平成18年第1回定例会(自31日 至330日)

世田谷区議会会議録

2006年 3月 3日 一般質問


○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕(拍手)

◆四十八番(木下泰之 議員) 最初に、昨年十二月八日の小田急訴訟大法廷判決と今後の都市計画のあり方についてお聞きいたします。
 大法廷の口頭弁論が開かれるという新聞報道があり、九月議会で区長に感想をお聞きしました。区長はこう答えております。係争中のものを、こうなるだろうという推測は私はしておりません。結果は、私の予想どおり、二審を逆転させて原告適格を広く拡大しました。区長に今こそ感想をお聞きしたいと思います。
 小田急線から三百五十メートル離れているところに居住している私も、原告適格が認められました。二審の判決では、小田急線事業地の地権者にしか裁判をする権利がなく、側道の地権者や鉄道直近の騒音被害者さえも裁判する権利がない。原告に該当する者はだれもいないとされていたのが、今度の大法廷判決では、東京都の環境アセスメントの調査範囲を指標として使い、鉄道からそれぞれ一キロ離れた地域まで、世帯にして五万三千世帯、人口にすればほぼ二十万人にも値する範囲に原告適格を認めたということになります。
 都の環境アセスの対象範囲は、単に騒音問題には限定されません。さまざまな環境影響を想定して範囲を決めております。それが一つの指標として原告適格認定に使われた意味は極めて大きいと言わなければなりません。判決文をつぶさに読めばわかることですが、都市計画法を環境法として扱っております。小法廷での違法判断の可能性も非常に高くなりました。
 それはさておき、原告拡大に当たっては、関連法規個々の法令解釈に大転換があったと考えられます。区長はどのように判決について把握されたのか、お答えください。
 これまで都市計画の地権者にしか原告適格を認めていなかったのが、大法廷判決は受忍限度論を一切出さずに、環境影響の及ぶ広範囲な地域の居住者に原告適格を与えました。その範囲の方々に行政は責任を持たなければならないということであります。今回の大法廷判決の原告適格の量的拡大は、行政責任の質的転換を求めているということでもあります。
 今後の行政運営全体についても言えますが、とりわけ都市計画やまちづくりについては、区民が施策を判断するに必要な関連情報を的確に提示し、より住民参加を拡大して丁寧に行うことが必須になってきていると考えます。
 都市計画法は、三条の三項で、「国及び地方公共団体は、都市の住民に対し、都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない。」と定めております。大法廷判決に照らせば、区としても、必要な情報を形式的に取得していないとしたり、情報の意図的操作を行うことなどは言語道断ということになります。大法廷判決を機に、都市計画やまちづくりについて何を注意しなければならないと考えるのか、今後の対応について見解をお示しください。
 次に、大法廷判決にも関連して、極めて具体的なことをお聞きいたします。下北沢の都市計画の見直しについてお聞きいたします。
 先日もNHKで取り上げられておりましたけれども、小田急線の連続立体交差事業に関連して、下北沢の関連都市計画事業が大論争になっております。五四号線と駅前ロータリーの区画街路一〇号線の事業認可問題、地区計画と用途地域見直し問題、小田急線跡地の利用問題、いずれも都市計画法のこれからの運用をめぐっての具体的な適用例となるでしょう。
 下北沢四商店街全部で加盟店数は平成十七年六月の段階で七百六十一店舗です。そういった状況で五百店舗を超える下北沢の商業者が補助五四号線の都市計画の見直し要請を訴えて組織され、区長に面会を求めてきました。この中には商店街加盟店も百件ほど含まれております。
 昨年末から区長に複数の日程を挙げてお会いしたいと要請してきたにもかかわらず、区長室は、この問題は組織的に対応しており、北沢総合支所の街づくり課が窓口であり、区長面会は受け入れられないとしてまいりました。一月十八日に区長室を訪れた代表に、区長室長は、十一月から二月までが区長にとっては年末年始で忙しくて会えないという非常識な答えをしております。
 しかしながら、一方で、一月二十五日には、区長は下北沢の四商店街と二町会の幹部の五四号線事業認可の早期実現要請には、北沢総合支所長も同席して、区長がきちんと面談している。
 区の方針へのイエスマンなら会い、そうでなければことごとく排斥する。そのような対応はあってはなりません。区長及び関係職員の対応について問いたいと思います。区長は商業者協議会の代表と会うべきであります。直接会って、区民意見を聞くべきであります。会うおつもりがあるのか否か、お答えいただきたい。
 一昨日の他会派の代表質問にも、下北沢フォーラムに参加する専門家が実施した下北沢に関するまちづくりアンケートの結果についての評価についての質問、この質問に対して区長はまともに答えておりません。
 補助五四号線について、必要だと思う一三・五%、必要だと思わない六〇%、バスや車のロータリー、必要だと思う二五%、必要だと思わない四九%、計画についての行政による説明、十分にされている一二%、十分だとは言えない六三%、代替案も含めてもっと話し合いが必要、そう思わない八%、必要だと思う七六%。このアンケート調査結果をどう評価するのか、お答えいただきたい。
 このアンケート結果もあるし、下北沢の五百を超える商業者の反対の声もある。一月二十五日の四商店街と二町会の要請は、理事会の議決もなく、組合員や町会員の意見の聴取もない幹部のみの暴走であるとして、町では批判の対象になっています。
 また、大法廷判決を念頭に置けば、下北沢地域の都市計画は少なくとももっと広範囲な周辺地域住民の意見を聞くべきであります。そういった状況で区長は合意を得ていない五四号線事業を拙速に進めることなく、立ちどまって周辺住民や商業者や専門家の意見を聞くべきであると思いますが、区長は対応をいかがお考えになるのか、お答え願いたい。
 最後に、世田谷区の構造偽装見落とし問題についてお聞きします。
 昨年の第四回定例議会では、都市整備部長は、「区内に姉歯建築士が関与した件数は十四年度に一件ございますが、区といたしましては、姉歯建築士が関与した建築確認書の内容を確認したところは、偽造はないものと確認しております」と答えております。
 ところが、住民がヒューザーに調査をやらせたところ、構造偽装が発覚、区はその後、外注して検査したところ欠陥物件だということがわかり、区の検査体制・能力の欠如が露呈いたしました。本会議答弁にかかわることです。経過を区民にわかりやすく説明し、責任の所在を明らかにするとともに、区長は区民に謝罪していただきたい。
 構造偽装問題は、民間検査機関を導入した規制緩和にも大いに問題があり、制度自体を見直さなければならない問題であることは再三指摘しました。しかし、その前に、区に偽装を見抜く能力がないことが露見してしまったことが世田谷区にとっては一番の問題であるはずであります。
 ほおかむりをしても始まりません。一番大事なところをごまかしてはいけません。非姉歯物件の登場もあり、世田谷区がこれまで検査した物件で見過ごした物件がある可能性があることについてどのように対処するのか。時間がかかっても、区が確認検査を手がけた物件についての再調査と必要なフォローを行うべきであります。その約束をした上で、今後の区の建築監督行政の改善策を具体的に示すべきであります。お答え願いたい。
 以上、檀上からの質問といたします。(拍手)
   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長 ただいまの木下議員の質問にお答えいたします。
 小田急訴訟大法廷判決と今後の都市計画のあり方についてのお尋ねでございます。区長はどのように把握しているかということでございました。
 昨年四月に施行されました改正行政事件訴訟法では、原告適格についての改正が行われ、許認可の根拠法令だけではなく、関係法令も考慮するとされたものと理解しております。さきの最高裁判決は、法律改正後、初めて具体的ケースについて司法の判断が示されたものでございます。この判決を見守りながら、今後に注目していきたいと思っております。
 以外につきましては、所管からご答弁いたします。以上です。

◎株木 都市整備部長 私からは四点ご答弁申し上げます。
 まず、小田急訴訟大法廷判決を受け、都市計画やまちづくりについて関連情報等を的確に提示し、丁寧な対応をすべきとのお尋ねでございますが、最高裁判所大法廷の判決は、行政事件訴訟法改正後、原告適格について判断された初めての事例であると認識しております。
 区といたしましては、今後とも、住民参加など区民とともに街づくりを進める姿勢を堅持し、引き続き開かれた透明性の高い行政運営を行ってまいります。
 次に、姉歯物件に対しまして、第四回定例会で問題はなかったと答えたけれども、その後、偽装が判明した経緯、責任の所在などについてのご質問でございます。
 昨年十一月の時点で区が指定確認検査機関のイーホームズから建築確認書を取り寄せ、内容を確認いたしました。その確認方法は国土交通省から指示されたチェック方法で行い、偽装がないものとしたものでございます。その後、構造計算書自体をチェックしただけでは見抜けない巧妙な偽装が行われていることが明らかになってきましたので、再計算を行う方法で再度精査し、偽装が判明したものでございます。
 ご指摘の構造計算書の偽装がないと報告しました点につきましては、もっと慎重に対応するべきだったと反省してございます。
 それから次に、区が確認検査を手がけた物件について再調査をすべきとのお尋ねでございますが、これまで世田谷区の構造審査は、審査担当者、係長と二重のチェックを行ってきております。また、現場の検査におきましても、中間検査制度発足以前から任意に工事工程ごとの検査を行ってまいりました。当面、耐震偽装関連事業者の物件への対応やこの間増加している確認申請への対応を図っているところでございます。
 区が確認検査を行った物件をすべて再調査することは物理的に困難なことでございまして、今後は、建築基準法改正等の動向を踏まえ、対応を考えてまいります。
 次に、今後の区の建築監督行政の改善策についてでございますが、今回の耐震偽装問題を踏まえ、特別区長会から平成十七年十二月に建築確認制度等に関する要望を区に提出したところであり、国においても、同年十二月より、社会資本整備審議会建築分科会に基本制度部会を設置し、建築行政のあり方について検討し、先日、中間報告が発表されました。
 今後、構造計算書等の建築確認時の審査方法の厳格化、中間検査の義務化と検査の厳格化、指定確認検査機関に対する自治体の監督権限強化等、法改正が予定されている状況でございますので、その動向を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。

◎真野 北沢総合支所長 私からは、下北沢の都市計画の見直しについての四点のご質問にお答えしたいと思います。
 まず、十八日の商業者の皆様の要請についての区の対応ということでございます。
 区は、商業者協議会の代表の方々に対しまして、あらかじめ、当日は区長が不在であり、代理として区長室長がかわって要望書をお受けすることを明確にお伝えしておりました。代表者の方はこれを承知で来訪されたわけでございますが、その場になって区長に直接渡したいということで、要望書は提出されませんでした。その後、代表者の方より区長の自宅あてに郵送されまして、区として受理したところでございます。
 次に、区長は会うつもりはあるのかというようなご質問をいただきました。お答え申し上げます。
 県並みの人口を擁する世田谷区に当たっては、区長みずから八十四万の区民に直接会うことは大変難しい状況にございます。区長が区民の意見を直接聞く機会といたしまして、タウンミーティングや区長と区民との意見交換会、各種団体との意見交換会など、さまざまな機会がございます。また、区長のもと、重要な事業に関する方針とかにつきましては、所管への指示、あるいは逆に所管との協議を通じまして方向を確認する場合、ケース・バイ・ケースの対応など、さまざまな政策情報の共有化を図る仕組みをとってきてございます。
 本件の下北沢のまちづくりにつきましては、所管であります北沢総合支所で対応するように、区長よりご指示をいただいております。
 次に、まちづくり専門家の皆さんのアンケートについての評価についてお答え申し上げます。
 専門家のグループが下北沢周辺の住民、商店等にアンケートを実施したことはお聞きしております。しかしながら、アンケートの内容、結果について詳しくは聞いておりません。個別にコメントすることは差し控えたいと思っております。
 次に、五四号線についての立ちどまってもう一度見直すべきだというようなご意見についてお答え申し上げます。
 下北沢のまちづくりにつきましては、区はこれまで街づくり通信やホームページなど情報を提供しながら、地元下北沢街づくり懇談会や町会、商店会での数多くの方々の意見をお聞きし、進めてまいりました。現在は、当初よりのスケジュールに沿いまして、事業認可取得に向けまして東京都と協議を進めているところでございます。
 いずれにいたしましても、小田急線連続立体交差事業におくれることなく必要な道路整備を進めていくために、早期の事業着手を目指してまいります。
 以上でございます。

◆四十八番(木下泰之 議員) まず区長には、判決文についてちゃんとお読みになったのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
 それから、一月十八日の商業者協議会の要請、これは暮れから再三、区長にお会いしたいということで言っているわけですよ。ところが、十八日の日に区長はもちろんおいでにならなかった。だから、区長と会える段取りをつけてくれというふうに再三申し入れた。その中で、十一月から二月までは区長は正月で忙しくて会えないと言ったんですよ。つまり、区長の正月は十一月から二月までだと言ったんですよ。それで忙しくて会えないのだと。
 そうしておいて、一月二十五日には、これは下北沢の四商店街と、それから町会には会っている。しかも、これは役員だけで勝手に行動したのであって、きちんと合意もとっていない。そういったものについて、支所長も一緒に会っている。これは全くの差別ですよ。問題は大きい。五百店舗以上の商業者がノーと言っているんですよ。それについて、まずはどんな方がやっているかお会いしてみることだって必要じゃないですか。そういうことをぜひやっていただきたい。
 まずその二つについてお答えください。
   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長 まず初めに、その要望書を見たか見ないかということでございますけれども、(「要望書じゃない、判決文だよ。読んだかどうかですよ」と呼ぶ者あり)ああ、判決文、失礼しました。読ませていただいております。そして、先ほど言いましたように、その判決の趣旨を踏まえて、見守りながら、今後に対応していきたいという考えを持った次第です。
 次に、町の方、商店街の方との面談の件でございますけれども、室長が十一月から二月まで――お正月がそんなに長いはずはございません、おっしゃるように。それぞれの公務がございますので、それらを含めてのお話だったと理解していただきたいと思っております。
 そして、一月十八日ですか、言われましたように、事前に区長は在席しないということ――当日、私立幼稚園の会がございまして、そちらの方にご案内いただいておりましたものですから出かけたわけでございまして、皆さんがお見えになるから出かけたということではないということをひとつご理解いただきたいと思います。
 それから、一部の方とお会いしている件につきましては、十八日の皆様方とも同じですけれども、別に逃げたり避けたりしているわけではなく、その日に時間があったということでお会いさせていただいたということでございます。
 私は、聞く耳を持つ区長だということは確かに申し上げております。そのことは、直接区民の方々にお会いしなければということではないと先ほど総合支所長も言っておりますけれども、このさっき触れました判決文の件も目を通させていただいて、そして、この件については北沢総合支所で対応すべく指示をしているところでございますので、ご理解いただきたいと思います。
 以上です。

◆四十八番(木下泰之 議員) 区長は、先ほど言ったような趣旨であれば、それは会うべきですよ。会うとここで約束してください。そうすれば、それはいつになるかというのは調整すればいいことですから、まず会ってよく話を聞く、それが聞く耳を持つ区長の務めですよ。
 それから、アンケート調査だって、あれだけ詳細なアンケート調査をやられているんだから、これについてだって見る必要がありますよ。区長は見ましたか。それも見ていないで下北沢のことについて判断することはできないですよ。
 それから、専門家だっていろいろなことを言っているんだ。それについてお答えください。区長。
   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長 木下さんね、そんなに大きな声で言わなくても聞こえますから。常識的な範囲でお話しいただきたいと思います。
 ご指摘のように、会うか会わないかにつきましても、総合支所に今指示しておりますので、総合支所の方からのまた話を聞きながら判断していきたいと思っておりますので、ご了解いただきたいと思います。
 以上です。

◎真野 北沢総合支所長 専門家の方たちのアンケートにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたけれども、アンケートをやったということについてはお聞きしてございますが、内容とか結果につきましては詳しく聞いておりませんので、コメントは避けたいと思います。
 以上でございます。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。