平成17年第3回定例会(自914日 至1018日)

世田谷区議会会議録

2005年 9月16日 一般質問


○菅沼つとむ 議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 一般質問を続けます。
 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 昨日、小田急線をめぐる重要な報道がなされました。朝日の夕刊です。一審で勝利した小田急訴訟は、高裁で門前払いの逆転判決を受けたけれども、最高裁大法廷で十月二十六日に口頭弁論が開かれるというニュースです。これは判例変更につながる、ひっくり返る可能性があるということであります。法学部出身の区長はよくおわかりのことだと思います。区政にとって重要な問題です。この事態について、区長のご見解をお聞きしておきたいと思います。
 通告に従い、一般質問を行います。最高裁の動きを踏まえながら答えていただきたい。
 最初に、下北沢街づくり懇談会の議事録の破棄についてお伺いします。
 下北沢の街づくり懇談会は、都市整備公社が事務局となり、下北沢の四商店街と二町会を参加させて、昭和五十九年、一九八四年に発足し、会合を積み重ねてきております。議事録の開示を世田谷区に求めました。ところが、平成十年の五十四回会合以降については公開されたものの、第一回から五十三回までの議事録については、事もあろうに廃棄したとの理由で公開はされませんでした。当初は小田急線の高架事業推進とあわせて町の再開発を行うことを目的として発足した組織です。結局は下北沢地区は鉄道構造は地下化となりましたが、発足以来の組織が継承され今日に至っており、北沢総合支所発足以来、同街づくり課が事務局を取り仕切っております。
 下北沢のまちづくりについては、街づくり条例上の協議会で議論すべきだと私は主張してまいりました。当の懇談会の中でも協議会への移行の意見がありましたが、むしろ区がそうさせてこなかったという経緯があります。懇談会は地域住民の自由参加も傍聴も認めておりません。それでいて、区は同懇談会を協議会と同様に扱うと区議会でも答弁し、下北沢の地域の意見を代表する団体とみなし、区条例の街づくり計画や法定の地区計画の策定に当たって、区が協議を重ねてきたのは同懇談会であります。
 懇談会の歴史を踏まえて、どのような議論が積み重なってきたのか知りたいものです。この事情を踏まえてお聞きいたします。
 第一回から五十三回までの議事録について、いつ、いかなる理由で破棄したのか。破棄の責任はだれにあるのか、破棄の責任の所在をお伺いいたします。
 区は、都市整備公社も所持していないと言っておりますが、区は議事録を把握しておく義務があるはずであります。破棄したというのであれば、懇談会役員や会員から収集してでも所持し、公開するべきであります。所見をお伺いいたします。
 次に、下北沢地区計画素案への蓑原敬氏ほか専門家集団の要望書に対する区の対応、見解についてお聞きいたします。
 九月六日に開催された世田谷区都市計画審議会に下北沢駅周辺地区地区計画素案が報告されましたが、この素案には、都市プランナーの蓑原敬氏を代表とする二十名の都市計画の専門家が、区長あてに要望書を提出しております。七月四日付の要望書です。この要望書は、現在の下北沢の文化性を積極評価し、これを支える都市構造を高く評価した上で、素案について、この案は現代のまちづくりの考え方に照らして基本的な問題をはらんでいるばかりでなく、住民を交えた議論が尽くされているとは言えないと判断し、素案を再考することを要望しております。
 ちなみに、七月十六日に蓑原氏をメーンコメンテーターに、下北沢のタウンホールで開催されたシンポジウムの紀要の中で、同氏は下北沢をユートピア的と評し、現実にユートピアが存在し、都市計画という行為がそれを無視しているだけではないか。アラン・ジェイコブスがサンフランシスコの現在にユートピアの骨格を見たように、下北沢をユートピアと見立てられないのはなぜか。一つは、都市空間の目標空間像についての議論がまともにされていないということ。町は要る、町とは何かという議論の欠落だと言い切っております。これからの町のあるべき姿は、今の下北沢にあると言っているのであります。
 蓑原氏は建設省本省の住宅建設課長を務めた方ですし、名前を連ねている方々は、いずれも第一線で活躍する都市計画や建築の専門家です。二十名の方々の名前のみご披露いたしましょう。青木仁、大方潤一郎、加藤仁美、北沢猛、倉田直道、国広ジョージ、小浪博英、小林正美、小林博人、佐藤滋、司波寛、陣内秀信、高見沢邦郎、中井検裕、西村幸夫、二瓶正史、福川裕一、山本俊哉、吉川富夫、そうそうたるメンバーであることは疑いようがありません。世田谷区も大変お世話になっている先生方も中にはおり、よくご存じのはずであります。
 そこでお聞きします。
 まず、この専門家の方々についての世田谷区としての評価をお聞かせいただきたい。また、要望書の内容についてどのようにお考えであるのかをお聞かせいただきたいと思います。
 一、現在の下北沢に対する現代都市計画上の高い評価を与えている点について、二、補助五四号線、駅前広場は下北沢の景観、スケールを壊すとの指摘について、三、説明、合意形成が不十分という指摘について、四、街づくり条例にのっとり街づくり協議会を組織し、地区計画を再検討すべしとの指摘について、具体的にお答えいただきたいと思います。
 最後に、都市整備公社とせたがやトラスト協会の統合、外郭団体の見直しについてお聞きいたします。
 都市整備公社の本質は都市開発のための組織であります。一方、トラスト協会は自然保護を目的としております。国交省と環境省を一緒にするようなものであり、水と油の統合にほかなりません。三軒茶屋再開発の役割を終えた都市整備公社は解散し、トラスト協会は区の天下り人事をやめ、市民活動の自発性を伸ばす財団に改革すべきであります。
 トラスト協会について言えば、財産は自然保護活動のボランティアの存在ということになるでしょう。ところが、開発志向の都市整備公社との合併は、彼らを失うことにさえなるでしょう。自然を愛する人の心が区は全くわかっていない。水と油の統合はやめるべきなのです。
 ところが、議論は、当初から統合ありきで進んでおります。両財団の人事を見て驚きました。世田谷区清掃・リサイクル部長を退職し、平成十五年度にトラスト協会事務局長に就任した山下氏は、平成十六年度には都市整備公社常務理事となり、平成十七年度にはトラストの常務理事になっております。平成十六年度に都市整備公社まちづくりセンター所長であった伊佐氏は、区職員のまま、平成十七年度にはトラスト協会の事務局長に就任しております。
 トラスト協会事務局長は、かつては退職者の天下りポストであったにもかかわらず、現職の区職員に担当させたのは異例であります。統合ありきの人事というほかはありません。天下りの弊害は言うに及ばず、区職員が特命を帯びて、二つの公社の責任者を渡り歩きながら統合を進めるのは、公社並びに財団の独立性をじゅうりんしているわけであります。こんなことがあってはならないと思います。見解をお伺いしたいと思います。
 外郭団体見直しは、迂回財源による不正常な契約をしていることなどが問題となっております。こういったことをやめさせたり、天下りや区の遠隔操作をやめさせることこそ重要であります。そのための改革プランや数値目標はあるのか、見解を問うておきたいと思います。
 以上で壇上からの質問といたします。(拍手)

◎真野 北沢総合支所長 私からは、下北沢懇談会の議事録の廃棄についてのご質問をいただきました。お答え申し上げます。三点ほどまとめてお答え申し上げます。
 下北沢街づくり懇談会は、下北沢のまちづくりを検討することを目的に、昭和五十九年に発足した、地元を代表する自主的なまちづくりの団体でございます。
 区は、下北沢のまちづくりを進めるに当たりまして、同懇談会からの諸提言や会合での意見交換を踏まえ、まちづくりの計画を策定してきております。また、区は同懇談会からの申請に基づきまして、街づくり条例を根拠とする街づくり専門家派遣制度によります街づくり専門家を派遣しております。区として保存しております議事録は、専門家から実績報告書として提出されたものでございます。
 懇談会議事録の文書として、保存年限は区の文書保存基準によりまして五年保存となっております。しかし、現在のまちづくりの諸施策に必要との判断から、平成十年度、第五十四回以降の議事録を保存しているものでございます。議事録の保存は、区の文書保存基準を踏まえ、適正に処理しております。議事録の公開につきましては、自主的なまちづくりの活動団体であります懇談会の判断によるものと考えております。
 次に、下北沢地区計画への専門家の皆さんからの所見についてということにつきまして、評価ということについてお答え申し上げます。
 区は本年三月、下北沢周辺地区のこれまでのまちづくりの取り組みについて成果を集約し、地区計画素案として発表し、説明会を行ったところでございます。現在、地区計画原案の策定に向け作業を続ける中、さまざまなご意見をお寄せいただいているところでございます。お話にありました専門家の方々より、本年七月四日、素案を再考するようにという旨の要望書をいただいたところでございますが、そこにご参加された方々のご見識に基づくご意見であるというふうに認識しております。
 意見書の内容について、まず都市計画上の高い評価を与えている点、補助五四号線、駅前広場は、下北沢の景観、スケールを破壊するというご意見に対してのご答弁を申し上げます。
 下北沢周辺地区は、小田急線と井の頭線が交差する交通の要衝にあり、古くから下北沢の駅、商業中心の町として栄え、また、個々の魅力的な商店街や劇場に代表される下北沢の文化が形成され、それらが住宅地と調和しながら発展してきております。しかし、道路等の都市基盤が不足しており、歩行者の安全、快適な買い物空間の形成、合理的な土地の利用、防災性の向上などが課題となっております。
 当地区のまちづくりは、都市整備方針に基づき、現状の町の魅力を継承し、さらに小田急線の連続事業や都市計画道路の整備とあわせて、建築物の建てかえの際に規制、誘導していく地区計画制度により、広域生活拠点としての新たな魅力を付加していくことを目標としております。
 今後整備される広幅員歩道を有する補助五四号線や駅前広場等の沿道では、地区計画で新たに条件づけられるまちづくりに貢献する公開性を持つ広場や通り抜け通路の設置などにより、新たな魅力と活気あふれる町並みの誘導が期待される一方、地区全体として親密感ある下北沢の町並みが継承されるものと考えております。
 次に、説明、合意形成が不十分、また、協議会を新たに再考すべきというご指摘についてご答弁申し上げます。
 下北沢のまちづくりにつきましては、昭和五十九年以来自主的に活動している下北沢街づくり懇談会より、地区住民によるまちづくり構想として、平成十年、下北沢街づくりグランドデザイン、平成十二年には下北沢グランドデザイン構想図の提言をいただきました。
 区は、これら諸提言を踏まえ、地元の方々との意見交換を重ねながら、平成十四年、駅周辺街づくりの基本計画、十五年には駅周辺街づくりの整備計画、十六年には懇談会の案を踏まえ、説明会、公告・縦覧、意見書提出等の手続を経て、街づくり条例に基づく地区街づくり計画を策定したところでございます。
 さらに区は、これらの経緯を踏まえ、昨年十一月、これまでの地区の現況、課題を整理し、区の基本的な考え方を地区計画骨子案として提言、本年一月、地区内関係者を対象に、地区特性に応じたブロック別意見交換会を四回開催し、また、街づくり通信にはがきのアンケートをつけて骨子案に関する意見を募集するなど、地区内関係者の意見を素案の内容に反映するよう努め、この三月に素案を作成、説明会を実施したところでございます。
 現在、さらに街づくり通信を地区内に戸別配布したり、区のホームページでの周知や、地元町会、商店街との意見交換会などを重ね、さらにまちづくり相談などさまざまな意見を伺い、原案作成に向け準備をしているところでございます。
 街づくり協議会を組織せよということでございますが、区といたしましては、下北沢街づくり懇談会は、これまでも貴重な提言やご意見をいただいている地元を代表した団体であり、街づくり協議会組織と同等であると認識しております。
 以上でございます。

◎株木 都市整備部長 私からは、都市整備公社を解散し、トラスト協会は区の天下り人事をやめ、市民活動の自発性を伸ばす財団に改善すべきとのご質問にお答えいたします。
 トラスト協会と都市整備公社の統合、再編につきましては、本年二月、区より両外郭団体に対しまして、外郭団体改善方針に基づき、せたがやトラスト協会並びに世田谷区都市整備公社の改善に係る検討指針に沿った検討を依頼し、両財団においては、理事会、評議員会にて審議を重ねているとお聞きしております。
 指針では、区民、事業者、行政の協働連携による緑の保全活動やまちづくり活動の推進、支援機能をより一層強化していくため、平成十八年四月を目途に、両財団を統合する方向で具体的な検討を進めるとしております。
 区といたしましては、市民活動の自発性を尊重しながら、さらに連携協働によるまちづくりが推進され、時代に即した新たなまちづくりの広がりが期待できるものと考えております。
 以上でございます。

◎西澤 政策経営部長 外郭団体の見直しについてのお尋ねがございました。
 外郭団体は、行政サービスを補完し、区民の健康保持や文化振興などさまざまな面で、区民サービスを充実拡大する役割を担っております。そのため、区はその設置者として、団体の健全な運営に必要な支援を、団体からの要請に応じ行っております。
 契約方法や区の退職職員の配置についてご指摘をいただきましたが、外郭団体における情報公開制度の整備など、団体経営の透明性の向上やOB職員の配置につきましても、人員体制の見直し、組織体制の簡素化に努めるよう指導を徹底するとともに、区といたしましても、団体からの要請に応じ、適材に絞って配置する方針で取り組んでおります。
 さらに、団体の人事配置についてのご指摘もございました。もとより団体の人事配置につきましては、各団体の自主的な判断により行われていると認識しておりますが、団体事業の遂行のために適切な人員配置が行われるよう、区としては必要な支援を行っているところでございます。
 指定管理者制度が導入され、外郭団体は民間との競争にさらされることとなっております。今回、各団体が策定いたしました改善計画を第一歩とし、改善の成果を明らかにしながら外郭団体改革を進めてまいりますが、団体の民としてのメリットを生かす観点から、区の外郭団体に対する関与のあり方についてもさらに精査し、団体の自主性、自立性を促してまいりたいと考えております。
 以上です。

◆四十八番(木下泰之 議員) 冒頭、これは緊急だったんですけれども、昨日、夕刊に最高裁での大法廷が十月二十六日に開かれて、口頭弁論が開かれるということがあったものですから、中央大学法学部出身の区長はよくおわかりだと思いますので、それについてどう思うかについて、一言お願いしたいと思います。
 それから、情報開示の問題ですけれども、情報開示については、これはさんざん懇談会は地元を代表する組織であると言っている。そして事務局は都市整備公社及び街づくり課がずっと行ってきた。これをやっぱり秘匿するということは非常に問題がある。その観点から、もう一度収集して公開するつもりはないのか、それをお聞きしておきたいと思います。
 まずそれをお願いします。
   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長 木下議員の再質問ですか、お答えいたします。
 小田急線高架化の問題が最高裁への動きがあるということは承知しております。ただ、ご指摘の昨日の朝日新聞の記事については私は読んでおりませんでしたので、改めて読ませていただきたいと思います。
 以上です。

◎真野 北沢総合支所長 議事録の保存についてのご質問をいただきました。
 保存文書の基準につきましては、適正に処理しているというふうに考えております。先ほどご答弁申し上げましたように、公開につきましては、自主的なまちづくり活動団体の懇談会の判断によるものではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

◆四十八番(木下泰之 議員) 熊本区長には、だれもこんな大事な問題について周りが進言されない、そういう記事があったということを進言されないということは非常に不可解であります。
 それから、情報開示については、これは決算で十分追求していくつもりであります。
 以上です。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。