平成13年第2回定例会(自66日 至614 日)

世田谷区議会会議録

2001年6月8日 決算認定への反対討論


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 小田急線の連続立体交差・複々線化事業について、四月十日、十一日、十二日の三日間、素案の説明会が東京都、世田谷区、渋谷区、小田急の四者共催で行われました。小田急線下北沢地区の地下化とまちづくりについてお聞きいたします。

 まずは、構造形式についてお聞きいたします。

 下北沢地区は、結局、二線二層の地下方式をとることが公表されました。説明会では私の質問を通じて、その事業費は土地の買収費を含み一千四百億円で、高架と同等の事業費だということを東京都が見込んでいるということが明らかになったわけでありますが、まずはこのことの確認をしておきたいと思います。二線二層地下方式で示された素案の事業費は一千四百億円で、横並び四線高架と同等である、これでよろしいのか、このことについてお答えいただきたいと思います。

 その上で、一千四百億円と言うけれども、この金額はいつの時点で、どのような調査で、どのように算定された数字なのか。また、用地買収費と工事費の内訳はどうなっているのか。素案の地下化及び採択しなかった横並び四線高架化の別でそれぞれ明らかにしていただきたいと思います。

 さて、地下化の公表は市民の勝利と考えるものですが、都発表の今回の地下化の問題点は、二線二層であるにもかかわらず、地上から素掘りで行う古典的な開削工法を基本としていることであります。トンネルをモグラのように掘り進むシールド工法を使うのは急行線のみで、しかも三分の一にも満たない。上層部の普通列車については開削工法なので、結局、全線掘り返しての工事を行わなければなりません。上層、下層ともすべてシールド工法であれば、工事費自体も安く、また地上部の立ち退きの必要がほとんどないため、また更地として買収する必要もないため、用地費も格段に安くなるはずであります。

 下北沢地区に限っても、地下二線二層方式を上層、下層とも全線シールド方式で行うべきであります。その方が立ち退き問題、費用問題、工事のしやすさ、早期実現にとっても有利なはずであります。最近のシールド技術はかつてのような土かむりの制約から自由になっているはずですので、当然比較の対象とすべきものですが、東京都はどのような比較をしたのか、明らかにしていただきたいと思います。  今の質問と関連しますが、区調査と都調査の関係及び事業の調整経過、情報把握、説明責任についてお聞きいたします。

 一九八七年六月に世田谷区は東大工学部の川上秀光名誉教授を座長とする小田急沿線街づくり研究会、いわゆる川上委員会が報告を公表し、東北沢〜野川間で地下式は高架式の一・六九倍から一・八四倍、下北沢区間で地下式は高架式の一・五一倍との数字を挙げ、これが事業費の面からの高架計画を推進する役割となりました。

 今回の下北沢の説明会で明らかになった地下・高架方式の事業費がいずれも一千四百億円であるとの東京都の見解は、梅ケ丘〜野川間の事業について、地下方式としては金のかかる開削工法で行ったとしても、二線二層地下方式をとればほぼ同額でできるということを表明したのと同じであります。もしシールド工法を野川〜東北沢間で全線採用すれば、シールド方式は区間が長ければ長いほど単価当たりの工事費が安くなり、用地費も格段に安くなるわけですから、東北沢〜野川間全線について言えば、シールド二線二層地下方式の方が高架四線方式より格段に安上がりであることは火を見るよりも明らかであります。しかも、このことは地下化にした際の地上の在来線跡地の資産価値の算定を除外した上でそうなのであります。

 そうすると、一九八七年六月の川上委員会報告書は、梅ケ丘〜野川間の高架計画へのミスリードという役割を果たしたことになりますが、区長はこの責任をどのように考えているのでしょうか。当時、二線二層シールド方式を採用して比較したならば、地下方式の方が高架方式よりも事業費は格段に安く算定されたはずであります。ご見解をお示しいただきたいと思います。

 また、この報告書が公表された一九八七年は、都の連立事業調査が始まった年でありますが、一九八七年、八八年の都の連続立体交差事業調査については、当初から調査報告書すら世田谷区は受け取っておらず、市民が情報公開を受けたレベルでしか、いまだに情報を知り得ていないというふうに世田谷区は言っておりますし、また、二〇〇〇年度に行われた東京都の連続立体交差事業調査についても、いまだ報告書を受け取っておらず、見せてももらっていないと言っているわけです。本日に至っても何ら情報を得ていないのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。

 また、中央復権コンサルタントにやらせた世田谷区の梅ケ丘以東新宿までの構造調査を今回の決定にどういうふうに生かしたのか、東京都とどういう調整をしたのかも明らかにしていただきたいと思います。

 次に、下北沢のまちづくりについてお伺いいたします。

 下北沢地区の補助五四号線について、町を分断し、下北沢が車中心の町に変貌してしまうのではないか、また高層ビルの建ち並ぶミニ新宿になってしまうのではないかとの心配が地元の住民や商店街の方々からなされています。下北沢は歩いて楽しめる町として、生活の息遣いが感ぜられる居住地区との混在の町としても特徴を持っており、町としては下北村あるいは下北ビレッジというような感覚が残っており、それゆえに現在成功をおさめている町であると思います。この下北沢らしさをどう担保するのかは重要な問題です。

 ところで、現在、下北沢の商業地域の大部分は五〇〇%の容積率です。ここに二十二メートルもの幅の道路が通るということになると、どうなるでしょう。ほうっておいては、高層、超高層の林立ということになります。それでは今まで培ってきた下北沢のアイデンティティーは死んでしまうでしょう。どうやって歯どめをかけるのか、そもそも歯どめをかけるつもりが区にはあるのかどうか、お考えをお聞かせいただきたい。

 畠山区議から先ほど、まないたのコイ論が展開されましたが、補助五四号線を通じて呼び寄せられるのは、いわばブラックバスであります。道路建設をやめるか、あるいは下に潜らせるか、迂回させるといった歯どめ策、さらには容積率を思い切って切り落とすといった歯どめ策を具体的に講じないと、ブラックバスに食い荒らされて、コイなどいなくなってしまうということを申し上げておきたいと思います。

 一二八号線の座布団の認可失効と第三セクターの小田急連立事業参入根拠については、小田急連立事業への第三セクター東京鉄道立体整備の参入根拠とした二十メートル足らずの道路について、東京都や世田谷区の関係者の間で「座布団」という隠語で言われているわけでありますが、この本体事業については未着手のまま第三セクターは解散してしまいました。関連事業としての連立事業にはちゃっかり金をつぎ込んだのに、便法とした座布団道路は未着手のまま解散してしまったという幽霊のような話であります。話のつじつまが合うように説明していただきたい。

 最後に、経堂駅周辺街づくり協議会会長の辞任についてお伺いいたします。

 昨年の秋の決算議会の冒頭の一般質問で、経堂駅周辺街づくり協議会の会長と役員の東京都公害防止条例違反と建築違反を取り上げ、区から補助金を受けている街づくり協議会の役員としてふさわしくないのではないかとの質問をしたところ、決算議会の終盤になって発言を問題にされ、議会から問責決議まで受ける事態になったことは、下条さんを除いて皆さんが決議したところでございますから、経過についてはよくご存じのことと思います。

 ところで、この街づくり協議会の会長が昨年の十一月に同協議会の会長の辞任を役員会に申し出、本年春に開かれた総会で辞任をされたとみずから語っておられますが、このことは事実でしょうか、お伺いいたします。
 以上、壇上からの質問といたします。


◎原 都市整備部長 小田急連続立体交差事業に関しまして、矢継ぎ早に幾つか質問をいただきましたので、順次お答えしたいと思います。

 まず初めに、素案説明会があって、そこの中で構造形式の発表と同時に千四百億円という事業費が示されたということで、これの内訳がどうかということでありますが、内訳は、その時点でも東京都からお話があったように、まだ厳密なものではありません。これについては、委員会の中でもお話ししたとおりであります。私たちは東京都からわかっている範囲でお話をしたのでありますが、ちょっとご説明をさせていただきます。

 小田急線の代々木上原〜梅ケ丘間の連続立体交差化につきましては、四月に開設された素案説明におきまして、地下方式による素案と額が示されました。その事業費につきましては、現存の鉄道を立体化する連続立体交差事業と輸送力増強のための線増事業を合わせまして、東京都はその時点で千四百億円を見込んでいると申したのであります。そのうち用地費、工事費などの内訳については、私どもは現在までも把握をしておりません。また、国からの補助、東京都及び地方財政法の規定に基づく地元区からの負担を合わせた、通称都市側と呼ばれる負担と鉄道事業者側の負担の割合等については、今後、東京都、小田急電鉄の間で協議をしていくこととなり、現在の時点では内訳については確定していないと聞いております。

 二番目で、開削工法を基本としているので金がかかるではないか、全線シールドでやるべきである、そうすれば土かぶりの心配をしないでいいけれども、東京都はどのように比較をしているのかということでありますが、この調査につきましては、私どもはまだ把握をしておりませんので、現在のところ、残念ながらわからないというお話をするしかございません。

 三番目、一九八七年六月に川上委員会というレポートの中で、高架、それから立体の比較がなされた。実際、小田急線下北沢部分が地下になっていくということであるならば、この検討委員会はミスリードをしたということであるけれども、どうかというお尋ねでありました。

 十四年前、この時点で考えられるいろいろな社会条件、経済条件、あるいは当時使えた技術的手法、あるいは財政的なあり方、そういうものを勘案しながら、当時十四年前の報告書は考えられたものだと思っております。その後、喜多見の方向から事業が進み、その間、鉄道の基準もややいろいろなことがやれるようになり、財政的にもいろいろなことができてきた、そういうことでありますので、ミスリードと言うのではないと考えております。何度も申し上げておりますが、公共事業というのは、そういう調査、試行も重ねながら、その時点で考えられるものを一生懸命やっていく、そういうものであるので、その事業の性格というものをご理解いただければと願っております。

 それから四番目、二〇〇〇年、昨年に実施した東京都の報告書は本日に至っても提供を受けていないのかと。今申し上げましたが、これは本日でもまだ受け取っておりません。

 それから、区があるコルサルタントに調査をしたものをどう生かしたか、あるいはそれとの関係がどうかということでありますが、上に行くか下に行くかはともかく、連続立体ということはとにかく進むわけですから、区がやるべき駅周辺のまちづくり、あるいは駅周辺の関連道路の整備、そういうのはやはり区独自で考えておかなくてはいけないという判断から、先ほど申された調査を行ってきたもので、それは東京都との協議の中でも折々話をし、区の考えをそういう調査に基づいて検討してきたということはあるので、生かされていると考えております。

 それから、その問題を離れまして、事業の中で第三セクター、座布団と言われるものについてどうかということでありますが、これは一二八号線の道路の部分でございますが、これをNTT資金ということでやるべく設立された東京鉄道立体整備株式会社が一応その役を終えたということで、本体事業は未着手のまま解散したわけではありますが、事業としてはそれをそれぞれの事業者が引き続いてやっていくということで、そういう理解をしております。

 私たちが今考えたいのは、もう梅ケ丘まで鉄道が高架で迫ってきて、それが平成十六年度に完成する。それにできるだけ早く合わせて、それ以東の部分もやっていかなければいけない。できるだけ混雑率を下げる、それから踏切を解消する、そういうことに向けて努力をしていきたいと思いますので、その間、もちろんできるだけ適正な手続と適法にやっていくわけですけれども、現在の方向はそういうことで、私たちは粛々と東京都その他と協力しながらやっていきたいということをご理解いただきたいと思います。
 以上です。


◎濱詰 北沢総合支所長 小田急線下北沢地区の地下化とまちづくりにつきまして、下北沢らしさをどう担保するのか、その方針と具体的な措置についてお答えを申し上げます。

 下北沢らしさということにつきましては、人それぞれのお考えがあるというふうに思います。下北沢街づくり懇談会では、下北沢街づくりグランドデザインの中で、古いもの、新しいものの混在、わくわくする迷路性、人のサイズに合った親密感のある街としております。また、タウン情報誌などでは、おもちゃ箱の街などと評されております。私どもも、こうした下北沢らしさがこれまでの下北沢の発展の原動力であったというふうに考えております。したがいまして、これからもこの下北沢らしさをまちづくりの基本に据えまして、さらに下北沢らしさを生かしたまちづくりを進めていかなければならないというふうに考えております。

 このため下北沢のまちづくりに当たりましては、歩行者の回遊性の向上に加えまして、この地域に不足する緑や憩いの空間などを補いまして、また防災性の向上などを図り、より一層町の楽しさ、にぎわい、また安心して生活できるようなまちづくり、歩いて楽しめるまちづくりを行いまして、下北沢らしさの保持と強化を図ってまいります。
 以上でございます。


◎安田 世田谷総合支所長 経堂駅周辺街づくり協議会の会長が辞任されたのは事実かどうかということについてお答えいたします。

 経堂駅周辺街づくり協議会は、このたび同協議会会則に基づき役員の任期満了を迎え、その改選がなされたものでございます。役員の改選につきましては、平成十三年四月二十五日に開催されました協議会において、新たな会長が選任、承認されております。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 最後の会長の辞任なんですが、昨年の十一月に役員会に辞任を申し出たというのは事実ですね。そのことを一点答えてください。
 それから、下北沢地区の地下化の問題ですけれども、世田谷区はやっぱり高架と地下を比較して、下北沢についても地下の方が高架よりも高い、それから梅ケ丘以西についても高い、そういう報告を出したんですね。それで、公式な報告としては、行政が表立って出したものはそれしかないんですよ。世田谷区議会はそれに基づいて、高ければできないという話で、そちらに流れていったわけですけれども、やはり二線二層式で、今度出てきたやつで同等だという話になるし、先ほど説明したように、もっと安くできるんですよ。そういったことについて説明をしなければ、納得のいく話ではない。そのことについて、もう少しきちんと詳しく説明していただきたい。
 その二点について、まず答えてください。


◎安田 世田谷総合支所長 昨年の十一月に辞任を申し出されたかどうかということのご質問でございますけれども、このたびの改選において旧会長が再任を望まれなかったということを聞いておりますけれども、昨年の十一月かどうかは承知しておりません。


◎原 都市整備部長 公式の報告はこれしかないということでありますが、いろいろな検討を重ねる中で、現在の形態、事業の方向が決まってきているものだと思っております。

 それで、先ほども申し上げたように、十四年前にはそのとき考えられる諸条件を整理して、その段階ではそのような方向がよろしかろうということでレポートとなったものであろうと思います。いずれこれは事業が完了したときにどういうことが評価されるかということで、しっかりまとめることになろうと思いますが、今はその時点の判断があのレポートにまとまったということで、現時点では、この前の素案の説明会でありましたように、現在使える技術、財政的な手法その他を使って、下北沢部分は地下でいこうということで、これから事業が進んでいくという理解をしております。
 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) 実は大江戸線はもう完成しているんですけれども、この大江戸線の企画というのは、ちょうど川上委員会がやったころにはもうできていたんですよ。そういう状況で、余りこちらがいろんなことを知らないと思って言ってはいけないですよ。全部その辺は証拠が上がっているんですから。今現在、裁判も行われていますけれども、多分十月三日に判決が出ますけれども、勝つ可能性が非常に強いですよ。そういった問題を指摘しておきたいと思います。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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