平成16年第4回定例会(自1126日 至127日)

世田谷区議会会議録

2004年11月30日 一般質問


○宍戸教男 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 通告に従い、一般質問を行います。
 最初に、都市整備方針、道路中心の都市軸という考え方についてお伺いします。世田谷区の都市整備方針中間見直し素案を読んで、都市整備方針の基本構造が持つ重大な欠陥に気づきました。それは、道路を整備することが都市計画のすべてというその論理構造の発見でした。既に区には意見書も提出してあります。勘どころのみ申し上げましょう。

 農村地帯であり、郊外であった世田谷が住宅都市となっていくのは、私鉄網の発展によっております。したがって、私鉄の主要駅は当然のことながら拠点をつくっております。ところで、区の都市整備方針は、都市軸という考え方を立てておりますけれども、既に鉄道網によって発展したこれらの複数の拠点間を結ぶ道路を都市軸と位置づけて都市の骨格を考えようとしているのであります。

 人の動きを見れば、世田谷では通勤通学と電車に依拠しているのであり、人の移動の導線は圧倒的に鉄道に沿っている。鉄道網が発達していない外国の都市や地方都市とは違って、世田谷の場合は都市軸の柱には鉄道網を据えなければならないはずなのに、そうなっていないのであります。鉄道はするりと抜け落ちているというふうに見えます。

 これはなぜか。前区長の大場区長が夢想した世田谷独立宣言が道路中心の都市整備方針に利用されていると私は見ました。その結果、世田谷は首都東京の一番近いベッドタウンだという事実を全く無視している。都市整備方針には一般的な人口論はあるものの、昼間、夜間の人口比較や都心区への依存度の評価すらありません。架空の独立都市を考えれば、にぎやかな拠点駅間を道路で結び、ここに都市軸を設定すれば、擬似的な独立都市にはなるでしょう。世田谷の地理的条件や都市の構造、歴史性を無視した道路、自動車中心、不動産開発優先の都市整備方針と言わざるを得ないと私は考えます。全面的にこの都市整備方針は改めるべきであります。

 そこでお伺いします。都市軸とは何か、なぜ道路のみしか見ていないのかお伺いいたします。加えて、なぜ世田谷を閉じた体系としてしか見ていないのか、住宅地世田谷を東京という全体の都市の中でどのように位置づけているのかお伺いいたします。

 その上で、京都議定書にも示されているとおり、サスティナブルな都市のあり方が求められている現在、歴史的に形成された鉄道網のメリットを都市機能の中心軸に据え、補助線計画を新たなトラムの導入や歩行者・自転車専用道路に置きかえるなどして、自動車優先から人間中心の都市機能への転換を図るべきと考えますけれども、世田谷区としては都市整備方針との関係でこのことをどのように考えているのか、見解をお伺いいたします。

 次に、下北沢破壊の道路・高層再開発と地区計画についてお伺いいたします。下北沢はまさに鉄道交通の便のよさのため、車に依拠することなくとも、歩いて楽しめる裏路地の町として独自の発展をしてきたと私は考えます。下北沢は、町全体がまるで広場のような町です。ここにあえて広過ぎる駅前広場をつくり、幅二十六メートルもの道路を通して車を引き入れて、高層ビルで構成された町をつくれば、ミニ渋谷やミニ新宿に変貌してしまいます。それでいいのかと私はずっと言い続けてまいりました。

 これに対して区の役人は、これまで歩いて楽しめる町を継承します、修復型でいきますと言いわけをしてまいりました。余りにも言いわけを言うので、あるいは下北沢の商業地区の五〇〇%の現在の容積率を、思い切って三〇〇%なりにダウンゾーニングでもするのかと思っていたこともありました。これは人がいいですね。

 しかし、このほど示された地区計画骨子案は、容積率五〇〇%はそのまま、しかも高さは制限十七階、五、六十メートルの高さであります。私の危惧したとおりになっております。駅周辺や補助五四号線と茶沢通りを、タウンホールより高い十七階の高層ビル群でスカイラインを形成する計画でありますが、これでは下北沢の完全な破壊であります。そうは思いませんか。

 この高層ビル群を形成するためにこそ、補助五四号線という広い道路は必要とされてまいりました。昨日、畠山議員の示した五四号線の図には、両わきの高層ビルの絵が抜け落ちていましたね。渋谷の道玄坂や新宿の新宿通りでも歩道は広い。歩道が多少広くとも、歩行者主体の町とは言えません。道玄坂や新宿通りを超える高層ビル群が形成されれば、車をむしろ呼び込むことになる。これでは、周辺の住宅地域もたまったものではありません。

 また、このような骨子案は、これまで街づくり懇談会が提出してきた下北沢のまちづくり像とも背反するものであります。これまで懇談会の文書では、高層ビル群による町の顔づくりなどというものはありませんでした。下北沢の魅力と周辺の住環境を守るため、補助五四号線、地区計画とも方針を根本から改めるべきと考えますが、見解をお聞きしたいと思います。

 今回の骨子案は、世田谷区が考える下北沢の道路・高層再開発の全体像を初めて提出したということになります。そもそも都市計画は全体像の検討から始めるべきはずのものであります。世田谷区の手法は逆転しております。全体像はいつも示されずに隠されてまいりました。全体像をやっと初めて示したわけであるから、補助五四号線、駅前広場、下北沢の町のあり方を根本的に議論する必要があるし、区民参加で根本的な議論をする協議機関や機会を設けるべきであります。

 また、下北沢のように全国から愛されている町は、商店街や町会の一部幹部だけでそのありようを決めるべきではありません。広く議論を起こし、町のありようについて多くの人々の声を聞くべきであります。そういった意味での根本的な検討をする用意があるのか否か、お聞きいたします。

 時間がありませんので、墓地問題と幼稚園問題は要点だけ述べます。

 給田の一千基規模の業務墓地問題。墓埋法の運用に関し国が示した指針では、首長の裁量権が明記されております。指針は、墓埋法は墓地の許可については条件を満たせば許可しなければならないとは書かれていないとさえ明示しているのであります。ということは、区長の聡明な判断が求められているということであります。

 予定地は、東電の高圧線が埋設されているために東電の地上権が設定されており、形式的にも申請予定者の寺の完全な自己所有地となっていない。また、電磁波の影響も懸念されます。申請予定者の光母寺は、もともとの所有者である道路建設会社の小原から所有権を移転し、申請に臨もうとしておりますが、十一億円を超える極度額の根抵当権がついたままの所有権移転であり、まともな墓地経営や墓地経営の永続性を保障する要件を満たしておりません。住宅地や高校に隣接もしております。

 何よりも、不良債権処理を目的とした墓地建設を一たん認めれば、住宅地への営利墓地の進出に歯どめがきかないという性格も持ち合わせております。これは公益に反します。区長は、この墓地計画について許可をしないと明言すべきであります。区長自身の見解をお伺いいたします。

 最後に、幼稚園問題。区長は、七月の二園廃止説明会で、父母が廃園計画について猛反発した事実について、十一月十日の幼稚園の保護者との区長室での懇談の際、初めて聞いた話だ、説明会では皆さんからある程度の理解を得られたと聞いていたと発言をしたと言われております。この問題は、幼稚園問題に限らず、事務方と区長の意思疎通の問題として重要な問題を含んでおります。教育委員会や区長部局は、区長に説明会についていかように報告したのか、このそごの真相を明らかにされたい。

 また、こういう事態に接すると、区民と区長の直接対話がいかに重要かということがわかります。今後は区立幼稚園の父母と十分に話し合うべきだと考えますが、区長自身の見解をお伺いいたします。

 以上で壇上からの質問といたします。

◎株木 都市整備部長 私からは、都市整備方針に関連しました三点のご質問にお答えいたします。

 まず、都市整備方針の都市軸に関してのお尋ねでございますけれども、都市整備方針では、都市づくりの将来像を都市づくりの基本的な枠組みである骨格プラン図、土地利用構想図、道路や鉄道、公園などの都市施設配置図の三つの図により都市づくりの基本的な設計図として明らかにしております。

 お話にございました道路と鉄道に関しましては、いずれも都市の基本構造や生活基盤を支える重要な要素として、また交通ネットワークのかなめとしてバランスのとれた整備が重要と考えております。

 そこで、都市づくりの骨格プラン図と都市施設配置図では道路と鉄道を図示するとともに、骨格プランでは地域の核となる駅を中心とした生活拠点、主要幹線道路沿道を活力と交流の都市軸、また国分寺崖線や多摩川を環境保全ゾーンとして位置づけたものでございます。

 次に、住宅地世田谷を東京という都市の中でどのように位置づけているかというお尋ねでございますけれども、世田谷区は都心に近い交通の便利な都市でありながら、緑豊かな成熟した住宅地でございます。成城学園などの住宅地、環七沿いに広がる高密な市街地、世田谷の原風景である農地、三軒茶屋、下北沢、二子玉川などの文化、商業の拠点地区など、住宅都市としての多様な顔を持っております。

 東京都の都市マスタープランでは、山の手通りから外かく環状道路沿いに広がる都市環境再生ゾーンに位置づけられております。住宅地を主体としつつ、木造住宅密集地域の安全性の向上、河川や道路を生かした緑の回復、地域交通体系の整序、生活拠点づくりを進め、利便性の高い個性的で多様な魅力あふれる生活環境を形成していくというふうに位置づけております。

 区の都市整備方針におきましては、こうした東京都等の都市づくりの方針との連携を図りつつ、先ほど申し上げました骨格プランなど、区全体をとらえた都市整備の基本方針と各地域の特色を生かしたまちづくりを目指しまして、五つの地域整備方針を定めております。いずれにいたしましても、区民、事業者等との協働を基本として、都市整備方針に基づきまして、魅力的で安全安心なまちづくりを目指して取り組んでまいります。

 最後に、サスティナブルな都市のあり方を求めている中、補助線計画を見直して、自動車優先から人間中心の都市機能の転換を図るべきというお尋ねでございます。補助線街路は、区の大きな課題となっております幹線道路の慢性的な渋滞の解消、地域交通ネットワークの形成、また密集市街地における安全性の向上等にその整備は必要不可欠なものであると認識しております。

 一方、既に区内には小田急、京王、東急と歴史を持った鉄道事業者三社が区の交通ネットワークの基軸となる鉄道網を形成しております。高齢者、身体障害者等の移動困難者が円滑に移動できるよう、これら区内を横断している鉄道路線とバス等地域交通との乗り継ぎ利便性を高め、だれにでも優しい地域交通ネットワークの向上を図ることが必要であると考えてございます。

 区といたしましては、現在進めております連続立体交差事業、交通不便地域への路線バスの投入等の施策を展開しまして、車両数の総量減少を図り、さらに交通渋滞を解消するためにも、あかずの踏切解消促進に取り組むなど、環境に優しいまちづくりを目指してまいる所存でございます。

 以上でございます。

◎真野 北沢総合支所長 私からは、下北沢のまちづくりにつきまして、二点ほどご質問をいただきました。
 まず、下北沢の補助五四号線整備につきましては、地域整備方針の中間見直しにおきましても、地域交通ネットワーク軸に位置づけられたものでございます。当該路線は、道路ネットワークや延焼遮断帯、避難路、交通結節機能の強化等の必要性から極めて重要であると考えており、重点事業にも位置づけております。

 下北沢駅周辺のまちづくりにつきましては、本年五月策定の地区街づくり計画におきまして、補助五四号線と駅前広場は、広い歩道や人だまり空間の整備により、新たな回遊拠点軸として歩いて楽しめるまちづくりに資するものと考えております。さらに、地区計画骨子案では、補助五四号線沿線など下北沢の新たな町の顔づくりといたしまして、現在、高さ制限のない商業地域において、むしろ積極的に建築物の高さを規制し、無秩序な町並みを抑制するものとして示してございます。今後、地域住民等の意見も取り入れながら、現在の下北沢の魅力を生かしつつ、具体的な整備内容、制限内容をまとめていきたいと考えております。

 続きまして、まちづくりに区民参加の議論をというお話がございました。下北沢周辺地区まちづくりにおきましては、長年にわたる下北沢街づくり懇談会を初めさまざまな住民の方々、地権者の方々との意見交換を踏まえ、本年五月、地区街づくり計画をお示ししたところでございます。
 今回の地区計画骨子案では、地区街づくり計画の中にあるまちづくりの目標や基本方針などを、より具体的に実現する方策のたたき台として提示したものでございます。今後、町会、商店街を初め地区内の土地に関する権利者や住民の方々などの意見交換やはがきによりますアンケートなどを十分に踏まえまして、明年三月には地区計画素案として地元の皆様にお示ししていきたいと考えております。
 以上でございます。

◎永見 世田谷保健所長 給田の墓地開発計画についてのご質問にお答えいたします。
 墓地の経営許可に関しましては、墓地、埋葬等に関する法律及び東京都の墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例に基づいて、適正かつ公正な執行に努めてまいります。
 以上です。

◎庄司 教育次長 区立幼稚園二園廃止の説明会について、私からお答え申し上げます。
 羽根木・旭幼稚園の保護者向けに行った説明会の結果につきましては、いただいた質疑や意見をまとめまして、私と子ども部長で区長へ報告申し上げました。また、その後開催されました文教常任委員会、福祉保健常任委員会などの議会の状況につきましても、節目節目で基本的なことを報告するなど、常日ごろから区長と情報の交換、共有化に努めてまいりました。

 直接対話の質問がございました。先日、十一月十日でございますが、区長は区立幼稚園の存続を願う父母の会の中心とする保護者の方々と懇談されたところでございます。
 以上です。

◆四十八番(木下泰之 議員) 非常にそっけない答弁です。まず、墓地問題については区長の判断を求めているんです。今まさに判断しなかったら大変なことになります。やるにせよ、やらないにせよ、僕はやらない方をぜひ選択してもらいたいと思うけれども、今やっぱりきちっと答弁すべきだと思います。
 それから、なぜ父母の間とのそごが生じたとかということについて、これは非常になぞです。これについては、区長、きちっと答えないと、あなたが報告を間違って理解したというふうになりますよ。その辺についてもきちっと答えてください。
 それから、下北沢のまちづくりの問題ですけれども、都市のあり方というのは、全体像から入らなかったらイメージがわかないです。街づくり懇談会でいろいろやってきたと言うけれども、こんな高い建物で構成する町の顔などということは、今までの文書のどこにも書いていない、そんな議論もしていない。だから、そういうことについてきちっと、そういうプランを出されたのだから、全体像から始めてきちっと総合的な説明会とか協議をやる必要があるということを申し上げた。そういうことをやるつもりがあるのか、ないのか、お答えいただきたい。お願いします。
   〔山田助役登壇〕

◎山田 助役 私からは、墓地問題に関してお答え申し上げます。
 この問題に関しましては、区長のご指示をいただきまして、庁内の連絡会を設置して対応してまいりました。今後につきましても、法令、法律、条例等に基づきまして、適正かつ公正な執行に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。

◎真野 北沢総合支所長 議論についてのお話がございましたが、今までもさまざまな形で地元住民の方と議論をしてきたところでございますが、先ほど申し上げましたように、地区計画素案の策定に向けまして、地区住民の皆様と権利者の皆様、さまざまなご意見等を今後とも伺いながら進めていきたいと思っております。
 以上でございます。

◎庄司 教育次長 十一月十日の保護者の皆様と懇談した際の区長の発言につきましてお話し申し上げます。
 保護者の皆さんのさまざまなお話の中には、初めて聞く話もあったという意味でございますので、そういった意味では区長の真意が十分に伝わっていなかったようでございます。私どもは、先ほど申し上げましたように、今後とも区長と情報の交換、共有化に努めてこれからも進めていきたい、このように考えております。
 以上です。

◆四十八番(木下泰之 議員) 下北沢の再開発につきましては、今さら高層ビル開発ではないはずなんです。これは世界的に見てもバルセロナモデルなんていうのもあります。低層できちんとしたまちづくりをやっています。そういったことも踏まえてきちっとしたことをやらないと、世田谷は笑い物になる。
 それから、区長が答えるべきことについて区長は答えていない。一言も区長が答えないというのは失礼ですよ。そのことを言っておきます。

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。