平成17年第3回定例会(自9 14日 至1018日)

世田谷区議会会議録

2005年9月27日 「世田谷区立保育園条例の一部を改正する条例」及び「世田谷区立特別養護老人ホーム等条例の一部を改正する条例」についての反対討論




○菅沼つとむ 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき発言を許します。
 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 議案第九十七号「世田谷区立保育園条例の一部を改正する条例」及び議案第百二号「世田谷区立特別養護老人ホーム等条例の一部を改正する条例」についての反対討論を行います。
 九十七号は、区立保育園の経堂保育園を民営化するための条例改正であり、百二号は、特養ホームの入所者からホテルコストをもらう、つまり部屋代と食事代を新たに取ろうという条例改正であります。民営化と自助努力が流行であります。それでよいのかというのが私の思いであります。また、公的なセクターを安直に民営に移すことは弱者切り捨てのあらわれにすぎないと私は思いますし、それから、民営化と自助努力が流行しているわけですけれども、それでよいのかというのが私の思いであります。
 国と地方自治体の累積債務が一千兆円を超えます。財政危機であります。しかし、この危機をいかに乗り越えるかは、長期的な国家戦略が必要であります。今、小泉自民党圧勝のもと、民営化と小さな政府が言われております。小さな政府というのは、歴史的に言えばレッセフェール、つまり夜警国家であります。それでよいのかということです。はやってはいますけれども、本当に国がなくてよいのかというか、夜警であっていいのか、そういうことであります。
 例えばバブルで経済が崩壊したときに、銀行に大量な財政支出を国は行ったわけであります。また、民営化の問題でいきますと、民間がすべて善であるかというと、そうではありません。バブルを引き起こしたのは、まさに国の政策もありましたけれども、民間がバブル経済をあおり、バブルに、泥沼に入っていったわけですね。そういったことに対して何の反省もしていない。
 考えてみますと、中曽根政権のころは、やはり小さな政府というのが言われて、民活論がよく言われていました。そしてNTTの民営化が行われ、そしてその原資を国債償還ではなくて、むしろ内需拡大と称して大量にばらまいた、それがバブルのきっかけでありました。それを克服すると称して、今度はまた新たに小さな政府と言い出して、結局、小さな政府といっても、つまるところ、銀行などにはお金を出す。しかし、弱者に対しては切り捨てていく、そういう政策が続いてきているわけです。
 今度の総選挙でも、本来でしたら大きな政府と小さな政府という形で、自民党と民主党がそういう対抗軸を立てて闘うべきだというふうに私は思いますけれども、そうはならなかった。大きな政府、小さな政府といった場合に、大きな政府というと何か悪いことのように思われるかもしれないけれども、これは歴史的な用語でありまして、つまり、今の現代社会はどう考えても、国が一つの経済秩序やそういうものに介入していかざるを得ない。また、一つの方向性を出していかざるを得ない。そういった意味で小さな政府というのは不可能であります。むしろ、ほどほどの政府という形で言うしかないと思います。
 といいますのは、大きな政府、つまり小さな政府が人気が出たのは、要するにむだが多い。また、官僚が好き勝手をやっている、企業癒着もやっている、そういったことについてメスを入れろという国民の声だったというふうに思います。ところが、そちらの方向については全然バブルのころから進捗していない、そういう状況があるわけであります。
 振り返って、今回の民営化の問題は、保育園の民営化の問題を一つとっても、民営化、民営化といってどんどん民に移すのはいいけれども、しかし、これは児童福祉法の範疇で、これは行政が指導しなければいけないわけです。そういった中で民営化といっても、それは公的セクターの網がかかるわけですね。
 そうすると何が起きるかというと、天下り先になったりするわけです。そういう形で、外郭団体であったり、それから第三セクターであったり、そういったものが非常な弊害になってきた。民営化、民営化といっても、実際のところ役人の外縁部隊が民との間に広がっていく。あるいは民についても、官と業の癒着ということで言われてきたように、ずっと役人の支配が続いてきている。そういったものをどういうふうに払拭させていくか、そのことが大事であります。
 また、労働組合の問題もあって、要するに官でやっていると効率が悪いとか、あるいはコストがかかるとかということも実際にあるかもしれません。しかし、官民の格差の是正というのはまた別の問題でありまして、それはそれできちっとやっていけばいいと思いますし、それから、官がやることについて、やっぱり市民がこの公的セクターに対してきちっとアクセスできたりガラス張りになっている、そういったものを市民がコントロールできる、そういったことが大事でありまして、何も民営化していけばいいというものではありません。それは保育園であれ、幼稚園であれ、そうだと思います。
 私は、世田谷区議会での議論で、最近、やはり民営化、民営化ということで、どうもそちらの方にどんどん引っ張られて行ってしまっている、そのことが非常に私としてはよろしくないというふうに思っております。今回の議案に対しても、共産党さんは前から反対していて、そこしか反対していない。しかし、本来であれば、やはりこういった公的セクターを大事にするかしないか、そういったことは、もう少し幅広い形で二分して議論されるべきであるというふうに私は思っております。
 そういった意味で、今回の条例として二つ出てきているわけですけれども、私は今回の条例について、非常に日本が曲がり角に来ているときに、弱者切り捨て、あるいはこういう民営化をどんどんやっていく、そういったことに対して、やはりこの議会としては歯どめをかけておくべきである、そういうふうに考えまして、反対を選択したわけであります。
 やはり今後の日本の将来、私は、バブル経済の反省を何もしていない土建国家としての日本、これは完全に、先ほど言いましたように、官の外縁としての民間があって、そこにどんどん公共事業と称して、道路予算とか、それから建築予算、そういったものにつぎ込んでいってしまう、そういったことを転換することこそ必要である。
 つまり、エコロジカルな新しい財政投融資も含めて、そういった形で日本の経済構造の大転換をするべきであるというふうにかねがね述べてきたところであります。(「社会資本は大事だよ」と呼ぶ者あり)そういった形でぜひ、そう、社会資本は大事なのであります。社会資本が大事だということは、つまり、その公的セクターをどういうふうにコントロールするか、そういったことが一番大事なのであって、単に民営化するだけではすべてがうまくいくとは思いません。そういったことを述べまして、反対討論とさせていただきます。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。