平成17年第3回定例会(自9 14日 至1018日)

世田谷区議会会議録

2005年10月18日 平成十六年度世田谷区一般会計歳入歳出決算認定への反対討論




○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 平成十六年度一般会計の決算認定に反対の立場から討論を行います。
 私は、三月議会で十七年度予算への反対討論の中で、小田急線連続立体交差事業の延長に絡んで、平成十六年度予算編成と執行に問題があり、地方財政法に反すると申し上げてまいりました。その一点からも、平成十六年度決算には反対せざるを得ません。小田急線は、結局、喜多見〜梅ケ丘間の環境側道を含めた事業が完成しないままに複々線を走らせているのであり、違法走行と断ぜざるを得ません。
 現在、この問題に関しましては、事業が完成したから走らせたとする国交省の運行認可の住民による取り消し訴訟と、事業が完成しないから事業期間を延長することを認めた、やはり国交省の事業認可に対する住民の訴訟が、同じ東京地裁の同じ部で同時に争われております。盾と矛との論理、あっちを立てればこっちが立たずという、まさに矛盾の中に現在国はいます。その矛盾の政策を、世田谷区は無批判に受け入れて加担しているのだということを片時も忘れてはなりません。
 さて、今回の決算議会で、私は区長や幹部の方々にさまざまな論点の質問を投げかけてまいりました。しかしながら、これに真っ正面から答えていない、極めて不まじめであります。もう間近のことですが、十月二十六日に最高裁の大法廷で小田急線の訴訟の口頭弁論が開かれます。九月十五日に正式に決まり、当日の朝日の夕刊はこれを報じました。九月十六日の一般質問の際、私はこの報道について、区長に感想をお聞きしました。ところが、区長は読んでいないと答えられた。三月に続き、新聞を読んでいないと答えられたのは二度目であります。
 三月議会の際は、都が小田急線事業の三年延期申請をしたという記事で、毎日新聞のスクープ記事でありました。一面トップを飾り、三面に解説記事まで載せるという大報道でした。今回は小さな記事ではあるけれども、区政にかかわる事件での最高裁の重要決定です。トップが知らないとしたら、知らせなかった担当者も責めを負うべきでありましょう。区政にかかわる重要報道について、本会議において二度も、その新聞は読んでおりませんのでお答えできませんと答えるのは、質問者と区民を愚弄するのも甚だしいと言わなければなりません。
 決算委員会で区長は、この報道は事実経過が述べられたにすぎないとの受け流しの答弁をしておりますが、報道は、大法廷が原告適格を判断するのは初めてで、住民側の原告適格を認めなかった二審、東京高裁判決が見直される可能性があるとしているのであります。原告適格についての判例変更がなされるとしたならば、都市計画をめぐる住民の権利は地権者から周辺住民へと格段に拡大し、真に環境問題が都市計画を左右することになります。世田谷区のみならず、国の基本政策が根本的に変わらざるを得ない、そういう問題の本質が見えないならば、住宅都市世田谷を預かる首長として資格はございません。
 下北沢の再開発問題についても、議会中、エポックメーキングなことがありました。つい最近まで国際建築家協会の会長を務めておられた方で、ブラジルのクリチバ市で車に頼らない環境共生都市の実現を行った市長として世界的に知られているレルネル氏が来日し、下北沢を視察いたしました。私は夕刻の講演会に参加いたしましたが、視察に同行した方からの話では、現場をレルネルさんは歩きながら、路地で構成された既存市街地に補助五四号線を突然通すことへの驚きを示し、小田急線が地下に潜ることを知らされると、跡地の遊歩道化やギャラリーとしての利用計画の着想が即座に口をついて語ったそうであります。この模様はインターネットでも紹介されております。
 レルネルさんに限らず、大方潤一郎氏や小浪博英氏、佐藤滋氏、陣内秀信氏、高見沢邦郎氏など、日本の第一線で活躍する都市計画学者や建築の専門家たちも、七月四日に区長あてに出した要望書で、下北沢に最大幅二十六メートルもの道路を通し、高層ビル群を許す地区計画を用意していることに疑問を呈し、その再考を求める要望書を提出しております。まとめ役の元建設省住宅課長の蓑原敬氏は、現存するユートピアとして、歩いて楽しめる町下北沢を強調されております。
 こういった主張は、今から二十年前に川上秀光氏を委員長に世田谷区が組織した小田急沿線街づくり検討委員会に集まった専門家とは意見を異にしております。世界的潮流も含め、専門家のスタンスも大きく転換していることに注目しなければなりません。時代は変わったのであります。環境共生と人間的な町こそ求められる時代になってきているのであり、下北沢はそのモデルなのであります。
 下北沢をめぐる論争では、区当局者は、これまでの路線をオウム返しにして語ることしかしませんでした。これでは世田谷が、世界に誇るべき文化の町下北沢に莫大な血税を投下して、町を壊すという愚行に突き進むということになるでしょう。環境政策は言うに及ばず、商工政策、文化政策からいっても、そのような愚行は、世界の、そして日本の専門家たちの慧眼を受け入れて即刻中止し、下北沢の今の魅力を最大限に生かす計画に改めるべきであります。
 一九八四年発足の下北沢街づくり懇談会ですが、事務局を務めていた区当局が第五十三回懇談会以前の議事録を捨ててしまったことに居直る態度は言語道断であります。一九八四年から今日に至るまで連続立体交差事業問題として、区がどのように政策を区民に説明してきたかは、議事録を通じて初めて明らかになるからであります。
 現に五十三回会議以降の議事録からは、区が補助金問題を盾に、いかに商店街の皆さんをだましてきたか、その手口が透けて見えます。論戦で明らかになったことは、駅前広場の広さを決めるに当たって、商店街の皆さんが思っているような補助金による制約などもともとなかったということであります。議事録を読むと、商店街の皆さんの誤解を誤解のままにしておくという手法がとられていることが論証できます。
 トラスト協会と都市整備公社との合同に向けての画策は、既に平成十六年度の人事の相互乗り入れから画策されていたことも明らかになりました。自然保護と開発、いわば水と油の統合は、役人益ではあっても区民益ではありません。即刻やめるべきです。
 幼保一元化の問題では、教育委員会の施設に区長部局が勝手に予算をつけることの違法性を追及いたしました。地教行法違反です。また、民設民営による幼保一元化は、区教育委員会がその役割を結局は放棄せざるを得ない、そういった構造も明るみに出しました。
 給田の墓地の開発問題では、区有地である畦畔と、もともとの開発計画者である小原建設の所有地を使わなければ、光母寺による墓地開発が成り立たないという実態が明らかになりました。あわせて、もともとの墓地開発企画者である道路建設会社、小原建設の過去二回の区との契約実績において、入札の落札率がいずれも九九%であり、小原が談合企業のそしりを免れないことも指摘しました。
 最後に、砧区民会館の建てかえ問題。区民会館は、平成十六年度に新設されたまちづくり交付金のまちづくり事業として、区が小田急連立事業関連の都市再生事業として、国に改修を前提に申請したものであります。それを事実上ほごにして、今議会になって建てかえを前提に調査費を補正でつけました。こんなことが許されてよいはずはありません。
 土建国家的体質を転換せよということは私は何度も訴えてまいりました。残念ながら、国も、都も、熊本区長も、これを改めようとはしません。連続立体交差事業と補助線のグリッド状の整備、一団地認定の解除、にこたま、下北沢、経堂、三茶の再開発、世田谷区は不動産開発のえじきになろうとしております。
 バブル崩壊後、経済はやっと踊り場に出たと一応は言われております。しかし、これは年間三万人もの自殺者を出すという犠牲の上に銀行救済をなした成果にほかなりません。産業構造の転換をしない以上、経済に有効なものは、都市部の再開発を誘因としたミニバブルということになるでしょう。しかし、これはいわゆる向かい酒にすぎません。向かい酒がきくのはアル中と相場が決まっております。この体質を改善して、文字どおり健康で、エコロジカルで、人に優しい社会経済体制づくりを進める必要があります。これを世田谷区から始めなければなりません。そのように私は考えます。その意味で、土地本位のアル中体質に染まった平成十六年度決算に賛成することはできません。
 以上述べまして、無党派市民の反対討論といたします。(拍手)

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。