2000年10月19日 平成12年第3回定例会(自920日 至1019日)

世田谷区議会会議録

発言取り消し動議から木下問責決議議決へ


○山内彰 議長 ここで日程の追加についてお諮りいたします。
 お手元に配付してあります追加日程第一を本日の日程に追加し、ここで議題とすることにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山内彰 議長 ご異議なしと認めます。よって本件は本日の日程に追加し、ここで議題とすることに決定いたしました。

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○山内彰 議長 これより

△追加日程第一を上程いたします。
   〔関参事朗読〕
 追加日程第一 木下泰之議員の発言取り消しを求める動議

○山内彰 議長 本動議に関し、提出理由の説明を求めます。
 なお、提出理由の説明についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 四十番桜井稔議員。
   〔四十番桜井稔議員登壇〕(拍手)

◎四十番(桜井稔 議員) 追加日程第一、木下泰之議員の発言取り消しを求める動議について、提案理由の説明をします。

 本件は、会議規則第十五条の規定に基づき、平成十二年九月二十一日に開催された本会議における木下泰之議員の一般質問に関する発言のうち、特定の一般区民が識別され、また識別され得る発言について、その区民のプライバシーが侵害されるおそれが強いため、発言取り消しを求めるものであります。

 地方自治法第百三十二条には、品位の保持として「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」と規定しています。この趣旨は、議会は公の問題を議論する場所であるから、無礼な言葉を用いたり、個人の私生活に関する発言や人身攻撃を行ってはならないということであると考えます。

 この視点に立って、私どもは次のことを指摘いたします。

 今回、木下泰之議員の一般質問において、特定の私人たる一般区民が識別され、また識別され得る発言は、それ以外の発言と組み合わせることによって、その個人のプライバシーが侵害されるおそれが極めて強く、一たん侵害されたプライバシーは現状回復が極めて難しいものとなります。このことは、その個人の名誉にかかわることにもなります。

 議会は言論の府であるから、発言の自由は尊重されなければなりません。しかし、それと同時に、一般区民の尊厳は守らなければなりません。区民の信託を受けた議員は、区民の権利擁護を何よりも優先しなければなりません。議員の公の発言によって私人たる一般区民のプライバシーが侵害されたりすることのないよう、常にみずからを律することが肝要であると思います。

 したがって、今後このような発言が行われないよう願って、本動議を提出いたします。(拍手)


○山内彰 議長 以上で提出理由の説明は終わりました。

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○山内彰 議長 これより提出理由の説明に対する質疑に入ります。
 なお、質疑についての発言時間は、議事の都合により、答弁も含めて十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 五番木下泰之議員。


◆五番(木下泰之 議員) 意外にも共産党から動議が出て、前の自民党の動議が撤回されたわけでありますが、出されました動議を読んでみますと、これは共産党の出したものの方がより悪質である、そのことが非常にわかります。なぜかといいますと、プライバシーと情報公開、それは表裏一体であります。この議会では、まさにそういうすれすれのものが、さまざまな思惑を持ちながら議論されていくものだというふうに私は考えております。

 それで、質疑について、通告しましたものについて順次聞いていきたいと思います。

 発議者は、(二字削除)駅街づくり協議会についてどのような認識を持っているのかを問いたいと思います。今回問題にした(二字削除)駅街づくり協議会についてです。

 発議者は、街づくり協議会と街づくり条例、都市計画法についての関係をどのように理解しているかを問いたいと思います。なぜならば、NPOであるとか、援助団体であるとか、そういうことが最近、区の協力者として出てきているわけですね。そういった関係をどのように発議者は理解しているのか。とりわけ街づくり協議会は特殊な法律体系のもとに組み込まれております。そのことについて見解を述べてください。

 それから、三番目として、発議者は一般質問で私が問題にした(二字削除)駅周辺街づくり協議会役員の建築違反の経緯についてどのように調べ、どのような認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

 それから、四番目に、発議者は一般質問で私が問題にした(二字削除)駅周辺街づくり協議会(二字削除)の東京都公害防止条例違反についてどのように調べ、どのような認識を持っているのか、お聞きしたいと思います。

 五番目に、発議者の提案では、行政からの援助を受けている団体の社会的責任を問う場合、役職名すら出せないということになると思いますが、そのことについてどういうふうに考えているのか、お聞きしたいと思います。

 六番目に、世田谷区は、区、区民、事業者の協働ということを言っておりますが、援助団体でなくてもさまざまな役割を負わせ、区の下働き的なシステムをとることもあり得るわけです。例えば町会も、そういう役割を今までしてきているわけです。そういった場合、団体の役員名で行為の是非を問うこともあると思います。会長さんがどうであるかとか、町会長さんがこういうことをやったけれども、そういうことについてはどうか、そういうことを質問することだってあると思います。ここは区議会です。そういったことについてどう評価されるのか。

 七番目として、建築違反を考えれば、建築主は事業者であり、また、駐車場経営者も事業者であります。今回取り上げた問題は、この事業者が法律違反、公法違反、公の法律の違反を犯しているということで取り上げたわけであります。そういう点についてどのように考えるのかをぜひ回答していただきたいと思います。

 それから、八番目に、取り消しの理由は総括的でありまして、このような動議の出し方では、今後に大きな禍根を残すことになるというふうに思います。そういうことから、私としては、ぜひ再考されて、これは撤回されないと、これから大変なことになる。共産党さんも自分の手足を縛ることになる、そういうふうに思いますので、ぜひそういうふうに考え直していただきたい。そのことも含めてご回答いただきたい。


○山内彰 議長 四十番桜井稔議員。
   〔四十番桜井稔議員登壇〕


◎四十番(桜井稔 議員) お答えいたします。

 私どもは、本会議場で一個人の行った行為に対して、区の対応を問題にすることはあります。また、その個人が加入している団体の事務について問うこともあります。しかし、それは私人である個人のプライバシーを侵害してはならないということを大前提にしているのは当然であります。

 今回の、平成十二年九月二十一日の木下泰之議員の一般質問での、特定の私人たる一般区民が識別され、また識別され得る発言は、それ以外の発言と組み合わせられることによって、その個人のプライバシーが侵害されるおそれが極めて強いものであります。私は、私人の行為の認識についてのお尋ねはこの動議と関係がなく、お答えをする場でないと考えております。

 また、街づくり協議会について言えば、住民参加の可能性と条件を広げるという役割を担うものであり、住民の自主的な任意団体と見ております。

 最後に、今回の動議は個人のプライバシーを守るための動議であり、撤回をするつもりはありません。

 以上であります。(「ちゃんと答えろ」「ちゃんと答えなさいよ、答弁漏れだよ。議長、答えさせてください。答弁漏れです」と呼ぶ者あり)


○山内彰 議長 お静かに願います。
 五番木下泰之議員。


◆五番(木下泰之 議員) 全然私の聞いた質問に答えていない。つまり、私は、今回問題にしたのは街づくり協議会です。とりわけ(二字削除)駅周辺街づくり協議会です。その街づくり協議会というのは世田谷区の街づくり条例に規定されておりまして、そのことによって住民参加が保障されているわけですけれども、ここで決めた街づくり計画は、世田谷区長は尊重することになっているわけです。そして、これは都市計画法とも結びついている。

 したがって、この街づくり協議会のメンバーの選定には、それなりの責任も伴っているし、それから、区議会でも議論しなければいけない問題でもあります。そして、選ばれた方がやはり社会的責任を持って、きちっと任務を遂行しているのならばいいけれども、まちづくり問題といえば、例えばどういうふうに、つまり、それまでの高さ制限を変えるであるとか、その用途地域を変えるであるとか、さまざまな個人的な利害にもつながってくるわけです。

 そういった中で、私はあえて個人名を出して、大地主の一人である(二字削除)さんがということで質問したのは、これはやはり伝統的に大地主というものもある。そして都市大地主という機能もある。そういった中で、そういった方が有力者として、(二字削除)の町をある意味で支配するような街づくり協議会のその(二字削除)となっている。その方が、その町を守らなければいけない方が、例えば駐車場の東京都公害防止条例の届け出に違反している。五十台以上もの駐車場が住宅地のど真ん中にある。それを届けていない、そういったことが明るみに出た。

 それから、役員の方が、この方が建築違反をやっている。まさに街づくり協議会は、そういったことについてきちっと取り仕切らなければいけないんだ。それがそういうことをやっている。ふさわしくないというふうに私は質問したのであります。

 こういったことは、先ほどプライバシーとは言ったけれども、市民生活の中のせめぎ合いの中で、とりわけNPOが非常に重要な役割を果たしている中では、そういったことはこの議会で議論しなければならないことなんです。

 それは、もちろんプライバシーについての尊重は私も十分心得ているつもりであります。しかし、共産党だって、例えば戦前の大地主とか、個人の名において有力な支配者となる、そういう事例も知っているはずじゃないですか。それから大企業、大企業だって、これは私人、法律ではですよ。つまり、法人という意味での私人でありますよ。そういった中でも中小企業と大企業を分けておられる。

 そういったことも含めて、例えば今、共産党が出された論理でいけば、これも全部否定されかねない、そういった動議の出し方なんですよ。そういったことについてあなた方は、例えば共産主義者として恥ずかしくないのか、そのことを聞きたい。ぜひ聞きたい。ちゃんと答えていない。あるいは民主主義者として、そういったことについて恥ずかしくないのか。それについてきちっと答えていただきたい。あなた方が共産党と名乗るのであれば、そのことについてはきちっと答える義務がある。答えてください。


○山内彰 議長 四十番桜井稔議員。
   〔四十番桜井稔議員登壇〕


◎四十番(桜井稔 議員) 街づくり条例について言えば、都市計画法に基づく地区計画案の作成手続を定めているものでありまして、街づくり協議会は、先ほど言いましたように、住民参加の可能性と条件を広げるという役割を持つべきものであり、そして、住民の自主的な任意団体と見ております。その参加者は一区民であり、そのプライバシーは最大限守らなければなりません。
 以上であります。


○山内彰 議長 木下泰之議員。


◆五番(木下泰之 議員) 私は、今の答弁を非常に悲しく聞きました。本当にそれでいいんですか。つまり、街づくり協議会というのは、都市計画法が変わって、市民参加によって区が街づくり計画を立てるときの一つの住民参加の機会になっているわけです。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。(「議長、大事な問題ですから、質問を継続させてくださいよ」と呼ぶ者あり)質疑は終わりました。(「こんな大事なことについて、十分程度のことで終えてしまうんですか」と呼ぶ者あり)お静かに願います。お静かに願います。お席に着いてください。

 これで提出理由の説明に対する質疑を終わります。

 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 発言通告に基づき、順次発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) ただいま提出されました、木下泰之議員の発言取り消しを求める動議に反対の立場からの討論、反対討論を行います。

 今してきた質問で、私は非常に悲しい思いをしたわけですけれども、今回、名前を公表して質問した二人の方は(二字削除)駅周辺街づくり協議会の役員であり、一人は高架下検討委員会の(四字削除)で、もう一人は同協議会の(二字削除)であります。

 一般質問を振り返っていただければおわかりのことと思いますが、この質問では、高架下検討委員会の(四字削除)が建築違反を行っており、私が指摘したことによって、現在そのために工事がストップしており、区の指導を受けていること。協議会(二字削除)が五十台を超える駐車場を住宅街に経営していながら届け出を出しておらず、東京都公害防止条例に違反している事実を突きつけ、世田谷区の同事件に対する対応と事件の経過を質問したものです。町の生殺与奪権を事実上握っている街づくり協議会の役員、(二字削除)がこのような事件を起こしてよいのかを問い、(二字削除)駅周辺街づくり協議会の役員資格の適否と、このような人物が主導する街づくり協議会のあり方を問う質問を行ったものであります。

 都市計画法は地区計画制度を規定しており、この地区計画は、世田谷区の街づくり条例では、区が認定する街づくり協議会が素案を提出できることになっております。認定を受けた街づくり協議会は、区長から補助金を得、専門家、まあ、コンサルタントですね。このコンサルタントの派遣と区職員による事務局の補佐をしてもらって受けて、地区計画の事実上の立案機関となっているのが世田谷区の実情であります。

 こういった、いわば公的な役割を担う街づくり協議会の役員は、単なる一私人でもありません。役員氏名は地域に公表されていますし、補助金申請にも役員氏名の公開義務があります。また、町のあり方や、私権制限を伴う地区計画の生殺与奪の事実上の権利を持っている街づくり協議会の役員が建築違反や都条例違反を犯したことは、具体的に問わなければならない事件なのであります。

 世田谷区の街づくり条例は、街づくり協議会を三条六項において、「地区街づくり計画の原案の作成並びに安全で住みやすい快適な環境の市街地の整備、開発及び保全を目的として地区住民等を主たる構成員として組織された団体をいう」と定義されており、第十一条二項で「地区住民等及び地区街づくり協議会は、地区街づくり計画の案となるべき事項(以下「地区街づくり計画の原案」という。)を区長に対し、提案することができる。」とし、これを受けて同条三項では「区長は、前項の規定による提案があったときは、当該提案を地区街づくり計画の案に反映するよう努めなければならない」と書いてあるんです。

 結局、このことは、世田谷区において街づくり協議会は、地区街づくり計画の事実上の立案機関となっているのであります。だからこそ第二十五条に、協議会への助成の要件として二項の三に「活動が地区住民等の多数の支持を得ていると認められること」となっているんです。

 施行規則六条の二項には地区街づくり計画の原案の提案について、「地区街づくり計画の原案に次に掲げる書類等を添えて区長に提出することにより行うものとする」として、一に、提案をする者の氏名または地区街づくり協議会の名称及び構成員の氏名を記載した書類が必要とされ、これは、まさに匿名性を排除しているものであります。

 (二字削除)駅周辺地区街づくり協議会は、本年四月十九日に(二字削除)駅周辺街づくり計画原案を区長に提出しており、今まさにその社会的責任が問われる存在であることは言をまたないところであります。この原案をことしの四月、まさに区長に提出した二名の役員が、地区計画と不可分の関係にある建築違反や公害防止条例違反を起こしている以上、その是非を具体名を挙げて区民の前で議論することは、有益なことですらあれ、有害なことではないはずであります。

 昨年四月に体育協会会長が公金横領を犯したことが発覚した際、私はそれを実名で質問通告し、実名で一般質問をしましたが、その際には何らのおとがめもありませんでした。このときはマスコミに大きく報道されていた。だから、実名を挙げてもよいということなのでしょうか。しかし、ちょっと考えてみてください。体育協会会長のたった五百万ほどの横領の事案です。これは、たった五百万ほどの横領の事案であります。

 ところが、聞いてください。(二字削除)駅周辺街づくり協議会が差配する開発利益は一体どのくらいになるのでしょうか。(二字削除)駅周辺街づくりは、言わずと知れた小田急線線増連続立体化事業の開発拠点に位置する、開発事業をつかさどる街づくり協議会であったわけであります。都市計画道路三本の新設と駅前再開発計画、一千億円単位の、数千億円にもなるかもしれない開発利益にかかわっているわけであります。影響力は世田谷体育協会の比ではありません。その(二字削除)駅街づくり協議会の役員二名に不祥事があった、これは大問題じゃないですか。

 単なる市井の市民が建築違反や条例違反を犯したのとはわけが違います。開発か環境保全かが、そのことが小田急問題では高架、地下の論争を中心に争われてきました。この議会でも地下化の決議が上がったりしてきました。区民の大きな運動があった。あの地域の多数派は今でも地下化を望んでいる、そういうふうに私は確信しております。

 そして、組織問題もこの協議会の中にはあった。そういった中で、同協議会の中心的役員が建築違反を犯したり、都条例に違反して、駐車場公害にルーズであること自体が、これは問題にされなければならないはずです。(二字削除)で言うならば地域のあり方が、この役員二人のビヘイビアをどうするかによって象徴されて問われている、そういうことを忘れてはいけないのであります。

 町というのは、まさにそこに有力者もいます。無名の市民もいます。だけれども、ある種の秩序を形づくっております。そういった中で、その町のあり方、そういうことを議論するときには個人を特定しなければいけないこともある。どうしても特定しなければならないこともある。まさに建築違反は、これは事業行為です。その事業行為において違法が行われている。違法は、これは公法であります。私的な関係ではないのであります。そういった公法違反を犯したことについてはきちっと議会でも議論できるようにしておかなければならない。そうでなければ、何の議論もできなくなってしまうじゃないですか。

 そのことを、提案された共産党はよく考えてほしい。あなた方は最近、自由な共産党になったと言われている。お役所も地方分権と言われて自由になってきた。地方自治体が自由になってきた。だけれども、こう言われているんですよ。地方自治体に関しては、中央の締めつけがなくなったら、もっと悪くなる。もっと悪くなるということも言われているんです。

 共産党だってそうじゃないか。今回、自由度が増すに従って、こんなことをやってくる。私は、きょう、この動議を見て目を疑いました。少なくとも私は、共産党とは一緒にこの議会でいろいろ活動できるものだと思っていた。しかし、こういったことをあなた方は出してきた。このことは、今からでも遅くはないから撤回しろ、そのことを私は言いたい。
 以上で反対討論を終わります。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

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○山内彰 議長 次に、十八番唐沢敏美議員。
   〔十八番唐沢敏美議員登壇〕(拍手)


◆十八番(唐沢敏美 議員) 社会民主党は、動議に賛成する立場から意見を申し上げます。

 今回の動議は、地方自治法百三十二条に規定する、議会や委員会における議員の発言のあり方を理由に提出されたものです。

 私たち社会民主党は、主に百三十二条の条文中、無礼の言葉と他人の私生活にわたる言論の範囲がどこまで及ぶかという点について検討させていただきました。一般に議会において、世田谷区の建築行政やまちづくりのあり方を取り上げることは、議員として当たり前の議会活動と考えます。また、議会は言論の府であり、議員の言論の自由はできる限り保障されるべきと考えます。したがって、発言の取り消しの範囲については必要最小限にすべきと考えます。

 そこで、今回の発言は一般区民を特定したものであることから、かかる文言についての必要最低限の取り消しはやむを得ないと判断いたしました。その際、特定の氏、氏名が判断、認定ができなければ、他人の私生活にわたる言論には及ばないものと考えます。その認識の上に立って、特定の一般区民の識別される文言についてのみ取り消しを求める立場から提案されております動議に賛成するものであります。

 最後に、この種の問題でたびたび申し合わせをしてきたことにもかかわらず、今回の事態を招いたことは、まことに残念なことだと考えます。議員としてお互いに、このようなことのないように心がけたいと思います。
 以上で発言を終わります。(拍手)


○山内彰 議長 以上で唐沢敏美議員の意見は終わりました。

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○山内彰 議長 次に、十六番下条忠雄議員。
   〔十六番下条忠雄議員登壇〕

◆十六番(下条忠雄 議員) 余り興奮しないで、ひとつ(「先ほど興奮していたよ」と呼ぶ者あり)いや、早くやりたかったんだよ。

 動議に反対する立場で意見を申し上げます。

 それにしても、共産党が動議を出したら、自民党が引っ込めちゃったというんだ。それで、共産党は自民党の何なのか。どういう思惑で自民党にすり寄るのか。何か地下で連携プレーがあるんじゃないか。さっきも、いつも何かやじっているのに拍手しているんだね。いや、奇異な現象ですな。

 まず第一に、法律に個人名を出してはいけないというような明文の規定はないんですよ。ないことは原則自由なんだ。今、都議会議員にあっせんを依頼して融資を引き出すなど、悪質な民間人が、私人がたくさん逮捕されているけれども、このような場合は、議会でやはり個人名を出して追及するというのは、これは当たり前のことですわな。

 それから、悪質な建築違反のもみ消しを議員に頼む、そういう私人もいるわけですよね。これはやっぱり悪質なら、特定して追及するのも私はやむを得ないのではないかと思いますよ。したがって、これはケース・バイ・ケースだ。議員の裁量にゆだねられている。

 それから、第二に、憲法五十一条は「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」規定があります。これはもう院内の発言は民事、刑事の訴追を受けない。まさに無制限な言論の自由が保障されているんです。院外は別ですよ。これを受けて、地方議員にも明文の規定はないけれども、これに準じた扱いを受けているということは大体皆さんよく知っていることだと思います。

 その理由は、議員には監視権があるんだ。いろんな事件は役人のひとり相撲ではできない。議員を頼んで一般の私人が、さっきも言ったとおり、いろんな依頼をしてくる。このような場合、議会で具体名を挙げて追及しなければならない、それがそうでなければ十分な監視機能を発揮できない、こういうことじゃないでしょうか。

 第三に、私人といってもいろいろあるんですよ。本件のように街づくり協議会、これは補助金が入っているんですよ。区の税金が入っている。この会長や役員ということになれば、行政に対して、さっき木下君も言ったけれども、かなりの権限を持っている。地域のまちづくりに決定的な影響力を持っているんだ。そういう立場にある者が、職務に密接に関係している法律だとか条例に違反した行為をした場合、これは行政の怠慢も指摘しながら追及されるということも、これは、私はやむを得ないことではないかと思いますよ。もしそういう追及を避けたければ、こういう地位からおりりゃいい、やめりゃいい、一般の完全な私人になればいい。

 また、議員の後援会の会長という立場が私的な立場だと言うけれども、議員はもう選挙のときや何かはやっぱり後援会長におんぶにだっこ、もう頭が上がらないんですよ。だから、議員とは密接不可分の立場にある。言うなれば、議員は公人であるけれども、これは準公人と言っていいかと私は思いますよ。こういう利害関係にある者は、やっぱりそれは追及されるということも世の中にはあるかと思いますよ。

 第四に、盛んに私生活と言っているけれども、女性問題だとか、個人的な金銭問題だとか、そういう純粋な私生活、これにかかわる問題なら、これはまずいですよ。だけれども、今言ったように、行政とかかわり合いを持って、とりわけ地域の環境に大きく影響を及ぼすような者、これはやっぱり議員の監視権になじむんじゃないでしょうかな。

 第五に、建築違反の場合、よく建築主は、知らない、業者が勝手にやったと必ず言うんです。これは建築主が責任逃れをする常套手段になっている。だけれども、私は、これは一義的には建築主の責任だと思いますよ。もし区がそういう論理を許しちゃったら、世田谷区は、もう町はがたがたになっちゃうと思います。

 それにしてもこの業者が、調布市入間町二の四の一、共栄BL建設株式会社、代表取締役橋本清、こういう人物が議長あてに木下議員を糾弾する文書を出してきた。これは前代未聞のことだ。世の中、人のものを取ったら、後で返せばいいというものじゃないですよ。窃盗罪だ、窃盗罪。建築違反だって同じであります。このような違反をしていながら、業者が大手を振るって建築違反になるものを追及した議員を糾弾する、まさにこれは議会政治に対する重大な挑戦だと私は思う。私は議会を守るために、このような者に対しては断固たる態度をとらなくちゃいけないと思う。

 第六に、言葉の問題でありますけれども、木下議員の自主的判断で取り消すものは取り消したわけです。その他の表現については、違反行為があったわけで、そういう中で発せられた表現なんですよね。特別に私は穏当を欠くほどのものではないと思います。

 そんなことを言うなら、あんた、議会内で人をつかまえてやくざだ、チンピラだと、こう言ったことはどうしてくれるんだ。自治法百三十二条の無礼の言葉そのものであります。事実はあったようだと認定しながら、そうして皆さん無罪放免にしちゃった。これは何でもありだ。木下議員についてとやかく言う資格は、これに賛成した与党の諸君はないと私は思いますよ。

 世田谷区議会では、政策論議と称して十年一日のごとくあれやれ、これやれを繰り返している。都議選を前に、今度の決算委員会なんてひどいものだった。行政改革なんてけろりと忘れている。だんだんおねだり、ちょうだい、ちょうだい、エスカレートしている。議会も同じテーマを、議員と役人が事前に周到に打ち合わせて、だれが書いたかわからないものを、原稿をお互いに読み合ってお茶を濁している。一問一答の緊迫したやりとり、これがいけないという風潮さえあるんですよ、この地方議会と、ほかは知らないけれども、世田谷では。建設的ではないとかといって、そういう風潮がある。

 少なくとも国会においては、民間人であっても証人や参考人として呼んで、テレビ放映の中で追及される、問題があれば。私はこの建設会社の社長と、何かとやかく言っている建築主とともに、もし何だったら議会に呼んで議論すればいい。きちっとけじめをつけるべきだと思います。

 いずれにしても、監視機能は議会の権能の最たるものです。それをみずから制約するような決議案を出してくる。これはまさに議会の自殺行為であります。それが言論の自由を標榜する共産党が出してきたんだから、驚いちゃった。まさに驚いちゃった。言論封殺をしたソ連だとか旧東欧、この旧共産党の全体主義に世田谷区議会の共産党は先祖返りしたのか。まさにテリー伊藤じゃないけれども、お笑い何とかだ。
 終わります。(拍手)


○山内彰 議長 以上で下条忠雄議員の意見は終わりました。

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○山内彰 議長 次に、五十五番森川礼子議員。
   〔五十五番森川礼子議員登壇〕(拍手)

◆五十五番(森川礼子 議員) 私は、本動議に賛成の立場から一言意見を申し上げます。

 質問通告の件名に区民の個人名が記載された時点から、私は、今後インターネット等で件名が公開される方向になっていることを考慮すると、慎重な対応が必要であるということを求めてまいりましたが、受け入れられず、議会において一般区民の私生活を取り上げた発言を続けられたことは、まことに遺憾であります。

 市井に暮らす普通の区民にとっては、議場で名指しで批判をされても、抗弁する手段も、チャンスもありません。議員の権限をもって反論する場を持たない一般市民を非難することは暴力にも等しいと考えます。まして情報化が進む今日、議場で起きたことは会議録の公開としてインターネットでだれでも読むことができるようになり、一たん傷つけられた個人の名誉は容易なことでは回復できません。区民の代理として選ばれて議会に出ている私たちが常に留意しなくてはならないことは、区民の立場に立ってプライバシーを守ることであると考えます。

 また、区民に信頼される議会をつくることは、私たち議員の共通の課題です。そのために、今回の発言を見過ごすことは到底できるものではありません。二度とこのような発言が繰り返されないことを願って、生活者ネットワークの賛成意見といたします。(拍手)


○山内彰 議長 以上で森川礼子議員の意見は終わりました。

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○山内彰 議長 次に、三十三番長谷川義樹議員。
   〔三十三番長谷川義樹議員登壇〕(拍手)


◆三十三番(長谷川義樹 議員) 今回提出されました、本会議における発言の取り消しを求める動議について、賛成の立場から意見を申し述べます。

 短く言います。私たち公明党区議団は、今回の木下議員の本会議における発言は、個人のプライバシーを侵し、個人の名誉を傷つけるものと判断いたします。理由はさまざまあります。先ほど森川さんが言ったように、公で抗弁できない私人に対して、相手が議員ならとも知らず、一方的に指摘するのはいかがなものか、大変厳しい状態になります。

 いろいろ理由があります。ただ、そういう人たちの権利というか人権を守るのが我々議員の役目なのではないかと思います。もとより報道の自由、言論の自由は最大限保障されるべきであります。しかし、自由には責任がある。そんな社会的背景の中で起きた今回の事案も、区議会の前例になるようであれば放置するわけにはまいりません。公人であれ、私人であれ、事案に直接関係のない私的出来事をあたかも関係あるかのように取り扱い、公然と発言するのは慎むべきであります。二度とこうした事案を議論しなくて済むような、公正で倫理観のある、節度ある議会を目指したいと思います。よって人権擁護と今後の議会秩序を考え、発言取り消し動議に賛成いたします。
 以上です。(拍手)


○山内彰 議長 以上で長谷川義樹議員の意見は終わりました。

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○山内彰 議長 次に、四十五番大場康宣議員。
   〔四十五番大場康宣議員登壇〕(拍手)


◆四十五番(大場康宣 議員) 動議に賛成する立場から意見を申し上げます。

 地方自治法第百三十二条には、品位の保持という見出しのもと、「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」と規定されております。この趣旨は、議会は公の問題を議論する場所でありますから、無礼な言葉を用いたり、個人の私生活に関する発言や人身攻撃を行ってはならないということであります。つまり、議員は議事に関係のない個人の問題を取り上げて議論をしてはならないし、さらに、公の問題を論じていても、それが区政に関する発言として、必要な限度を超えて個人の問題に立ち入ってはならないということであります。

 我が党はこの法の趣旨に基づき、当初、本動議と同様の取り消しを求めることを検討させていただきました。しかし、我が党が前面に出て他会派の皆様の賛同を得るためには、個人名と不穏当な発言部分を組み合わせた取り消し動議がぎりぎりの線ではないか、そのような判断をさせていただき、次善の策ではありますが、当初の我が党の動議となったわけであります。

 しかし、我々の問題指摘が多くの皆様の共感を得て、さらに一歩踏み込んだ形での個人のプライバシー保護を求める動議が他会派から提出されました。政治的立場は違えど、同じ議会人として超えてはならない一線があることが理解されたことは、大きな成果を得た思いであります。

 もとより議会は言論の府であり、発言の自由は最大限尊重されなければなりません。しかし、同時に良識の府でもあります。当然、憲法、地方自治法、会議規則などの規定に従い、そして、もちろん一国民、一社会人としての良識のもとに行動しなければなりません。そして、何を最優先すべきかと言えば、それは区民の権利擁護を置いてほかにはありません。

 それは、私たちは区民の信託を受けて議会に送り出されているのでありますから。また、私たち議員は自分たちの発言の重さ、影響力を十分自覚しなければなりません。議会を傍聴しておられる方もいれば、テレビで見ておられる方、そして図書館などで会議録を読まれる方もたくさんいらっしゃいます。さらに、会議録はインターネットで全世界に公開されているのであります。本件のような発言を放置したならば、その方のプライバシーは大きく侵害されてしまいます。また同時に、世田谷区議会の良識そのものが疑われ、ひいては何よりも大切な区民の議会に対する信頼さえも失われてしまいます。

 したがいまして、今後このような発言が二度とないことを願いまして、本動議に賛成をいたします。(拍手)


○山内彰 議長 以上で大場康宣議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。
 これより採決に入ります。採決は起立によって行います。
 お諮りいたします。
 本動議を可決することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○山内彰 議長 起立多数と認めます。よって木下泰之議員の発言取り消しを求める動議は可決されました。

 ただいまの議決に基づき、議長として木下泰之議員に対し、発言の取り消しを命じます。

 ここでしばらく休憩いたします。
    午後三時四十五分休憩


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    午後四時二十分開議


○山内彰 議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。

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○山内彰 議長 この際、議事の都合により、本日の会議時間をあらかじめ延長いたします。

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○山内彰 議長 休憩中に、木下泰之議員に発言取り消しの申し出を促しましたが、応じませんので、配布用会議録は、議長において適切に措置いたします。

 なお、本日の木下泰之議員の発言中、取り消しを求められた発言と同様の言辞があったと思われますので、議長において速記録を調査の上、適切に措置いたします。

 以上で本件の議事を終わります。(「議長」と呼ぶ者あり)

 どなたですか。(「四十六番」と呼ぶ者あり)宍戸議員、何でしょうか。


◆四十六番(宍戸教男 議員) ただいまの発言取り消しの議事に関し、至急措置を検討したいので、本会議の休憩を求めます。(拍手)


○山内彰 議長 ただいま宍戸議員より休憩の動議が提出されました。

 会議規則第十五条の規定により、本動議の成立には提出者のほかに二名以上の賛成者が必要です。ほかに本動議に賛成の方はいらっしゃいますか。(「はい、賛成します」と呼ぶ者あり)

 所定の賛成者がございます。よって本動議は成立いたしました。

 ここで本動議についてお諮りいたします。

 本動議のとおり本会議を休憩することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕


○山内彰 議長 ご異議なしと認めます。よって本動議は可決いたしました。
 ここでしばらく休憩いたします。
    午後四時二十一分休憩


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    午後八時三十分開議

○山内彰 議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 ここで日程の追加についてお諮りいたします。
 お手元に配付してあります追加日程第二を本日の日程に追加し、ここで議題とすることにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕


○山内彰 議長 ご異議なしと認めます。よって本件は本日の日程に追加し、ここで議題とすることに決定いたしました。

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○山内彰 議長 これより


△追加日程第二を上程いたします。
   〔関参事朗読〕
 追加日程第二 議員提出議案第六号 木下泰之議員に対する問責決議


○山内彰 議長 木下泰之議員には、除斥の規定により、しばらくの間退場を求めます。
   〔五番木下泰之議員退場〕


○山内彰 議長 本件に関し、提案理由の説明を求めます。
 なお、提案理由の説明についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 四十五番大場康宣議員。
   〔四十五番大場康宣議員登壇〕


◎四十五番(大場康宣 議員) 本決議案の提案理由についてご説明いたします。

 既に昨日から本日にかけての議会運営委員会や、この本会議においても複数の議員からご意見があり、言うまでもないこととは思いますが、区議会は、国や東京都の行政機関や区の執行機関などから不必要な干渉や関与を受けることなく、独立、自律した区政の最高、最終の意思決定機関であるとともに、区政の適正な執行を監視する機関としての大きな責務と使命を担っております。

 また、私たち区議会議員は、区民の信託を得た区民の代表者であり、区政執行に当たって、区が区民の権利、利益を正当に保護しているか、区民の権利や利益が守られているかを監視する議事機関の構成員であるということも忘れてはなりません。厳しく公の問題をただすことは議員として当然のことであり、必要なことです。しかし、だからといって、私たち議員の発言が私人である一般区民を特定し、その人の私生活にわたってはならないことは、議員の責務、使命に照らしてみれば明らかですし、地方自治法の百三十二条においても、他人の私生活にわたる言論は禁じられています。

 いわゆるプライバシーの権利は一たん侵害されると、物的な損害などとは大きく違って、現状回復は大変困難で、個人の尊厳を守るため、最大限尊重されるべき権利です。間違ってもその議会の構成員である私たち区議会議員の公の発言によって、私人たる一般区民のプライバシーが侵害されたり、名誉が不当に傷つけられたり、地域社会に無用の混乱を招くことがあってはなりません。私たち議員は、地方自治法第百三十二条で禁止されている他人の私生活にわたる言論について、区民の権利を擁護する立場に立って、常にみずからを律するべきだと思います。

 区政の執行状況を厳しくただすということは、議員であるから何を言っても構わないということではありません。建築行政のあり方をただすのであれば、事例としての建物、建て方を特定すれば足りると思われますし、街づくり協議会の役員のあり方を批判し、それに対する区のかかわり方をただすのであれば、役員としての協議会における行為に対する区の考え方、かかわり方を追及すべきではないでしょうか。一般区民を特定した上で、その私人としての財産や、その財産の運用状況、血縁関係、政治的支持といったことを殊さら強調する必要があったのでしょうか。

 先ほど発言取り消しを求める動議が、区民のプライバシーを守るという一点において、会派の立場を超えて圧倒的多数で可決されたことは、こういった疑問を大多数の方々がお持ちになったということのあらわれだと思います。

 この議決及び地方自治法第百二十九条第一項の規定に基づいて、議長が 木下泰之議員に発言の取り消しを命じました。しかし、木下泰之議員はこれに応じなかったのです。言うまでもないことですが、私たち議員は区民の代表者として品位を保持し、会議においても合理的、能率的な審議に協力して、その秩序維持に努める義務があります。

 また、議長は議事を円滑に運営するよう配慮する責務と秩序を保持するための必要な措置をとる権限を有しています。議長は、私たちが投票という民主的な手続によって選出したのです。その議長が、秩序保持権に基づいて発した命令に従わないといった木下泰之議員の行為は、明らかに議会の紀律に関する地方自治法の規定に反しています。議員としての責務にもとる行為と言わざるを得ません。

 議員が議長や委員長からの発言の取り消し命令に従わないことは、明らかに懲罰事由に該当いたします。しかし、今回の発言は、本来、議員がその自律性に照らし、みずから取り消しを申し出、その行為をみずから戒める姿勢を持つことが大切であると考え、議会として懲罰を科す方法をとらず、あえて木下議員に反省を促すために問責決議といたしました。

 私たち議員は、公の場における発言、行動について、区民の権利と利益を守るべき議事機関としての自律性に照らし、いま一度真剣にみずからを厳しく戒め、区民との信頼関係を築いていく必要があるということを改めて強調しておきたいと思います。

 以上の理由により、世田谷区議会として木下泰之議員に対し、議会の秩序を維持し、品位を保持すべき議員の責任を全うするよう強く反省を促したいと考え、本決議案を提出いたしました。
 以上で提案理由の説明を終わります。(拍手)


○山内彰 議長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 お諮りいたします。
 本件について、木下泰之議員から一身上の弁明をしたい旨の申し出があります。これを許可することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕


○山内彰 議長 ご異議なしと認めます。よって一身上の弁明を許可することに決定いたしました。
 なお、一身上の弁明についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 木下泰之議員の入場を許します。
   〔五番木下泰之議員入場〕


○山内彰 議長 木下泰之議員に申し上げます。
 一身上の弁明についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 木下泰之議員、発言をどうぞ。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番( 木下泰之 議員) 私への問責決議に対し、一身上の弁明を行います。

 私は、本日、共産党より提出され可決された発言取り消しを求める動議については、この動議への反対討論で述べたとおり、いまだに納得することができません。私が九月二十一日に行った一般質問は、世田谷区街づくり条例に基づく街づくり協議会の会長と役員が東京都公害防止条例や建築基準法という公法に違反し、近隣に多大な迷惑をかけていることから、これを問題にし、街づくり協議会のあり方を問うたものであります。したがって、動議の審議に際しては、街づくり協議会の都市計画法上の位置づけや、街づくり条例での位置づけ、実際の運用実態について、発議者である共産党議員に質問をしました。しかし、何らまともに答えることができませんでした。私は、とても残念だと思います。

 この問題は、本来、すごく長い時間をかけて議論をしなければ結論が出ない問題であると思います。世田谷区の今の行政の特徴は、区民と行政と事業者、そういった三者が協力し合いながら区政をつくっていく、そういったことをよく理事者の方々はおっしゃいます。まさにNPO、あるいは補助金をもらっている団体、町会、そういった各種の団体、町の有力者、そういった方々が区政とともに動いているのであります。

 特に街づくり協議会のような、補助金をもらって、また都市計画法上のきちっとした位置づけがあり、街づくり条例にも位置づけがあって、もし街づくり条例の地域計画ができたときには、それを作成した街づくり協議会の方々の氏名はすべて公表されるわけであります。街づくり協議会が地区に与える影響というのは多大なことがございます。そういった中で、私は今回の問題を問題にしてきたわけであります。

 また、議会の特徴というものも十分に考えてみなければなりません。憲法五十一条で発言者の院外責任を免責されているということをよく考えてみたいと思います。これは、議会というのは単に一般的なプライバシー保護をすればいいということではないはずであります。権力をもって市井の生活を脅かす、そういった存在は世の中にはたくさんございます。そういったことに対して、議員は本来は調査権限を持っている。私たち区議会議員とても同じだというふうに思います。その知り得た情報、そういったものをどういうふうに使っていくか、そのことについては十分配慮しなければならないことは言うまでもありません。

 私とて弱い者いじめなどするつもりは毛頭ございません。私人に対してのプライバシーと何度か皆さんがおっしゃっておりますが、私が問題にしたのは、まさに補助金をもらっている団体の会長さんや役員、そういった方々が公法違反、つまり、これは私的関係の民法上のトラブルではなくて公法に違反している、そのことについて問題にしたのであります。これは議会で取り上げて十分価値のある問題です。

 例えば一般質問を考えてみましょう。一般質問については、文書で事前に区の理事者に問題を特定していかなければなりません。共産党が私の発言に対して提起したプライバシーがすべて、つまり、プライバシーが侵害されるおそれのある、個人が特定できる情報はすべて消してしまえということであれば、どうやって一般質問をすることができるのでしょうか。極めて論理矛盾であるというふうに思います。

 ですから、問題は具体的に検証されていかなければなりません。ですから、今回の問題も具体的にどうなのだ、具体的に単なる私人なんですか、そういうことについて私は聞いた。しかし、それにも一切答えてくれなかった、そこが問題なんです。

 プライバシーはオールマイティーではありません。議会においてはオールマイティーではないんです。慎重に扱わなければなりませんが、しかし、私人であっても公法違反を犯している人は、例えば議会が招致して、そこでさまざまなことを聞かなければなりませんし、また、議会の権能として、今ずっとやっていることは請願の審査でございます。これは請願者が個人も特定して来ることですので、それはオープンにされながら議論されているのが現状であります。

 そういった中で、なぜ私の九月二十一日の質問だけがこのように問題にされて、今このような問責決議を受けるのか、甚だ疑問であります。理解できません。

 しかも、昨日、自民党が私に対して出していた発言取り消しの動議をけさになって取り消しました。共産党の動議がこの議会にかかったわけでありますが、昨日、自民党が言っていた、幾つか取り上げていた文言の修正、これは一体どうなったんでしょうか。動議を出しておいて一切引っ込めたままで、共産党が出してきたのは、一般的なプライバシー保護の規定を今回の私の発言の取り消しを求める動議に応用しました。しかし、これは極めて拙劣なやり方である、そういうふうに私は考えております。こんなことがこの世田谷区議会で通ってよいわけはない、そのように思っている次第であります。

 先ほど言いましたように、NPOや補助団体がこれからの世田谷の区政を支えていくことになるでしょう。それにどうやってメスを入れていくか、そのことは重要な課題であります。そのことがそがれる、そういった今回の私の発言取り消しのやり方については、これは今後も十分注視していかなければならない、これを変えていかなければならない、そのように思っております。
 以上述べまして、私の一身上の弁明といたします。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の一身上の弁明は終わりました。
 木下泰之議員の退場を求めます。
   〔五番木下泰之議員退場〕


○山内彰 議長 ここで委員会付託の省略についてお諮りいたします。
 本件は、会議規則第三十八条第二項の規定により、委員会付託を省略いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕


○山内彰 議長 ご異議なしと認めます。よって本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。

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○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 十六番下条忠雄議員。
   〔十六番下条忠雄議員登壇〕


◆十六番(下条忠雄 議員) 反対の立場で意見を申し上げます。

 議員が議員をやっつけるのはいつも反対である、こう言って席を外す一一〇番の大庭さんと自由党の上島さんか、きょうはなぜか出席をしている。どういうことなのかね。ご都合主義じゃないですか。

 それはそれとして、先ほど四階で自民党の幹事長の大場さんと、共産党の──どこにいるんだ──村田さんか、この人は幹事長じゃないと思うんだけれども、自共で話し合いをしていました。極めて奇異な光景を見た感じがいたします。自民党が出した 木下議員に対する発言撤回の決議案、これでいろいろ議論するのかなと思ったら、そこのけ、そこのけで何か共産党が出してきて、自民党が引っ込めちゃった。私がやりますよということで、共産党がしゃしゃり出てきた。

 何か権力政党にすり寄って、共産党が変わるのはいいんだけれども、こういうことをやったら自殺行為ですよ。そこまで変わるのかと。一人会派の議員を糾弾して排斥しゃちゃおう、こういうことが、どうも見え見えだ。これは、私は全国で初めてのことだと思いますよ。共産党、代々木に聞いてみたら、よくわかると思う。まあ、共産党は怖い、怖いということを国民に言われていたけれども、何か権力とすり寄って議員をやっつけちゃおうというのは、私はやはり怖い政党だと思いますよ。まさに自己暴露をしたのではないかと私は思います。

 先ほど木下議員からいろいろ細かいことについては、彼はなかなか細かくいろんなことを言うからね、話がありました。私も先ほどいろいろ言いましたので、重複することは避けますけれども、ただ、こういう問題は、過去の事例と比較して権衡を失しちゃうといけないと思いますよ。先ほどやくざ、チンピラの話をしたら、また言うのかというような話が出たけれども、もう一度言わせてもらうけれども、そっちの方が無罪放免で、木下君の方はやっつけちゃおう、問責決議だと。

 そういうことは、これは裁判には相場というものがあるんだね。今いろいろなことを言われているけれども、相場でやっちゃいけないというのは言われているけれども、やはり皆さん、いつもいつも議会の先例だとか何とか、我々は改革しようといろんなことを言うと、先例がこうなっていますから、事務局どうなんだと、こう聞くんだね。そうすると、こっちがこうこうこうなっています。それじゃ、もうそれはやめておこう、よくそういうことを言うけれども、ただ、人を罰するときは、やはりこれは必要ですな。飛びはねたことをやっちゃいけないと思います。

 そんなことで、木下議員に対して問責決議案をするということは、議会がこういうことをやると、私はそういうことはないと思うけれども、どうしても正義を自分でもって、ここまではいいのかな、どうかなということで、どうしてもやっぱり舌鋒が鈍ることがある。これは、私は議会の権能をみずから狭めるもので、先ほど自殺行為と言ったけれども、そういうことになると思いますよ。

 多数をとれば何でもやっちゃう。きょうも国会でやっていました。自民、公明、保守の諸君がやっていた。世田谷区議会はそっちの方も全部、ほかの共産党から、社民党から、その他民主党・無所属クラブか、そこからもう全部やって、要するに一人会派の議員をいじめちゃおう、こういうことなんですよ。(「そんなことはないよ、そんなことは」と呼び、発言する者多し)何……。


○山内彰 議長 お静かに願います。(「ちょっと待ちなさい」と呼ぶ者あり)下条議員に申し上げます。発言が議題外にわたらないように願います。


◆十六番(下条忠雄 議員) そんなことはない。そんなことはない。あなたね、どうしてそういうものを、言論の自由をどうしてあなたは封殺するの。何でもやる、これは極めて政治的な弾圧だ。魔女狩りであります。こういうことは絶対に容認しない。
 以上、終わり。

○山内彰 議長 以上で下条忠雄議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。
 これより採決に入ります。採決は起立によって行います。
 お諮りいたします。
 本件を原案どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○山内彰 議長 起立多数と認めます。よって議員提出議案第六号は原案どおり可決いたしました。
 除斥の議事が終了いたしましたので、木下泰之議員の再出席を求めます。
   〔五番木下泰之議員入場〕


○山内彰 議長 以上で本件の議事を終わります。

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