平成16年第3回定例会(自9 15日 至1019日)

世田谷区議会会議録

2004年9月28日 一般会計第一次補正予算への反対討論




○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。

 発言通告に基づき発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 今回はすべての予算に対して第一次補正の議案が提出されておりますが、このうち一般会計補正予算に関する反対討論を行います。

 今回の一般会計補正予算には債務負担行為の補正が含まれております。これは東京外かく環状道路における生活再建救済制度を創設し、区の土地開発公社が土地取得を実施するための債務負担の補正であります。

 ご承知のように、外かく環状線の問題は、かつての高架での高速道路整備方針に対し沿道住民からの反対運動を受けて、国が事業計画を凍結してきたという経緯を持っております。これを大深度地下を使った地下高速道路に転換して整備したいという国側の方針転換を機に、住民参加の手法を取り入れたPI協議会での議論が進められている最中であります。

 外かく環状については、区議会の中にも推進連盟があったり、それから石原都知事が旗振りをやっていたりして、何か事業が進められるかのような雰囲気だけは醸し出されておりますが、推進側は、大深度地下への都市計画変更は目指してはいても、都市計画変更がいまだされたわけでもありません。しかも、公団が民営化されました。外かく環状を建設するとしたら独立採算制が原則的には適用されます。道路族の圧力によって抜け道は用意されるでしょうけれども、今議論となっている整備区間は十六キロ、一兆六千億円かかります。日本の財政は極めて悪くなってきております。日本の政府の債務は、本年六月末には七百二十九兆円となっております。税収見込みは、平成十六年度は四十一兆七千五百億円なのに、三月から既に六月末までに二十六兆八百二億円の負債を新たに抱え込んでおります。負債が税収を超えてしまうのは火を見るよりも明らかであります。道路ばかりをつくって、国が滅んでよいのか、今、真に問われているところであります。

 そういったさなか、国が――国がというよりも、国の道路族の支配するセクターが東京外かく環状道路における生活再建救済制度をつくったと言えるのではないでしょうか。そして事業の先行買収を実施するために、その実行を地元末端行政である世田谷区に押しつけてきている、そういう構図であります。今回の補正は、生活再建救済と言えば聞こえはよいかもしれませんけれども、そういうことではないのでしょうか。

 第一に、不公平きわまりない制度であるということであります。古くから都市計画線上に住んでいる方々はたくさんおります。外かく環状は高速道路でありまして、一九六六年の計画ですから、計画が立てられてからせいぜい三十八年であります。しかし、世田谷区内には戦後占領下の一九四六年に計画線が引かれた補助線上に住んでいる方々はたくさんおりまして、例えば五四号線の場合でいきますと、五十八年もの間凍結されたまま、権利制限を受けた方々がおります。これは北沢地域の方々に多いわけですけれども、そういった方々がおります。法的な不平等は許されません。同じ区民でありながら、一方で救済、一方で未救済、この区民の間に引き起こす不公平について、区長はどのように弁明できるでしょうか。しかしながら、都市計画線上の同種事情の方々すべてに、もし今回のような制度を適用しようとすれば、莫大な費用がかかることは言うまでもありませんし、財政危機の日本でとるべき政策でもありません。

 第二に、政策上矛盾に満ちた政策であります。外かく環状は、現在は大深度地下で構想されております。大深度地下化は、地上権を買収しないで事業を遂行できることで、事業費を安く上げられるというのが事業推進勢力の説明でした。ところが、大深度地下で構想されている地区の居住者にも、今回の救済制度を適用しようとしているのであります。支離滅裂な話です。本来、安くできるというのは、それは買収がないから安くできるというわけですけれども、しかし、あえてそこを買収してしまう、こういった矛盾に満ちた政策であります。

 第三に、極めて政治的な制度であります。大深度に限らず地下構想への転換であれば、地上に住み続けることはできます。もし本当の意味での救済を言うのであれば、高架計画断念の意味を込めて、不要な都市計画線の廃止をまず行うべきではないでしょうか。そうではなくて、大深度部分も含めて生活救済再建を名目に先行取得することは、地元自治体を巻き込んで、事業をまさに買うことによって先行させる、極めて政治的な制度であると言わざるを得ないものであります。不公平かつ矛盾に満ち、道路族の政治色の強い、こういった制度を世田谷区が受け、実際に債務負担を行うことは許されません。このような債務負担の補正を含むことだけをおいても、一般会計補正予算には反対せざるを得ないのであります。

 先ほど委員長報告の中で、国の政策については区は是非を問わないのだ、そういう説明があった。また、区には負担がかからない、だからいいではないか、そいうこともおっしゃって、それに納得されて、委員会では議決されてしまった。そういうことでありますけれども、先ほど国の借金の問題は言いました。

 九月二十五日付の日経新聞には、このような見出しが書いてあります。「六月末の国の借金、七百二十九兆円二千二百八十一億円・国民一人五百七十万円超」の借金という意味ですね。

 財務省は二十四日、「国の借金」に相当する国債、借入金、政府短期証券の六月末時点の合計残高が七百二十九兆二千二百八十一億円になったと発表した。初めて七百兆円を超えた三月末から二十六兆八百二億円増え、過去最大を更新。国民一人あたりに換算すると、五百七十万円を上回る借金に相当する。

 国の収入にあたる税収の今年度見込み額(約四十一兆七千五百億円)の十七・五倍に達する。社会保障費の増加など歳出が伸び続ける一方、主に国債の発行で歳入不足を補う苦しい財政運営の末に借金が膨らんだ格好だ。

 国の借金のうち八割を占める国債は三月末比十五兆百八億円増え、五百七十一兆四千二百七十一億円となった。FBも九十九兆八千九百七億円と十三兆七千六百四十八億円の増加。昨年度の大規模な円売り介入に伴い日銀に外債を売却したが、その買い戻し資金の調達で発行が増大した。

 国債は今年度、三十六兆六千億円を新規発行する予定で、借金の膨張に歯止めがかかりそうにない。このほか、特殊法人が発行する債券などを保証する政府保証債務が五十八兆七千三百五十四億円あるほか、地方にも二百兆円程度の借金がある。

 これが二十五日付の日経新聞です。

 まさに今、道路族などによって公共事業がめちゃくちゃに行われてきたことによって、国が破綻しようとしている。そういった時期になって、なおも一兆六千億円ものお金をかけて外環をつくろうとしているわけであります。それに対して、世田谷区はお先棒を担ごうとしている。やはり今は、時代としてはとにかく大規模公共事業についてはモラトリアムをして、まさに米百俵ではありませんけれども、教育については特段の配慮をし、そして国の未来の方向性をきちっと見定めた上で、とにかく財政を減らしていく。そして未来志向の教育などについてはきちっと戦略的につぎ込んでいく、そういった姿勢が必要なのではないでしょうか。

 そういったことを考えると、国から補助金が出る、区は一銭も払わなくていいから、これを受けるんだということでは成り立たない話であります。まさに地方分権が言われている今、この問題については国に突き返して、そして頭を冷やして、一からPI協議会できちっと議論する、そういう姿勢が大事なのではないでしょうか。

 そういったことを申し上げまして、無党派市民の反対討論といたします。