平成8年第3回定例会(自9月30日 至10月25日)

世田谷区議会会議録

1996年10月25日 「世田谷清掃工場の建替えに関する請願」への反対意見


○(石塚一信議長) 次に、

△日程第六を上程いたします。

   〔関次長朗読〕

 日程第六 請願の処理

○(石塚一信議長) 本件に関する委員会の審査報告はお手元に配付してあります。

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○(石塚一信議長) これより意見に入ります。

 発言通告に基づき、発言を許します。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 「『世田谷清掃工場の建替え』に関する請願」について、反対の立場から討論を行います。

 世田谷清掃工場について、請願は、最新設備でのプラントの更新を都に求めよということを趣旨としております。世田谷区町会連合会が行った請願であり、九万余の署名を集めておりまして、清掃問題、ごみ問題についての区民の関心の深さが示された請願であるとは思います。世田谷清掃工場は、開業以来二十五年もの年月を経ており、稼働率が悪くなっていることや、ペットボトルなどの新たなごみが混在することによって処理効率が悪くなっていることは事実であります。

 それでは、それに対応して処理能力を上げるため、最新技術を導入すれば問題は解決するのでしょうか。断じてそうではありません。請願では、資源循環型の清掃行政への転換を一応は指摘しておりますが、これが前面に出てこないのはなぜでしょうか。これは再資源化することが、今の官主導の方式では不可能であることを請願者は体験的に知っているからであります。

 ペットボトルを例にとりましょう。ペットボトルは、最新のボトリング設備では、原液と水とペットレジンを入れれば、一分間に二百本の充てん済み二リットルボトルが無人で出てくるそうです。これを清掃行政で分別して集めて売るということでは、決してペットボトル公害はなくなりません。幾ら倫理を強調しても無理であります。物は、つくった企業が責任を持って処理するべきであるという原理を原理的に主張した方がおります。須田大春さんという技術者ですが、「エコノミスト」の十月十五日号に、この方の「清掃工場も処分場も二〓年間で全廃できる」という論文が掲載されています。私は、これを読んで目からうろこが落ちました。冒頭の部分をちょっと読んでみます。「ゆりかごからゆりかごまで」との小見出しの後に、次のように書き出しております。

 現在東京は深刻なゴミ危機に見舞われている。第一に埋め立てによる環境破壊。二三区のゴミを東京湾にどんどん埋め立てたため、東京湾の自然環境は著しく損なわれてきたが、もはや東京には海がなくなり、隣接の神奈川や千葉との埋め立て境界争いが始まっている。一方、多摩地区のゴミを集めて日の出町に埋めたため汚染を引き起こしている。

 第二に焼却による環境汚染、環境負荷と処理費用の増大である。ゴミ処理の費用は一九九三年度には一キロあたり八六円と一〇年前の二・三倍にも急騰し、もはや東京のゴミはガソリンより高くなっている。

 第三に、なかなか進まないゴミのリサイクルである。行政によるリサイクル介入は、ゴミ処理費用をますますつり上げるばかりでなく、既存の資源循環市場を破壊する。

 こうした現状を打開して、その場しのぎでないゴミ行政を実現するためには、ゴミについての根本的な発想転換が必要である。不要なものをまぜこぜに「ゴミ」として出せば、役所が「集めて焼いたり埋めたり」してくれる時代は、もう終わりにしなければならない。

 不要物を無価物として無償の官業で経済外的に処理することが産業を歪めてきたのだ。 ゴミがこんなに増えたのは大量生産の結果である。生産者の製品に対する責任は、機能保証にとどまることなく、使用後の再資源化にまで拡張すべきである。「ゆりかごから墓場」ではなく「ゆりかごからゆりかごまで」を合言葉に、廃棄物を出さない循環型の経済システムを構築することがどうしても必要である。消費者はその費用を結果として負担するとともに、預託金等の形で混ぜてゴミにしない責任を負う。役所は、この循環が滑らかに行われるための誘導と監視を仕事する。清掃行政から資源行政に転換するのである。ゴミをリサイクルするのではなく、ゴミにしないで資源として循環することが必要だ。

 このように書いております。これはぜひ皆さんも読んでいただきたい論文であります。まさに目からうろこが落ちるような論文であります。

 既に西ドイツなどでは、車は製造企業が企業をもって処理をしなければならない制度を導入しているというニュースも聞きます。世界的に言えば、既にできるところから資源の完全循環に向けて一歩を踏み出しているのであります。

 請願の主張は、大量消費社会に何ら改変を与えぬまま、必要だからつくれということに等しいものであります。これでは何の進歩もありません。ごみ問題に関しては根本的な対応を考えなければなりません。公害の垂れ流しの六〇年代、PPPが公害を克服したのと同じように、まさにすべての製造物のPPPが必要なのであります。

 このことを訴えまして、また新しいごみ政策の転換のために、ともに闘っていただけることを訴えまして、無党派市民の反対討論といたします。

○(石塚一信議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

 これより採決に入ります。本件を二回に分けて決したいと思います。

 まず、平八・三五号、平七・一一号、平八・三〇号及び平八・二五号についてお諮りいたします。

 本件を委員会の報告どおり決定することにご異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○(石塚一信議長) ご異議なしと認めます。よって平八・三五号、平七・一一号、平八・三〇号及び平八・二五号は委員会の報告どおり決定いたしました。

 次に、平八・二一号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。

 本件を委員会の報告どおり決定することに賛成の方の起立を求めます。

   〔賛成者起立〕

○(石塚一信議長) 起立多数と認めます。よって平八・二一号は委員会の報告どおり決定いたしました。