平成18年第1回定例会(自31日 至330日)

世田谷区議会会議録

2006年 3月10日 障害者自立支援法の施行に伴う関連9条例への反対討論


○菅沼つとむ 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 議案三十二号、三十五号、三十七号、三十九号、四十一号、四十二号、四十三号、四十四号、八十三号に反対の立場から討論を行います。
 議案三十二号「世田谷区立総合福祉センター条例の一部を改正する条例」、三十九号「世田谷区立身体障害者デイサービスセンター条例の一部を改正する条例」、四十一号「世田谷区立岡本福祉作業ホーム条例の一部を改正する条例」、四十二号「世田谷区立知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例」、四十三号「世田谷区立知的障害者生活寮条例の一部を改正する条例」、四十四号「世田谷区立身体障害者自立体験ホーム条例の一部を改正する条例」は、いずれも障害者自立支援法の施行に伴うものですが、障害者自立支援法自体、その名前とは裏腹に、障害者へのこれまでの支援策を後退させる内容を持つ立法として、私は反対の立場に立ってまいりました。
 法は、利用する福祉サービスに応じて、障害者に原則一割の定率応益負担を求める内容であり、現在の支援費制度の財政逼迫を主な理由としておりますが、結局は、障害者の支払能力に応じた、これまでの応能負担に比べて大幅に負担がふえることになってしまいました。所得の低い障害者の自立を進めていくには、むしろ就労支援などの所得保障を図ることが先であるはずなのに、そのような対応はとられておりません。
 障害者の多くは、主な収入を月額七、八万円の障害基礎年金に頼っており、福祉作業所などの給料も一万円程度しかない。所得の少ない障害者にとっては、自立支援法によってサービスごとに支払う仕組みは負担が多過ぎる。頑張って自立を目指してきた生活が壊れるとの危機感が強いのは当然だろう。その上、障害者本人が払えない場合は、同居の家族が負担する点も問題が残る。家族がいなければ、障害者の生活が成り立たないようになる。自立促進の面からいっても発想が逆ではないかと、マスコミも社説で鋭く批判しております。
 そういった血も涙もない政府政策に対応した今回の条例改正に反対いたします。
 議案三十五号「世田谷区国民健康保険条例の一部を改正する条例」についても、弱者を切り捨てる改正ということで、反対いたします。
 議案八十三号「世田谷区介護保険条例の一部を改正する条例」につきましても、上位法の規則改正に連動し、結局は介護保険料を値上げするという改定となっております。政府が打ち出してきた自助努力の社会が、結局は本来救済すべき福祉の切り捨てになっていることは耐えがたいことであります。よって反対するものであります。
 議案三十七号「世田谷区健康づくり推進条例」につきましては、不必要な財政支出を促し、かつ区民にとっておせっかいな条例はつくるべきではないとの立場から反対いたします。今回、政府方針の福祉切り捨てに沿った条例改正を受け入れながら、世田谷区健康づくり推進条例もないものだというのが正直な感想です。市民個人個人の問題であり、また、市民社会の自主的な活動分野に属する区民の健康づくりについて、わざわざ条例を制定する必要はありません。結局、この条例を制定することの効用は、区や区の外郭団体の仕事をふやし、税金支出を通じて、その決定過程にかかわる区の幹部や区議会議員に関連団体や関連事業者との癒着関係を醸成する結果にしかつながりません。
 私は真に必要な福祉や教育についての財政出動はするべきであると思っております。しかしながら、この間の政府や地方自治体のネオコンサバティブに傾斜した一連の政策は、弱者救済という意味での必要な福祉を切り捨てることにはきゅうきゅうとしておりますが、今回のような健康づくり条例が示す意味不明の政策に財政を支出することにメスを入れるということはしませんで、逆に野放しにしております。それがいびつな自由放任政策であるネオコンサバティブの本質でもあるのでしょう。
 健康づくりに異を唱える人はいないでしょう。だからといって、新たな条例をつくる必要はありません。国民の多くが栄養失調にさいなまれていた時代であるならばいざ知らず、過食の時代の健康づくりは個人や市民社会に任せるべきことであります。正しい知識の普及が必要との向きもあるでしょうし、スポーツ施設が必要との要求もあるでしょう。しかしながら、そういったことは、従来の社会教育や保健政策の中で十分対応ができるものであります。そういう状況の中で、あえて屋上屋を重ねる新条例をつくるのは条例制定権の乱用でもあり、官僚システムの自己増殖を痛烈に批判したパーキンソンの法則からいっても戒めなければならないところであります。
 以上の理由から、世田谷区健康づくり推進条例案に反対いたします。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。