平成12年第4回定例会(自1128日 至128 日)

世田谷区議会会議録

2000年11月29日 一般質問


○山内彰 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 通告に基づき一般質問を行います。
 新聞報道もなされ、十一月十三日に発売された週刊「エコノミスト」誌にも紹介されたのでご存じの方も多いと思いますが、十月十九日付で、法政大学名誉教授の力石定一氏が座長を務める小田急市民専門家会議は、現在進められている小田急高架事業についての地下化への見直しの代替案を提案しました。この代替案は「小田急を全線地下化し、跡地を『神宮の杜と多摩川を結ぶ緑道』に」という表題で、次のように始まります。

 私たちは、現在住民の反対を押し切って進行している小田急電鉄の複々線・連続立体化工事について、小田急主体の工事はとりあえず線増部高架化までで中止し、公的機関の手で新宿から一貫した地下鉄工事を行い、成果物を小田急に売却し、逆に地表及び高架部を小田急から購入して立体的に緑地化するという現代の三方一両損プランを提案します。

 従来、住民側の主張は、違法高架は白紙撤回して、高架橋を壊して、地下化でやり直せというものでした。しかし、この提案は、この正論に対しては譲歩を迫り、つくってしまった高架橋は、不本意ではあろうけれども壊すのではなく利用しようというものです。小田急に対しては二線二層地下方式を受け入れることを求め、行政に対しては高架橋と在来線跡地を使って神宮の杜と多摩川を結ぶ緑道、すなわち生態回廊、コリドーという都市に環境再生を目指す新たな公共工事をあわせて行えというものです。住民、小田急、行政とも譲歩をし、つまり一両ずつは損をするけれども、全体としては未来志向の解決ができるというものです。

 小田急の複々線化・連続立体事業は、在来線部分が東京都の事業、複々線化は鉄建公団が事業主体となって行っている公共事業です。公共事業の見直しは今や国民的な課題です。それを単にむだな公共事業をやめようというのではなく、三方一両損でプラスに転じよう。公害をまき散らす高架鉄道をやめ、都市再生を図る緑の公共投資に差し向けよう。それをこの世田谷で行おうというのが力石さんたち専門家の提案であるわけです。

 さて、ここで大事なことは、この市民専門家会議の提案がなされた直後の十月二十七日に、司法がこの提案を評価し、こういった提案もあるのだからとして、原告である住民と被告である建設省に、双方話し合いで解決をしたらどうかと事実上の和解勧告をしてきたことであります。しかも被告に対しては、事業者である東京都と相談の上での回答を求めたのであります。公共事業の見直しに司法が理解を示したということにおいて、今回の事態は画期的なことであります。

 裁判所が原告住民と被告建設大臣にあてた文書を紹介しましょう。

 訴訟の進行に関する求意見 甲第百五十八号証及び甲第百六十一号証等本件処分に関する訴訟外の動きならびに昨今の公共工事一般に関する状況の変化及び地下鉄工事に関する技術の進歩等、本件処分以後の事情の変化にかんがみ、現時点において、本件につき話合いによる解決を目指す意向があるか否かについて十一月十七日までに書面により回答されたい。
 なお、被告においては、本件事業認可に関連する都市計画決定を行った東京都知事の意向も聴取した上、その意向も合わせて回答されたい。
 平成十二年十月二十七日 東京地方裁判所民事第三部 裁判長裁判官 藤山雅行


 冒頭の甲百五十八号証というのは市民専門家会議の意見書であり、甲百六十一号証というのは民主党の山花郁夫代議士が小田急高架事業の違法を内閣にただした質問主意書のことであります。違法性をただした質問主意書までをもここで取り上げているのは、裁判所が違法の疑いを強く持っていることのあらわれであります。つまり、高架、地下の比較検討を公平に行わなかったことや、複々線部分を建設大臣の認可なしで工事を強行していることへの裁判所の求釈明にまともに答えることのできない被告建設大臣に対し、このことは決算議会で紹介してきたとおりですが、力石提案もあるのだから話し合いで解決したらどうかと提案を裁判所がしたということなのであります。

 この裁判所の提案に住民側が異存があろうはずはありません。住民側は過去の行きがかりを捨てて話し合いにつく用意があるとすぐに声明をしました。ところが、被告建設大臣は、回答期限ぎりぎりになって裁判所の勧めを拒絶する旨の回答を示したのです。この裁判は来春には結審を迎えますが、判決の方向性は皆さんにも読み取れるだろうと思います。原告が勝利の方向に向かっている、そういうふうに読み取れるだろうと思っています。

 さて、そういった流れを頭に置いていただいた上で、裁判所の建設大臣への事実上の小田急線高架事業見直し協議要請と世田谷区長の対応についてお聞きいたします。

 今回、裁判所が事実上の和解勧告を行うに当たっての建設大臣への注文は、本件事業認可に関連する都市計画を行った東京都知事の意向も聴取した上、その意向も合わせて回答されたいというものでありました。東京都知事の意向を聞くというのであれば、都知事は当該自治体である世田谷区長に意向確認がなされてしかるべきであります。

 そこでお聞きいたします。区長に対し建設省や東京都から情報提供や相談はあったのか否か。聞くところによりますと、新聞報道に驚いて区の一線の担当者が東京都に資料や説明を求めたにもかかわらず、返答はなしのつぶてであったとのことであります。世田谷区は今回の問題で情報把握についてどのような対応をとられたのか、お聞きいたします。

 また、世田谷区がらち外に置かれていたとするならば、東京都に対して抗議をするおつもりはあるのかないのか、そのことをお聞きいたします。

 また、裁判所の求釈明や今回の裁判所の求意見については私の方で情報提供しておきましたが、裁判所の呈した求釈明や求意見について区長はどのようにお考えになるのか、お聞かせください。

 さらには、今回の求意見のきっかけとなった力石名誉教授らの小田急市民専門家会議の提言について区長としてどのように考えるのか、お示しいただきたい。


 次に、小田急線開発拠点地域の駅周辺街づくり協議会の会長、役員の違法行為への区の指導についてお聞きします。

 名前を議事録から消したところで事実は消えません。問題の本質は、私がこの事実を指摘するまで行政は違法を放置してきたということであります。そして決算議会では質問についてまともに答えていないということであります。

 そこで再度お聞きします。会長の経営する大規模駐車場について、公害防止条例届け出違反は解消されたのか否か。また、どのような指導を行っているのか。役員の建築違反は具体的にはどのようなものであるのか。違法は解消されたのか否か。また、どのような指導を行っているのか。建築基準法に照らして何が違反であり、指導により違法状態は根絶できているのか否か、具体的にお答えいただきたい。

 同駅周辺街づくり協議会への区の関与及び補助金について、区は人的貢献も含めてどのような関与をしているのか。この団体に補助金は幾らつぎ込まれているのか、お答えいただきたい。


 最後に、同駅周辺街づくり協議会と都市計画法及び区街づくり条例についての関係を踏まえてお聞きいたします。

 新都市計画法は、基礎自治体が地区計画を定めることが法定化されたわけであり、地区計画の原案を提出でき、その原案の尊重がうたわれた区街づくり条例とあわせ読めば、街づくり協議会の法的、社会的役割は大きい。例えば用途地域見直しや私権制限にかかわることを提案できる。そういった役割を持った街づくり協議会の会長や役員がまちづくりに大きくかかわる問題で公害防止条例や建築基準法違反を犯すことについてどのように考えるのか、区長の見解をお聞きいたします。回答拒否は許されません。
 以上で壇上からの質問といたします。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 区長からの答弁ということでございますが、関係の部長からお答えさせます。


◎原 都市整備部長 小田急に関連して裁判の状況、あるいはここしばらくなされた提言ということで幾つかご質問がありましたので、お答えいたします。
 まず、裁判所が建設大臣への事実上の和解勧告をしたが、それについて建設省、東京都から情報提供や相談があったかどうか、あるいは情報把握をどのようにしたかということでありました。

 お話があったような協議要請というのは新聞その他で存じておりますが、私どもはこれは事実上の見直しというようなことではなくて、双方解決の意向があるかどうかを尋ねたということで理解をしております。小田急線の連続立体交差事業は、言うまでもなく、東京都が建設大臣の認可を受けまして都市計画法に基づき施行している都市計画事業であり、この件については特に建設省や東京都からの情報提供や相談は一切ございません。情報把握について一応尋ねはしましたが、そのような状態でありました。

 次に、裁判所が呈した求釈明、求意見について区長としてどのように考えるかということであります。

 この裁判は継続中でありますので、やがておりるであろう結審を待って、その結果を静かに見守りたいと思っております。抗議するつもりはございません。

 それから、専門家会議のご意見ということであります。
 現段階ではかなり工事も進んでおりますし、それに向けての住民のご理解もあって現在の状況があると理解しております。また、工事者の努力その他もあって、今の姿が出てきているということであります。どのように考えるかということでありますが、そのようなことを考えますと、行政の立場からは現実性を欠いた提案と言わざるを得ないと考えております。区といたしましては、現在の構造による連続立体交差事業が一日も早く完成して、通勤通学時の超混雑の解消ですとか、あかずの踏切、鉄道による地域分断の解消、鉄道や道路の安全性の確保がなされることを切に願っているところであります。
 以上です。


◎永山 環境・災害対策室長 駐車場についてお答えいたします。

 お話の駐車場につきましては、所有者が異なる三つの駐車場として整備されておりましたが、本年八月に土地の所有者が同一人になったということで、三カ所全体の駐車場についての届け出の指導をいたしました。その結果、十月中旬には条例に基づく五十三台の駐車場の届け出がなされました。設置者に対しましては、近隣住民に配慮し、アイドリングストップやポイ捨ての禁止などを注意する看板の設置など公害防止の措置について指導いたしました。あわせて、今後大規模な改修などを行う場合には、植樹や透水性舗装を行うなど指導をいたしました。
 以上でございます。


◎小畑 世田谷総合支所長 ご指摘の(四字訂正)駅周辺街づくり協議会に関しまして何点かご質問がございました。

 まず、ご質問の建築物につきましては、配置が当初の建築確認申請と異なったために、北側で高さにおいて不適合が生じたものでございます。口頭にて指導を行いました結果、是正工事が行われ、不適合となっておりました鉄筋コンクリートの柱、はり、壁、屋根の部分は既に除却されております。十月二十五日に現場で適合であることを確認いたしました。現在では合法な建物として施工中でございます。

 次に、街づくり協議会への補助金についての質問がございました。

 区は街づくり条例に基づきまして、地域住民の主体的なまちづくりを支援するため、地区街づくり協議会に対し、その運営及び地区街づくり計画の原案の作成に要する経費の一部を助成しております。区の街づくり協議会に対します関与のあり方といたしまして、条例の趣旨を尊重し、協議会の主体的な運営を支援していく立場から行っていくものであります。ご指摘(四字訂正)の駅周辺街づくり協議会につきましても、今までの活動内容から判断し、住民の自主的な参加のもとに、主体的な運営がされているというふうに考えております。したがいまして、これまで地区街づくり協議会経費助成金交付要綱に基づきまして、平成八年度、これは協議会の設立の年でございますが、十一年度までの四年間、各年五十万円ずつ、合計二百万円の助成を行ってきております。

 次に、街づくり協議会と都市計画法及び区街づくり条例の関係についてお話がございました。

 街づくり条例に基づく街づくり協議会は、同条例第十一条第二項の規定によりまして、地区街づくり計画の案となるべき事項を区長に対し提案することができる地域住民の自主的な団体でございます。街づくり協議会から提出された計画原案は、直ちには都市計画法上の地区計画の案となるものではございません。しかし、街づくり協議会から提出された計画原案は、地元の方々の意見が反映、集約されたものでございます。区といたしましては、計画原案の内容を尊重し、さらに広く地域住民等のご意見をお聞きした上で、まちづくりの基本ルールである街づくり条例上の地区街づくり計画を策定してまいります。さらに、地区街づくり計画の中で特に重要な道路等の都市施設や地区施設、建築物の規制等につきまして、都市計画法に基づく手続を経て地区計画等として決定し、法的な効力を持った実効性のあるまちづくりを進めてまいりたいと考えております。お話にございましたような協議会の役員構成、あるいは協議会の運営事項等はあくまでも協議会会員の自主的な判断に基づいて行われるべきものと考えております。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 最初の小田急線の連続立体事業に関する一連の裁判の流れですが、これは訴訟外の動きについてかんがみて、それで建設大臣と東京都に対して裁判所の方が和解勧告を出してきたということであります。なぜこれが事実上の和解勧告であるかということは、建設大臣の拒絶の返答にあらわれているわけですね。都市計画事業認可処分のような行政処分については、本来話し合いによる解決はなじまない上、被告は従来から主張してきたとおり云々といって、本件都市計画事業の見直しを前提とする話し合いによる解決を目指す意向はないというふうに言っているわけです。つまり、話し合わないかといったことについて、東京都にも求めているわけですから、これは区長と十分相談した上でどう返答するかということは決めるべき立場だし、世田谷区はまさに世田谷区の基盤となる事業というふうに位置づけているわけですから、そのことについてきちんと関心を持って検証していかなければいけない、そういう立場にあるわけです。それについて、なぜそういうことについてきちんと検証しなかったのか。しかも、第三セクターも解散に追い込まれている。そういうことも含めて、区長、きちんと答えていただきたいと思います。

 それから、街づくり協議会につきましては、これは先ほどの答弁にもありましたように、非常にまちづくりに影響を与える事項なんです。その役員が違反を犯していた。そのことについてどうお考えになるんですかと区長に聞いているわけです。お答えください。


◎原 都市整備部長 裁判所の流れ、和解勧告について、なぜ区として要求をしていかないかということでありました。

 関心は大変持っておりますが、先ほど申し上げたように、裁判はやがて結審という結果を与えるものであります。その結果を得て、被告でない世田谷区としては、その結果を見守りたいと思っております。その結果に従いながら仕事をしていきたいと思っております。
 以上です。


◎小畑 世田谷総合支所長 地区街づくり協議会は、街づくり条例に基づきまして、地区住民などを主たる構成員として組織された団体でございます。それぞれ地区街づくり協議会、各地区で活動しておりますが、自主的な運営によりまして地区住民等の支持を得ながらまちづくり活動を展開しております。このご指摘の(四字訂正)駅周辺街づくり協議会につきましても、先ほど申し上げましたように、主体的かつ民主的な運営がされている協議会であるというふうに私どもは考えております。したがいまして、この街づくり協議会がどのような役員を選ぶかということは、繰り返しお答え申し上げておりますとおり、協議会が主体的に判断すべきものというふうに考えております。
 以上でございます。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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