平成18年第1回定例会(自31日 至330日)

世田谷区議会会議録

2006年 3月10日  平成17年度一般会計補正予算(四次)、組織条例等への反対討論


○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 議案第六号の補正予算、議案第十号、組織条例一部改正、議案第十一号、財団法人助成条例一部改正、議案十七号、公益法人職員派遣一部改正、議案二十号、職員給与条例一部改正の各条例案に反対する立場からの討論を行います。
 議案第六号「平成十七年度一般会計補正予算(第四次)」の問題点は多々ありますが、とりわけ同補正予算に都市計画事業費の補正として鉄道と道路の立体化の促進に負担金の一億八千三百九十一万二千円を計上したことについては、決して容認できるものではありません。
 昨年の十一月の議会の最終日は十二月八日でした。この最終日に、最高裁大法廷は小田急線の連続立体交差事業認可取り消し訴訟の高裁判決を取り消して、原告のほとんどに原告適格ありとの判決を示しました。
 この判決は、最高裁第一小法廷から原告適格についての判断を求められて、大法廷が弁論を開き判決となったものです。したがって、本体の喜多見駅〜世田谷代田駅間の高架化による連続立体交差事業の国の認可が違法であるか否かの結論を出したわけではありません。本判決は、第一小法廷で現在審理が続けられており、その判決はこれからです。にもかかわらず、なぜかくも大々的に報ぜられ、全国から注目を浴びてきたのでしょうか。
 先日の本会議で、私は大法廷判決への評価を区長にお聞きしましたけれども、一般質問に対して、行政事件手続法が改正された結果として原告枠が拡大されたとの通り一遍の判断を区長は示されました。確かに時系列としてはそのとおりであります。だが、なぜ小田急の訴訟でかくも大胆な判断が示されたのかについて、区長は何の評価も語っておりません。三百五十メートルも小田急線の線路から離れているところに居住する私も、小田急線の事業認可を問う裁判の原告になれたということは大変なことなのです。三百五十メートルどころではございません。理論的には一キロ離れたところの居住者が加わっていたとしたら、その方も原告として認められていたということにもなるわけであります。
 最高裁大法廷は、今回の原告適格を判断するに当たって、騒音被害の受忍限度論による振り分けなどというものを取っておりません。東京都が都条例によるアセスを実施した、そのアセスの調査範囲に居住するすべての原告に原告適格を与えたわけであります。最大一キロ離れた地点もアセスの範囲に含まれております。これは小田急線の環境影響が騒音に限定されず、道路をも含む種々の環境影響が発生することを認めるという発想がなければ、とてもこれだけ広い対象地域を認定しようということにはなりません。小田急線連続立体交差事業が周辺の道路や再開発をも含めての複合的な事業であることを認めているからにほかなりません。
 そして大事なことは、この広範囲な地域に原告を認めるという判断が、参加した十四人の裁判官全員一致の判断であったということであります。この判断はどのようにして可能になったのか。もちろん法改正が基底にはあります。しかし、大事なのは、大法廷が都市計画法を従来の扱われ方のように官僚主導の技術法として見たのではなくて、都市計画法こそ環境法として読まなければならないという判断を示したことにあるのであります。そこに今回の大法廷判決のすごさがあるということは、まず認識していただきたいと思います。
 大法廷のこの判断は、全国の都市計画訴訟のみならず、都市計画のあり方の大転換を最高裁が求めたということであって、行政運営のあり方を変えようと、日本の土建行政に転換を求めてきたあかしであります。全国の行政は、これに従う義務がありますし、世田谷区も例外ではありません。下北沢の都市計画の扱いは即刻変えるべきなのであります。
 区長は判決文をお読みになったということだから、あるいはお気づきになったかもしれませんが、それだけではありません。この判決には少数意見が添付されております。普通、少数意見は多数意見に対する対抗意見だから、ひどい意見だったのだろうと思われる方も議場にはおられるかもしれませんが、そうではありません。原告適格を広く認めるということは全員一致であったわけであります。四名の裁判官の少数意見は、さらに上を行っております。本体事業と側道事業は法的に一体不可分のものであるという原告側の主張を全面的に認める判断を少数意見として示しているのであります。この問題に関しては、法的には一体とまでは言えないという立場の多数意見の裁判官の意見も、泉長官が補足意見で述べていることではありますけれども、実態的には一体と言っております。
 つまり、大法廷は小法廷で実際に最大の争点になっている連続立体交差事業と側道との関係について、実態的には一体だとの認識を共有し、少数意見の裁判官は法的にも一体的に見なければならないということを言っているのであります。その四名の裁判官のうち三名までが小法廷で実際に審理実務に当たっている裁判官であり、第一小法廷は四名の裁判官で審理が進められているということは、区長、ぜひとも頭に入れておいてほしいものであります。
 そういった状況の中で、経堂工区の事業について補正予算をつけることは、天につばをする行為ではないでしょうか。即刻やめていただきたい。第四次補正予算に反対する大きな理由であります。
 議案第十号「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」は、世田谷区の組織改変のためのものでありますが、今回の改変の中で産業振興部を産業政策部と改めるのは、財団法人世田谷区産業振興公社を立ち上げるに当たっての改変であります。
 これまで産業振興部は、世田谷の商工業に対して各種補助金を支出することを通じて世田谷の産業振興を図ってまいりました。個々の補助金のあり方については多々問題はあるけれども、区が補助金を支出するという体制をとっている限りは、議会からのチェックも可能でした。
 しかしながら、今回の組織改正で、補助金支出の受け皿として新外郭団体、財団法人世田谷区産業振興公社を使うということにしようとしております。産業振興の補助金を外郭団体に移すことで、名前を産業政策部と変えるというのであります。私はこのようなことはしてはならないと思います。補助金支出の差配権が外郭団体に移るということは、法的なチェックが間接的になるということであります。産業振興に名をかりた官業癒着が好き放題にできる体制であります。外郭団体改革に名をかりて、このようなことはしてはなりません。怒りを込めて反対いたします。
 議案第十一号「世田谷区財団法人に対する助成等に関する条例の一部を改正する条例」、議案第十七号公益法人への職員の派遣などに関する条例の一部を改正する条例」は、関連する条例の改変として反対いたします。
 第十一号には、四月から発足するとされている財団法人世田谷区産業振興公社や財団法人世田谷トラストまちづくりを別表に入れる改正であり、十七号はこれに伴う改正ですが、産業振興公社は、さきに述べた理由で反対であります。
 また、世田谷トラストまちづくりについては、本来、環境を守るべきせたがやトラストと開発志向の世田谷区都市整備公社が統合される、いわば水と油の統合であります。役割を終えた都市整備公社の解散は肯定できるにせよ、その機能がせたがやトラストとの統合で生き残ることはよくないと考えます。しかも、区の出向者や天下りで成り立つ外郭団体の性格を温存したままです。外郭団体改革でも何でもない、このような茶番はやめるべきです。反対のもう一つの理由としてつけ加えておきます。
 議案二十号「職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」には次のような文言が記載されております。二条第一項中「調整手当」を「地域手当」に改め、「『災害派遣手当』の次に『(武力攻撃災害等派遣手当を含む。以下同じ。)』を加える」。
 私は、我が国の平和憲法のもとで行うべき外交や経済政策など、政府が努力すべきことを怠っていながら、一方で武力攻撃事態法という有事立法、つまりは戦争法を成立させたことは極めて危険なことであり、間違いがあると考えております。したがって、関連する法整備としての条例制定についても反対いたします。
 以上をもちまして反対意見とさせていただきます。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。