平成11年第3回定例会(自920日 至1020日)

世田谷区議会会議録

1999年9月22日 一般質問


○山内彰 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 通告に基づき一般質問を行います。

 本日の質問は、バブル期に世田谷区が犯した誤りの是正についてお聞きすることにいたします。通告した課題のうち、超高層一般に関する質問は決算特別委員会等の機会に譲りたいと思います。十分の質問ではやはり時間が足りません。
 最初に、小田急線の梅ケ丘以東新宿までの地下化方針と現高架工事区間の見直しについてお伺いいたします。

 昨年十二月八日に都議会で東京都の都市計画局長が梅ケ丘−東北沢間の地下化方針を公表したことは、新聞にも報道されたことでご承知と思いますが、梅ケ丘以東新宿までの地下化方針についても公にされていることはご存じのない方も多いと思います。「首都圏計画地図」という青山●東京都副知事と佐藤一夫東京都技監が監修した本が本年五月に公刊されました。この中に、梅ケ丘以東新宿まで地下の方向で計画されていることがはっきり書かれているわけであります。

 現在の工事区間のうち成城から梅ケ丘までは高架ですが、野川から成城までは掘り割り地下です。梅ケ丘から新宿までが地下方式ということになれば、たった五キロほどのこの地域が高架だというのはいかにもおかしい。今や、だれの目にも明らかであります。地形的には下北沢がくぼ地で、この区間が台地ですから、新宿から成城まで地下で貫通させた方が素直だからであります。

 さてそこで、今からでも地下化に見直し、やり直したらどうか、そのことについて改めて提案しておきたいと思います。

 私は、この壇上から何度か、地下と高架とを比較した場合、民間では常識になっている立体換地、立体交換で評価すれば、東京都の示した数字を使っても、喜多見−梅ケ丘間は二線二層地下方式が七百三十三億円、四線高架方式が二千三十八億円で、地下方式は高架方式の三分の一となるということを申し上げてまいりました。ところが、理事者側がこの比較については何らの論評も反論もしておりません。地下方式が高架方式の三分の一という数字は、現在の高架構造物を壊してさえも、地下方式への転換は費用的にいっても見合うということを意味します。

 それだけではありません。国道四三号線最高裁判決に反する甘い認定であるにせよ、昨年七月に在来線の騒音が違法であることを政府が認定した以上、高架複々線を走らせることは違法状態を解消できないことを意味します。南側に環境側道をとっておらず、民法上の五十センチぎりぎりのところを高架鉄道が走るというのが現計画です。これで違法性が解消できるわけはありません。

 代表質問のときから何度か環境を重視するというふうに区長や助役、担当部長から語られてまいりました。環境を大事にする以上、このようなことを許してはいけません。しかも、地下方式に転換しても採算がとれる。立体換地の評価や環境問題の評価を世田谷区はきちっとコメントした上で、この醜悪な高架事業を見直すのか続行するのかどうかを語るべきであります。

 世田谷区は、バブル全盛期の時代の昭和六十二年に川上委員会を使って成城−梅ケ丘間の高架計画をミスリードしてきた責任があります。区議会はそもそもかつては全会派一致で地下化推進という正しい態度をとってきたわけであります。世田谷区が高架事業にくみしてきたことが正しかったのかどうか見直しを検証検討するつもりはおありか、新宿までの地下化方針が公表されていることを踏まえてきちん答えていただきたいと思います。


 次に、世田谷区と東急電鉄との二子玉川再開発及び三軒茶屋再開発に関する秘密協定についてお聞きいたします。

 秘密協定と通告に書きましたので、何か新たな文書が暴露されるのかとの期待もわいたと思いますが、それは特にございません。七月に各会派に配られた「(仮称)二子玉川公園計画に関する協定・覚書等について」と題する一連の文書について言っているのであります。

 昭和六十一年十一月十五日の覚書から六十三年七月二十九日の協定書まで、これらの文書については本年三月の第二回区議会定例会で他会派から提出が求められていたにもかかわらず提出されることもなく、相手側の了解、つまり東急電鉄や東急不動産の了解が得られて本年七月に初めて公表されたわけで、それまでは区議会議員も都市計画審議会委員も、ましてや一般区民にも伏せられてまいりました。

 この一連の文書は、二子玉川再開発と三軒茶屋再開発の根幹にかかわるものであります。昭和六十三年七月二十九日の協定は、二子玉川の計画公園及び緑地となっていた東急所有の土地について、一部の公園解除と指定がえや用途の変更を世田谷区が努力し実現することを見返りに、東急が自社所有地を世田谷区に無償提供することを定めています。そればかりではありません。同時にこの協定で尊重を義務づけた六十一年十一月十五日の覚書では、三軒茶屋太子堂地区再開発第二工区について、駅舎移転や連絡地下通路の新設の実現を約束した上、東急電鉄の保留床の取得、商業床対策、組合事務局への参画までを保障した内容となっているのであります。都市開発室が三月に明らかにした資料によりますと、この金額は百九十億円近くにもなります。つまり、無償提供を約束した金額は、その土地の金額は百九十億円近くにもなるのであります。

 そこで、お聞きしたいと思います。一体、東急という有力な一企業と区が再開発計画についてこのような協定を交わすことが許されるのかどうかということであります。二子玉川再開発に関しては、無償提供の約束と引きかえに、東急の意向を酌んで計画公園の解除と配置がえは既に行っている。二子玉川での協力を担保に、三軒茶屋再開発に区は東急に全面的に便宜を図っている。東急とて、百九十億円もの土地の無償提供を約束する以上、見返りを求めるのは企業としては当然のことであります。しかし、そういった関係を私企業と行政が取り結ぶことが許されるのかどうかということであります。区長のお考えを聞きたいと思います。

 また、この際、他の企業体、例えば、小田急電鉄などとのこの種の協定書や覚書などがあるのかどうかについてもお答えいただきたいと思います。

 二子玉川は都市再開発法を適用して再開発を行おうとしておりますが、密集市街地の再開発を目的としたこの都市再開発法の立法の趣旨からいっても、計画公園の解除と指定がえから始まったこの再開発計画は間違っていると私は考えます。
 また、そもそもこの計画はバブル期に二子玉川にコンベンションセンターなどを誘致する国際性や副都心化をコンセプトに計画が提示されていたことを考えれば、見込みが違ってバブル経済が崩壊した現在、そのコンセプトや規模の大幅な見直しがなされてしかるべきであります。

 バブル期に構想したまま再開発を行うことは時代にそぐわないばかりか、必ず失敗します。公園が無償でもらえるからなどというこじき根性は捨てて計画を撤回し、駅周辺地域の再開発のみに縮小し、二子玉川園跡地はもとの計画公園に戻すべきであります。東急との癒着の清算のあかしはそれしかないと考えますが、計画の撤回、見直しを行うつもりはあるのかどうか、区長にお聞きいたします。

 また、はしなくも、今回の秘密協定書と覚書の発覚で二子玉川再開発のみならず、三軒茶屋開発での東急とのあってはならぬ癒着が浮き彫りになってきたわけであります。一連の覚書、協定書についての責任者はだれなのかを明らかにすると同時に、責任のとり方について言明していただきたい。
 以上で壇上からの質問といたします。


◎原 都市整備部長 小田急について、それから二子玉川について幾つかお話がありましたので、お答えします。

 まず初めに、小田急線の梅ケ丘以東新宿までの地下化方針と高架の見直しをせよということで、その根拠に、現東京都副知事、その他の方が書かれた「首都圏計画地図」というのに位置づけられておるというお話がありました。この本につきましては、議員がほかの委員会でご質問があったときに申し上げましたように、私どもは、このサブタイトルに「ビジネス発想の大ヒント集」と書いてあるように、計画書ではなくて、そういうプロジェクトブックだと理解しておりますと申し上げました。事実、副知事の権限の及ばない筑波学園都市とか、そういうことも記述がありますし、あるいは二子玉川東についても進めると書いてございます。そういう内容のものであって、プロジェクトのカタログであります。

 文中には、小田急線連続立体交差事業についてご指摘の記述がございますけれども、線増部分の方向性を示したもので、既設線の立体化の方針についてはまだ決まっておりません。

 梅ケ丘以東の構造形式につきましては、これまで何度もお話ししてきておりますように、昨年十二月に小田急線東北沢−梅ケ丘間整備方針検討会が設置されておりますので、その場に区もかかわって検討しておりますし、今後もその場を使って検討してまいります。

 また、現在工事中の区間についても高架の見直しをという点でございますが、梅ケ丘駅−成城学園前駅間の工事進捗率は平成十年度末で三九%に達しており、区といたしましても、一日も早く事業を完了して鉄道と道路が立体化され、より踏切事故や交通渋滞が解消されて安全が図られると同時に、あわせて駅周辺のまちづくりが進むことを願っておりまして、高架の見直しについては考えておりません。
 それから、二番目、二子玉川についてであります。一企業と区の秘密協定は許されるのか云々でございます。

 秘密協定という言葉を使われましたが、これは秘密でもございません。ご存じかと思いますが、都市計画事業、あるいは市街地開発事業というような事業を進めていくときに、特にそこに区が何の権原も持っていないときにどのようなことを担保しながら事業を進めていくかと。特に、そこをある拠点づくりとして、区のまちづくりとしても大事だと考えているときには、手順を踏みながら、それから節目節目にある約束も確認をしながら進めていくということは大変大事なことであろうと思います。ですから、これは秘密でもなくて、プロジェクトを進めるときの基本的な信頼関係に基づく約束であろうと思っております。

 これにつきましては、ご承知のとおり二子玉川地区は広域生活拠点というもので、かねてより区の基本計画に位置づけられております。二子玉川公園の整備に当たりましても、広域生活拠点というものにふさわしい公園として整備を予定しているものであります。

 こうした区の考えに対しまして、地権者から広域生活拠点である二子玉川地区のまちづくりに貢献したい旨の協力があって、二子玉川公園の一部について寄附の申し出があったものでございます。その確認として協定を交わしたものも公開しております。こうした協力を確認しながらまちづくりを進めるということは、今申し上げたように、ある場合には必要なことだと思っております。

 まちづくりを進める場合には、財産にかかわることが多く地元の協力は不可欠であります。また、仕事の流れ上、こうした協定ということは折々交わしながらよりよいまちづくりを担保していくということは必要なことであろうと思います。

 他の開発についてこうしたことを行っておるかということでありますが、今申し上げたような手順として必要なときは交わしております。既にご案内のとおり、小田急線連続立体交差事業につきましても、立体交差事業及び複々線化に伴うつけかえ道路に関する協定というものは小田急、世田谷区、その他とありまして、それは既に議員にも差し上げているところであります。そのようなものはあるということをご理解いただきたいと思います。

 小田急線連続立体交差事業に関連しまして、例えば、区道のつけかえに関しまして、こうしたことをしながら用地の確保、スケジュールの確認、工事の施工、役割分担のことを踏まえながら事業を進めているところであります。

 最後に、こじき根性ではなくて計画の撤回をしろというようなことでございますが、何度も申し上げているとおり、この二子玉川地区というのは区としても広域生活拠点として大事なことであろう、特に県境であり東京区部の入り口であるという、そういう役割をやはりしっかり認識をして、広域生活拠点にふさわしい公園整備、拠点整備をしていきたいと考えております。
 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) 今お答えがありましたけれども、百九十億円もの価値のある土地が無償提供されるということは大事なことですよ。つまり、大きなプロジェクト、こんな大きなプロジェクトで百九十億円というのは、つまり、区がやるかやらないかを決めるに当たってのその一つの指標になるような額です。しかも、今回の東急との協定の問題点は、二子玉川の開発だけではないんですよ。あわせて三軒茶屋での保留床の問題とか商業床の問題、そういったものについて東急側に一つの便宜を与えている。当然ですよ。百九十億もの資産のある土地を提供するということであれば、それは東急としてはその見返りを考えるに決まっています。

 ほかの都市計画事業等は、例えば、そういう都市計画でいろいろな事業をやった場合に、一つの利益が出る場合にはそれについて負担するとか、そういういろいろなことが決まっているわけですよ。少なくとも公平にやっていくということであれば、こんなやみ協定などを結ばずに、それはオープンにしながらやるべきである。秘密協定ではないと言っているけれども、それでは、二子玉川の緑地のつけかえのときに都市計画審議会の委員にはこの事実はきちっと伝えられていたのかどうか、そういったこともあります。

 また、このときに小田急線の狛江の車庫跡地の上に緑地をとるということを一つの担保としてこの公園を縮小させた、そういう問題もあるわけです。そういったこともろもろを含めて極めて疑惑があるというか、真っ黒だ。まさに東急のしもべになってやっているじゃないか、そういうことであります。そのことについてきちっと答えてください。


◎原 都市整備部長 やみ協定でもなく、真っ黒でもなく、公正に進めております。都市計画審議会委員についても、この公園については広域の骨格をつくる上で、あるいは区の全体の公園配置上必要だというご説明をして、そういう緑地の系統をつくる意味で必要なことであるということをご理解いただいてやっております。引き続き、こういう拠点づくりを通してより豊かに緑をふやす、そういうことは努めてまいりたいと思います。
 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) それから、いろいろな手順を踏んでやってきたというふうにおっしゃっていますが、五十八年のころの構想とか、六十年のころの調査とか、ずうっと読んでみました。そうしましたら、五十八年のころにはこんな大規模な再開発計画はなかったんですよ。それが、いつの間にかバブルのころに二子玉川園をあちらに──つまり園を西側に移すことによって、つまり拠点を……。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。


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