平成11年第2回定例会(自614日 至623日)

世田谷区議会会議録

1999年6月16日 一般質問


○山内彰 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 二期目の最初の一般質問です。この場をおかりいたしまして、無党派市民の活動に信任を与えてくださった区民の皆様に御礼申し上げます。

 今回の選挙も、前回に引き続き間違った公共事業の典型である小田急線の高架化に反対し、小田急の区内全線地下化への転換を訴えてまいりました。とりわけ、小田急問題が道路新設、拡幅と超高層再開発を伴うビッグプロジェクトであり、二子玉川の再開発や二四六沿いの超高層再開発と相まって世田谷の乱開発を招くことから、「ストップ・ザ・乱開発」をメーンのスローガンとして訴え、さらには長期オール与党の大場区政の腐敗を断つことがすべての改革の前提になると考え、「腐敗を断つ」をもう一つのスローガンとして選挙戦を戦ってまいりました。前回と違い、政党から離れ、労組支援もなく、無所属での戦いでありましたので、木下は必ず落ちるとの前評判が高かったわけでありますが、落ちてほしいと望む方々の意に反しまして、ここにこうやって質問ができることは何よりの幸せでございます。

 さて、きょうは二つの事項について質問いたします。小田急線本体の問題は既に三月議会本会議でも質問いたしましたし、請願も付託されたようですので、委員会で十分議論させていただくことにいたしまして、乱開発問題では八幡山のディスカウント出店問題についてお聞きし、腐敗問題では体育協会での坪内嘉雄前会長の使い込み事件についてお尋ねいたします。

 八幡山の関連二店舗ディスカウント出店に対する違法行為についてお聞きいたします。

 この問題は既に他会派も取り上げておりますので、重ねて詳しくは申し上げることはいたしませんが、すかいらーくの子会社であるフレッシュすかいらーくと系列で同子会社と社長も同じひばり商事が申請時期をずらして一団の敷地に郊外型のディスカウントショップを相次いで建設するというものであります。他会派の質問に対して、担当者は、環境基本条例や世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則第十四条には該当しないと答え、今回の脱法行為を結局は擁護しているわけでありますが、本当にそうかということであります。世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則では、環境基本条例第三章に規定する、環境に大きな影響を及ぼすおそれがある事業にかかわる環境への配慮について必要な事項を定めるものとするとしており、同規則第二条で別表第一に掲げるものを開発事業などの定義としているのであります。そして、別表では内容と規模のみを掲げ、事業主体については取り分けて記載がないのであります。したがって、今回のフレッシュすかいらーくとひばり商事の相次ぐ事業を一つの事業ととらえるか否かがポイントであります。結論からいえば、これは一つの事業ととらえるのが正しいのであります。第十四条はそのために定めてあるわけであります。この十四条が東京都の環境アセスメント条例の第九条二項及び三項の引き写しであることからもわかるように、世田谷区環境基本条例第三章は環境アセスメントなのであります。環境アセスメント制度の歴史を考えれば、故意に事業を分割して脱法行為に及ぼうという事業主体を牽制して密接不可分な開発行為は一体的にとらえるのが常識であります。農協所有の一団の土地に同じ社長がオーナーの二つの系列会社を使って時間差で開発計画を立てたとしても、これは一つの開発事業ととらえるのがアセスメント制度では常識なのであります。したがって、今回の事案を業者の都合のいいように認定して環境基本条例の適用を行わないのは、区長の違法行為であります。区長の見解を問うものであります。

 また、環境への配慮に関する規則第十四条制定の経緯と意義についてどのように考えているのかを説明していただきたいと思います。


 次に、坪内嘉雄体育協会前会長の公金使い込み事件についてお聞きいたします。

 この事件については、情報が明らかになるにつれ、組織ぐるみの大変な事件だということがますますよくわかってまいりました。六月二十三日付で議会に報告される平成十年度財団法人世田谷区体育協会の経営状況に関する書類が一昨日あらかじめ配付されました。これでございます。この冊子を読んで、私は驚きました。平成十年十月三十一日付の決算財務諸表の修正報告がこの冊子には出てまいります。もともと、十月三十一日付の決算書は、十一月二十五日付の監事岡田氏と監事高島氏の監査報告書が付されていて、十二月十六日の理事会で坪内理事長から理事会に提出されて承認されているものであります。

 どこが修正されたかといいますと、ポイントを申し上げましょう。正味財産増減計算書では、当初の報告では減少額がゼロとなっておりますが、修正されたものでは特定預金の取り崩しとして減少額が五百五十万円となっております。財産目録では、当初報告では現金がゼロで、貸付金はなく、資産合計が三億三千百二十三万五千六百六十二円であるのに対して、修正されたものでは現金が五十万円であり、貸付金は五百万円、資産合計は三億三千六百七十三万五千六百六十二円となっております。つまり、五百五十万円が当初の報告書ではそもそもないものとなっているのであります。資産合計もその分当然少なくなっているのであります。つまり、坪内嘉雄会長は、十二月十六日の理事会に五百五十万円もの資産をごまかして、自分が借りているのだから虚偽が記載されていることは重々承知しながら報告し、承認を受けているのであります。会計処理でこのようなことが行われたことは重大なことであります。ちょっと考えてみてください。五百五十万円もの資産を隠して報告することが坪内氏個人だけでできるでしょうか。会計は心を痛めたかどうかはわかりませんが、故意に虚偽申告の文書を書いているわけだし、そもそもこの報告書は会長の借金の事情を知っている者にとっては、皆が黙認したことになります。

 ところで、財産目録欄には預金種別と金額と預け先が記載されておりますが、区議会にも報告のあった平成十年三月三十一日の財務諸表と比べてみると、流動資産の項の世田谷信用金庫区役所前支店の五百五十万円が当初報告から欠落していることがわかります。だから、この報告の監査を行った岡田、高島両監事も責任を免れません。ちょっと調べればわかるうそでありますから、あらかじめ監査も言い含められていたと考えた方が自然だし、十二月十六日に参加した理事や区の関係者も大方事情を知っていたと考えるのが素直な見方であります。その意味で、この問題は組織ぐるみの隠ぺい工作があったと考えなければなりません。少なくとも坪内会長以下専務理事、事務局長、会計実務者、区の監督責任者、監査を務めた監事は背任と横領をなし、その上で、また公文書偽造の共同正犯あるいは幇助ということになります。このような公然とした犯罪が行われているのに、告訴、告発をしようともしない。一体これはどうしたことでしょう。しかも、このような一見して犯罪が読み取れる文書自体の徹底究明をもすることなしに区議会に提出してはばからないという神経はどうなっているのでしょうか。

 そこで、お聞きしたい。

 事件は、背任、横領や公文書偽造まで行われており、組織犯罪であり、刑事事件でもあります。告訴、告発をなぜしないのか、また、財政援助団体として当局をも欺く、かかる不良な団体への補助金は返還を要求することができます。補助金の返還要求をするべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

 そして、使い込んだ金の使途は一体何だったのか、具体的に示すべきであります。当初、坪内氏が借用の理由とした、関係している団体の補助金がおくれているため二、三日貸してくれとした対象団体とは、担当者からの事情聴取では、全国的な競技団体で、海外遠征も予定している団体であったと聞いております。世田谷区体育協会の会長が、公的な資金援助とは別に援助金を都合すること自体が事件であります。区は事実関係を調べる必要があるはずであります。また、使途はそれだけとも思えません。半年もの間一体何に使われたのか、真相はどうなっているのか、お答え願いたい。

 公金使い込みに加担した前専務理事や事務局長、会計担当者、監査を行った監事、区の担当職員など関係した人員の責任問題についてもお聞きしたいと思います。

 また、代表監査委員にお聞きしたい。どういう理由で監査ができないという説をとったのか、具体的に示していただきたい。
 以上を壇上からの質問といたします。
   〔津吹教育長登壇〕


◎津吹 教育長 私から、旧体協前会長による協会資金一時借用事件についてお答え申し上げます。

 まず初めに、十月三十一日仮決算での財産目録のお話がございまして、五百五十万円の定期預金の関係の記載がなかったということのお話がありました。

 この平成十年三月末の財産目録には定期預金が五百五十万円ございましたけれども、今回、体育協会の解散に向けた仮決算の際に定期預金五百五十万円を解約しているため、十月三十一日の仮決算の財産目録には計上されていなかったということでございます。確かに、財産目録の資産の部には現金や貸付金等として計上されておりませんでした。前会長への貸付金を表に出しにくかったため経理上の処理をしていなかったということは、五月末に調査結果を報告しております。

 財団法人の経営状況の報告に当たりまして、貸付金はあったことなどの事実関係を収支計算書や財産目録などに明示させるべきだと考えまして、このような経過に基づき、平成十一年六月一日に体育協会清算委員会において仮決算の数値等を修正したわけでございますのでご理解願いたい、このように考えております。

 なお、体育協会前会長は、長年にわたり国の審議会等の委員や、あるいはスポーツ、レクリエーション関係団体の要職を務めるなど、全国的にもスポーツ、レクリエーションのための振興に尽力をされておりまして、また、本区におきましても、無報酬で体育協会会長や美術振興財団理事長などに就任いたしまして、文化、スポーツ振興にも多大な貢献をされてきたわけであります。したがいまして、三月議会でもお答えいたしましたように、区関係の一切の公職を退かれたこと、あるいは本件につきましては一時借用で、返済も済み、利息についても法定利息分を支払い、完結していること、長年にわたり区政へ貢献されたことなどを総合的に勘案いたしまして、告発するということは考えてございません。これもご理解をいただきたい、このように思っております。

 続いて、前会長が使い込んだ先の使途は何だったかというようなお話がございました。お話しいたしましたように、前会長は国や、あるいはそれにかかわる団体、また公益法人など多くの団体──三十団体ぐらいあるというふうに思っておりますが──の役職を務め、その中でも十数団体は会長等を務めております。その関係している団体の補助金の入金──この補助金というのは、国か、あるいはその団体へ公益法人が何らかの理由で補助するというものだと思いますが──その入金がおくれているので、一時借用したというようなことを私は事情聴取いたしました。具体的なお名前がそのときに上がりましたけれども、一つだけに限らず複数にもわたっておりましたので、どうも確定ができないなということで、ここでは固有名詞は挙げられませんけれども、それ以上の追及については、もう既に完済しているということから、仮に善意の使用ということが言えるかどうかわかりませんが、そういうことであっても、不正使用ということについては免れない事実でありますので、それ以上の追及はいたしませんでした。したがって、関係団体の補助金の入金がおくれているための一時借用を申し入れたという本人の申し出を確認した次第であります。

 それから、今回の事件に関しまして加担したと思われる前事務局長、あるいは前専務理事、さらには監査等を行った監事等の責任はどうだというふうなお話がございました。今回の件に関しましては、区からの事業委託が大半を占める団体として、まことに遺憾なことというふうに認識しております。今回の一時貸し付けの理由が、ごく短期で、関係している団体の補助金の入金がおくれているためということであり、かつ前会長からの強い指示があったため、やむを得ず貸したということでございます。

 関係者の人事問題に厳正な対処を求めるということでありますけれども、弁護士、あるいは特別区法務部の専門家の意見なども伺ってはおりますが、体育協会時代の案件について区が行政処分を行うということはできないというようなことになっております。また、関係者も深く反省しておりますことをつけ加えさせていただきますが、あとは刑事上というか、司法の判断を待つ以外にない、このように思っておりますので、ご理解いただきたいと思います。
 以上でございます。


◎峯元 代表監査委員 監査を除外した利用についてお答え申し上げます。

 平成十年度の監査につきましては、昨年の三月の監査委員会議におきまして、各種監査の方針及び実施時期等を定めました監査基本計画を策定し、執行機関に通知しておりますが、財政援助団体等監査につきましては、昨年の十月十四日の監査委員会議において実施計画を決定しております。この中で、各団体の運営状況、あるいは財政援助の状況などを総合的に勘案しながら監査対象団体数を可能な限り拡充して実施しております。

 体育協会につきましては、平成十一年一月末に解散が予定されておりまして、二月二日から四日までの監査実施日においては解散直後でもあり、監査は困難と判断し、対象団体から除外したものでございます。

 さきの第二回臨時区議会でも答弁させていただきましたとおり、三月二十六日の監査委員会議におきまして、現在体育協会は清算法人において清算中であり、団体自体の監査の結果や関係所管の調査結果を踏まえて、今後、所管部やスポーツ振興財団の監査を強化していこうということを確認の上、協議決定したものでございます。

 その後、教育委員会からの調査結果報告書を受けまして、五月三十一日の監査委員会議におきまして再度協議いたしましたが、今後、関係所管部の定期監査、あるいは世田谷区スポーツ振興財団への監査、あるいは例月出納検査等の機会をとらえまして監査委員で協議し監査を行っていきたいと考えております。  以上であります。


◎伊藤 環境部長 八幡山のディスカウント出店に関するご質問にお答えいたします。

 まず、環境基本条例、それから世田谷区開発事業等に係る環境への配慮に関する規則第十四条に違反するのではないかというご質問がございました。
 世田谷区では、地球規模の環境問題も視野に入れながら、区と区民、事業者の協働により、環境と共生する都市世田谷の実現を目指しまして、平成六年九月に環境基本条例を制定してまいりました。この条例に基づきまして、平成七年四月から開発事業等に係る環境配慮制度を施行し、事業者の皆さんが区内で環境に大きな影響を及ぼすおそれのある開発事業等を実施する際に、環境への負荷軽減、公害の防止、環境の保全、回復、創出等に努めていただくよう指導しております。

 ご質問にありました件につきましては、それぞれ別の法人事業者が計画したものであり、個々の事業が規則で定める規模の対象事業とならないことから、規則に反するものではないと考えております。

 それから次に、規則第十四条制定の経緯と意義についてどう考えているかというご質問がございました。

 環境配慮制度にかかわる規則につきましては、条例の趣旨を踏まえ、環境に大きな影響を及ぼすおそれのある開発事業等に係る環境への配慮について、必要な事項を定めたものであります。

 規則第十四条は、一つの事業者、または複数の事業者が、敷地が隣接するなど相互に関連する対象事業をそれぞれ実施する場合に、個々の対象事業にかかわる環境配慮がちぐはぐにならず総合的なものになるよう区が指導すべきことを規定したものでございます。

 今回の計画は、類似の店舗の出店や駐車場の相互利用の見込みなどもあり、駐車場等の仕様などについては、きのうも総合支所長が答弁しましたが、総合支所と環境部とで連携しまして、この制度の趣旨にのっとった行政指導を行っているところでございます。今後も、地域住民と事業者の話し合い継続ができるよう、区としても指導していく考えてあります。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 今のお答えですが、条例の趣旨にのっとった指導をしているというふうに言っていますけれども、そうではなくて、規則は議会の方ではあずかり知らぬところで決めてあるんです。少なくとも趣旨にのっとった形で規則は決まっていなければいけないですし、私の解釈の仕方では、これは当然一つの事業としてやれるものだというふうに思っています。そのことは申し上げておきます。

 それから、体育協会の話ですけれども、組織的なバックアップがなければ、こういった隠ぺい工作はできなかったことを申し上げているわけです。それから、補助金団体として、それに対して補助金を引き上げるということはできるはずです。そういうことについてどう考えているか、お答えください。


◎武藤 教育次長 今回の一連の借用問題は、大変申しわけなく思っております。また、補助金の引き上げということでございますけれども、我々は体育協会が区民の方々のスポーツの振興に補助金等を有効に活用したということでございますので、この借用問題とは直接関係ないというように思いますので、現在、補助金の引き上げとか、そのようなことについては考えてございません。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 公文書偽造じゃないですか。はっきり言って、この公文書から五百五十万円もの金が抜けているんですよ。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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