平成14年第3回定例会(自918日 至1018日)

世田谷区議会会議録

2002年9月20日 一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 通告に従い、一般質問を行います。
 まず、私は、私が被告として訴えられていた名誉毀損訴訟の最高裁での勝利についてお聞きしたいと思います。区長にご見解をお聞きいたしますので、よく聞いておいてください。

 二年前の九月議会の際に、私は、当時の経堂駅周辺街づくり協議会会長が駐車場無届け経営を行い、このことが東京都公害防止条例違反となること、また同氏がI区議の後援会長であったこと、さらに同協議会役員が建築基準法違反を行っていることを取り上げ、まちづくり協議会の役割にかんがみ、両名が同協議会役員としてふさわしいかどうかを区に問いただす質問をいたしました。

 この一般質問について、両名から、発言を取り消させた上で私を懲罰に付せとの要望書が議長あてに寄せられ、この要望趣旨と期を一にして、自民党議員数名から発言取り消し動議が出されました。私は、動議が提出されたこともあって、指摘された文言の中から一部誤解を受けると思われる発言については取り消しに応じました。

 ところが、今度は共産党から、個人を特定できる文言はすべて取り消せとの動議が提出され、これを奇貨として自民党はこの共産党の動議に乗る形で提出していた動議を撤回し、提出された共産党の動議は下条議員を除く全議員の賛成で可決されてしまったのであります。

 議会での言論の自由は議員の命であります。当然のことながら、この不当な取り消し動議を拒否すると、今度は問責決議が提出され、これまた下条議員を除く全員の賛成で可決されてしまいました。
 さて、前置きが長くなりました。この一連の私に対する言論弾圧事件はこれでは終わりませんでした。問責決議を盾に、当事者である石綿英一経堂駅周辺街づくり協議会会長と石綿勝同協議会役員が区議会議員である私に対し、名誉毀損の損害賠償請求訴訟を起こしてきたのです。両名それぞれに対し五百万円を払え、朝日、毎日、読売に謝罪広告を出せ、区議会本会議で同謝罪広告を読み上げて謝罪せよというものでありました。

 この訴訟は一審、二審とも被告である私が勝訴し、原告の最高裁への上告についても本年六月十三日に棄却の決定判決が出て、被告の私の全面勝訴で確定いたしました。一審は、平成十三年七月二十五日に判決がありました。この判決は極めて単刀直入なもので、公務員たる区議会議員は、民法七百九条に基づく損害賠償責任はないというものであります。原告が二審に上告するに至って、同年十一月二十一日の東京高裁判決は、原告の訴えを避けるに際して、区議会議員の職務としての言論の広範な自由を認めた上で、次のような判示をいたしました。

 区議会議員が区議会で行った質疑等において、個別の区民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これが当然に当該区議会議員の職務上の義務に違背した違法な行為と言うことはできず、これが違法とされるためには、当該区議会議員がその職務とはかかわりなく違法または不当な目的を持って事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながら、あえてその事実を摘示するなど、区議会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認めるような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。

 これを本件について見ると、原判決掲記の事実関係によれば、被控訴人の本件発言は、東京都世田谷区議会の定例会における区議会議員の一般質問として行われたものであるが、本件発言の内容に照らしても、被控訴人が区議会議員として付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認め得るような特別の事情の存在はうかがわれない。したがって、本件発言が被控訴人の区議会議員としての職務上の義務に違背した違法なものであることを認めるに足りる証拠は存在しないと言うほかはないと、私、木下の議会発言を擁護した上で、一審判決を支持いたしました。

 本年六月十三日に至って最高裁判決は、この高裁判決に対する石綿氏両名の上告を棄却し、この判決は確定したのであります。よく聞いていただきたいと思います。高裁判決は次のようにも述べているのです。

 区の意思形成の過程には、区民の間に存する多元的な意見及びもろもろの利益が反映されるべきであるから、質疑などにおいても現実社会に生起する広範な問題が取り上げられることになり、中には具体的事例に関する、あるいは具体的事例を交えた質疑などであるがゆえに、質疑などの内容が個別の区民の権利や利益に直接かかわることも起こり得る。したがって、たとえ質疑などによって結果的に個別の区民の権利や利益が侵害されることになったとしても、直ちに当該区議会議員がその職務上の義務に背反したものとは言えないと解するべきである。

 この判決は、不正追及や権力犯罪追及を積極的に行う議員への大きな励みになることは言うまでもありません。プライバシー保護や名誉保護は民主主義にとって重要な問題ではありますが、このことを隠れみのに、不正や違法行為あるいは官民癒着の問題が解決されずに放置されてよいわけはありません。
 最高裁は、高裁判決を支持し、まさに上告を棄却することにより、議会での言論の自由を一般的なプライバシーより優位に置き、守ったということになるわけであります。

 翻って、区議会の問責決議は、過度の言論統制ということにもなり、誤りであるということにもなるわけであります。この判決について、行政の長たる区長はどのように受けとめられるか、ご意見をお伺いしたいと思います。
 大事な問題ですので、時間を大半かけてしまいました。通告した残余の質問はポイントのみお聞きしておきます。

 経堂駅駅前広場及び接続街路の整備計画案についてでありますが、委員会に報告された文書には、整備計画案については、平成十二年四月に経堂駅周辺街づくり協議会より提出された経堂駅周辺街づくり計画原案の趣旨を受け策定したとあったので、私は街づくり条例を読み返してみました。そうすると、協議会原案を尊重して区長は街づくり計画をつくることにはなっているが、これには公告縦覧と告示が必要になっております。しかしながら、経堂駅周辺街づくり計画は、原案が平成十二年四月に提出されたにもかかわらず、二年半近くたった今でさえ策定されていません。

 街づくり計画は策定されてもいないのだから、街づくり協議会の経堂駅周辺街づくり計画原案は私案にすぎません。しかし、この私案の趣旨を受けて策定した駅広と都市計画道路の整備計画案の説明会を今月の二十七日、二十八日に開催しようとしておりますが、一体これはどういうことになっているのでしょうか。何のオーソライズもされていないことからこのような計画を出すことができるのでしょうか。そのことについてお聞きしたい。

 小田急線の高架線増連続立体交差事業の本体についての質問をしたいと思います。  昨年十月三日に東京地裁は国の都市計画事業認可を違法とする歴史的判決を下しました。控訴審では、裁判長が被告国に再答弁を促したことで審理は本格化し、住民側優位が伝えられ、二審でも住民側が勝てる展望が見えてきたわけでありますが、世田谷区はこの訴訟の進行をどのように認識しておられるのか。

 また、東京地裁に違法と判決されているにもかかわらず、判決を無視して工事を強行しているのみならず、本来行ってはならない小田急線の夜間工事が強行されております。しかも、本来昼間行える工事さえ深夜に行われている。少なくとも区民生活を守る観点からは、区は小田急、東京都に夜間工事の中止を即刻申し入れるべきだと思いますが、見解をお伺いしたいと思います。

 以上、壇上からの質問といたします。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 お話のございました最高裁判決の意義についてでございますが、区といたしましては、民間同士のことでございますので、コメントする立場にはございません。


◎安田 世田谷総合支所長 経堂駅駅前広場の今回の都市計画変更の問題について質問がございました。

 今回の都市計画の変更につきましては、これは議員お話しのように、街づくり協議会のたたき台に基づきまして、それをずっと検討してきたわけでございますけれども、その後、いろいろな推移がございまして、ようやく今回地域の方々と一応の話がついたということで、原案としてお出ししたものでございます。

 したがいまして、今後、地域の皆様のご意見を聞きながらこれを確定していく、そういうことになろうかと思います。

 以上でございます。


◎佐藤 都市整備部長 小田急の控訴審について区はどう認識しているかというお話がございましたが、現在係争中でございますので、区としての発言は控えさせていただきます。

 また、夜間工事等のお話がございました。

 既に列車を運行している路線の連続立体交差化及び複々線化という工事の性格上、工事の内容によってはどうしても終電の運行が終了した後から翌朝の始発電車までの夜間に施工せざるを得ない工事もございます。

 区といたしましては、そうした夜間でしか施工できない工事をやむなく行う際には、事前にきちんと沿道にお住まいの方々への周知を図り、あわせて騒音や振動の発生を最小限に抑えるように小田急電鉄に既にお話ししておりますが、ご指摘もございますので、今後重ねて要請してまいりたいと考えております。

 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 夜間工事については決算でやりますけれども、まちづくり協議会については、これはまちづくり計画を策定していないうちに新たな決定案を出してくるということは、条例違反であります。そのことについて、もう一度条例の観点からきちんとお答えいただきたい。

 それから、要するに民民の話だから答えられないと区長はおっしゃいましたが、まさに区議会、行政、そして裁判所という日本の三権、それにかかわる重要な問題であります。しかも、この区議会で行われた発言に対してそういう形で民間から行われてきた。そのことについてお答えいただきたい。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 最高裁の判決そのものは適当であるというふうに存じております。


◎安田 世田谷総合支所長 まちづくり協議会の条例上の位置づけでございますけれども、これについては、まちづくり協議会は地区計画の提案を区に対してできるという規定になっておりますけれども、そのことを区がそのとおり決定するというような、そういう義務づけはございません。

 以上でございます。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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