平成17年第2回定例会(自68日 至617日)

世田谷区議会会議録

2005年 6月17日 4つの議案への反対討論


○菅沼つとむ 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。

 発言通告に基づき発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 議案五十七号、五十八号、六十号、六十一号についての反対討論を行います。

 議案五十七号は「世田谷区手数料条例の一部を改正する条例」であります。提案趣旨の説明に「戸籍の全部、個人又は一部の記録事項の証明手数料等について定める必要があるので、本案を提出する」となっております。この条例一部改正案は、戸籍の電子化に伴い行われるものです。

 私は政府が国民を一元管理することにつながる住民基本台帳ネットワークシステムの導入に反対してまいりました。コンピューターとネットワークシステムの発達したデジタル情報を取り扱う社会では、アナログ技術しか持たなかった社会以上に情報の取り扱いに慎重でなければなりません。集積することで不都合が起こる情報にはバリアを設け、情報の分権化と個人情報のアクセス権と、また異議申し立ての権利を徹底確立することが必要です。

 戸籍については、個人を主体とする民主主義社会において、その存在自体に疑問を持たなければなりません。戸籍制度は、家制度を主体に、明治時代につくられた日本独自のシステムであるということを認識しておく必要があります。日本の植民地支配で戸籍制度を押しつけたということがあって、韓国や台湾には戸籍制度がありますが、個人の上に家を置いて一元管理するという、世界的に見れば極めて特殊な制度であります。ちなみに、韓国はこの戸籍制度をやめるということを表明しているそうです。もう決めたそうです。

 明治期に近代法制を導入するに当たって、当然のことながら論争がありました。近代法制と相入れないとして戸籍制度に反対したのは、かの後藤新平でありました。戦後は、家制度自体は撤廃されましたが、戸籍法は残り、家制度の名残を今でも日本は引きずっているのであります。

 部落差別や国籍による差別問題はもちろんのこと、男女平等の観点からいっても、また、何よりも個人が個人として尊重されるという日本国憲法の精神からいっても、戸籍として日本国民を一元管理する手法はやめにするべきであります。

 戸籍は附票を通じて住民票とも結びついており、戸籍の電子化は住民基本台帳ネットワークシステムと連動しておりますので、個人のプライバシーを脅かすことになります。また、戸籍は除票を通じて、数世代前までさかのぼって血族関係を把握することができます。戸籍の電子化は、DNA鑑定技術と相まって、新たな人権問題を惹起することを考えておかなければなりません。

 以上の理由から、私は「世田谷区手数料条例の一部を改正する条例」に反対いたします。

 次に、議案第五十八号「世田谷区特別区税条例の一部を改正する条例」への反対の理由を述べます。

 本条例改正案は法改正に伴うものでありますが、私は昨今の政府の税制改正のあり方に大いに疑問を持ち、法改正について異議を持つものであります。

 日本は、戦後長い間、世界で一番平等化が進んだ社会だと言われてきました。しかし、最近逆に、日本社会は階層化が進んでいるというふうに言われております。この階層化に拍車をかけているのが昨今の税制改革、広義に言えば社会保険や年金を含めた制度改革ではないでしょうか。

 平たく言えば、金持ちに優しく貧乏人に厳しい税制改革、社会福祉制度改革であっていいのかという疑問であります。年間自殺者が三万人を超えているという現実の中で、こういう政策を続けていくことは弱者切り捨てそのものであります。そういった流れの中で出てきた、今回の高齢者控除廃止などを前提とした、区税条例の一部改正には反対であります。

 次に、議案第六十号「世田谷区立総合運動場体育館大規模改修工事請負契約」と議案第六十一号「仮称世田谷区立経堂図書館新築工事請負契約」についての反対の理由を述べます。

 最近、橋梁メーカーの談合が摘発され、国を揺るがす事態となっております。最近の新聞報道を紹介しておきます。

 五月二十三日付の産経新聞です。

鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合疑惑で、公正取引委員会の昨年十月の立ち入り検査後も、関東地方整備局が発注した橋梁工事の三分の一以上が、九五%以上の高い落札率だったことが二十二日、分かった。談合組織に加入しないメーカーが参加した入札に限り、落札率は約七〇%と大幅に下がっていた。「落札率が九五%を超える入札は、談合の疑いが強い。検査後も談合が続いていた」と話す関係者もおり、組織の結束力の強さと悪質さを指摘する声も出ている。

 関東地方整備局で昨年十月から今年三月にかけて、一般競争入札や指名競争入札が実施された橋梁工事は計十五件。それぞれの落札率は九五%以上が六件、九〇%以上九五%未満六件、八五%以上九〇%未満が二件、約七〇%が一件だった。

 突出した低落札率となった入札には、業界で「アウトサイダー」と呼ばれる、談合組織の「K会」「A会」に加入しない福島県の橋梁メーカーが参加。このメーカーは談合組織の受注調整に応じなかったとされ、工事は七〇・一八%の落札率で談合組織のメンバー会社が落札していた。

 また、東京都が今年一月までの三年間に発注した橋梁の建設や補修工事でも、大阪府などの橋梁メーカーが参加した入札では、六割を切る落札率だったり、適正な工事を維持できる最低制限価格を下回る応札で落札できなかったりと、「アウトサイダー」が参加した入札では、いずれも価格競争になっていた。

 業界関係者は「競争原理が働けば、落札率は八〇%前後。九五%を超えれば談合の疑いが極めて強い」と指摘する。

 談合組織は、組織内で順番に落札業者を決めていたが、アウトサイダーの参加した入札では、落札価格を極端に下げて妨害工作をし、落札会社の赤字分は別の工事を優先的に受注させ、穴埋めしていたという。

こういう記事が産経新聞に載ったわけです。各紙もこのようなことは報道しております。

 こういった事例を参考にして、二つの議案についての落札率を見ていきましょう。議案六十号の総合運動場が九八・九〇%、第六十一号の経堂図書館が九九・〇二%であります。数値から言うと、業界筋に言わせれば談合ということになります。二つの事案について談合の蓋然性は極めて高い。業界筋では談合であると判断するのが常識だということになります。指名競争入札としたことにも大いに疑義があります。

 こういった事案について、行政や議会は徹底調査を尽くすべきであります。委員会でも各委員から疑惑が提示されていたことは、先ほどの報告でも明らかであります。そういった徹底調査もなく、野方図に承認を与えてよいと私は考えません。

 区立経堂図書館について言いますと、この図書館は小田急線の連続立体交差事業でできた高架下につくるということになっております。落札者は小田急建設、落札率が九九・〇二%です。競争入札で行うというのならば、小田急関連企業は入札参加を遠慮するというのが、企業に課せられた最低の倫理ではないでしょうか。

 また、そもそも図書館を小田急線の高架下につくるということ自体に私は反対であります。最近、高架下に保育園を誘致したり、高架下の利用をそのことによって積極宣伝している嫌いがあります。しかし、高架はやはり高架であります。そこに預けられた保育児はかわいそうであります。にぎわいのある図書館というコンセプトを、世田谷区は今度の図書館について語り、そういったコンセプトを掲げたと聞いておりますが、それこそ根本的に間違っていると思います。やはり図書館は静かに本を読むところではないでしょうか。立地に問題があると言わざるを得ず、建設自体に反対いたします。

 以上、議案四件についての反対討論といたします。