平成18年第1回臨時会(自516日 至522日)

世田谷区議会会議録

2006年 5月22日 三十一回オリンピック競技大会の東京招致に関する決議への反対討論


○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕(拍手)

◆四十八番(木下泰之 議員) 三十一回オリンピック競技大会の東京招致に関する決議に反対の立場から討論を行います。
 石原東京都知事がオリンピック招致のために動き出したことで、これに追従する決議を上げようということでしょうが、私はこの決議にはくみしません。反対いたします。
 オリンピックも、最近は商業主義が蔓延し、また、大会開催を利用しようとする権力者のポピュリズムに辟易しますが、世界友好平和に向けたスポーツの祭典というオリンピックが持つ意義は大事であると思うし、近代オリンピックを創設したクーベルタンの提唱に異議を唱えるつもりはありません。もし世界友好平和の祭典というのであれば、一九六四年の東京オリンピックに次ぐ日本での東京での開催は、広島において、あるいは広島、長崎の共同開催においてしかないと私は考えております。
 広島市現市長の秋葉忠利氏は、現在のオリンピック競技大会は、その開催規模が肥大化しており、ハード面、ソフト面において莫大な経費がかかるため、地方都市が単独で開催することは困難な状況であると考えておりますとして、開催誘致への意思表明をしておりませんが、真に簡素な市民主導型のオリンピック開催が実現できるとするならば、広島市長も、広島大会、あるいは広島、長崎の共同主催による大会というものについては賛同するに違いありませんし、もしそういうことになれば、大いに意義のあることであると私は考えております。
 東京へのオリンピックの再招致については、まず招致がありきで、大会への理念らしい理念が語られておりません。あるのは東京自慢と日本自慢、高度成長期の活力よもう一度ということでしょうが、こういうナショナルな動機だけで招致の理由とすることはいかがなものか、そういうふうに思います。
 先ほど自民党の意見表明がありましたけれども、やはり日本の都市をどう発展させるかとか、あるいは日本人の意識をどう高めるか、そういうようなことばかり言われておって、世界平和であるとか、あるいは東京で開く本当の意味、そういったことについての理念は一切なかったというふうに思います。
 世界の大陸の中で、まだオリンピックを実現していない大陸もあるわけであります。アフリカでもありません。南アメリカ大陸でもないはずであります。南アメリカとかアフリカの都市でもし開かれるならば、最貧国に対しての世界の注目をきちっと見詰めていくと、そういったことも含めての意義のあるものになると思います。先進国の主要都市に何回も何回も回したところで、それは本当の意味でのオリンピックというふうには思いません。
 さて、石原知事が諮問した東京オリンピック基本構想懇談会は、「東京オリンピックの実現に向けて」との答申文書の中で「五輪開催を契機とした東京改造は、今の目で見れば功罪半ばするところもあるが」との文章が出てきます。実態を考えてみれば、功罪半ばという総括はせざるを得なかったのでしょう。しかし、五輪開催を契機とした東京改造の効については能弁に語っているこの文書では、一九六四年のオリンピックによる東京改造の罪については一切語られておりません。
 三千三百万人にも膨れ上がった一極集中型の大都市へと膨張した東京の姿について、「政治、行政、経済の中枢機能に加え、文化や芸術など様々な機能がこれほどまでに集中・集積した都市は、世界を眺めても東京のほかには見当たらない」と言って自画自賛し、「もちろん、域外流入による交通渋滞は大きな課題として残っており、首都圏全体をカバーする環状道路ネットワークの整備が不可欠であることは論を待たない」と言うに至っては、環状道路を整備さえすれば、東京の問題は解決できるという居直りでしかありません。
 目指すべき東京の姿として効率的な都市を掲げ、首都圏の骨格幹線道路はすべて完成していることが目標として掲げられれば、またもや道路の突貫工事が二〇一六年のオリンピックまでに始まるに違いありません。
 五輪開催を契機とした東京改造は、今の目で見れば功罪半ばと、一九六四年のオリンピックを総括するのであれば、東京の川を埋め尽くして、すべてを道路とモータリゼーションに奉仕してしまったその都市づくりの貧困を挙げなければならないでしょう。その反省が形ばかりの日本橋のリニューアルに終わる限りは、また、都心での超高層ビルの林立を醜悪であると感じないとしたならば、東京に未来はないと言わなければなりません。
 今東京に必要なことは、オリンピックを開き都市改造を促すことではなくて、一極集中東京を分散化、分権化し、サステイナブル化することをきちんとデザインすることではないでしょうか。
 一九六四年の十八回東京オリンピック大会開催の罪の部分を徹底的に再認識することからしか東京の都市再生はないと申し上げて、第三十一回オリンピック競技大会の東京招致に関する決議への反対討論といたします。(拍手)

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。