沢の連続立体交差化事業が幾らかかる事業なのかについても、三月二十六日の補充質疑においても、いまだ知らされていないと言い張っておりました。それでいて、下北沢地域の駅周辺整備事業には百億円かかるという具体的数字を挙げている。私の質問には答えず、自民党の畠山さんの質問には答えたのであります。

 そもそも法定の連続立体事業調査は比較設計を義務づけられており、具体的数字を挙げることになっております。平成十二年度に調査が行われ、三月中には終わっている。もう既に終わっているはずであります。世田谷区は、一九八七年六月に、高架、地下の比較で地下化は全線で高架の一・六五倍、下北沢地域で一・五倍との具体的数字を挙げ、これが高架やむなしの世論誘導に使われたことを考えれば、比較設計上の数字を明らかにしなければ、区の説明責任、アカウンタビリティーを果たしたことにはならないわけであります。しかも、中央復権コンサルタントに三年度にわたって金をかけて調査を依頼しているわけであります。調査実施の際、区議会に結論に基づく区の方針の立案を約束しているんだから、いまだ計画の詳細も知らされていない、事業費もわからないでは済まされません。

 区長に至っては、今回の予算委員会での総括質疑で、下北沢はもともと高架にはできなかったとのたまわった。しかし、高架は無理であったなら、つい最近まで在来線の高架計画の可能性は消えていないと言い張った区の公式見解は一体何だったのでありましょうか。区長は、下北沢の駅前市場の老人たちの苦労を知っているのでしょうか、十年も待たされ、生活設計が立たず死んでいった者、年を重ねていった老人、そういう区民に一体どういう責任を持とうというのでありましょうか、モラルハザードも甚だしいと言わなければなりません。小田急線の予算もさることながら、このような区長の編成する予算に賛成するわけにはいかないのであります。十年間のこの空白、責任をとってもらいたいというふうに思います。区長はやめるべきであります。
 以上です。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

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