平成111回定例議会(自31日 至329日)

世田谷区議会会議録

1999年3月29日 一般会計予算への反対討論


○(土田正人議長) これより意見に入ります。

 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。

 なお、意見についての発言は、議事の都合により一人十分以内といたします。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕





◆三十七番( 木下泰之議員) 今期最後の本会議となりました。一人会派無党派市民は、大場区長不信任の立場からすべての予算に反対いたします。この立場から討論を行います。

 予算特別委員会審議の最中に、名誉区民の坪内嘉雄氏が世田谷区体育協会会長在任中に公金五百三十万円を使い込んでいたことが発覚し、名誉区民を返上したことが三月十八日になって公表されました。区の公式発表では、事件が発覚したのが三月十一日です。事件発覚時には世田谷区スポーツ振興財団への衣がえのため、同協会は既に解散され清算手続がとられていたにもかかわらず、公金は私されていたわけであります。これは犯罪であり、刑事事件であります。ところが、その後、三月十六日になって五百万円、十七日に三十万円が返されたとして借用書は破棄され、本人は名誉区民の称号を返上した上で、明けて十八日になって初めてこの事件が議会に公表されたのであります。

 そもそも、事件が三月十一日に発覚したということが区の公式発表ですが、このことも怪しい。なぜならば、三月九日の本会議で何がなされたか。砧の総合運動場と千歳温水プールの管理運営を世田谷区からスポーツ振興財団に移すという条例案の可決であります。昨年十一月二十七日に借用書が坪内氏の名前で坪内体育協会会長あてに書かれ、同協会事務局長がこの処理に関与し、同協会は一月末で解散されているわけですから、事件はもっと早くから区の関係者が知っていなければおかしいし、もし区の関係者も本当に知らなかったとするならば、同協会事務局長以下体育協会ぐるみの犯罪と言うべきであるし、区の関係者が知っていたとしたら、今回の条例を含め体育協会のスポーツ振興財団移行を無事に済ますための隠蔽工作が公然と行われたということになります。議会にうそをついて条例を通したことになるのであります。

 少なくとも、私は三月九日にこの壇上から、オリンピックのIOCを引き合いに出し、体育界の腐敗体質があるにもかかわらず、船出したばかりのスポーツ振興財団、しかも組織は体育協会からの横滑りで成り立っているような組織に──財団の理事長は、条例が通るときは坪内氏でありました──そのような組織に砧の総合運動場と千歳温水プールの管理運営を本当に任せてよいのか疑問だと延べ、反対したのであります。

 ところが、この条例については、同氏が名誉区民になるに当たって反対した行革一一〇番の大庭正明氏までもが賛成をし、結局この条例に反対したのは下条忠雄議員と鈴木義浩議員と私、いわゆるSSKのみで、あとはすべて賛成であったのであります。私が本条例に対し、三月九日の本会議の反対討論で述べた危惧は本物になりました。体育協会も、その横滑り組織である世田谷区スポーツ振興財団も腐り切っている。今回の事件の解明を区長は表明していますが、事件を世田谷区が知った時期はいつであるのか、条例案審議との関係でも徹底究明されなければなりません。

 さて、この事件の発覚は公式発表では三月十一日としております。ところが、事件公表は三月十八日。議会開催中であるにもかかわらず、一週間伏せられていたことになります。しかも、この一週間で行われたことは事件のもみ消し工作以外の何物でもありません。本人に横領金を返済させ、借用書は破棄されたという。借用書があったか否かは本当は定かではないわけであります。証拠隠滅、これも立派な犯罪であります。

 ところで、今回の事件、別の側面からもさまざまな憶測が飛んでおります。それは、坪内氏が長期にわたって続いたオール与党大場体制に亀裂を与えた中心人物であるからであります。坪内氏は、菅沼元都議とともに十月に区長に面会を求めて、後進に道を譲ったらどうかと進言しております。そして、清水潤三氏の擁立に動き、事件発覚まで清水陣営の顔でもあった人物であります。清水氏は自民党の公認争いで熊本氏に負けたため、民主党と行革一一〇番、そして自民党の反主流派に依拠した布陣を現在しいております。坪内氏は、清水陣営にとってはつい最近まで重要人物であったわけであります。

 今回の公金使い込み事件は十一月二十七日に起きております。その金の使い道が当然問われるわけでありますし、公金が使われたのであるから、その使い道を追及するのは第一義的には区の責任であります。ところが、調査結果は、今期議会が終了する今日に至ってもいまだ明らかにされておりません。これは異常なことであります。一方、坪内氏は、清水潤三陣営の有力な立て役者であることは事実であるわけですから、清水陣営としてもまさに政治責任として真相究明に当たり、本人に事の真相の表明を行わせる義務があるのではないでしょうか。それがスピードというものであります。

 重要な問題ですので、前置きが長くなりました。今期最後の議会ですし、次期区長がどなたになるかによって予算は今後の補正で大幅に組み替えられる可能性もあります。ですから、世田谷区の予算については総括的な意見だけを申し上げておきましょう。

 この壇上から繰り返し述べてまいりましたが、私は世田谷の区政は、東京における良好な住宅地としての世田谷を守り、そのための環境を保全することにあると考えます。今ならまだ間に合います。大規模再開発は必要ありません。一定の基礎的都市基盤が整っているわけですから、手直し型のまちづくりに徹するべきであります。とはいっても、国の都市計画法や建築基準法、土地税制が不備であったり、都の都市計画の誤りから世田谷の町が荒らされているわけでありますから、これらの誤りにきっちりと異議を申し立て、良好な住宅地を守っていくためのポリシーをきちっと担当者が持つことであります。

 駒沢のマルコーのワンルームマンション問題一つをとっても、大場区政は結局事なかれ主義をとるだけで、東京都や政府を揺るがすような問題提起を何もしていない。これでは変わりようがないのであります。小田急問題では、下北沢地域の地下化方針が昨年の十二月八日に公表されました。世田谷区の川上委員会が昭和六十二年に下北沢の地下化は高架化の一・五倍、全線だと一・六倍かかると報告を発表し、このレポートが全会派一致の地下化推進決議を実質的に崩す結果となったのであります。下北沢で地下化ができるのであれば、なぜ梅ケ丘から成城まで高架なのだとの思いは、この議場の皆さんにもあると思います。今や地下化の方が安上がりだというのは、区の第一線の役人の非公式な見解でもあります。そうであればこそ、今からでも大胆に世田谷区全線地下化への転換を区長は主張するべきなのであります。公共事業の見直しということはそういうことであり、今までの行政施策との質的な断絶の上にあると考えます。

 最近、行革はスピードだとのスローガンが街角のポスターに散見されるようになりましたが、行革を単なる量や時間の問題と考える以上、本当の改革は望めません。大事なことは質の転換であります。

 清掃の移管問題を一つとっても、リサイクルを行政が肩がわりする方式をとり続ける限りは、行政のスリム化は望むべくもありません。すべての製造物の製造企業に製造物の回収を義務づける、このことを基本にリサイクル経済を生産活動にビルトインする、この目標なしにごみ問題、資源問題の解決はないのであります。

 世田谷の住環境を守ることは東京問題そのものです。二子玉川から二四六沿いの駒沢、三軒茶屋、小田急線の経堂などに超高層ビルや超高層住宅は要りません。排ガスの環境汚染や車の騒音は世田谷の観測点ではどこでも環境基準を超え、耐えがたいものになっております。また、排ガスに発がん問題や生殖異常を来す環境ホルモン作用が確認されている以上、これ以上車をふやすわけにはいきません。このままでは、道路をふやせば確実に車がふえるわけですから、道路新設は抑制されなければなりません。その上で遷都論や都市機能分散論も描きながら住宅地世田谷を位置づけ、都市計画やまちづくりを構想することが必要なのであります。都市問題は総合問題なのですから、逃げてはいけないのです。そして、何よりも行政改革や変革が権力者や強者のためにあるのではなく、市井に生きる市民と未来の社会のためにあるとするならば、変革のエネルギーは、人間的な生活はいかにあるべきか、このままでいいのかという人間としての憤りからしか始まりません。

 今回の予算審議を通じて区の幹部と論争していても、改革や変革の気力や情熱が全く感じられないのはどうしたわけでありましょうか。型にはまった考え方からは変革はないと申し上げておきましょう。腐敗からの断絶は改革の基本中の基本です。坪内問題では、はしなくもその基本さえできていないことを示しました。望むらくは、腐れ縁の全くない清新な若い区長が選出され大改革に大なたを振るうことが実現できることを期待いたしまして、無党派市民の全予算に対する反対討論といたします。



○(土田正人議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。