平成8年第1回定例会(自34日 至328日)

世田谷区議会会議録

1996年3月11日 平成7年度世田谷区一般会計補正予算(第3次)への反対意見


○(鈴木昌二議長) 以上で企画総務委員長の報告は終わりました。

 本八件について意見の申し出がありますので、発言を許します。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 議案第五号、平成七年度世田谷区一般会計補正予算(第三次)に、反対の立場から討論をいたします。

 議題とされた一般会計第三次補正予算は、小田急線連続立体化事業への追加支出を伴うものであります。現在小田急線は、和泉多摩川から喜多見までの狛江工区と喜多見から梅ケ丘までの経堂工区の二工区について、成城学園前駅付近の一部掘り割りを除いて高架形式で工事が進められています。

 高架が採用されたのは、狛江工区では昭和五十六年度の、経堂工区では昭和六十二年度、六十三年度の二カ年の連続立体事業調査を経た結果であります。連続立体事業は、単に鉄道の構造形式だけではなく、既存道路との交差、さらには新設道路を伴い、あわせて各駅を中心とする、また道路沿線のまちづくりや都市づくりに大きくかかわることであるから、東京都が国から補助金も得て建設省のマニュアルを使った詳細な調査をすることになっているのであります。

 この調査では、高架、地下などの構造形式別の検討を行うことになっていますが、両工区とも一部を除き高架形式を採用するという結論を出しています。問題は、高架、地下の比較検討がまともに行われてきたのかということであります。

 世田谷のような住宅地域におきましては、高架よりも地下の方が環境に優しいということは、だれもが認めるところであります。しかるに、なぜ高架を選択したのかというと、事業費を比較して高架の方が地下よりも安いという結論を出したからであります。経堂工区に関しては、昭和六十二年の時点で地下が三千億円、工事費二千六百億円、用地費四百億円かかるのに対し、高架は一千九百億円、工事費九百五十億円、用地費九百五十億円でできるとして、あたかも地下が高架よりも著しく高いかのように積算しております。本当にそうでありましょうか。

 東京都自身が出した数字を使い、また東京都の示した二線二層シールド方式のままでも、高架下の利用、地下鉄にした際の在来線の跡地を考慮に入れれば、地下化の方が六百六十一億円総事業費としては安く上がるというのが土地利用の専門家である不動産鑑定士が鑑定した結果であることは、さきの一般質問の際に詳しく示したとおりであります。

 下北沢工区が地下であれば、地下のまま経堂工区と下北沢工区がつながるためさらに安くなり、高架方式の実に三分の一強で事業は可能になるのであります。ところが、この質問には区の理事者は一般質問の際には一切答えておりません。地下化が安く、環境にも優しく、地震にも強いとしたら、やり直すべきであります。とりわけ経堂工区は、平成七年度予算までで世田谷区負担分が八億円、世田谷区の全体の負担分が百九億円ですから、百九分の八、すなわち一割も工事がまだ進捗していないのであります。今進めている工事をやめてやり直しても安くつくのであります。

 理事者は納得のいく説明をするべきであります。国民、都民、区民の血税が注ぎ込まれるわけですから、地下化の方が高架よりも三分の一強の事業費でできるとしたら、地下方式に変更することが何よりも急務であります。したがって、金のかかる高架方式を続行するための追加予算に反対であります。

 小田急線高架の見直しを私は選挙戦で公約として掲げ、当選してまいりました。社会民主党、当時は日本社会党ですけれども、社会民主党も高架見直し、地下化推進を公党として約束してまいりました。世田谷区議会の幾つかの会派、日本共産党や生活クラブなども、また同じように地下化推進を訴えてまいりました。しかしながら、残念なことに、小田急問題では、平成二年の第三セクターへの出資問題を皮切りに、小田急関連予算問題では、他の予算と抱き合わせということを理由に反対の意思が予算に関して示されたことはありませんでした。

 昭和四十五年、四十八年の全会派一致の地下化要望決議を例に示すまでもなく、公党の区民への約束がこれほど守られない事例を見たことはありません。やろうと思えば、分離採決や減額修正などの手法を要求し、小田急予算自体を俎上にのせる努力は幾らでもできたはずであります。争点のないところに事態の解明はありません。地下化の方が安いとの合理的な試算が市民と専門家の努力によって出てきているわけですから、問題の解明は地下化要望をかつて熱心に行った本議会の責務であります。

 本予算議会には市民団体から小田急線連続立体化事業関連平成八年度予算の減額修正案を出してくれとの請願が出ております。この声にこたえる意味からも、小田急関連の予算を含む本補正予算に反対を表明するものであります。小田急線の問題は公共事業見直しのまさにリーディングケースであります。どんな困難が予想されようとも、心ある市民と手を携えて地下化への見直しに向け奮闘することを約束して、反対討論といたします。