平成15年第1回定例会(自33日 至328日)

世田谷区議会会議録(非公式版;作成責任木下)

2003年3月28日 「イラクへの軍事行動の即時中止を求める決議」への賛成討論


○新田勝己議長

   発言通告に基づき、順次発言を許します。

   [五番木下泰之議員登壇] ○五番 木下泰之議員 「イラクへの軍事行動の即時中止を求める決議」への賛成討論を行います。
 3・8ワールド・ピース・ナウという反戦集会に行ってまいりました。日比谷で四万人近くの市民が集まっていました。だれからも動因された人じゃない人たちが多数いました。 今までこのような集会は、せいぜい数千人しか集まらない、そういうふうな常識だったものが、ほとんど動員をかけられたということなしに、自発的に市民が集まってくる、そういったことは非常に珍しい状況がございました。

 3月8日の時点では、まだ戦争は始まっておりませんでしたけれども、その後、米英両国は、国連がイラクの大量破壊兵器査察を継続し、その使用を封じ込めているにもかかわらず、国連決議をも経ないまま戦争に突入いたしました。爆弾やミサイルによって、軍事施設のみならず無抵抗の市民を殺りくし、国土を軍隊で踏みにじっております。バグダッドを初め、都市での市街戦ともなれば、軍、民の区別をつけることが難しいことから、軍、民無差別の殺りくとなることは目に見えております。

 また、化学兵器や生物兵器というおぞましい大量破壊兵器の使用を誘発することにもなりかねません。極めて危険な情勢となっております。国連憲章が先制攻撃を禁じていることは戦争抑止の第一歩であります。これを踏みにじることは許されません。これが許されるとしたら、力の支配以外の何物でもなくなってしまいます。軍事力の一番強い米国がすべてを決めてしまうということになってしまうわけです。

 そもそも軍事行動の発動のきっかけとなった大量破壊兵器にしても、イラン・イラク戦争の際、米国がイラクに加担し、技術供与をしたことから始まっており、米国がまいた種でもあります。
 9・11のニューヨークテロにいたしましても、首謀者とされるビン・ラディンとアル・カイダは、米国が1980年代のアフガン戦争の際、対ソ戦略のために育てたことに起因していることは忘れてはなりません。

 また、中東情勢を考える上では、イスラエルの力の政策に米国が加担してきたことが中東情勢を不安定なものにさせ、原理主義の勃興を生んだわけですし、シ−ア派のホメイニの原理主義に対抗するために、原理主義とは相入れないスンニ派のフセインとつながった米国がフセインを助長させ、フセインは米国の不介入と読み間違えてクエートに侵攻し、湾岸戦争の勃発ともなったわけであります。

 翻って日本を考えてみましょう。フランスやドイツが反対しているにもかかわらず、あるいは中国やロシアが反対しているにもかかわらず、日ごろは国連中心主義と言っていたにもかかわらず、小泉内閣はいち早く国連決議なしの米英の軍事行動を支持いたしました。主体性が全くないわけであります。
 日本国憲法前文には 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」 と書かれており、これは国連中心主義の表明以外の何物でもありません。したがって、小泉首相は、日本国憲法自体の否定を表明したに等しく、このような首相の行為は、国連を否定するばかりか、日本国憲法をも否定するというふうに言わざるを得ません。かかる行為は、日本国憲法に照らしても、断じて認めるわけにはいかないのであります。
 しかし、今回のイラクヘの米英の戦争突入は、日本国憲法を引き合いに出さずとも、人類の歴史的経験からいっても、決して認めてはならないと言っておかなければなりません。広島、長崎の原爆の投下を考えてみてください。米国が行った行為こそ、大量破壊兵器による無差別殺りくであったということです。

 日本は確かに、戦前、アジアの国々に対して侵略を行い、南京虐殺もあり、また、東北部地域では化学兵器や七三一部隊による生物兵器戦までありました。これらの侵略行為は断罪されなければなりません。しかし、だからといって、原爆あるいは東京大空襲が許されるでしょうか。ベトナム戦争での枯葉剤、湾岸戦争時の劣化ウラン使用を含め、明らかに米国は戦争犯罪を行っており、イラク・フセインの化学兵器使用の戦争犯罪と同時に、このフセインに技術供与をした米国の責任も含めて、徹底的に検証されていかなければならないと思います。
 イラク問題は、国連の検証、査察が継続中になされたことが非常に問題です。戦端を開かずにイラクの大量破壊兵器を葬り去ることは不可能ではありません。とりもなおさず、。の目的にほかの目的があるというふうにみなさざるを得ません。すなわち石油のための戦争であります。
 しかし、米国はテロヘの先制攻撃を名目に、今回の戦争を始めました。戦前の日本の始めた戦争とどこか似てはいないでしょうか。普通、こういった戦争のことを侵略戦争と言うのではないでしょうか。今回の戦争報道を追っていて、まるでゲームのように戦争が始まり、実際の戦闘で、これはゲームではないと、やっと当事者も悟ったかのように見えます。生身の人間が忘れ去られております。正当性のない戦争はうまくいかないでしょう。報道を通じて情報戦が盛んですけれども、これほど米国が際物情報を流したり、うその情報を流している戦争も珍しいと思います。

 もちろんフセインも、これは名だたる悪党であることには間違いありません。そして独裁者です。しかし、そこにいる国民は支配されているからといって、国外に出て生き延びるわけにはいかないわけです。そこで文化もあり、生活もあり、そこで暮らしていく。だからこそ、それはどういう対応をとるかといえば、アメリカが入ってきたからといって、これは簡単に手を挙げていくわけにはいかない。しかも、市街戦が始まれば、これは子どもが非常に多い人口比になっております。そういった中で、結局は、米軍の方は子どもが撃つかもしれないということで、子どもを見れば撃ってくるでしょう。市街戦ともなれば、そういった状況になるわけです。まさに殺りくがこれから始まろうとしている。  そういったことが、まさに戦争そのものであり、生身の人間が戦争をするということだと思います。そういったことに対してむとんちゃく過ぎると思います。まさに兵力をもってしても戦端を開かずにおさめさせる、そのことが一番いいに決まっております。これは平和主義者であろうと、武装主義者であろうと、何であろうと戦争は始めさせないというのが鉄則であります。始めてしまったならば、これは正当性はありません。どちらがどうするということについては、これは非常に大変な殺りくが始まります。

 核爆弾がよくて、あるいはさまぎまな最新兵器がよくて、そして生物兵器、化学兵器がよくないという論理は、これは戦争が始まっていないときの論理であって、始まってしまえば、そういった論理は通用しなくなるというのが、例えば日本が実際に中国でやってきたことではないでしょうか。そういった戦争に対して、日本では侵略戦争として非難をしている。
 しかし、小泉首相は逆に靖国神社を礼賛し、そして戦前の日本の侵略についてもはっきりとは反省していないのであります。そういった方が、なぜ今回の戦争に加担することにすぐ賛成するのか、非常に理解ができません。まさに平和主義者でなくても、民族主義者であっても、こういった戦争は許されないというのは、これは歴史の一つの真実であります。

 ですから、今回の戦争に正当性がないということから、私は今回の戦争、いずれは終わるでしょうけれども、しかし、終わったときには、米国の威信は非常に低下すると思います。また、国連というものが機能していかなくなる、そういった時代に入ってくると思います。その責任を挙げて、今回、戦争を起こした方々のその姿勢に非難が集まるというふうに思います。そういった中で、やはり日本は積極的にこの戦争を回避すべく行動すべきであったし、また、これからも即時やめさせるために努力すべきである、そういうふうに私は考えます。このような不条理を即刻やめさせることを訴えまして賛成討論といたします。(拍手)

○新田勝己議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

    ────────────────────