平成9年第3回定例会(自101日 至1021日)

世田谷区議会会議録

1997年10月21日 決算認定への反対討論


○(真鍋欣之議長) これより意見に入ります。

 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。

 なお、意見についての発言は、議事の都合により十分以内といたします。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 平成八年度の決算報告すべてについて反対の立場から討論を行います。

 今回の決算委員会で、行革一一〇番が一般会計予算も含め決算に賛成の表決を下しました。行革一一〇番、おまえもかという感がいたします。行革が声高に叫ばれ、地方分権が言われているこのときに、行革一一〇番という名前を冠した会派が決算に賛成するのは奇異でありますし、平成八年度の予算執行に当たって、小坂邸買収の問題については、監査請求まで、ともに出して闘ってきたという経験もございます。どうして賛成されるのか、わけがわからないのであります。賛成の声を聞いたとき、耳を疑いました。これで与党会派が一つふえたということになり、とても残念ではありますが、残された三つの野党一人会派が奮闘していくしかないと心に決めている次第であります。

 今回、決算の対象となった平成八年度の予算は、思い出深い予算であります。小田急高架を含む平成八年度一般会計予算に対し、私は、小田急高架関連事業関連予算を減額した、減額修正予算を提案したことを思い出すからであります。この減額修正案は賛成少数で否決されましたが、かつて小田急線地下化要望決議に賛成した古くからの議員の方々及び会派として小田急線地下化推進を公式に掲げていた社会民主党、日本共産党、生活者ネットがなぜ減額修正案に反対したのかは理解に苦しむところであります。

 この決算議会中、小田急線高架に関連する重要な報告が二件なされました。一つは、高架で都市計画決定されていた外郭環状線について、地下化を前提にまちづくりを検討した報告書が東京都から公表されたという都市整備常任委員会での報告であります。もはや世田谷のような住宅地域では、鉄道や道路の高架計画はあり得ないことを示す事件であります。もう一つは、特特法の期限切れが本年十二月二十八日に切れることに関連し、京王線は法の規定を守って積立金を取り崩し、値下げを敢行するのに対し、小田急ほか三つの鉄道会社は特特法の期限延長を申請し、さらに運賃を上げることを運輸省に申請しているという交通対策特別委員会での報告であります。

 私は、小田急高架と街づくりを見直す会のメンバーとともに、小田急の特特法申請の延期と運賃値上げの申請を運輸大臣は認めるなとする要望書を昨日提出し、昨日対応した運輸省鉄道局都市鉄道課都市鉄道整備促進対策室の加藤宏昭計画係長と意見交換をしてまいりました。その中で重要なことがわかりました。京王線の調布駅付近では二キロ近くの連続立体事業を予定しており、構造形式は地下だというのであります。現在、笹塚以西調布までの間の複々線事業の構造形式についてさまざまなうわさが流れておりますが、これで地下化を大幅に取り入れることの可能性が見えてきたわけであります。

 今回の京王線の運賃値下げと小田急の値上げは、明らかに小田急の高架計画の失敗を象徴しております。小田急線の複々線事業の認可は、そもそも世田谷代田−下北沢間の混雑率二〓六%を一六六%に緩和することを目的として申請が認可され、そして運賃の値上げが認められたわけであります。ところが、十年を経て十二月二十八日、期限が切れるというのに、達成率はゼロ%なのであります。にもかかわらず、今後の何らの展望も示さずに、特特法適用延期とさらなる値上げを申請するのは、盗人たけだけしいと言わなければなりません。世田谷区と区議会は、挙げてこの申請の撤回を求めるべきであるというふうに考えます。小田急工事の予算の執行はストップするのが最善であるというふうに考えます。

 さて、決算議会を通じて、私は、請願事案となっている稲荷塚古墳を含む生産緑地は、区が生産緑地法に基づいて買収し、緑地と文化財について保護を図るべきだということを訴えてまいりました。決算委員会の質問を通じて、生産緑地法の運用に重大な誤りがあり、区が定めた買い取り基準の要綱は違法なものであることを指摘してまいりました。平成四年から平成八年までの生産緑地の買い取り申し出は九ヘクタールであるにもかかわらず、〇・九ヘクタールしか区は買い取っておりません。十のうちの一つしか買い取っていないわけであります。生産緑地法には、特別な事情がない限り買い取ることが義務づけられていると読むのが素直な読み方であります。しかし、世田谷区には白を黒と言いくるめることのできる特殊な言語をお持ちの方がたくさんいらっしゃるらしいと、今回改めて感じ入りました。

 買い取りが義務ではないということが政令や通達に書かれているのかと追及したところ、都市整備部長は答え窮して、建設省監修の「生産緑地法の解説と運用」に書いてあると答えました。そんなことは書いてないと指摘すると、川瀬助役は助け船を出して、裁判事案にはいまだなっていないにもかかわらず、最終的には裁判所が判断するとまで豪語したのであります。しかし、この問題は法律問題である以前に数学の集合の問題であり、あるいは国語の問題であります。十のうちの一つは例外ということはあっても、十のうちの九は例外とは言いません。生産緑地法が特別な事情がない限りと、特別な事情を例外として規定しているのに、世田谷区は買い取り基準を要綱で定め、普通の事情を規定しているのであります。このようなことが行政手続法及び条例に違反することは明白であります。

 決算委員会では時間がなくて全文が紹介できませんでしたので、ここに都市整備部長が法運用について参考にしたという「生産緑地法の解説と運用」の該当箇所を紹介しておきます。

 Q&Aの「『特別の事情』とはどういう事情を考えているのか」。これに対して、アンサーとして「『特別の事情』とは、市町村長が買い取ることができない真にやむを得ない場合が生ずることを考えて規定されているものであり、例えば、1)公園、緑地をはじめとする公共施設等の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して、当該土地が明らかに公共施設等の敷地として不適当であると認める場合において、当該土地を生産緑地として保全する必要がなくなり、都市計画の変更手続が用意されている段階にある場合等や、2)買取り申出がなされた土地が著しい不整形地であり当該部分だけでは利用することができないような土地について買取りを義務づけることは不可能を強いることとなる。3)また、財政赤字で再建団体となっている市町村等について全部買い取ることを義務づけることも不可能を強いることとなり、これらの財政上の理由についても『特別の事情』に含まれうると考える」、こう書いてあるのであります。

 これを読んで、なぜあのようなことができるのか、非常に理解に苦しむものであります。白を黒と言いくるめる理事者とこれを擁護する決算委員長。決算委員長は、特別の事情についての回答は到底納得できないものであるから、ちゃんと回答をさせるまで審議をストップさせよと私は要求いたしました。これを無視いたしました。こういった体制のもとで、決算審議が厳正なものとなろうはずはありません。真の議会改革を行おうとするならば、質問時間を奪うなどということを考えるのではなくて、行政機関へのチェックを果たすため議会としてしなければならないことは何であるのか、そのことを十分に皆さんで話し合って決めていくことだというふうに考えます。

 このことを申し上げまして、無党派市民の反対討論といたします。

○(真鍋欣之議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。