平成16年第4回定例会(自1126日 至127日)

世田谷区議会会議録

2004年12月7日 5つの請願不採択処理への反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 発言通告に基づき、順次発言を許します。
 四十八番木下泰之議員
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) ただいま請願の処理についての審査結果の報告がなされましたが、この中で、福祉保健委員会での平一六・一二号と二四号、文教委員会での平一六・二六号、二七号、二八号については不採択とすると決したとの報告がありました。私は、これらの不採択の報告について同意することはできません。反対の立場で討論を行います。
 不採択とされたのは、福祉保健委員会では、一二号「区立保育園の民営化に反対し、公的保育の拡充を求める請願」と二四号「区立経堂保育園民営化計画の見直しを求める陳情」の二つ、文教委員会では、二六号「区立羽根木幼稚園の存続を求める陳情」、二七号「区立羽根木公園を取巻く子育て環境の的確な評価、及び区立羽根木幼稚園の今後のあり方の再検討を求める陳情」、二八号「平成十八年度区立羽根木幼稚園入園希望児に対する善処たる早急な対応を求める陳情」の三つであります。

 いずれも一回の審議のみで不採択ということでありますが、保育園の民営化に関しても、幼稚園の民営化とその後の幼保一元化の問題にしましても、区議会に理事者側から正式な議案として提出されているわけではありません。しかも、区民側の提案は、保育園では七万名、幼稚園問題では四万六千名もの署名が背景にあっての陳情や請願であります。これを議会での数の力によって否決するというようなやり方は、好ましいとは思いません。委員会での取り扱いとしては、少なくとも継続審査にして、事態の進展次第ではもう一度議題とすべきであると申し上げておきましょう。それぞれの陳情、請願に対しては、私としては趣旨採択を主張するものであります。

 民営化旋風がこのところ吹き荒れております。確かに、官の硬直したサービスは民間に移した方がよいものもたくさんあります。あるいは、官のサービスで要らないものすらあります。都市整備分野などでは、デベロッパーの後押しこそすれ、市民に対しては情報操作をしながら市民参加の格好だけをつけるというような役職すらもある。そもそも都市整備公社などは要らない。さらには、土地開発公社のように、役回りを使い分けるために区職員が社員となる偽装的な法人まで用意されています。そんなものは要りません。事業としても、京都議定書が発効され、日本が地球温暖化対策の先頭に立たなければならないという時代に、道路予算ばかりを増額するのも、これはもはや罪悪であります。しかし、熊本区政は、二倍の速度で道路整備をするために道路予算を増額させています。こんなようなことは、まさにナンセンスであります。

 ところが、今、区政で民営化のやり玉に挙げられているのは、今回の請願の対象となった保育園であり、幼稚園であるということになっております。これはやはり間違っていると思います。幼保一元化が民営化の必要性の合理化に使われている嫌いがありますけれども、幼保二元化が長い間続けられてきた我が国の幼児教育を一元化するには、幼稚園教師や保育士の養成をどうプログラミングするのか、また、二元化している縦割り行政システムをどのように総合化していくかなど、長期ビジョンが必要であり、それに伴う予算も必要であります。

 小泉首相が登場した際に、米百俵の逸話をよく引き合いに出し、改革のにしきの御旗としました。ところが、その後、教育予算がふえたという話を聞いたことがありません。大事なことは、今こそ米百俵をこそ実践することではないかと私は思います。幼保一元化というのであれば、まずは区立幼稚園と区立保育園との間で交流や幼保一元化の実験をやるのが素直なやり方であると思います。

 しかも、幼保一元化にすれば何でも解決というわけではありません。現在は、それぞれの区民の働き方に合わせた多様性も求められております。今回の請願にもあったように、自主幼稚園、自主保育園というのも、これからの新しいやり方であると思います。こういったことについても、区が一生懸命やってきましたプレーパーク事業や羽根木区立幼稚園との連携でも、とてもよい子育てのサイクルを形成してきた、そういう歴史もあります。こういったことも考慮に入れる必要があります。

 今回、民間経営に移行しようとしている区立の幼稚園や保育園は、区民からむしろ愛され、その存続を懇願されております。区立の、区が経営するまさに有料セクターであるわけでもあります。なぜこの有料セクターのよさを評価しないで切り捨てようとするのか。自治体経営の観点からいっても、私には合点がいきません。

 確かに、区立幼稚園や公立保育園の民営化は全国的な流行にもなってきております。しかし、この流行は、日本の病根の一つだというふうに考えます。教育や福祉では、公的セクターが一定の役割を果たしていかなければうまくいかない事業もあるわけであります。障害者受け入れの問題などは、その典型でありましょう。また、公立であるからこそ、先進性を発揮できる事業もあるのであります。教育や福祉分野にそういうものを見出さないでおいて、何が地方政府でありましょうか。そして、何よりも区議会は区民に耳を傾けるべきであります。七万名、そして四万六千名の声は大事にしなければなりません。

 以上、主張いたしまして、平一六・一二号、一三号、二四号、二六号、二七号、二八号の請願の不採択に反対の討論といたします。(拍手)

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。