平成17年第1回定例会(自31日 至330日)

世田谷区議会会議録

2005年 3月10日 平成16年度一般会計予算二次補正への反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。

 発言通告に基づき発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 一般会計補正予算についての反対討論を行います。

 財政のあり方として看過できぬ問題がありますので、この点を詳しく述べます。

 今回の補正予算には小田急線の連立事業関連の予算が組まれております。小田急小田原線の世田谷代田〜喜多見間の線増連続立体交差化事業は、平成六年に工期六年として平成十二年度には完成する予定で事業認可されたにもかかわらず、それでは終わらずに、既に事業を平成十六年度まで四年間の延長認可を受けてまいりました。平成十六年度で終わる予定でしたら、本年三月三十一日までに終わらなければなりません。しかしながら、実際には世田谷代田〜喜多見間の連立事業は終わっていませんし、側道の事業地にはいまだ未買収の地権者がおり、終わるわけがございません。

 今回の補正予算では、世田谷区が東京都から受託している側道の工事費一億九百万円を減額補正しております。このことは、既に事業の平成十六年度完成を放棄したことを宣言したということであります。今回の補正、十七年度の当初予算とも東京都との十二月の文書協議で決まったと、区担当者は既に本補正予算案提出の際に答弁しておりますが、そうであるならば、十二月の段階で、既に連立事業の再延期が認可されていなければならないことになります。しかし、実際には、その時点では連立事業の認可はおろか、申請さえ出されておりません。これは行政も小田急も十二月で複々線を走らせることで事業を完成させたと虚偽の宣伝をし、連立事業が完成したという作出をしたかったからにほかなりません。

 この間、区は本年一月には当初予算の説明を、二月の初旬に補正予算の説明を各会派に行っております。そして、都が事業認可申請をしたことを知ったとしたのは、毎日新聞のトップ記事でのスクープ報道があった二月十八日だということです。当局は申請の時期さえ知らされていない。しかも、申請は二月を過ぎてからのことということになっております。

 事業認可は重要です。認可を受けない都市計画事業は行ってはいけません。認可期限が切れてしまえば効力は失効します。しかしながら、東京都や世田谷区のやってきたことは、事業の再延期認可を国からとらないばかりか、申請もせずに、延期を前提とした予算を平成十七年度当初予算に組み、あわせて減額補正の補正予算まで組んでしまったということであります。

ちなみに、地方財政法三条は「地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。」とあります。

 世田谷代田〜喜多見間の連立事業は、ご承知のように成城を除くほとんどの部分を高架事業として行うことを強行しようとしたことから、沿線住民から平成六年、一九九四年の国の認可について取り消せとの訴訟が起こされており、平成十三年、二〇〇一年の十月三日には、東京地裁でこれを取り消せとの住民勝訴の判決が下されました。

 この東京地裁藤山判決は認可の違法判断について、当時の小田急線の騒音が違法状態を発生させているのではないかとの疑念への配慮を欠いたまま都市計画を定めることは、単なる利便性の向上という観点を違法状態の解消という観点よりも上位に置くという結果を招きかねない点において、法的には到底看過し得ないものであるし、事業費について慎重な検討を欠いたことは、その点が地下式ではなく高架式を採用する最後の決め手となっていたことからすると、確たる根拠に基づかないで、よりすぐれた方式を採用しなかった可能性が高いと考えられる点においてかなり重大な瑕疵と言わざるを得ず、これらのいずれか一方のみを見ても、優に本件各認可を違法と評価するに足り得るものと言うべきである。したがって、以上の諸事情を考慮すると、本件各認可については、その余の点を判断するまでもなく違法と言わざるを得ないと述べておりますが、幾つかの違法事由を列挙していくに際して、筆頭に事業期間の設定の違法性を指摘しているのであります。

 判決の要旨では、次のようにあります。本件鉄道事業認可自体については、その基礎となる都市計画決定の経緯を理解せず、確たる根拠に基づかずに事業施工期間の適否を判断するなど、十分な検討に基づいて行われたか否かすら疑わしい。事業期間については、世田谷代田〜喜多見間六・四キロに先行して行われた喜多見〜和泉多摩川間二・四キロメートルの短い事業区間でさえ七年間の事業申請をしており、平成六年当時、六年間でできるとしたこと自体、不合理であります。

 平成六年当時は高架・地下論争の真っ最中でした。高架と地下の費用比較などを、細川政権下の五十嵐建設大臣の提言を受けて検証の会議が東京都と住民の間で開かれて、そういった会議が開かれているやさき、細川政権が崩壊したことをよいことに、国の認可は強行されました。都が高架は早くできると宣伝をするために、六年でできるとして申請したことを、国はうのみにした認可でした。極めて政治的な事業期間の設定です。このような政治的な事業期間を弾劾したのが東京地裁藤山判決でした。

 そして、事実が何よりも重要です。本年二月十八日に発覚した事業の三年延期申請で合計十四年、結局、当初六年間の予定が二倍以上の事業期間になってしまうわけであります。また、下北沢区間、世田谷代田〜代々木上原間も地下であります。今となっては、高架は地下よりも安く早いとは絵そらごとになってしまったと言わなければなりません。

 国は二審で、六年では完成しなかったが、延長期限までには事業を完了すると苦しい答弁を強いられた。二審判決で行政側は逆転勝訴したが、この弁明は結果的に虚偽だったことになり、最高裁の審理の行方を左右する可能性もあると、二月十八日の毎日新聞は書きました。

 この毎日新聞について、区長は読んでないとおっしゃっている。二審の東京高等裁判所の判決は、いわゆる門前払い判決でありました。連立事業の認可取り消し訴訟については、関連事業として同時に認可がなされた側道の地権者さえも原告としては認められないというものでした。これは、従来の最高裁判例からいっても不当なものです。

 この判決について、昨年の法改正に伴う原告適格の拡大を受けて、判例変更についての審理が大法廷で行われることになりました。法律に明るい方は、つまり役人の方は、総じて今回の大法廷回付の決定をまなじりを決して見ておられる。つまりは、最高裁で逆転住民原告勝訴があり得るのであります。一審においても既にできた高架橋を壊せとは言っていないので、小田急高架事業についてすべてを最初からやり直せということには、たとえ原告が勝ったとしてもならないでしょう。しかしながら、役人のやってきた違法行為の認定は重要な問題です。最高裁がその違法を認めれば、公共事業のあり方自体が変わらざるを得ないのです。また、小田急の連立事業も代替措置や周辺都市再開発のあり方も含め、再検討を迫られるでしょう。

 今、日本は危機にあります。高度成長期を通じて、行政はその裁量権を盾に、ある意味で好き勝手なことをやってまいりました。公害を放置し、薬害エイズを放置し、ハンセン氏病患者を隔離病棟に押し込め、人権をじゅうりんし、あげくの果ては財政危機も放置してまいりました。行政の自由裁量をこのまま放置してよいのか。行政の裁量統制をどうするのか。最高裁が対応せざるを得ない重要課題です。国民主権国家の法の支配をどうするのかが問われております。

 小田急認可について、上告審は三月二日に受理されました。最高裁で受理されました。論点回付された大法廷では原告適格は必ずや拡大される方向に進んでいくでしょう。第一小法廷では裁量統制問題をどう扱うのかが最大の問題です。既にその焦点はそこに移っております。建運協定違反は二審でさえ認めざるを得なかった。しかしながら、東京高裁は建運協定は行政の内規だからと逃がしてやってもいる。みずからつくった規範を破っていいのか。これが最高裁での最大の争点です。

 さて、そういう状況の中で、今回提出された一般会計補正予算が討論に付されております。

議場の皆さん、よく考えていただきたい。小田急線連立事業是非を別においたとしても、法令に準じて小田急連立事業の予算を処理しようとすれば、補正予算に事業の残余の予算をすべて組み込み、平成十六年度で事業が終わらないものについて執行残とすべきなのであります。ところが、補正予算編成の時点では再延長認可さえ出されていなかった事業の予算に対し、平成十七年度当初予算への事業費が組み込まれていた見返りに減額修正がなされており、しかも、認可もしないうちに、三月三日に区議会に上程されました。そして、いまだに再延長の認可告示はないのであります。

以上をもちまして一般会計補正予算に対する反対討論といたします。

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

 これで意見を終わります。