平成19年第1回臨時会(自517日 至 523日)

世田谷区議会会議録

2007年 5月23日 森学議員辞職勧告決議案への賛成討論



○大場やすのぶ 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 発言通告に基づき、順次発言を許します。
 二十三番木下泰之議員。
   〔二十三番木下泰之議員登壇〕

◆二十三番(木下泰之 議員) 森議員の辞職勧告決議案が提案されました。まず何よりも議決以前に、森氏自身がみずから辞職するべきであります。森氏は一人会派の共同部屋で一緒でありますので、当然あいさつを交わしました。私は辞職されるようアドバイスをいたしました。しかしながら、いまだそうされていない以上、提案された辞職勧告決議に賛成を表明するものであります。
 選挙は公正に行われなければなりません。このことが何よりも大事なことであり、この前提を欠いて民主主義は成り立ちません。人の本来的な価値は学歴や職歴で決まるものではありません。しかしながら、選挙の際に公式に広報された学歴、職歴は重要な判断材料となることは間違いありません。選挙民は限られた情報の中で判断をするわけですから、発信される情報に虚偽があってはなりません。
 選挙は、だれかが当選すれば、だれかが落選するということになります。私も最初の選挙で四十三票差の次点となったことがございます。私の人生にとっても大きな波乱を経験いたしました。
 また、選挙は人の命を奪うことが間々にしてございます。選挙は過酷なゼロサムゲームでもあります。ルール違反は次点の議席を奪うだけではありません。とりわけ大量得票者の選挙違反は、本来当選したはずのだれかの票を大量に奪っていることもあるのです。同じ大学の関係者であれば、他の要素をめぐって、競合する競争者への影響は大です。森議員が外務省第一書記官というエスタブリッシュを装ったことのその影響について思いをいたしていただきたいと思います。
 選挙でのルール違反は、最終的には犯罪として処断されることは当然のことであります。今回の事案は、とりわけ公報と選挙ポスターに職歴を偽って記載したものであります。
 ご本人自身、この問題については、新議長あてに文書が提出されてございます。選挙公報及びポスターに在ルクセンブルク一等書記官と記載しましたが、外務省に確認したところ、私の完全な思い込みで、実際にはローカルランクの二等書記官であったことが判明したと書かれております。総合すれば、記載された外務省の一等書記官という官位が間違った記載であって、実際の官位は三等書記官であることを認めております。
 この文書での釈明によりますと、官位を外交上高く見せるためのローカルランクが慣行で行われているとか、そのことを理由とする錯誤であったとかを虚偽記載の理由に掲げておりますが、これは通りません。官位を高く見せるためのローカルランクという悪弊が外交上認められているにせよ、これは一階級上を名乗ることでしかありません。
 三等書記官が何ゆえに一等書記官を名乗れるのでしょうか。ましてや、ローカルランクは、本人が本来のみずからの官位を自覚していて、初めて成り立つ制度であり、そのことさえも無自覚であるとしたら、外務省職員としても失格です。相手の国、ルクセンブルクに非礼きわまりないと言うべきであります。
 大体職階制度が仕事の権能に直結する公務員が、みずからの実際の官位を知らないということはあり得ません。今回、新議長に提出した文書には、本人が三等書記官であったという率直な事実は直接は書かれておりません。思い込みと勘違いについて深くおわびすれば済むものでもありません。しかも、今回問題になっているのは選挙での経歴記載についてです。日本国内での問題です。世田谷区民にとってローカルランクは無縁であります。外国でのローカルランクを持ち出して煙に巻こうとしていること自体が不遜であります。
 私は、今回提出した議長あての文書は、議長と我々議会の構成員及び区民をことごとく侮辱する文書にほかならず、懲罰にも値するものであり、この文書に書かれた内容の事実関係を、議長と議会はことごとく調査すべき筋合いのものであると表明しておきます。一人会派で提案権がありませんので、問題提起をしておきます。
 百歩譲って、議長あての文書にあるように、ローカルランクで一等書記官であったとの完全な思い込みであったにせよ、本人が実際に一等書記官であったという思い込みや錯誤はなく、選挙公報にローカルランクを意図的に使ったという事実を認めているわけで、それだけでも虚偽記載をみずから表明しているわけであります。税金で禄をはんでいたという自覚が少しでもあるならば、虚偽記載を即刻認め、議員を辞職するべきです。ご本人が辞職の意思を示さない以上、議会としては辞職勧告を決議し、議会の姿勢を示す必要があります。
 さて、今回の経歴詐称問題では、これを糾弾し、辞職を求める点で、区議会の方向性は今回ほぼ一致しておりますが、かつて、平成九年三月の第一回定例議会で、自民党籍を持つ当時の現職議長が過去二回にわたる選挙公報で学歴詐称問題を起こしておきながら、辞職勧告決議が否決された例がございました。
 当時は、辞職勧告決議自体、議会になじむものではないとの意見を自民党の代表が述べたことを、当時、辞職勧告決議案に賛成の討論を行った者として印象深く覚えております。結局、自民党を含む議会の圧倒的多数派は辞職勧告決議を否決してしまいました。当時の該当議長は、議長職はあらかじめみずから辞任しましたが、議員をやめることもなく、世田谷区議会の名誉は大きく傷つきました。
 今回の辞職勧告決議案は、自民党が中心になり提案したものです。議案としては、さらに本質に迫ってもらいたかったとも思いますが、かつての辞職勧告決議は議会になじまないとした判断を転換したものと評価し、賛成するものであります。
 以上、森議員辞職勧告決議案への賛成討論といたします。(拍手)

○大場やすのぶ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。