平成10年(自3月2日 至3月27日)

世田谷区議会会議録

1998年3月27日 平成10年度予算への反対討論


○(真鍋欣之議長) これより意見に入ります。

 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。

 なお、各議員の発言は、議事の都合により十分以内といたします。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 平成十年度一般会計予算ほか三予算案に反対の立場から討論を行います。

 今回の予算議会は、一般質問時間が十分に制限された初めての議会でした。十分の質問時間で区民からの信託を果たすことができるでしょうか。従前の三十分の質問時間においてさえ十分でなかったものが、今回の一般質問における質問十分、答弁十分への制限で、この議会の致命的欠陥が浮かび上がってまいりました。それは、すべての問題を量に還元して質を問わないという悪しき性癖です。今回の一般質問の時間制限の短縮は、議員平等の原則を理由に、全員が一般質問を行うためと称して導入されました。今までも一般質問の通告は自由だったわけですから、質問する意思さえあれば質問はできたはずです。すなわち、機会の平等は与えられていたわけです。ところが、全員が質問をすることを前提に、質問日三日間の日程に割り振って算出された一人当たり二十分、質問と答弁を十分ずつというのが時間制限の根拠とされました。

 ところで、学校の授業のように時間割りが決められ、そのように動く議会というのは変だとは思いませんか。議長はタイムキーパーではありません。議会で本当に重要なことは議会審議の中身であります。中身によっては時間をかけなければならない課題は多々あります。

 端的に言いましょう。議会の重要な使命の一つは行政のチェックです。三権分立の基本中の基本です。行政の振る舞いに疑惑が生じたら、徹底糾明の時間や機会をとらなければなりません。便宜上時間枠を決めていたとしても、疑惑が生じた課題や説明不足の課題を具体的に明らかにさせる時間や機会を、議長や委員会の委員長は保障すべきなのであります。その場で時間をとるなり、文書答弁を求めるなり、所管の委員会に割り振るなり、疑惑究明のための努力こそ、議長や委員長の務めのはずであります。

 ところが、そうはなっていない。星谷知久平議員にかかわる「せたがやの家」についての補助金疑惑は、下条議員の一般質問で明るみに出されました。このことは行政行為の疑惑のみならず、自治法第九十二条二項違反疑惑として、議員の資格にもかかわる重要事項であります。ところが、この問題に関しての緊急質問の通告をしても、これを認めない。議運理事会を開き、議運を開き、二時間も議会をとめたにもかかわらず、肝心の緊急質問は数の力で葬り去る。これが議会のあるべき姿でしょうか。都市整備委員会で自治法第九十二条二項違反の疑いがあり、しかも、自治法第百十七条に抵触するとして私が提出した星谷知久平委員長への不信任決議案については、質疑もなく、討論、意見もなく否決されました。質疑も討論も意見もない、つまりは理由もなく葬り去る、これが議会でしょうか。

 しかも、本会議への委員長報告には、不信任決議案が委員会で提出され、質疑、討論もなく否決された事実さえ報告されない。これを不服として委員長報告への質疑要求を行えば、本会議をストップさせ、またもや議運理事会、議運を経て二時間もの時間を空転させた挙句の果てに、委員長報告への質問は認めない。さらには質問内容の文書通告も求めながら、私が何を質問しようとしてこれを認めなかったのかさえ、議長は本会議で報告しようとしていません。このような理不尽な行為に対して議長席に詰め寄ることは、当然のことではありませんか。

 私は懲罰覚悟で行動した。ところが、懲罰にさえしようとしない。懲罰になれば、この議長の星谷疑惑隠蔽工作自体が弁明演説などで問われることを恐れたからにほかなりません。予算の反対討論で、なぜ私がこのような発言をせざるを得ないのか。それは、まさにこの議会が三権分立の使命を忘れて、行政の防壁あるいは飼い犬になり下がっている事態を告発しておかなければ、世田谷区政の本質が見えなくなってしまうからであります。

 予算委員会は、自民党の内山議員の職員の外郭団体への天下りを奨励する質問から始まりました。議会と行政のなれ合いの典型であります。「せたがやの家」一つをとっても、星谷議員の例以外にも区議会議員のOBや区職員のOBがオーナーになっていることを指摘しても、答弁で何らの反省も示さない行政の対応は、区議会議員が引退後の生活を区に頼ったり、さまざまな便宜供与を受けていることが日常茶飯となっている現実を示しているものであります。

 予算委員会の小畑委員長の私の質問に対する妨害は目に余るものがありました。小田急線複々線事業の施行主体に鉄建公団がなっていることについて、川瀬助役がいつから知っていたのかということを、私が企画総務領域で最後の質問を行いました。ところが、川瀬助役は質問には答えず、施行主体は小田急電鉄であるとの間違った見解を交えながら、時間稼ぎの答弁を行おうとしました。ところが、小畑委員長は、この答弁に異議を唱え、質問に端的に答えよとの私の要求を避けた上、領域外の質問だから都市整備領域で行うようになどのコメントをして質問妨害の挙に出ました。委員長の不信任決議案提出及び不信任案提出の際、議案提案を保障せず、マイクの電源を切った副委員長への不信任決議提出は、予算委員会での不当な審議妨害に対する是非を問うものでした。

 さらにその後、下条議員より提出された不信任決議案は、委員会再開直前に議会事務局が理事者に対し、領域外の質問には答えないように、外郭団体と兼任している場合は外郭団体の立場では答えないようにとの指示を行っていることが明るみに出たからでした。いずれの不信任も残念ながら避けられましたが、私はこれらの不信任決議案の提出理由説明や質疑討論の中で、議会みずからが率先して行政の疑惑解明や行政機関の動きを封じる役割を具体的に果たしているこのありようを糾弾してまいりました。

 私は小田急線の高架反対を公約として当選してきたことから、この問題に多くの時間を費やして質問を今まで続けてまいりました。当選以来の質問の蓄積の中でよくわかったことは、区議会は小田急線の高架事業の基本的な問題点や枠組みさえ知らなかったし、知ろうとしてこなかった。高架と地下との費用比較も、第三セクター東京鉄道立体整備株式会社の実態や事業内容についても、基礎データを取り寄せて検証しようという作業を何一つやらなかった。すべて行政の言うことを信ずることからしか問題に対処してこようとしなかったのであります。市民から疑問が寄せられ、さらには裁判が提起されているにもかかわらず、議会みずから必要な真相究明に動こうとはしなかったということであります。

 今回の議会では、小田急線複々線立体化事業に伴うつけかえ道路の認定を強行可決してしまいましたが、このつけかえ道路工事の枠組みを決めた世田谷区、鉄建公団、小田急の三者協定の存在は、世田谷区の公文書の中で、小田急事業に鉄建公団が絡んでいることを示す唯一の文書でありました。この文書発覚をきっかけに詳しく調べてみれば、現在行われている小田急線の複々線事業は、施行主体が鉄建公団であり、完成後二十五年賦無利子で小田急に譲渡される事業であり、小田急電鉄は完成を見るまで一銭も金を払わなくてよいシステムになっているではありませんか。

 既に昭和六十年には鉄建公団が法律上の施行主体になっているにもかかわらず、世田谷区の説明では、複々線事業は小田急が行うとのみ言ってきたのであります。事実は公的資金で複々線部分もつくられているわけであるから、東京都が施行主体である連続立体事業も含めて一〇〇%公的な事業であることは明白です。このことを行政ははぐらかしてきました。区議会議員の認識も、少なくとも昨年四月十八日の都市整備常任委員会で私が鉄建公団の関与について質問するまでは、かつて交通対策特別委員会の委員長を務めた丸山委員までが、鉄建公団が法律上の事業主体であることを知らなかったということなのであります。

 今回問題にした三者協定問題では、鉄建公団の署名捺印が小田急電鉄の社長の代理署名と捺印で済まされているという、異常な協定書の存在が明らかになったにもかかわらず、世田谷区は小田急と鉄建公団の問題だとして、法的正当性の根拠も示さないままに道路認定を強行採決しているのです。一〇〇%公的な事業であるということはどういうことか。初めから地元区民の要望が大幅に取り入れられなければならない事業であり、その観点に立ち、情報も公開させながら小田急の構造形式を検討したならば、当初から地下で事業を行わせることはできたはずであります。全会派一致の決議もこの議会には存在していたわけであります。

 いずれにせよ、今回の予算委員会で明らかになったことは、行政と癒着し、三権分立の役目を果たそうとしない議会は、区政をいかに堕落させるかということであります。自民党の議員の方の中から、議員は襟を正すべきだとの貴重な言葉も今回の予算委員会の中ではありました。九十二条違反に該当するような行為はもってのほかであります。そういったことをしないのは初歩であります。深刻な問題は、議会が行政のチェック機関となり得ていないということについてであります。

 事の本質はそういうことであるのに、正当な批判の叫び声に恐怖を感ずるだとか、規則は守らなければならないとしか言えない陳腐な道学者には、本議会と世田谷区が抱えている病巣の切開手術をすることはできません。大時代的な言葉ではありますが、議会主義クレチン病という言葉が存在したことを思い出していただきたい。長らく普通のこととしてきた大蔵官僚などの接待が犯罪として認定されました。国会で大蔵官僚の犯罪がかつて議論されたことがあったでしょうか。しかし、実際には接待より以上の権力犯罪が、行政の名において、議会の名において行われていることがあるのです。

 ここでは、常識を疑って見ることから真の改革は始まるのだということを申し上げておきましょう。もはや予算のあれこれを取りざたする必要もありません。世田谷区長への不信任の意を込めて、すべての予算案件に反対することを表明して、私の反対討論といたします。

○(真鍋欣之議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。