平成16年第4回定例会(自1126日 至127日)

世田谷区議会会議録

2004年12月7日 大場前区長に対する「名誉区民選定の同意」への反対討論


○宍戸教男 議長 次に、 

△日程第二十二を上程いたします。

   〔霜越次長朗読〕

 日程第二十二 同意第七号 名誉区民選定の同意

○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。

 発言通告に基づき、順次発言を許します。



 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕



◆四十八番(木下泰之 議員) 提案されました大場前区長を世田谷名誉区民とする同意七号議案に反対の立場から討論を行います。

 今回、熊本区長から大場前区長を名誉区民とする提案があったわけでありますが、私は極めて驚いております。毀誉褒貶はいろいろある、これが政治の世界の宿命です。政治家は、みずからの信念のみに従って行動し、選挙の審判を受け、退いた後は歴史の中で審判を受ける、そういったものではないでしょうか。

 大場区長が二十八年間世田谷区長の座にいたことは事実ではありますけれども、その評価はさまざまであります。そのことは、大場後継候補と闘い、区長の座についた熊本区長みずからが一番ご存じのはずではありませんか。二十八年と長期にわたった区政のよどみ、しがらみを変えるのが私の使命だというようなことを語った熊本区長が、大場前区長を名誉区民に推挙し、称号を与えるということは、熊本区長自身の政策の自己否定そのものであります。見苦しい、美しくないというのが私の感想であります。

 なぜ、しかし、あえてこのようなことをやるのだろうと考えると、非常に生臭い。今回の大場前区長に対して名誉区民の称号を与えるということに対して、名誉区民に関しての委員会が開催されました。この委員会には交渉会派の各派が参加しておりますが、このうち生活者ネットは反対いたしました。さすがに市民感覚を持ち合わせておられる。しかしながら、その他の会派、自民党、公明党、民主党、政策会議、共産党の各会派は、こぞって賛成しました。こんなことで区政はよいのでありましょうか。

 今回の大場前区長に熊本区長が名誉区民の称号を与えるということの政治的意味を見てみましょう。これは、大場前区政の汚点の追及や詮索はもうやめにするということを意味します。よどみ、しがらみ一掃のいわば終了宣言であります。

 世田谷区名誉区民条例第六条には、「区長は、名誉区民が本人の責に帰すべき行為により、著しく名誉を失い、区民の尊敬を受けなくなったと認めたときは、区議会の同意を得て、名誉区民の称号を取消すことができる」と書いてあります。

 実際に、前区長の時代に当時の大場区長が名誉区民とした世田谷区体育協会の坪内嘉雄会長が同協会の公金五百五十万円を使い込むという事件が発覚し、結局、同会長は名誉区民を返上するという事件が起こっております。もし大場前区長の責に帰すべき行為により著しく名誉を失い、区民の尊敬を受けなくなったと認めるような事件が発覚したならば、今回与える名誉区民の称号を返却しなければならない事態だってあり得るということを考えたことはないのでしょうか。国の例で言えば、田中元首相逮捕の例もあることを忘れてはなりますまい。

 熊本区長の評価によっても、大場前区政はよどみ、しがらみの区政であったというわけでありますから、これからも何が発覚するかわからないというのが普通の区民から見た常識ではないでしょうか。実際、この二年間、次から次へと大場前区政時代の役人による不正が発覚しました。こういった不祥事が発覚するようになったのは政権交代のおかげであるということを私は率直に認めたい。熊本区政の政治方針とは私は対立しますけれども、政権交代がもたらすインパクトが区政から腐敗を一掃していくためのよい好機になったということは認めるし、よどみ、しがらみの一掃ということで綱紀を正していこうとした熊本区長の姿勢は評価に値すると私は率直に申し上げておきましょう。

 しかし、今回、そのよどみ、しがらみの二十八年間の区政の長たる大場前区長に名誉区民の称号をお与えになる。これは明らかに熊本区政が掲げたよどみ、しがらみ一掃の政策の事実上の終息宣言ではありませんか。このような終息宣言に区議会は同意を与えるべきではありません。

 私は、今回の議会の一般質問を通じ、熊本区長の変わりようを感じたことを申し上げておきましょう。就任以来、区長は、議会での質問についてはご自分でお答えになろうとしていた。その姿勢は立派だと思っていました。ところが、今回の私の一般質問に対しては、ご自分でお答えになろうとはしたが、助役の目配せによって答弁をやめてしまっている。私は、その区長の変質ぶりを見て、失礼だと申し上げた。答弁を役人任せにするその対応、大場前区長によく似てきたと思います。そうであってはならないと申し上げておきます。

 最後に、この場をかりて大場前区長にも申し上げておきます。名誉区民制度をつくったあなた自身が名誉区民となることはよろしくない。清くないし、美しくもない。何よりも、前区長である事実自体、十分名誉なことではないですか。名誉区民の称号を与えられたとしても返上すべきだということをあえて申し上げておきたい。

 以上、反対討論といたします。



○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。