平成10年第1回定例会(自32日 至327日)

世田谷区議会会議録

1998年3月3日 一般質問 駒沢超高層ワンルームマンション 小田急・鉄建公団・区道認定


○(真鍋欣之議長) 次に、三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 参議院改革の一つとして、今まで代表質問が許されていなかった五人以下の会派にも参議院本会議での代表質問を認めようとの検討が行われているというニュースがつい最近ありました。国民の政治離れを何とかつなぎとめる努力として、少数派の権利を積極的に認めていこうという参議院のこの姿勢は評価されてしかるべきであります。翻って、この議会はどうでしょう。事実上少数派をねらい撃ちにして、ただでさえ少ない三十分の一般質問の機会さえ、質問十分、回答十分、再質問二回までとの規制を設けて抑え込む。時代に逆行するということはこのことではないでしょうか。強く抗議するものです。

 通告に基づき質問を行います。

 初めに、駒沢二丁目の超高層ワンルームマンションについてお尋ねいたします。

 本会議では私を含めて六名がこの問題で質問を行うことになっております。既に昨日からこの問題は公明、共産党の代表質問で取り上げられ、また、先ほど新風21の花輪議員の一般質問でも取り上げられました。住宅地に地上九十八メートルもの超高層を、しかも三百十八戸ものワンルームマンションを建てるというこの常識外れの計画に対して超党派で反対の声が上がっているのは当然のことであります。昨日、区長は公明の質問の際、心を痛めているとお答えになりました。問題は、この超高層ワンルームマンションに対して区長がどのように具体的に行動するかであります。規制緩和のかけ声の中で、昨年の建築基準法の改正やことし予定されている改正で、都心部を初め世田谷区にも超高層マンションが建ちやすい状況が生まれつつあります。今回の問題は、住民の皆さんが単に困っているというような問題ではありません。区政に投げかけられた問題であり、区長は責任ある当事者であります。二四六号線沿いで容積率五〇〇%、高さ制限なしのこの地域には、ちょっとした広さの土地があれば今回のような計画は成り立ったわけでありますから、まずは、このような計画を成り立たせたことに心を痛めているのであれば、この地域の高容積率を放置し、かつワンルームマンションを放置してきたことに対する反省の弁がなされてしかるべきであります。その上で、即刻この地域の容積率規制と高さ規制及びワンルームマンション規制強化に向けての施策を講ずるべく手を打つべきであります。

 ところが、区長の答弁では、ワンルームマンションについての規制一般については要綱の改定を口にされて、確かに新たな施策をつくる約束はされました。しかし、高容積率問題や高さ規制問題については一切約束をしていないのであります。問題は、この地域や同類の地域での高容積率放置に反省の気持ちがあるのか否か、また、今後の施策として容積率規制、高さ規制に向けて行政施策をとるおつもりがあるのかどうかをお尋ねいたします。今後の施策は重要であります。的確にお答えいただきたいと思います。

 しかし、問題は、現に降りかかっている火の粉をどういうふうに払うかであります。私は、昨年十一月議会の本会議で、区長に、この問題でマルコーの管財人と区長みずからが交渉するおつもりはないかとお聞きいたしました。ところが、区長は、更生計画の定款の中では、不動産の売買、管理、運営について事業の目的として許可されているとの通り一遍の回答で私の提案を一蹴しました。あなたの部下は、法律上は手だてがないと言いました。本当にそうでしょうか。問題は、解決の糸口を全身全霊をもって探し追求することではないでしょうか。また、法的な糸口が見出せにくいとしたならばなおさらのこと、区長はこの問題に政治家として取り組むべきではないでしょうか。

 今回の問題の特殊性は何か。昨年十一月議会の本会議でも指摘しておきましたが、それは、今回の超高層ワンルームマンションの設計計画が、建築計画が会社更生法を適用されているマルコーによって計画されているということであります。マルコーは、バブル期にワンルームリースマンションという新型の利殖の商品を開発し、バブル経済のまさに推進役として急成長し、それゆえにまた、その商法が原因となって、バブル崩壊とともに一九九一年八月に二千八百五十八億円にも上る負債を抱え、いち早く倒産した会社です。この倒産で二千人からのリースマンションの個人オーナーにも多大な損害を与え、現在、裁判で訴えられてもいます。ところが、この会社は会社更生法が適用され更生会社として生き残りました。債権のうち一千億円を圧縮して、つまり債権者である銀行などに泣いてもらい、とどのつまりは我々国民が税金から公的資金を出資して銀行を救済するということになっているわけですから、我々国民の税金によって生かされている企業であるということであります。この更生会社が、経営危機に瀕したダイエーをバックに、倒産をかつて招いたのと同じ手法をとりながら極めてリスクの大きい事業にまたもや乗り出したというのが今回の事業です。

 バブル崩壊後に、平成三年に総合土地政策推進要綱が閣議決定され、これを踏まえて、土地利用を規制、誘導することを目的に都市計画法の改正が平成五年六月に施行されましたが、この改正都市計画法三十三条には開発許可の基準を設けてあり、この一項十二号は次のようになっております。「申請者に当該開発行為を行うために必要な資力及び信用があること」、バブル崩壊後の立法として、まさに適切な立法であります。この条項に照らせば、更生会社マルコーの今回の計画は開発許可基準に適合しないはずであります。残念ながら、建設官僚が国会の議決によらずに定めることのできる政令で適用規模を一ヘクタール以上としたためにしり抜けになっておりますが、立法の精神はまさに必要な資力及び信用がない事業者を排除すべきなのであります。ちなみに、マルコーのマンションは、延べ床面積では一万二千五百五十四平米で、一ヘクタールを優に超えているのであります。区長、あなたが本当に闘おうと思えば、この条項を使ってでも開発許可拒否の戦いのとば口を開くことはできるのです。

 三百十八戸ものワンルームマンションが建った後、あるいは建つ途上で、再度この会社が立ち行かなくなったらどういうことになるか考えたことがおありでしょうか。少なくとも、区の担当者は今回のワンルームマンションの経済的な側面や経営面でのリスクなどの資料収集にも当たるべきなのであります。ところが、区の担当者はそのようなことにはとんちゃくがない。銀行融資もままならぬマルコーのバックが、左前になったダイエーであるというのも危うい話です。マルコーは経済的側面から一歩も譲れないと言いながら、資金計画については一切住民にディスクロージャーさえしていないのであります。この面からも住民は不安なのであります。環境面、安全面からいっても、歩道たった二十センチのところに九十八メートルの超高層建築物がそびえ立つのは尋常なことではありません。

 区長が世論をバックに一肌脱ごうと思うかどうか、ここが住民の側に立った区政を行うかどうかの分水嶺だと言わなければなりません。心を痛めていると言った以上、今こそ政治家である区長の行動が問われているのであります。管財人や裁判所とかけ合うもよし、更生会社のバックであるダイエーとかけ合うもよし、二十三区の区長会長としての職責から行動するもよし、やることはたくさんあるわけであります。区長にやる気があるならば、あなたの部下も知恵を出すに違いありません。先ほど私が示した理由やその他の環境上の理由による開発許可拒否戦術も正攻法の一つです。具体的に何をおやりになるのか、お答えいただきたい。

 次に、小田急線複々線連続立体事業と区道廃止及び区道の道路認定についてお伺いいたします。今回の区議会に小田急線の複々線連続立体事業のつけかえ側道に関して、区道廃止及び区道の道路認定が議案として上程されることになっております。ところで、明日上程されることになっているこの区道の廃止と区道の認定には大きな疑問があります。当初、経堂の大踏切北側のつけかえ道路や豪徳寺駅東側のガード南側のつけかえ道路が道路認定以前に勝手に使われ、区道が勝手に廃止されていることに疑問を持ちました。その疑問を担当者に問いただしていくと、世田谷区と日本鉄道建設公団──鉄建公団ですが──小田急電鉄株式会社の三者協定があることが判明しました。平成七年五月十日に締結された小田急小田原線連続立体交差事業及び複々線化事業に伴う付替道路に関する協定書なる協定文書です。これによると、二条で、日本鉄建公団はつけかえ道路に必要な用地を確保するものとし、四条では、つけかえ道路の設計及び工事施工は世田谷区の指導のもとに小田急電鉄の費用により小田急電鉄が行うとなっています。

 これを読むと、次の三つの疑問がわいてきます。複々線連続立体交差事業の都市計画の変更決定の認可が平成五年二月にあり、建設大臣の事業認可が平成六年六月にあったわけだけれども、区道についてなぜ区が事業主体とならないのかというのが第一点目。つけかえ道路の事業主体及び現時点での所有者は日本鉄建公団なのか小田急電鉄なのかどちらであるのかというのが第二点目。都市計画決定されたつけかえ道路の事業を区ではなく日本鉄建公団あるいは小田急がやっているにもかかわらず、なぜ都市計画法第五十九条に基づいた……。

○(真鍋欣之議長) 以上で木下泰之議員の質問についての発言は終わりました。

   〔大場区長登壇〕

◎(大場区長) 駒沢二丁目の超高層ワンルームマンションの問題についてお話が出ました。

 地域住民の方々にとって大規模な開発などによって、これまで維持されてきた地域社会の生活や住環境が脅かされるという事態については、それが今の時代のさまざまな状況を背景として起こってくるものであるとしても、憂慮すべき面が生じてきております。このような事態に対して少しでもよい解決方法を見つけていけるよう、事業者に対しては住民との話し合いの継続を求めたり計画案の改善を要請し、また、環境審議会にも諮問を行っているところであります。

 この建設計画につきましては、建築確認は東京都が行うものでありますが、都に対しても事業者への強い指導を要請しているところであり、これを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。

   〔大塚助役登壇〕

◎(大塚助役) 駒沢マルコーマンションの件についてお答え申し上げます。

 この件につきましては、区といたしましても、この計画が法にのっとって申請されているものであり、区民の方々の生活環境に対する問題を起こすような建物であるというようなことから、内部でもその関連課を集めまして検討はもとより、環境審議会に対しても諮問して環境に対する意見を求めているところでございます。

 また、事業者に対しましては、建物の高さを少しでも低くすること、風害への対応をするための建物の壁面後退、住戸規模の拡大、住戸数の縮減、ワンルーム以外の住宅を附置すること、あるいは集会室の整備、それから良好な管理方式の徹底等環境配慮事項の遵守、地域住民との話し合いの継続などを区としても求めているところでございます。さらに、区といたしましては、住民の方々と事業者が双方に十分話し合いができるような場を先月二回にわたって設け、相互の理解が深まるように努めているところでございます。しかしながら、こうした申し入れだけでは、住民の皆さんが考えている問題がなかなか解決するとは思えない状況にもあります。したがって、区といたしましては、さらに建築協定あるいは地区計画の制度を活用しながら、高さの制限、壁面線の後退、建物用途等の制限の規制を行うことが可能である事業手法を活用して、こうしたまちづくりについて住民の方々が話し合いを進めていくのであれば、情報の提供や技術的な支援を行っていきたいというふうに考えます。

 用途地域の指定につきましては、これは平成八年に用途の変更の指定がございました。このときは、都市計画法の用途指定に基づきまして、住民説明会を行い、あるいは公聴会、住民の意見を伺いながら施行したものでございます。こうした状況の中では、ほとんどの住民の方々からは用途を緩和してほしいというような要請が多く、現行用途を規制してさらに用途を厳しくするというような意見は大変少のうございました。そうした中で今回の用途地域が指定されているものでありまして、その用途の中で、許容範囲の中で現在の計画がされているものでございます。

 私どもの方としては、基礎的な自治体といたしましては、区としては、これらの建設によって、これまではぐくまれてきた地域のコミュニティーや生活環境が脅かされるような事態についてはできる限りのことを尽くしていきたい。その一つとしては、先ほどもご説明しましたように、環境審議会への諮問、あるいはワンルームマンション指導要綱の見直し、そういったような手当てを組んでいくつもりでございます。

 以上です。

◎(佐藤都市開発室長) 開発許可についてご質問がございました。

 この開発許可につきましては、ただいまお話がありましたワンルームマンションの建設が計画されておりますこの敷地内において、長さが約十三メートル、幅が一・八メートルの行きどまりの私道を廃止するためのものでございます。その手続として、事業者から都市計画法第二十九条に基づく開発許可申請が出されているものでございます。

 昨年の十二月二日に本件開発許可申請を受理しておりますが、この道路の廃止については、接道のない宅地を生ずることがないということで支障ないものと判断しております。

 開発許可につきましては、先ほどお話がございましたように、その内容が都市計画法の許可基準に合致しており、これら手続に支障がないときは許可しなければならないというふうに都市計画法三十三条に規定されております。

 本件開発許可につきましては、区は、計画されている建物の内容について審査する立場にはございません。道路の廃止についての判断を求められているものでございます。また、先ほどからご答弁申し上げていますように、区は再三事業者にいろいろな改善を指導してまいっております。また、住民の方々及び事業者双方に呼びかけまして話し合いの場を設けてまいりました。ここでは焦点を絞って具体的な話し合いが行われておりまして、例えば、ワンルームの戸数が約二百八十戸程度までは削減できたとか、あるいは二四六側の壁面を少し後退するというような、マルコー側の若干の妥協点も見出せております。区といたしましては、今後もこうした話し合いを続けていくように、事業者あるいは住民の方々に申し入れているところでございます。

 なお、本件の開発許可につきましては、既に行政手続法に基づく標準処理期間の二十一日目に当たる一月八日を大幅に過ぎております。また、許可申請の内容が許可基準に合致しております。先ほど資力等のお話がございましたが、これは道路を廃止することに対応する資力があるかどうかという開発行為そのものの資力を問うものでございます。したがいまして、基準に合致しております。また、手続にも支障がないということから、住民の方々の気持ちは十分理解できますが、法的に考えますと近々許可せざるを得ないというふうに考えております。

 以上でございます。

◎(徳善道路整備部長) 小田急線の連続立体事業に関しまして、都市計画決定された区道のつけかえ道路につきまして、この用地買収等を区で行うべきではないかというご質問でございました。

 当該路線につきましては、小田急線の連続立体交差事業及び複々線化事業の実施に伴いまして、沿線の環境を確保するとともに、複々線化によりまして支障となる現道部分の機能回復を図り、また、今後区が行いますまちづくりを進める上で必要となる街路を附属街路として整備するために、平成四年十月十九日、世田谷区の都市計画審議会に諮問をいたしまして、同年十月三十日付で答申を受けまして、平成五年二月一日付で新たに都市計画決定された路線でございます。

 この附属街路の道路の取得及び施工につきましては、一つとして、沿線の環境の確保を目的とする街路、これを関連側道と言っておりますが、これにつきましては東京都及び世田谷区が、また、現道部の機能回復を図る街路、これはつけかえ側道と言っておりますが、これにつきましては鉄道建設公団及び小田急電鉄が、また三つ目といたしまして、まちづくりを進める上で必要となる街路、これはまちづくり側道と申しておりますが、これにつきましては世田谷区が事業を進めていくこととなっております。

 ご質問のつけかえ側道につきましては、複々線化事業によりまして現道の機能が損なわれるため、この機能回復を図る必要がありましてつけかえを行う道路でございますので、この整備につきましては、整備に必要な用地あるいは工事の施工は原因者の責任において行うものとなっておるものでございます。

 以上でございます。

○(真鍋欣之議長) 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。