平成19年第1回定例会(自31日 至329日)

世田谷区議会会議録

2007年 3月29日 平成19年度予算への反対討論


○菅沼つとむ 議長 これより意見に入ります。
 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 平成十九年度一般会計予算外四件にすべて反対の立場から意見を述べます。
 今回、すべての予算に反対するのは、再選に臨む熊本区政への不同意、不信任の立場からです。
 今回の予算議会で私は、下北沢の地区計画に絡む役人の賛成意見誘導問題、いわゆるやらせ問題に関し、とりわけこの事件を遺憾として東郷都市計画審議会会長が辞任されたことについて、熊本区長に見解を求めました。区長の答えは、東郷会長は一身上の都合でやめたと認識しているというものでした。都市計画審議会会長が賛成誘導の意見書のひな形配布に絡み、今回のように意見書の書き方を問われたら、本来なら賛成、反対の両案について具体例を示すべきであるのに、賛成のひな形だけを提示した上に、計画に賛成ですと印刷した提出用紙をつけるといった行為は、行政の中立性や公務員に求められている公平公正といった観点からも、明らかに職務を逸脱するものですと、明確に「東京人」誌のインタビューで語っているにもかかわらず、これを読んだとした区長が、東郷会長は一身上の都合でやめたと認識していると答えたのであります。私はこの答えに、熊本区政の腐敗のきわみを見ます。
 この事件に抗議してやめたのは都市計画審議会長だけではありません。三名もの学者委員が辞任しております。一体、役人が法に基づいた事務を取り扱うことにおいて、行政施策の賛成誘導という公正ならざる行為に手をかしたことについては、率直にわびることが首長の務めではないでしょうか。
 一般質問と予算委員会では下北沢の小田急線跡地利用について尋ねました。二キロにわたり二十メートルから三十メートル幅の広大な空間が、小田急線の地下化による連続立体交差事業によりできます。二万七千平米が、公共側が利用権を主張すれば利用できる空間です。このことは政府の連立事業の要綱に定められ、政府も積極利用を促しております。
 しかしながら、現在まで進められてきた下北沢についての小田急線連続立体交差事業を契機としたまちづくりの方針や都市計画決定には、この広大な空間利用についてはきちんと議論されておりません。確かに、公租公課分として行政が黙っていても使える二千二百平米についての利用計画は一部示しましたが、残りの約二万五千平米については、計画を示すどころか、行政が使えるという事実さえも、区民一般はもちろん、地元の商店街や町会役員にさえ説明しておりません。
 安全安心を言うのであれば、この二万七千平米全体の使い方こそ重要です。以前から住民が求めていたように、小田急線の跡地を緑道にすれば、震災時などの緊急時に避難路として使え、防火遮断帯にもなるため、町の安全安心に寄与することは間違いありません。
 そもそも連続立体交差事業という都市計画事業において新たに生まれる二万七千平米もの空間の利用を都市計画の課題として議論せずして、どこが都市計画、どこがまちづくりと言うのでしょうか。この空間の利用次第で、町の性格は大きく変わることは論をまちません。
 ところが、世田谷区はこの空間の利用計画について何ら答弁することができませんでした。行政が利用権を主張しなければ小田急電鉄の利用に任せるということになり、都市計画やまちづくりを私企業にゆだねてしまうという結果を招来します。このことは、最近、成城の掘り割り跡地を利用した営利ファームの建設で、まさに自民党の小畑議員が指摘したような、私企業の営利目的がなせる諸問題が再生産されることを意味します。
 ご承知のように、下北沢の問題では、昨年十月十八日に補助五四号線の一期事業と駅前ロータリーであるところの区画街路一〇号線の事業の強引な認可、駅周辺地区地区計画の、これまた強引な決定が強行されたわけですが、いまだもって二万七千平米の利用計画が示されないということは、下北沢の行政の都市計画の放棄、説明責任の放棄、住民参加の全くの欠如を物語っているのです。
 区長は、補助五四号線の整備は安全安心のためだと口をあければ言いますが、そう言いたいのであれば、下北沢で行政が利用可能な二万七千平米の利用計画を示すべきなのであります。そうでない以上、補助五四号線整備による安心安全は便法にすぎません。一体、ガソリン車が走り回る道路、広い道路を条件につくられる六十メートルもの高層ビルのどこに安全安心を確保できる要素があるのか説明を求めましたが、満足な答えは返ってまいりませんでした。
 今回、区は区内のみどり率三三%を目標に掲げました。かつて大場区政時代に緑被率三〇%目標を実現可能な目標値に変えるといって、現状維持の二〇%そこそこの緑化路線にシフトされていただけに、今回のみどり率三三%目標への転換は評価に値するものです。
 しかし、目標を三三%とするのであれば、花いっぱい運動では足りないことは言うまでもありません。公共施設整備の際には緑化を六〇%以上義務づけるとか、民有地の緑保全のために国に緑保全の優遇税制を求めるとか、多摩川風致地区の規制緩和を全廃するとかの措置は最低限必要ですし、何よりも都市計画事業で利用可能な新たな土地が出たときに、緑化のために積極利用しなければ追いつくわけがありません。
 小田急線連立事業での下北沢の二万七千平米の空間はまさに緑化に利用すべきですし、経堂の車庫跡地も公園として整備すべきです。京王本線の連続立体交差事業についても、地下化して地上の緑化を目指すべきであります。下北沢の二万七千平米の緑道化は、三三%のみどり率回復の最初の一手にしなければなりません。このことは再三述べましたが、ここでも強く申し述べておきます。
 ユニバーサルデザインについて述べておきます。
 ちょうど四年前、私はユニバーサルデザインという概念の重要性を区議会でも訴え、三期目に臨む選挙の際の公約の一つとしました。
 今議会でユニバーサルデザイン推進条例が制定されたことは、世の中のトレンドに沿ったものであることであるというふうに考えます。しかし、制定はされたものの、ユニバーサルデザインが生み出されてきた本当の意味はいまだに理解されていないということが、予算議会での論戦を通じてよくわかりました。
 みずから障害者であったロナルド・メイスが提唱した、すべての人が人生のある時点で何らかの障害を持つということを発想の起点としているユニバーサルデザインの概念のもとでは、障害者も、お年よりも、一般の健常者も同等の権利者として結びつくことができます。
 私は、ユニバーサルデザインの導入は、民主主義の進化、変容であるとも考えております。少数者の利益と見られているものが、実はすべての人々の利益であったり、多様性を認めることが、より暮らしやすい社会であるということの認識は、従来の多数決民主主義とは明らかに異なります。少数者が見えるものを尊重するということは、単に施設のつくり方、製品のつくり方の問題であるというよりも、すべての人々の政治参加を保障し、少数者の意見をよりよく聞くという新たな民主主義をはぐくみます。
 ユニバーサルデザインでは、スパイラルアップという概念が尊重されますが、これは新たな市民参加を推進し、常識と思っていた固定観念からのまた解放をもたらします。ユニバーサルデザイン推進条例を機に、世田谷区政は変わるべきだと申し上げておきたいと思います。
 ユニバーサルデザインの概念のもとでは、町会や商店街の一部の役員の声を聞いただけで住民の意見を全部聞いたとして、ケヤキの木を軽々に切ったり移植してしまうようなことは戒められなければなりません。強権的、官僚的な概念とは対極にある概念であるということを、ぜひともかみしめるべきだと申し上げておきたいと思います。
 このユニバーサルデザインの概念をもとに、本来はこの政策は福祉の畑から出てくるべきものでありますのに、むしろこの概念が国交省から出てまいりました。皮肉なことではありますが、日本では外来文化の受容や新しい言葉の受容が政策を是正したり、社会を革新するということも、歴史的に何度もありました。新しいもの好きは必ずしも悪いことではありません。
 最後に、世田谷区政のよりよい方向への転換を祈念したいと申し上げまして、無党派市民の全予算への反対意見といたします。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。