2006年3月23日予算特別委員会質疑<文教>


平成18年  3月 予算特別委員会
平成十八年予算特別委員会
予算特別委員会会議録第七号
日 時  平成十八年三月二十三日(木曜日)
場 所  大会議室



○原田 委員長 引き続きまして、無党派市民、どうぞ。

◆木下 委員 教育長にお聞きいたしますけれども、今の下条さんの危惧は、私は当たっていると思うんですよ。それで、多分、道義教育検討委員会の方々については、教育長みずからいろいろお声をかけたんだと思うけれども、どういう基準で選ばれたんですか。

◎若井田 教育長 道義教育の検討委員会につきましては、まずお一人は、世田谷区の学校の保護者の方から選んでおります。
 もう一人は、大学教授でございますけれども、道徳教育を専門にしている方でございます。
 もう一人は、世田谷の文化生活情報センターの館長さんでございまして、世田谷区のことについてよくご存じであるという立場からお願いしています。
 もう一人は、信用金庫の理事長さんでございますが、その信用金庫は、人に喜ばれることを自分の喜びとするということを前面に出して活動しているところでございまして、世田谷区の教育ビジョンとも一致すると考えております。
 そのほか、ある医科大学の医療センターの所長さんでございますけれども、小児科医の立場からご発言をいただく。
 それから、先ほどお話がありましたトヨタ自動車の副会長、張さんでございますが、小中学校ともに世田谷のご出身でございまして、日本を代表する企業の副会長さんでございますので、お願いしたところでございます。
 それから、元日本銀行総裁の三重野さんにつきましては、学校経営塾の塾頭もお願いしておりますので、お願いいたしました。
 最後に、ある大学の学長さん、波多野先生でございますが、元国連の特命全権大使でございまして、世界的な視野からご意見をいただくということでお願いしております。

◆木下 委員 三重野さんについてはどうされたんですか。

◎若井田 教育長 三重野さんにつきましては、先ほど申しましたように、学校経営塾の塾頭をお願いしておりますし、文化生活の方でも理事長をお願いしているような関係でお願いしてございます。

◆木下 委員 先ほど下条さんが、右翼になったのかというお話をされました。私は、雑談でその話をしていて、ああ、そうかなとは思っていたんだけれども、きょう初めて下条さんが戦前の話をされて、そのとおりだと思いますよ。僕もいろいろインターネットでも調べました。道義という言葉は非常に右翼的、それから保守的に使われています。例えば、天皇の終戦の詔勅にも出てくるんです。それから、人間宣言にも出てくる。
 それはなぜ出てくるかというと、それまで道義という言葉を肯定的にずっと使われていて、最後に戦争をやめるときも道義という言葉を使ってやっています。それから、三島由紀夫が割腹自殺をするときの檄にも道義という言葉が使われているんです。
 どうも否定的な言葉で見ますと、丸山眞男さんが、道義的責任を天皇は果たしていないじゃないかと。天皇退位論の中で「天皇のウヤムヤな居据りこそ戦後の『道義頽廃』の第一号であり、やがて日本帝国の神々の恥知らずな復活の先触れをなしたことをわれわれはもっと真剣に考えてみる必要がある」と評論しているんです。
 現代、第二の敗戦とも言われていますよ。バブルを引き起こした張本人の三重野さんを頭にいただいて、こういう形で委員会をつくって、上から教訓を垂れるようなことはやめていただきたい。三重野さんのバブルの責任について、どう評価されますか。

◎若井田 教育長 三重野さんのバブルの責任についてということでございますが、それにつきましては、私自身、今お答えすることはできませんけれども、教育委員会の学校経営塾の塾頭をお願いしておりますし、教育委員会の施策についてご理解をいただいている方であると考えております。

◆木下 委員 今、格差社会とか言われますよね。それで、ここに至るに至っては、バブル経済を引き起し、そして、そのテイクオフにも失敗し、十年間ずっと放置されてきて、また十年間めちゃくちゃな政策をやられてきた。そういった中で今があるんですよ。それで、年間三万人もの自殺者がいる。それから、格差社会の中で、ある意味では今の荒れた社会はそこを象徴しているものだと思うんです。
 そういった中で、道徳教育の検討会。これはよくよく考えてみると、道徳教育というのは教育指導要領にもありますよね。この中の押谷さんなどはそれをずっと担当されてきた方です。そういった意味では、学校教育の中にはいろいろ問題があるけれども、それはそれなりのものですよね。
 ただ、市民に対して、地域の教育だということで、大人に対してある意味で教訓を垂れるようなことをこれからやろうとしているんですよ。つまり、失業した大人もたくさんいるんですよ。それの原因をつくった三重野さんを頭にいただくことなんていうのは恥知らずですよ。そう思いませんか。

◎若井田 教育長 そう考えてはおりません。

◆木下 委員 戦前、道義道義と言って、それで敗戦してきた。それに対して、終戦の詔勅で道義という言葉を使って終息させた。人間宣言も道義という言葉を使っている。丸山眞男の言うとおりですよ。戦前の道義についての責任は何ら問われていない。そして、バブルの崩壊の後、私は第二の敗戦だと思っています。そのバブルを引き起こしたのは日銀ですよ。その日銀が何をやってきたのか。そういったことが、今、批判をいろいろ浴びています。
 そういうことを総括しないで、今、三重野さんを引き合いに出して、それで委員会をつくって、そこで道徳教育の教訓を垂れようとしている。一体、道徳教育とは何をやるんですか。道義教育とは何ですか。教育長にお願いします。

◎若井田 教育長 作家の宮城谷昌光さんという方がいらっしゃいますけれども、作品の中で、自分の近いところに及ぼす愛が仁、自分の遠いところに及ぼす愛が義と書いていらっしゃいました。私もなるほどと思ったんですが、私は、人として他者に対する思いやりや慈しみを持って生きていくことが道義であると。
 子どもの発達を考えましたときに、大人が働きかけたり教えたりする必要がある時期があると思うんです。大人がしっかり子どもたちに伝えていかなくてはならないこと、例えば人を傷つけはいけないとか、うそをついてはいけないとか、そういうことをしっかり示すことが必要であると考えています。

◆木下 委員 そういうことを言っていれば道徳が確立し、世の中が義に満ちてくるのであれば、それはそれでいいですよ。そうでないから困っているんですよ。もっとセンシブな問題だし、今、具体的に何が問題になっているのかについて語ることが必要であって、標語などをつくって片づく問題ではない。
 しかも、三重野総裁を頭にした委員会をつくって、これで教訓を垂れようとしている。そういったこと自体が、私はとんでもないことだと思います。そういった意味で、私は検討委員会について、もう立ち上げるんでしょうから、どんなものが出てくるか見守っていますけれども、これは絶対納得できませんよ。
 そのことを申し上げて、終わります。

○原田 委員長 以上で無党派市民の質疑は終わりました。